世の中には、革新的なプロダクトではあったものの、「キャズム」を超えられなかったが故に廃れてしまったサービスやプロダクトは、非常に沢山あります。
スタートアップが新たなにローンンチした、プロダクトを市場や顧客に広めるためには、新規顧客の最初の16%にあたる「アーリーアダプター」を獲得することが重要です。
なぜなら、84%の顧客は、初期段階ではサービスを使おうとせず、特に大手企業を対象にしたBtoBの事業モデルの場合、導入実績の少なさがキャズムを生じさせるからです。
今回、アーリーアダプターとは、初期採用層を獲得しキャズムを超える鍵について解説します。
■アーリーアダプターとは?
アーリーアダプターとは、新たに市場に投入した新商品やサービスを初期段階で購入する人や企業を指します。流行に敏感で、自ら情報収集を行い、良いと思ったら真っ先に購入の判断をする層になります。
アーリーアダプターは、英語で「Early Adopters」と表記され、日本語に翻訳すると「初期採用層」を意味します。
新しい商品やサービスなどを早期に受け入れ、消費者に大きな影響を与えます。
スタートアップが新規事業を興し、市場で商品やサービスを普及させる際に、市場全体の13.5%を構成します。最も重要な顧客層となる「オピニオンリーダー」とも呼ばれます。
アーリーアダプターは、1962年に米・スタンフォード大学の社会学者、エベレット・M・ロジャース教授(Everett M. Rogers)が提唱した、イノベーター理論の二番目に登場する顧客層になります。
イノベーター理論における5つのグループは、新しい商品やサービスの受け入れが早いものから順に、以下の通りになります。
イノベーター(Innovators):革新者
アーリーアダプター(Early Adopters):初期採用層
アーリーマジョリティ(Early Majority):前期追随層
レイトマジョリティ(Late Majority):後期追随層
ラガード(Laggards):遅滞層
■アーリーアダプターの獲得が重要な理由
スタートアップを問わず、あらゆる企業が新たなプロダクトを開発し、市場にローンチした際のマーケティングの施策においては、アーリーアダプターを獲得することがビジネスの試金石になると言えます。
なぜなら、アーリーアダプターは、初期段階で商品やサービスを購入してくれるだけでなく、新たに購入をしたいと考える新規顧客に価値を広め、後から購入してくれる顧客層の獲得を増加させる「呼び水」になるからです。
アーリーアダプターは、英語で「lighthouse customer」 と呼ばることもあります。
ライトハウスカスタマーは、日本語で「灯台顧客」という意味があります。
「灯台顧客」と呼ばれる所以は、新規参入したマーケットの先にある暗い海にまで、未来を切り拓く「希望の光」を当ててくれる貴重な顧客のことを言います。
新しいベネフィットに注目していて、他の消費者への影響力が大きいことから、新しいベネフィットを自らのネットワークを通じて伝えてくれます。
このことから、ロジャース教授はアーリーアダプターを重視し、「普及率16%の論理」として提唱しています。
■ライトハウスカスタマーとは?
ライトハウスカスタマーは、海の灯台のように、スタートアップという船が安全かつ効率的に航行するための道筋を照らすライトのような存在になります。
ユーザーの立場で自社の製品の先を示すようなニーズを認識し、かつ自社の製品分野のことを大変良く理解している顧客です
イノベーター理論の分類の中で、アーリーアダプターは、特定の会社、製品、技術を早期に導入する初期の顧客になります。
イノベーターとアーリーアダプターは合わせても市場全体の16%しかありませんが、この2つの顧客層まで、新規プロダクトが普及するかどうかが、次のアーリーマジョリティ、レイトマジョリティに広がるかどうかの分岐点になります。
アーリーアダプターに気に入って貰えないと、商品やサービスがマーケットに普及せず、売り上げが伸び悩む原因になります。
「灯台顧客」は、「船=スタートアップ」、「操縦者=起業家」が現在の位置を知り、他の船「ライバル」との接触やビジネスの暗礁への乗り上げを避けつつ、起業家のモチベーションを高めながら、最短のルートを航行するための最高の目印となります。
■キャズムを乗り越えるにはアーリーアダプターが必要
ジェフリー・A・ムーアは、ハイテク産業の分析から、アーリーアダプターとアーリーマジョリティとの間には容易に超えられない大きな溝となる、「キャズム」があることを見出しました。
新規事業の立ち上げでは、このキャズムを超えないと小規模のまま市場から消えていく可能性が高いため、「アーリーアダプター」を捉えるマーケティングが必要なことを「キャズム理論」として提唱しています。
スタートアップが、新商品や新たなサービスを市場に普及させるには、「PMF」(プロダクトマーケットフィット)を的確に把握しつつ、市場を隔てるキャズムを超える必要があります。
つまり、新たな市場に新規参入した際には、市場全体の約2.5%を占める「イノベーター」と、約13.5%の「アーリーアダプター」にいかにアプローチし、新規顧客に転換することが「重要成功要因=KSF」になると言えます。
アーリーアダプターは、商品やサービスのメリットや機能面を重視するため、売り出す際の訴求ポイントを鑑み、購買決定要因を効果的に抑えることが、ビジネスを軌道に乗せ、ブレークスルーに繋がります。
イノベーターとアーリーアダプターの数字を合計すると約16%になります。
スタートアップは、最初にビジネスの最大の支援者になる「灯台顧客」を獲得し、次に初期顧客を攻略するための販売戦略を推進することで、初めて市場全体に新たな商品やサービスを展開することが実現すると言えます。
■アーリーアダプターを獲得する方法
新規事業立ち上げを行った際に、アーリーアダプターを獲得することが大事ですが、商品やサービスを普及させるためには、効果的な手法があります。
1、アーリーアダプターのニーズを分析して理解を深める
キャズムを意識してマーケティングを進めることがポイントです。
アーリーアダプターは、プロダクトの初期の導入期に市場の13.5%を占める顧客層です。流行に敏感で常に情報収集をしており、先見の明がある人や会社を指す「ライトハウスカスタマー」とも呼ばれます。
ライトハウスカスタマーとイノベーターとの違いは、社会の価値観のズレにも敏感で、協力的なパートナーに近い存在である点になります。
アーリーアダプターは、サービス導入による利益も冷静に判断するため、メリットがあれば購買決定を行います。初期顧客の獲得には、アーリーアダプターとなる彼らのニーズを分析して理解を深めることが重要になります。
ジョブ理論のフレームワークを活用し、顧客の購入目的(ジョブ)を掘り下げる方法で、顧客の潜在的なニーズを掴みやすくなります。
2、商品のベネフィットを伝える
アーリーアダプターは、導入実績が少ない中で購入決断を下すため、多少のリスクがあったとしても、そのサービスを利用することで得られるベネフィットとなる利益や恩恵を重要視します。
アーリーアダプターは、以下のような点に注目します。
・新たな商品やサービスを買うと、どんな効果があるのか?
・プロダクトを利用する、どんな結果が得られるのか?
・現在、抱えている問題に対して、課題解決に繋がるのか?
・サービスの新規導入でメリットや利益は、発生するのか?
実際にプロダクトを使った際の効果や購入までの体験、結果に対する期待値の高まりや導入後の感情の変化など、使用後の未来をイメージできる「ベネフィット」を伝えることが、アーリーアダプターからの評価を得るために必要になります。
ベネフィットとは、英語で「benefit」になりますが、日本で、「利益」「恩恵」「便益」を意味します。「顧客が商品やサービスから得られる効果や利益」を指します。
3、アンバサダーに紹介を依頼する
アーリーアダプターに会社、商品、サービスを評価して貰い、気に入って貰えると、デジタル領域ではSNSでの情報拡散、アナログでは、人を介在したリファラル紹介にも繋がります。
リファラル紹介とは、商品やサービスに興味関心が高いインフレンサーへの宣伝やアンバサダーに営業支援を依頼する方法です。
特に大手企業との役員クラスとの繋がりがある、アンバサダーは、新規開拓の営業をコネクションを駆使して支援してくれる存在になるため、提案内容が良ければスピーディに購入するかどうかを検討して貰えるアーリーアダプターの獲得にも繋がります。
BtoBのビジネスモデルの場合、新規顧客への影響力が高く、「ライトハウスカスタマー」からの支援を得ることができれば、リファラル紹介によってアーリーアダプターを事業に巻き込むことも可能になります。
有力なアンバサダーの存在は、キャズムを超える「ティピングポイント」になり、市場全体の普及率を高められるでしょう。
■スタートアップにはアーリーアダプターの攻略が鍵
スタートアップは、早期に売上を上げることも必要ですが、同時にプロダクトマーケットフィットを推進することも欠かせません。
初期プロダクトと、市場投入後の市場新党のメカニズムを理解した上で、競争優位性のあるソリューションを開発するためにも、「アーリーアダプター」を獲得し、テストマーケティングをさせて貰うことが非常に重要になります。
スタートアップの場合、「アーリーアダプター」や「ライトカスタマー」の獲得は、新製品の開発と実装における一般的なステップになります。
有力な「ライトハウスカスタマー」となる顧客は、その製品の分野に強い関心と経験を持ち、市場に出回った既存の製品では満足できず、製品開発元へ心強い助言とアイディア出しを行える大変貴重な存在です。
ライトハウスカスタマーとなる人や会社が活躍するのは新しい製品が市場に出るとすぐに購入する「アーリーアダプター」前の段階からとなります。
初期プロダクトへの導入実績として会社名を公開しても良いというアーリーアダプターの存在は、スタートアップの起業家にとって非常に価値があると言えます。
なぜなら、アーリーアダプターは、スタートアップの製品や技術の活用してくれるだけでなく、スタートアップが将来の製品リリース、その配布方法、サービス、サポートの手段を改善するのに役立つ、かなり率直なフィードバックを提供してくれるからです。
アーリ―アダプターによる早期導入は、プロジェクトの初期段階でのテストマーケティングにも効果的で、価値あるフィードバックが得られれば、ビジネスの改善にも繋がります。
■まとめ
スタートアップが新しい商品やサービスを世の中に普及させるためには、「アーリーアダプター」の存在が非常に重要となります。
アーリーアダプター「early adopter」とは、イノベーター理論の用語で、新しいサービスや革新的なプロダクトに対して、比較的早期の段階で導入を貰える「早期導入者」のことを指します。
ライトハウスカスタマー「lighthouse customer」とは、アーリーアダプターと同様の意味を持ちますが、特定の会社の新商品や技術を早期に導入してくれるだけでなく、貴重な意見や新たな価値をもたらすフィードバックをくれる「灯台顧客」のことを指します。
アーリーアダプターに対して、新たに市場にローンチしたサービスを導入して貰うには、他のサービスと比較すると革新的というだけでなく、実用性があるかと早期に導入するベネフィットがあることが最大の鍵となります。
アーリーアダプターは、他の潜在的な新規ユーザーとなるアーリーマジョリティやレイトマジョリティに大きな影響を与える「オピニオンリーダー」としての役割も果たしています。
この層に当てはまる人や会社は、常識的な価値観を持ちながら、早い段階で導入する特別な特典や断れないような提案やメリットがあれば、新しい価値観を受け入れることができます。
スタートアップの業界では、アーリーアダプターに受け入れられるか、否かによって、商品やサービスが売れるか、マーケットで普及するかしないか、ビジネスとして成功を勝ち取ることができるかが、概ね決定すると言われています。
「人間はあたかもダイヤモンドの原石のようなものである。ただの石はいくら磨いても光らないが、ダイヤモンドの原石は磨くことによって光を放つ。しかもそれは、磨き方いかん、カットの仕方いかんで、さまざまに異なる、燦然(さんぜん)とした輝きを放つのである。」
<松下幸之助>
■最後に
新たに商品やサービスを開発し、市場にローンチするスタートアップは、アーリーアダプターに受け入れられるような営業戦略を練り上げることが、ビジネスの限界を突破するブレークスルーに繋がります。
アーリーアダプターには、以下のような特徴があります。
・ビジネスや流行に対して非常に敏感である。
・価値ある情報にアンテナを張っている。
・口コミ力があり、周囲に対する影響力が強い。
・独自性を大事にし、他との違いを求める。
・ビジョナリーとして、先見の明を持つ。
アーリーアダプターを上手く獲得することができれば、アーリーマジョリティを開拓に繋がる大きなステップになります。しかし、両者の間には、ビジネスを推進する上で大きな溝となる「キャズム」があるのも現実です。
スタートアップの起業家は新規事業の立ち上げ時に起きるキャズムを乗り越えるためには、有力なアンバサダーを活用し、キャズムの架け橋を作ることが欠かせません。
アンバサダーとは、商品やサービスの熱狂的なファンのことを指します。日本語では「大使」と直訳されます。
アーリーアダプターを獲得し、新規事業を軌道に乗せ、ビジネスを成功に導くための「KSF」(重要成功要因)になると言えます。
熱意を持ってサービスを紹介してくれるため、コミュニティに属する他の見込客に好影響を与えられます。
BtoBのビジネスモデルでも有力なアンバサダーとなる顧問やプロ人材は、スタートアップや革新的なビジネスモデルに対する関心が高いです。
積極的に宣伝に協力してくれるため、新規開拓の営業活動や大手企業の導入実績を作ることも支援してくれます。
スタートアップの新規事業立ち上げでは、営業活動が肝になりますが、マーケットを創造する最初のプロセスは、最初の顧客となる「ライトハウスカスタマー」や「アーリーアダプター」をいかに探し、ファーストコンタクトを取る「アプローチ」をどのように推進するかが一番難しいと言えます。
この初期顧客の開拓を推進するプロセスを最適化することが、「PMF」(プロダクトマーケットフィット)を実現し、トラクションを獲得しながら、売上を上げる最大の成功要因の一つになると言えます。
ですが、大手企業を対象としたビジネスの場合、キーマンとのアポイントの獲得や、決裁者と商談することが有効だと頭では分かっていてもアプローチのハードルが高いと言えます。
上場会社の取締役に対して、若手の営業マンが代表電話からアプローチしを行い、役員クラスとアポイントを取得し提案活動を行うことは、相当に難しい場合も多いでしょう。
BtoBの場合、新規顧客を増やすための施策としては、インターネット広告に多額の資金を投下する手法よりも、予めリード顧客との人的な繋がりを持ち、キーマンとの関係性の深いパイプを持った顧問からのリファラル紹介を貰うことが、非常に有効な手法となります。
日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」では、5000人を超える顧問や、プロ人材をネットワークしており、大手企業の幹部としてキャリアを持つエグゼグティブな層の人的資産を活かした営業支援を強みにしています。
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