スタートアップの場合、業界にイノベーションを起こすような革新的な事業でも未だビジネスを始めたばかりで、参入するマーケットの市場規模の算出や正確な売り上げ予測を立てることが難しく、銀行からの融資による資金調達に難航することが一般的です。
その理由としては、ブルーオーシャン戦略に基づく事業は、新たなコンセプトの商売になるため、ライバルとなる競合もおらず、ビジネスモデルやリソースベースドビューの本質が掴めず、石橋を叩いて渡る銀行融資では、リスクがあると判断されてしまうからです。
前人未到に挑む事業は、比喩的に「海の物とも山の物ともつかない」と表現されますが、シードやアーリーステージである時にこそ、VCが活躍するフィールドがあります。
そこで今回、VCとは、VCの意味と役割・スタートアップの資金調達のコツについて解説します。
■VCとは?
VCとは、競争優位性の高い技術を持つITベンチャーやブルーオーシャン事業に挑むスタートアップなど、将来的に高い成長が見込まれる未上場企業の第三者割当増資を引き受け、上場した際にキャピタルゲインを得ることを目的に、エクイティ投資を専門する会社を指します。
VCは、英語で「Venture Capital」の略になり、「ベンチャーキャピタル」と呼ばれます。VCを日本語にすると、未公開企業に資本参加し、投資利益を得る投資会社を意味します。
VCの多くは、複数の投資家から資金を預かり、投資ファンドで運用しているため、自己資金でスタートアップに投資するケースは少ないです。
ベンチャー企業を成長を資金面から支援するために、VCが運用する投資ファンドに資金を預ける投資家は、経営資源が盤石でビジネスで大きな利益を上げている大手の事業会社、潤沢な資金を持つ有力な個人投資家、日本の金融機関及び海外の機関投資家などになります。
スタートアップは、起業家が考案したアイデアを元に、業界にインパクトを与えるようなイノベーションに挑戦するため、新規事業の立ち上げ期のアーリーステージでは、商品やサービスのPMF「プロダクトマーケットフィット」が見えていないケースでは、事業のピポッドが必要なことも多々あります。
誰に何を提供するのかが明確でないと、主要な顧客層が誰なのかが不確かな状況となったり、クライアントとなる消費者や企業への販売実績が少なく、アーリーアダプターからの協力を得られていないことも当たり前のように起こります。
ITを駆使したビジネスモデルやインターネット領域の新規事業にチャレンジする新興企業の多くは、業界にインパクトを与える革新的な事業であればある程、銀行の融資の担当者から見れば、得体の知れない事業だと思われる可能性があります。
なぜなら、実際にその業界で働いた経験がないと顧客が抱えている問題が分かず、どのような課題を解決に結びつ付けることができる事業なのかが理解できないため、沢山の導入実績やトラクションが獲得できていない限り、どんな収益構造で売り上げが立つか事業のイメージが付かないからです。
融資と投資では、見るべき要素が根本的に異なるため、銀行マンの中には、融資の申し込みを受けてから実行するに際して、スタートアップのビジネスモデルや事業が飛躍する成長ドライバーが何で、顧客価値の本質さえも分からない担当すらいます。
一方でVCは、ビジネスプランや起業家のポテンシャルを成長の前段階で目利きすることで、投資した企業が上場できた際に、株式の売却益を得て、ファンドに投資してくれたインベスターに対して、キャピタルゲインを分配することをビジネスにしています。
VCが組成する投資ファンドは、ハイリスク・ハイリターンの投資姿勢を取る傾向が高く、リスクが少ないがリターンも少ない大手企業への投資よりも、リスクも当然あるものの今後の成長が見込める未公開株への投資が主流となっています。
■VCは融資ではなく投資
銀行からの融資が必要な場合、未だ販売実績が少なく、社会的な信用が乏しいスタートアップでも、自己資金の金額にもよりますが、1000万円~2000万円程度の創業融資であれば、デッドファイナンスによる資金調達が可能です。
ですが、設備投資が必要なビジネスモデルの構築を行うために、5000万~数億単位の資金調達が必要な際に、メガバンクの場合には年商ベースで20億~30億の売り上げを超えている会社でない限り、相手にもして貰えないことも一般的です。
そのため、スタートアップがプロパー融資で、多額の資金調達を行うことは非常に難しいと言えます。
VCの基本スタンスとしては、スタートアップが第三者割当増資を行う際に、株式を投資し資本参加することで、上場まで漕ぎ付けた段階で、株式市場からキャピタルゲインを得ることを事業にしています。
大きな事業収益を上げている有力な会社が自己資金でベンチャー企業に投資することもありますが、ほとんどのVCは、複数の大手企業や機関投資家から資金を集め、投資ファンドとして運用し、ファンドとしてスタートアップの株式を保有しているケースが多くなります。
そのため、VCは基本的にスタートアップ毎に、担当するベンチャーキャピタリストがおり、起業家が描いたビジョンや事業計画書を精査し、複数人でデューデリジェンスを行います。
・銀行融資の目的:設備投資や資金繰り改善
・VCによるの出資:新規事業の発展を目的
VCから出資を受けた企業は、投資した企業が成長しないと利益にならないため、短期間での事業の成長を求められます。
■VCの特徴と未公開企業に投資する理由
VCの基本的なポリシーは、スタートアップの起業家が作成した事業計画書を見極め、比較的安価な株価で資本参加できるように、ビジネスプランを事業が成長する前段階で目利きし、投資することができるかが最大の鍵となります。
事業の将来性が見えにくい場合には、起業家の持つポテンシャルに賭け、参入する市場が伸びる可能性を期待し、ハイリスク、ハイリターンで先行投資を実行する姿勢があることが大きな特徴になります。
VCがスタートアップに投資する目的は、以下の二つになります。
・投資した未上場企業が上場した際にキャピタルゲインを得ること。
・M&Aで他社に買収される際に保有した株式を売り売却益を得ること。
つまり、ベンチャーキャピタルの投資目的は、投資した未上場企業が上場した際、もしくは、他の企業に買収される際に保有していた株式を売却し、株式売却益となる「キャピタルゲイン」を得ることを生業にしています。
キャピタルゲインとは、英語で「Capital Gain」と表記されます。未上場会社だけでなく、既に上場している会社の株式取引を証券市場で売買することは一般的ですが、保有する株式の価格が購入時よりも上昇ししたことに伴う、利益のことを意味します。
未上場会社の株式の場合、証券取引法で定められた投資家保護の観点から、証券市場では売り買いができませんが、出資先企業の同意があれば、VCが保有している株式を第三者に譲渡したり、M&Aが成立した際に売却することは可能です。
上場ができない場合でも他社に株式を譲渡することで得られれる差額もキャピタルゲインと呼ばれ、M&Aに伴う株式の譲渡益を得ることができます。
VCとしては、スタートアップの株価の値上がりからキャピタルゲインを得ようとする場合、投資する際の株価が高く、高額なプレミアム株価が付いていると、仮に投資した会社が上場することができても投資対効果が薄くなることもあります。
そのため、ベンチャーキャピタルも投資した後に急速に経営状態が悪化してしまい、株式をどこにも譲渡することができない場合、巨額のキャピタルロスが発生する可能性があることを覚悟の上で、複数のスタートアップへの分散投資を行っています。
■VCの役割とミッション
VCが果たす役割やミッションは、大きく3つの側面があります。
1、スタートアップへのエクイティ投資
VCの基本スタンスとしては、銀行融資と異なり、貸付に対して金利で稼ぐビジネス構造ではありません。
VCの存在意義は、金融機関からの融資が難しいスタートアップに対して、リスクを覚悟の上でエクイティファイナンスによる先行投資を行うことで、資金面から成長を後押しすることになります。
ハイリスク・ハイリターンで未公開企業に投資するため、投資の判断や実行を担うキャピタリストには、以下のような高いデューデリジェンス能力が求められます。
・どのような業界や会社が成長する可能性が高いのか?
・今後、どんな事業が将来的に成長して利益を生むのか?
・投資する際に株価が適正で、ROIが見込める価格なのか?
ベンチャーキャピタルは、保有株式を売却して利益を得ることが事業目的になりますが、有力なリードキャピタルは、他のVCとのコネクションも豊富に持っています。
そのため、多額の資金調達が必要で、1社だけでは資金が不足している際には、一緒に出資してくれるように、シンジケートを組み、出資を呼び掛けてくれることもあります。
2、新興企業への投資、回収業務
VCがスタートアップに資本参加する際の投資方針は、VCごとに特徴が大きく異なり、アーリーステージ専門やITやハイテクに特化、メーカー中心、専門バイオに強いなど、投資ポートフォリオの特徴があります。
また、VCには、金融系VC、独立系VC、政府系VC、大学系VC、地域系VC、事業会社系VCなど、幾つかの種類があります。
そのため、どのVCから資金調達をするかによって、事業の評価の基準が異なり、引き受け時の株価の考え方やIPOの成功確率も大きく変わってきます。
基本的にVCには、以下の役割とミッションがあります。
・投資ファンド(投資事業組合)を設立すること。
・機関投資家や個人投資家・金融機関などから出資を募ること。
・特定の事業会社のファンドマネージャーとして投資すること。
・集めた資金を原資に、有望な新興企業を見つけ出して投資すること。
・自己資金でCVCとして未上場の新興企業に投資すること。
・投資先が上場した際に株を売却しキャピタルゲインを得ること。
・投資先が他の企業に買収された際に株式売却し、利益を得ること。
・売却益を出資者に株式譲渡益として投資家に配分すること。
・譲渡益の一部を成功報酬としてVCが受け取ること。
近年では、古くからあるVC以外にもCVCや大学系、政府系のいずれにも属さず、独自の資金調達や、成長ステージや業種に特化するなど独自の戦略を持つ独立系のVCも増えています。
3、投資先の経営支援
VCは、未上場の段階で株式を取得し、上場時に売却することで大きな値上がり益を期待できますが、投資先企業の中には上場を果たすことができずに、出資金の回収が全くできないケースもあります。
当然ながら投資先が成長しなかった場合、VCの収益は見込めません。
投資を成功させるために、VCのキャピタリストは、資金以外にも経営資源を提供します。
VCは、キャピタルゲインを得るために第三者割当投資で株式を引き受けたスタートアップに対して、経営助言を行ったり、大手企業とのアライアンスを支援したり、時にはBtoBでは、新規顧客の紹介を行うケースもあります。
役員を派遣することで事業のスケールアウトをハンズオンで行い、積極的に企業価値を高めるために実行支援を行うVCもあります。
例えば、経営の助言だけでなく、事業の拡大に欠かせないフリーランスのプロ人材を紹介したり、常勤や非常勤で取締役を派遣するケースもあります。
■スタートアップがVCからの投資を受けるメリット
VCから出資を受ける理由はスタートアップにより異なりますが、資金面以外のメリットを重視してファイナンスを受ける企業もあります。
1、銀行融資と異なり返済の義務がない
VCによる投資では、3年~5年という短期間で高い成長率が期待でき、株式公開を目標にしているスタートアップに対して投資を行います。
銀行から融資を受ける場合は、最新的な返済期日が設定され、毎月、元本と利息を定期的に返済することが必須要件になります。
一方、VCから調達した資金は、借り入れとは異なり、真面目にビジネスに取り組む限り、原則として返済義務がありません。
出資を受ける対価として自社株を譲渡するため、デッドファイナンスとは異なり、エクイティによる出資になるため、資金を返済する必要がないのです。
新興企業にとっては、創業間もない時期は様々な費用が発生するため、返済不要の資金を手に入れられる点は大きなメリットになると言えます。
軍資金に余裕が出れば、社長が会社の資金繰りの負担から軽減され、事業の遂行に専念することができます。
2、株主にVCがいると社会的な信用力が上がる
銀行系VCや証券会社系のVCが出資する企業には箔が付きます。
リードキャピタルと呼ばれる大手VCにビジネスモデルが評価されたという事実は、他のVCや事業会社などからの資金調達を行う際の呼び水になります。
VCから投資を受けると、「この会社は有名なVCに投資を受けている会社だ」と判断され、BtoBの場合、大手企業や新規取引先からの評価が高まります。
また、それなりの株価が付けば、次回のファイナンスの株価の基準にもなり、起業家が保有している株式全体の時価総額も上がます。
次のラウンドで、第三者割当増資で資金調達が必要になった際にも株価の基準になるため、追加でファイナンスが必要になった際に、その他のVCから出資を受けやすくなったり、銀行からの借り入れが楽になるケースもあります。
事業が軌道に乗った段階で、同じVCからの追加投資も期待できるため、長期的メリットが大きい傾向にあります。
3、VCの持つ経営資源やノウハウを活用できる
有力なVCは複数のスタートアップに投資をしており、出資先をより魅力のある企業に成長させるため、ベンチャー企業の抱えている課題や必要に応じて事業拡大に向けた最適な企業の紹介をしてくれることもあります。
例えば、出資先同士のコラボレーションやファンドオーナーの大手企業とのアライアンスなど、スタートアップの事業を加速させることを目的にジョイントベンチャーの提案をしてくれることもあります。
また、VCの中には、ファンド運営で培った経営上の支援を行うのみならず、上場を目指す起業家向けにIPOセミナーを開いたり、投資先を集めた勉強会や決起集会など、様々なイベントを催したりする会社もあります。
VCで働くベンチャーキャピタリストの仕事内容としては、投資先への開拓や投資の実行決定だけではありません。
その理由としては、優良なスタートアップを早い段階で発掘し、投資するためには、多くの時間を投資先の経営者とのコミュニケーションや関係性の構築に費やす必要があるからです。
多くの企業のデューデリジェンスを行っているため、キャピタリストが保有する知見があり、事業を成長させるコツだけでなく、多数の経営者との面談で培った人脈などの経営資源を活用できるという点もメリットに挙げられます。
上場実績の豊富なVCは、出資から株式公開まで漕ぎ着けたノウハウを元に、監査法人や主幹事証券を紹介したり、上場までのロードマップを策定し、経営サポートを担って貰えることもあります。
■VCがファイナンスを実行する際の投資基準
スタートアップにとって、VCから投資を受けることは一種のステータスになりますが、VCからの出資を受けたいと考える場合には、投資の判断基準を理解する必要があります。
1、上場が狙えるビジネスモデルなのか?
VCが投資を実行する際にスタートアップに求める最も重要な判断基準は、上場が狙えるビジネスモデルであるかになります。
その上で、株式公開時に高いキャピタルゲインが狙える可能性があるかどうかにつきます。
VCの投資は、基本的にハイリスク・ハイリターンを原則にしているため、上場もしくはM&Aで金銭的なリターンがあり、十分な「投資対効果」が得られるかが重要な投資判断の基準となります。
投資対効果とは、投資した資金に対してどれだけの利益を上げることが出来たのかを示す「投資利益率」、英語ではROIの指標のことを意味します。
VCによる投資では、出資した資金に対するコストパフォーマンスが高いか、投資回収のスパンはどの程度になるかが重きを置かれ、「投資収益率」も重視されます。
2、独自の競争優位性や技術を持っているか?
VCは、スタートアップが他の企業とは異なる独自の競争戦略、そして、差別化優位性を持っているかを重要視します。
差別化優位性とは 同じカテゴリーに分類される他社のプロダクトやサービスと比較し、大きな違いを作り出すポジショニングにも繋がる要素になります。
ライバルが皆無の市場が少ないため、業界を問わすマーケットで勝ち抜くためには、以下のような視点が必要になります。
・ライバルと比較した際に、高い技術力で開発したシステムがあるか?
・特許など独占市場を作作り出せる武器や参入障壁があるか?
・競合よりも優る独自のコア・コンピタンスがあるか?
・顧客の支持を得ようとするバリュープロポジョンがあるか?
特にIT業界では、今後市場に提供するプロダクトを支えるコアが既存技術や競合に比べて差別化優位性を確保していることが重要となります。
3、ターゲットとする市場に高い成長性があるか?
VCは、スタートアップが早く大きく成長するかよりも、創出する市場そのものがいかに大きく成長するかを重視します。
スタートアップが飛躍する秘訣は、成長市場の波に乗ることだ!」と言われます。
ライフサイクルによれば、成長市場で企業の利益が最大化するため、企業が儲けるためのハードルが最も低いタイミングで、成長に参入することが大事になります。
なぜなら、マーケット全体のパイが大きくなっている業界に新規参入することができれば、他社から顧客を奪わずとも自然と売上を作ることができるからです。
その市場が成長しているかは、「売上がどれほど伸びているか?」「顧客数が増えているか?」で判断できます。
VCから出資を受ける際には、現在のマーケットの規模よりも数年後の市場規模と、スタートアップが狙う市場の成長スピードが重要なポイントになると言えます。
4、明確な事業計画や財務戦略が策定できているか?
事業計画書は、VCがスタートアップへ投資する判断を下す際のセンターピンとなる要素になります。
VCは、市場動向を把握した上で、業界情報を調査し、ビジネスプランの実現可能性を含めて、社長が作成した経営計画を見て事業の将来性を検討します。
経営計画とは、ミッション、ビジョンに基づく経営目標を設定し、それを実現するための行動計画のことを指します。
会社を成長させ、目標となるビジョンを達成するためには、安定的に利益を確保し、業績を右肩上がりに継続して上げ続けることが重要です。
VCは特に、売上、利益、黒字化するまでの必要な資金など、財務戦略をスタートアップがきちんと明快に描けているかを重視しています。
経営計画を策定せず、行き当たりばったりの経営では想定外のできごとに対応することができません。
5、社長や役員、従業員に魅力があるか?
アーリーステージの場合、創業した当初に必ずしも完璧に経営のボードメンバーが揃っている必要はありません。
ですが、スタートアップが事業を成長させるための最低限の要素として、社長だけでなく、優秀な取締役がもう一人いたり、経営会議が成り立つレベルが高い幹部候補が何人かいる必要があります。
競争優位性が高く、参入障壁の高いビジネスモデルを構築するためには、新興企業ならではの強みを活かし、少数精鋭で事業が回転するようにオペレーショナル・エクセレンスを構築することも大事な取り組みになります。
売り上げ目標を達成するためには、事業が飛躍するセンターピンを見極め、どの程度の期間で、どのくらいの数値目標を達成するかのKPIを明確にすることも必要だと言えます。
そして、数値目標を達成するためには、どのような人材が必要になり、事業の課題をクリアする必要があるかを具体的な行動プランに落とし込み、従業員の士気を高め、効果的に組織をマネジメントする必要があります。
スタートアップが成長する上で足りていない人的なリソースは、正社員の採用だけにこだわらず、オープンイノベーションを取り入れ、外部の優秀なフリーランスをCFOやCXOとして経営陣に登用することで実現できることも沢山あります。
■VCからの資金調達を行う際の注意点
第三者割当増資により新株を発行すると、基本的にファウンダーである起業家の株式持分が確実に下がります。
ファイナンスを行う際に、より多くの資金を調達したいからと言って、51%を超えるまで創業者の持株比率が下がってしまうと、大事な経営の意思決定に社長としての自由が利かなくなります。
そのため、経営者が株主総会の特別決議事項を通すには、2/3以上、普通決議を通すには過半数の議決権割合の持ち株比率を維持する必要があります。
VCは、投資先の企業価値を向上させるために、外部のアドバイザーや相談役として、経営に関する助言や指導を投資先に対して行うことが一般的です。
ですが、VCは投資した資金をスピーディに最大化することを目指しているので、スタートアップのCEOやCOOに対して事業が早く成長するように一定のプレッシャーを掛けることがあります。
ベンチャーキャピタルの社会的な使命としては、ファンドに参加してくれる事業会社が持つ余った資金を、成長性が高い企業に振り向けるミッションを担っていますが、一方で投資行為が営利目的だけのマネーゲーム化する危険性もあり、全てのステークホルダーに対して、企業の本質的な社会貢献を果たせないリスクもあります。
VCは他の投資家から資金を預かっており、全ての投資ファンドには償還期日が設けられています。
そのため、VC自体も投資家から、投資運用に対する結果を厳しく求められるため、投資の実行が成功しているかどうかを重視します。
ビジネスが成功していれば、早期の上場を促すことでキャッシュ化して投資家に配分する、そうでなければM&Aを強く進め、マイナスが見込める投資活動からは、早く撤退する意向を強めます。
従ってVCから投資を受けるスタートアップは、無駄に資金を使うことが無いように、資金使途を厳重に管理されることも当たり前で、確実かつスピーディーに結果を出すことが求められるため、社外取締役だけでなく、常勤で働く取締役の受け入れを強く迫られることもあります。
VCから必要以上にさまざまな経営干渉を受けることで、事業を立ち上げた起業家やボードメンバの取締役が解雇されることもあり、創業者が起業した当初に想定していたビジネスプランやビジョンと実態大きくかけ離れてしまうことも起こり得ます。
■まとめ
VCとは、ベンチャーキャピタルと呼ばれ、スタートアップに出資する投資会社を指します。
主に、VCファンドを通じて株式に出資することにより資金を提供し、出資先が株式公開(IPO)や、M&Aを受けた際に株を売却し大きな利益を上げるビジネスモデルです。
創業間もないスタートアップは、銀行融資など相応の担保が求められる資金調達が非常に困難なため、エクイティファイナンスにより事業の急成長を資金面で手助けしてくれる存在になります。
VC自体も様々な投資家から資金を預かり、未上場のスタートアップに投資し、ビジネスが成長し、投資した企業を上場もしくはM&Aさせることにより、キャピタルゲインを得ます。
そのため、投資した株価と上場した後の株価が上がるかが重要なポイントとなり、株式の売却額との差額が利益の鍵になります。
日本の銀行は融資を基本とし、融資する際にもリスクを嫌いますが、株式で投資を行うVCは成長志向であり、リスクがあっても成長性が高い案件に投資を行います。
有力なVCから出資を受けるためには、沢山の投資先候補企業の中から選ばれ、10社に1社という競争を勝ち抜き、他社よりも競争優位性があり、圧倒的な強みがないと出資を受けられません。
VCから出資を受けることができれば、資金のみではなく投資家の様々な支援を受けることによって大きく成長できる可能性も出てきます。
一方では、増資により株主が増えることは、ビジネスを短期間で大きくする責務を負い、事業の制約が出てきたり、上場準備を行うための多額の管理コストが発生します。
上場後も四半期に1度の決算が必要になるだけでなく、資金使途を厳しく監視され、右肩上がりに事業を伸ばすことを様々な株主から常に求められます。
株式公開をした際に投資家から集めた資金を潤沢に使えるというメリットばかりでないため、慎重に見極める必要があります。
「株式公開は、アウトサイダーからリスクマネーを調達するということです。経営者には、アウトサイダーからの様々な付託に応える責任があります。それが嫌だというのなら、非公開企業にすればいいのです。」
<冨山和彦>
■最後に
スタートアップの起業家にとってVCは、資金調達の方法として魅力的な手法の一つになります。
ですが、持ち株比率が確実に減り、経営に干渉されるというデメリットもあるため、現在と今後の事業展開を踏まえて、VCからの投資を受けるべきかを慎重に判断することが大事になります。
VCからの投資を受けるべきか否かは、基本的には、社長が上場をしたいと考えているか、もしくはビジネスが成長した段階でM&Aをゴールに定めているかが判断材料になります。
現在、日本のVCの属性としては、銀行VC、証券会社VC、メガベンチャー系VC、大手事業会社系VC、商社系VC、大学系VC、政府系VCなどが、主要なプレイヤーとなっています。
大手企業の場合、VCのファンドへの出資するだけでなく、IPOした際の投資リターンの目的以外にも、事業シナジーや事業領域の拡大など、戦略的アライアンスや新興企業のM&Aに狙いがあることもあり、そのような形態をコーポレートベンチャーキャピタル「CVC」と呼ばれます。
基本的にVCは安定株主では無く、キャピタルゲインを得ることを重視し資本参加しているため、短期的な成長の見込める事業であるかが、投資を行う際の判断材料になります。
そのため、経営者がファイナンスの必要性を感じた際には、最終的なゴールを見据えて、資本政策を練り上げることが欠かせません。
悪質なVCに経営に過度に介入され、投資を受ける前までは上手く機能していたビジネスモデルが、成長を急ぎ過ぎるあまり、崩壊してしまう恐れもあります。
ファウンダーと呼ばれる創業者の持株比率が低下するといったデメリットもあるため、こうした特徴を踏まえたうえで、VCから資金を調達することの可否を決めることが必要不可欠です。
スタートアップの若手起業家は、ファイナンスの知見に乏しいことも多く、経営者の人脈だけでは、自社の事業と相性の高いVCと知り合う機会が限られているため、専門家のサポートを受けて、ファイナンスの方向性を事前に検討した上で、決定することも重要だと言えます。
日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」では、VCからのエクイティファイナンスによる増資に精通した顧問やプロ人材が多く、スタートアップの起業家の資金調達の実行支援のみならず、企業の成長フェーズに沿った適切な資金調達のコンサルティングや実行サポートを推進しています。
スタートアップは、どうしても経営資源が乏しく、優秀な取締役の採用を含め、課題の解決に必要な知見やスキルを持つプロ人材採用の限界があります。
経営や業界のノウハウやスキルが不足している場合には、フリーランスのプロ人材による資金調達の実行支援を受けることにより、経験とノウハウが必要になる第三者割当増資によるファイナンスを成功に導くことが可能になります。
KENJINSは、業界トップクラスの5000人を超えるフリーランスの顧問や特定分野のプロ人材が培った知識・経験・人脈・スキル・ノウハウを活かし、顧問契約をベースに外部からCFOをアサインすることで、VCや事業会社からの資金調達を支援しています。
CFOの重要な役割として、投資先のビジネスプランの作成支援だけでなく、事業計画書の策定支援や資本政策のサポートがあります。
例えば、証券会社のOBやVCの出身者というキャリアを持ち、ファイナンスの知見と豊富な実績を持つプロ人材を社外CFOとして抜擢することで、VCからの資金調達を行う際に、以下のようなファイナンスの実行支援を受けることができます。
・事業計画書の作成サポート
・投資家向けピッチ資料の作成支援
・ベンチャーキャピタルの紹介
・安定株主となる事業会社の紹介
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