現在、市場においてライバルが存在しないケースは少なく、商品スペックや機能で差別化を図るのが難しい時代になっています。
その理由としては、自社特有の機能を持った製品やサービスを市場に投入したとしても、自社が頑張れば競合企業も同様に商品開発に注力するため、競合他社がすぐに同じ機能を搭載した同じような類似商品をリリースして来るからです。
ライバルに顧客や市場シェアを奪われないためには、ユーザーの課題やニーズを把握した上で、独自の「顧客価値」を提供することが不可欠になります。
そこで今回、顧客価値とは何か、企業には顧客価値を高める企業努力が必要な訳について解説します。
■顧客価値とは?
顧客価値とは、製品やサービスの利用体験やそこから派生する体験を通じて顧客が得る、顧客にとっての良い作用、顧客にとって意義のあることの総称を指します。
顧客価値は、英語で「customer value」(カスタマーバリュー)と表記されます。日本語では、特定の商品やサービスを購入する際に、顧客がお金を払っても良いと判断する価値を意味します。
カスタマーバリューは、「ロバート・ラウターボーン」が提唱した「4C」のひとつに挙げられています。
・製品やサービスに対して顧客が適正と認める価値
・製品やサービスを利用することで顧客が実際に得られる価値
「顧客価値」を作り出す際に押さえておくべき点は、価値を認める主体は企業サイドではなく、あくまで顧客にあることです。
■顧客価値が必要になった背景
企業サイドが設定している価格レンジが顧客価値より高ければ、顧客の購入動機を阻害し、新規顧客から買われる確率が著しく低くなります。
仮に顧客が商品やサービスを一度、購入したとしても、リピートに繋がらずスイッチングされる可能性が高まります。
反対に設定価格が顧客価値よりも低い場合、企業としては本来得られたはずの利益を得ることができず、機会損失に繋がる可能性があります。
ライバル企業が増え、マーケットの中で類似商品が市場に数多く提供されている現代では、売上拡大やリピート率を高めるため、「顧客価値」の向上を重視したマーケティング戦略が欠かせません。
顧客価値を高めるためには、ブランドイメージ向上や顧客との関係強化など、顧客満足度の向上に向けた取り組みが必要になると言えます。
■顧客価値の4つの種類
カール・アルブレヒトによれば、顧客価値の考え方は、以下の4種類に分類されます。
1、基本価値
基本価値とは、その名の通りモノやサービスの基本的な価値であり、お客様からすれば提供されて当然のものを指しています。
基本価値の質が一定水準以上をクリアしないと、リピートは見込めません。
基本価値は、商品にとって不可欠な価値を指します。例えば、車を販売している場合はエンジンをかけたら動き、ブレーキを踏めば止まるといった基本的な機能が該当します。
基本価値が一定の水準を満たさない場合、クレームや取引中止に発展しますので、注意してください。
2、期待価値
期待価値とは顧客側がわざわざ要求しなくても、備わっていて当然と考えている価値です。
期待価値は、顧客が期待している価値を意味します。
例えば、特定の商品を購入する前に商品の特徴や注意点に関する説明を受けると、顧客は安心して購入可否を判断できます。しかし、その価値が提供されない場合、苦情をいうほどではないにしても、顧客が不満を抱くもの捉える必要があります。
説明がわかりづらい場合や強引な勧誘を迫られたと顧客が感じた場合、商品をよほど気に入らない限りリピートは見込めません。
3、願望価値
願望価値とは、絶対に必要なものではないものの、顧客にとっては「あるとうれしい」価値を指します。願望価値を継続して顧客に提供できると、新規顧客獲得やリピート率向上へつなげやすくなります。
願望価値は価値が提供されなくても仕方がないと顧客が諦められる一方、提供できれば顧客から高い評価を得られる価値です。
願望価値を提供できなくても、クレームや低評価にはつながりません。ただし、他社と差別化を図れるチャンスであり、願望価値を提供できればリピート率や購入単価の改善が見込めます。
提供できなくても顧客の不満には結び付きませんが、願望価値が把握できれば商品開発のヒントとして使えます。
4、予想外価値
予想外価値とは、顧客の期待や予想を上回ったときに生まれる価値のことです。提供されれば、顧客満足のレベルを超えて、感動につながります。
予想外価値は、顧客の期待や要望を遥かに上回る価値を指し、顧客に感動を与えられる価値です。予想外価値を提供できると、顧客から良い口コミが寄せられ、新規顧客獲得やリピート率改善につなげられます。
ただし、予想外価値は長続きしません。一度顧客に価値を提供すると、顧客からの要求レベルが高まるため、願望価値に格下げとなるからです。
予想外価値は持続性に乏しく、相手に強烈なインパクトを与えることが求められるため、提供できるシーンは限定されます。
■顧客価値を分析する必要性
「商品やサービスに自信はあるが売り上げが伸びない」という場合は、顧客価値に対する意識が薄い可能性があります。
その場合、顧客価値を分析した上で、製品やサービスの価値を上げるか、コストを出来るだけ低くするかで「顧客価値」を大きくすることが出来ます。
顧客価値分析とは、顧客の立場になって、製品やサービスの改善をしていくことを指します。
時代と共に顧客価値や顧客ニーズも変化していきます。業界トップの売上を誇るプロダクトでも、顧客価値分析を怠ると時代に乗り遅れて、製品やサービスが売れなくなってしまいます。
利益がない会社は潰れてしまいます。そのため、最終的な目的は企業の利益にあります。
企業の利益を得るためには、顧客の立場になって価値を考え、製品やサービスを提案し、コストを出来るだけ抑えつつ、高品質なサービスに育て上げる企業努力が必要だと言えます。
■顧客価値の計算方法
顧客価値を式にすると、以下のような形になります。
顧客価値 =(顧客が製品・サービスを通して受け取る価値)-(顧客が支払うコスト)× 全プロダクト
顧客は企業の個別の商品やプロダクト自体に加えて、様々な要素についても企業から受け取っています。
例えば、スターバックスでは、店舗の快適さとコーヒーの質、スタッフの応対などが、「顧客が企業から受け取る価値」です。
この価値に対して、顧客は「コスト」を支払っています。
「顧客が企業から受け取る価値」から「顧客が支払うコスト」を差し引くと、「純粋に生み出された顧客価値」として導き出されます。
商品やサービス受け取る価値からコストを差し引いたものが最終的に得られる顧客価値です。
プロダクト単位の顧客価値の総和が「企業全体が生み出した顧客価値」となります。顧客価値は、支払うコストが上がるほど求めるものも高くなります。
企業によっては複数のプロダクトを展開していて、それらが掛け合わさって1つの価値を生んでいるケースもあります。
そういった場合は、顧客の最終的な価値を判断するために、プロダクトを横断で顧客価値を測ると良いでしょう。
■まとめ
「顧客価値」とは、「この会社、この商品、このサービスには、これだけの金額を払ってもよい」と顧客が認めた価値です。
「顧客価値」に重点を置いて、製品やサービスを開発していくことは「顧客満足」に繋がります。
生産側に立つと自社の利益のことばかり考えてしまう傾向があります。
顧客価値は、顧客が商品やサービスを購入した際や初めて体験した際に初めて顧客の中に生まれるものであって、提供する企業がこれが価値であるとは言い切れません。
会社はもちろん利益がないと会社は成り立ちません。しかし、ビジネス的に利益のことばかり考えると顧客はどんどん離れていきます。
そうならないためには、「顧客価値」に重きを置いたブランド作りが必要になると言えます。
自社の顧客価値を踏まえた顧客コミュニケーションを徹底できれば、機能や価格勝負から抜け出すこともできるでしょう。
なぜなら、商品の機能やサービスの質だけではなく、ブランドイメージや従業員の対応などによっても顧客価値は変わって来るからです。
顧客価値を高めるためには、マーケットの中から指名買いされるブランドを構築し、商品の購入前からアフターフォローまでの総合的な「カスタマージャーニー」を作り上げることが求められるのです。
「事業の目的は顧客を変えることではないという、マーケティングの基本を受け入れなければならない。事業の目的は顧客を満足させることである。」
<ピーター・ドラッカー>
■最後に
顧客価値を高める上では、「競合との識別」できるブランドを作ることで、ライバルとの価格競争から抜け出し、競争優位性の高い商品やサービスを提供するための独自のカスタマーバリューを作り出すことも可能になります。
ブランドは、価格を超える価値の証明とも言えるため、顧客が商品やサービスを購入した際に商品が期待した機能を果たさない、商品の提供する価値が支払った価格に見合わないなどのリスクを回避することができます。
信頼の高いブランドがあれば、品質の高さにより指名買いが起きるため、新規顧客が類似する商品・サービスに関して、インターネットで調べたり、比較検討したりする手間を減らすことができます。
ユーザーはブランドからの大きく2種類の顧客価値を獲得します。
・機能的価値(製品そのものが提供する価値)
・情緒的価値(製品を使うことで得られる心理的価値)
ブランドの価値を考えるにあたっては、ブランディングに精通したCBOや品質向上のプロフェッショナルであるCQOを登用することで、機能だけでなく心で感じる顧客価値をどのように提示できるかが、企業にとっては大きなポイントである言えます。
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