イノベーター理論とは?新規事業のキャズムを乗り越えるコツ

投稿日: 作成者: KENJINS運営会社社長 カテゴリー: 専門家インタビュー   パーマリンク

スタートアップ企業の起業家や新規事業を立ち上げを行う事業責任者にとって、最初の難関とも言えのが、新規顧客をいかにして開拓できるかになります。

特に新しい技術を駆使したプロダクトや今までにない革新的なサービスを開発し提供しているベンチャー企業の場合、CINOを任命し、「イノベーター理論」を理解し事業推進することが必須になると言えます。

そこで今回は、イノベーター理論とは何か、新規事業のキャズムを乗り越えるコツについて解説します。

■イノベーター理論とは?
イノベーター理論とは、新しい製品、サービスの市場への普及率を表したマーケティング理論です。スタンフォード大学のエベレット・M・ロジャーズ教授が、『イノベーション普及学』という著書の中で1962年に提唱しました。

イノベーター理論に基づき、それぞれの購買者層が持つ特性について理解し、市場発展や製品の広まりによって購買者の集団毎をセグメンテーションの1つの形として捉えることが可能になります。

イノベーター理論では、普及の過程を5つの層に分類しており、それを基にマーケティング戦略、市場のライフサイクルについて経営戦略を立て、アプローチ方法を検討することが推奨されています。

【イノベーター理論の5タイプ毎の割合】
1、イノベーター「革新者」:2.5%
2、アーリーアダプター「初期採用層」:13.5%
3、アーリーマジョリティ「前期追随層」:34%
4、レイトマジョリティ「後期追随層」:34%
5、ラガード「遅滞層」:16%

■イノベーター理論を理解する目的
イノベーター理論では集団を、購買の行動や態度によって分類しています。新製品や新技術は、買う人の心理の影響や社会の流れを反映したいくつかの段階を取りながら、市場に受け入れられます。

イノベーター理論のモデルを理解することで、企業のマーケティング担当者が市場に受け入れられるプロセスを予測できるようになります。

イノベーター理論にしたがって、市場発展や製品の広まりに応じて遭遇する購買者の集団の規模や特性に合わせたマーケティング活動を展開し、自社の新製品や新技術の市場拡大が狙えます。

イノベーター理論においては、イノベーターの注目を集めることに成功しても、必ずしも商品が万人受けするとは限らないと言われています。

商品やサービスが広く市場に受け入れられるかどうかは、イノベーターに次いで早く行動するアーリーアダプター(早期採用者)の判断によって左右されるとされています。

■イノベーター理論の5つのタイプ
イノベーター理論の5つの層がそれぞれどのようなタイプなのかについて説明します。

1、イノベーター
まず、最初期に製品、サービスを採用するのがイノベーター(革新者)という層です。イノベーターは情報感度が高く、新しいものを積極的に導入する好奇心を持った層です。

「新しい」ということに価値を感じて、市場にまだ普及していない、コストが高い製品やサービスであっても、そのユーザーの価値観に合致したモノであれば支えてくれます。

【イノベーターの特徴】
・冒険心にあふれ、新しいものを進んで採用する人
・情報感度が高く、新しいものを積極的に導入する好奇心を持った層
・オタク系の新しいもの好き

割合にして市場全体の約2.5%がこのイノベーター(革新者)であると言われています。

2、アーリーアダプター
イノベーターほど急進的ではありませんが、これから普及するかもしれない製品やサービスにいち早く目をつけて、購入するユーザー層のことをアーリーアダプター(初期採用者)と呼びます。

アーリーアダプターは世間や業界のトレンドに敏感で、常にアンテナを高く張って情報を判断し、これから流行りそうなものを採用するので、世間や業界のオピニオンリーダーやインフルエンサーになりやすい層です。

アーリーアダプターはこの後の層に対する影響力も大きく、5つの層の中でもアーリーアダプターの攻略は特に重要だと言われています。

【アーリーアダプターの特徴】
・流行に敏感で、情報収集を自ら行い、判断する人
・世間や業界のトレンドに敏感で、常にアンテナを張り情報を収集し、判断する層
・単に「新しいもの好き」ではなく、商品やサービスの価値、具体的メリットまで考える

割合にして市場全体の約13.5%がアーリーアダプターだと言われています。

3、アーリーマジョリティー
情報感度は比較的高いものの、新しい製品やサービスの採用に慎重なのが、アーリーマジョリティー(前期追随者)という層になります。

アーリーマジョリティーはアーリーアダプターの意見に大きく影響を受けます。

アーリーマジョリティーを開拓するためには、アーリーアダプターをきちんと攻略することと、製品やサービスを導入する合理性をきちんと説明できなければなりません。

【アーリーマジョリティーの特徴】
・新しいものを採用することに比較的慎重な層
・「流行に乗り遅れたくない」という気持ちがあるため、平均より早く新しいものを取り入れる
・ブリッジピープルとも呼ばれる

市場全体の34%程度を占めていると言われています。

4、レイトマジョリティ
新しい製品やサービスについては消極的で、なかなか導入しないのがレイトマジョリティ(後期追随者)です。アーリーマジョリティーと同様に市場の34%程度を占めていると言われています。

この層は、多くのユーザーがこの商品やサービスを採用している、導入側が多数派だと確証を得てから採用するユーザー層です。この層を攻略するためには、まず普及率を高めなければなりません。

【レイトマジョリティの特徴】
・新しい商品やサービスに対して懐疑的な層
・周りの動向を伺い、導入側が多数だと判断したとき採用する
・フォロワーズとも呼ばれる

市場の34%程度を占めていると言われています。

5、ラガード
最後に紹介するのがラガードという層になります。

ラガードは市場の中でも最も保守的な層で、その製品やサービスがただ普及するだけではなく、伝統的、文化的なレベルまでその商品を採用することが一般的にならないと採用しない層です。

ラガードを攻略するためには、すでにその製品、サービスが世間の定番になっていることを訴求し、その次のトレンドとなりそうな新商品よりも安心できることを訴求する必要があります。

【ラガードの特徴】
・最も保守的な層
・新しいものに全く関心がなく、商品やサービスが伝統的・文化的となるまで採用しない
・伝統主義者とも訳される

市場全体の約16%を占めると言われています。

■スタートアップはアーリーアダプターを押さえるべき理由
米国のマーケティングコンサルタントのジェフリー・A・ムーアによれば、新規プロダクトをローンチし販売するためには、アーリーアダプター(オピニオンリーダー)を確保することが商品普及のカギになると、提言しています。

イノベーター理論の度数分布曲線から、初期市場(イノベーターとアーリー・アダプター)とメインストリーム市場(アーリー・マジョリティ・レイト・マジョリティ)の間には「キャズム」と呼ばれる大きな溝があります。

このキャズムを超えなければ、商品・サービスの普及はしないとされています。

キャズムができる原因としては、誰もが使用していない先進性が高いモノを好むアーリー・アダプターに対して、次の市場であるアーリー・マジョリティは、多くの人が使用しているリスクの低く安心できるモノを好むというギャップがあるからです。

このキャズム問題を解決するには、アーリー・アダプターはもちろんアーリー・マジョリティの層にもまとめて採用されるような商品やサービスを作り、戦略的に訴求していく必要があります。

■キャズム理論とは?
キャズム理論とは、新製品が世に出た場合、その製品が市場を獲得するために超えなければならない一線のことを指します。

ロジャース氏の「普及率16%の論理」に対して、マーケティングコンサルタントのジェフリー・A・ムーア氏は、アーリーアダプターへもマーケティングだけでなく、アーリーマジョリティーへのマーケティングが重要だとする「キャズム理論」を提唱しました。

イノベーターとアーリーアダプターを初期市場、アーリーマジョリティーから、ラガードをメインストリーム市場とし、初期市場とメインストリーム市場の間には「キャズム」と呼ばれる深い溝があり、その溝を超えることが市場に浸透させる鍵であるとしました。

主に、製品の技術進化の激しい「ハイテク業界」で頻繁に取り上げられる理論であり、新規事業の立ち上げを成功させるポイントの1つと考えられています。

以上の観点から、市場の「セグメンテーション」、「ターゲティング」、「ポジショニング」というマーケティングの基礎が重要ということが分ります。

■普及の分岐点「普及率16%の論理」
『イノベーション普及学』の中でエベレット・M・ロジャース氏は、“市場の16%にあたるイノベーターとアーリーアダプターを攻略することがその商品・サービスが普及するかの分岐点となる”と述べ、「普及率16%の論理」を提唱しました。

16%の新規顧客の中でも、重要な役割を果たすのが、アーリーアダプターです。

イノベーターは、商品の「新しさ」を重視する少数派です。オピニオンリーダーでもあるアーリーアダプターは、イノベーターより数が多い上、商品のベネフィットに注目し、他の新規顧客へもその魅力を伝えてくれます。

そのため、イノベーター理論では、アーリーアダプターまで新商品や新サービスを普及できるかどうかがビジネスの成功の分岐点になると考えます。

■まとめ
イノベーター理論は、新技術や新製品のマーケティング戦略の方向性を判断する上で、非常に役に立ちます。

新製品の投入時のマーケティング活動は、イノベーター理論のイノベーターにターゲティングして市場創出を狙います。続いて、アーリーアダプターをターゲットとして市場の拡大を狙います。

このように、新製品の投入の過程では、イノベーター理論の5つの集団を順番にターゲティングしていきます。

イノベーター理論をマーケティング戦略に活用するためには、到達したイノベーター理論の集団にあたる顧客を、次の段階に進むための先行事例として活用します。

プロダクトを普及させる上では、先行事例になりたがるイノベーター理論のアーリーアダプターの導入成功事例を作り、アーリーマジョリティの説得材料として活用して、アーリーマジョリティの市場を攻略することが欠かせないと言えるのです。

スタートアップの世界では、新株を発行し資金調達を行うことが多いため、トラクションを獲得することが非常に重要な意味を持ちます。

トラクションとは、「牽引力」という意味だけでなく、「事業成長の可能性を示す初期の実績」という意味でよく使われます。

スタートアップ企業は、導入実績が少ない段階で投資家にビジネスモデルを説明する機会が多いです。その際、賢明な投資家は、成長の兆しを導入実績で判断するため、「可能性を示す初期指標」を提示することが欠かせない要素になると言えます。

米国では、ベンチャーキャピタルへの事業説明資料「ピッチ」に、トラクションが盛り込まれることは一般的であり、事業計画書のテンプレートの必須項目といっても良いでしょう。

「組織が生き残り成功するには、自らがチェンジ・エージェントすなわち変革機関とならなければならない。変化をマネジメントする最善の方法は、自ら変化をつくり出すことである。」

「チェンジ・エージェント足るための要点は、組織全体の姿勢を変えることである。全員が、変化を脅威でなくチャンスとして捉えることである。」

<ピーター・ドラッカー>

■最後に
スタートアップ企業が新たなプロダクトやサービスの営業活動を行う場合、業界の大手企業や上場会社に対しての導入実績があると安心と信頼の獲得に繋がります。

なぜなら、イノベーションを起こす際には、革新的であることが必須要件になりますが、大手企業の多くは、導入実績が少ない状況の中でリスクを冒し、「アーリーマジョリティ」になるのを避ける傾向があるからです。

そのような際に見込客に対して一番訴えやすく、信頼を勝ち取る材料の一つに成り得るのが、新たに開発した製品やサービスが大手企業へ導入されたという実績であり、これこそが「信頼の証」になるからです。

大手の○○社でも導入し、活用しているという実績があると「それなら安心できる、うちでも導入してみよう」という流れを汲みやすくなります。

そのため、以下の情報は必須であり、いかに訴求できるかが勝負となります。

・導入前に、どのような課題(あるいは目標)があったか?
・なぜその製品/サービス(あるいはその企業)を選択したのか?
・どのように課題解決・目標の実現ができたか?
・導入決定から稼働まで、どのようなプロセスや苦労があったか?
・どのような導入効果があったか?(できれば数字があるとよい)

■大手企業を新規開拓し、導入実績を増やしたい企業様へ
中小企業の経営者やベンチャー企業の起業家が、ターゲットを大手企業に定めた場合、購入の決裁権を持つキーマンへのアプローチの難易度が一気に上がります。

その理由としては、以下になります。

・若手の社員では、上場企業の幹部クラスと太いパイプを築くことが難しいこと。
・中小企業やベンチャー企業の場合、会社としての社会的信用力が乏しいこと。
・大手企業の役員クラスとのアポイントを獲得できる人物が社内にいないこと。

また、大手企業の役員クラスは、常に多忙なことも多く、様々なプロジェクトで忙しいキーマンは、無駄な話しを聞くのは面倒だと思っています。

基本的に上場企業の社長、取締役や幹部クラスであれば、代表電話に荷電してもコールドコールで電話に出ることはまず無く、面識のない初対面の相手と時間を割いて会ってくれることもしません。

そのため、決定権を持つキーマンと面談をする場合、事前に適切な準備をすることと、効果的なアプローチを推進するための「強い接点」を如何にして作り出すことができるかが最大の鍵になると言えます。

日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」では、このようなリード獲得の課題を解決するために、豊富な人脈を持つ顧問のコネクションを活かし、決裁権限のあるキーマンとの商談設定を行うことを目的に、トップダウン営業の実行支援を行っています。

ちなみに紹介営業には、紹介企業の規模やキーマンに以下のような違いがあります。

トップダウン営業>リファラル営業

・トップダウン営業:大手企業の役員クラスや大手企業の決裁権限者
・リファラル営業:中小企業の社長や中小企業・ベンチャーの担当者

大手企業の役員クラスや決裁権限のあるキーマンとのアポイントの獲得する場合、営業代行会社ではアポイント獲得がゴールになります。

KENJINSの営業顧問ならば、リード獲得ができるだけでなく、初回商談時の同行営業を必須で行っており、プロダクト導入に必要なトスアップも可能なため、商談時の成約率の高さが圧倒的です。

つまり、対象企業のキーマンとの関係性が全くない状態で代表電話にコールドコールで、興味の薄いアポイントを獲得するだけの営業代行会社とは、付加価値となるトラクションを獲得する次元が異なり、「投資対効果」が比較にならないと言えます。

見込客との面識が無い、営業代行会社にアポイント獲得を依頼するより、特定の会社の役員クラスとの太いパイプを持ち、リード顧客との関係性が深い「営業顧問」からの紹介による「トップダウン営業」の方が、費用対効果がダントツに高いのは間違いありません。

【無料お試し】が可能ですので、まずは会社アカウントを登録し、是非、顧問から共感を得られるプロジェクトで支援者を公募することができます。

また、顧問からの共感を持って貰えるような情熱を込めたスカウトメールを個別に送信することもできます。

【人数無制限】複数の顧問が成果報酬型でトップダウン営業を支援
https://kenjins.jp/lp/saleslep/

本田季伸のプロフィール

Avatar photo 連続起業家/著者/人脈コネクター/「顧問のチカラ」アンバサダー/プライドワークス株式会社 代表取締役社長。 2013年に日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」を開設。プラットフォームを武器に顧問紹介業界で横行している顧問料のピンハネの撲滅を推進。「顧問報酬100%」「顧問料の中間マージン無し」をスローガンに、顧問紹介業界に創造的破壊を起こし、「人数無制限型」や「成果報酬型」で、「プロ顧問」紹介サービスを提供。特に「営業顧問」の太い人脈を借りた大手企業の役員クラスとの「トップダウン営業」に定評がある。

経営者・採用担当者の皆様へ 日本最大級の顧問契約マッチングサイトのKENJINSでは、年収700万年収1500万クラスのハイクラス人材を、正社員採用よりも低価格で活用可能です。顧問のチカラで圧倒的な成果をコミットします。

この記事にコメントする


この記事の関連記事

創業社長の仕事とは?創業社長に欠かせない起業家としての役割

サラリーマン人生にピリウドを打ち、起業家として会社をゼロから創業した場合、創業時は社長1人でスタートする人が多いです。 ビジネスモデルの構築や商品やサービスを通じて価値提供する仕組みを作り上げることが、最初のステージになります。 競争優位性のプロダクトが出来上がった後は、法人...[続きを読む]

集客とは?顧客を創造する仕組み作りの重要性と集客の意味

あらゆる企業にとって、最も重要となるKSFを一つだけ挙げるとすれば、ビジネスが成長する原動力となる「集客」の施策に取り組み、自社の商品やサービスを繰り返し購入して貰える顧客を増やすことです。 その理由としては、企業が売り上げを増やすためには、まず「顧客を創造」することが大事です...[続きを読む]

シックスシグマとは?経営管理手法のリーンシックスシグマとは?

シックスシグマは、生産品質の改善や組織変革の方法論になります。 最大の特徴として財務的効果を出しながら人材を育成できることにあります。また、導入目的や対象に合わせて、適合する導入方法を選ぶことができます。今回は、シックスシグマやリーンシックスシグマについて解説します。 ■シック...[続きを読む]

人脈紹介型アフィリエイトとは?顧問の紹介営業がROIが良い訳

アフィリエイトは、商品が売れたときにだけ広告費が発生する仕組みのために、低リスクで費用対効果が高いとされています。 BtoC企業で「会社の売上を増やしたい」と考えるのであれば、ぜひ導入を検討して欲しい集客方法の1つです。 ですが、BtoBを対象にした商品やサービスを提供して...[続きを読む]

パラレルワーカーとは?パラレルワーカーの意味・必要なスキル

新型コロナウイルスの流行や終身雇用制度の終焉など、様々な社会的背景から、転職や独立を含め新たな働き方を模索する人が増える中、「パラレルワーカー」と呼ばれるプロ人材が世代を問わず注目されています。 政府による「働き方改革」の推進を受けて、大手企業でも副業を解禁する企業が多くなり、...[続きを読む]