グローバル間の競争が増した昨今、日本企業が海外企業に負けないレベルの競争優位性を高めるためには、デザイン経営を推進する必要があると言われています。
経済産業省・特許庁では、デザイン経営が成り立つ条件として、経営チームに「CDO」「最高デザイン責任者」がいることが必要になると示唆しています。
そのため、今後、イノベーションを創出する革新的な企業には、「CDO」というCXOの役職を置くことが、当たり前になる未来が予測されています。
そこで今回は、CDOとは、CDOの意味・最高デザイン責任者の仕事内容と役割について解説します。
■CDOとは?
CDOとは、英語で「Chief Design Officer」の略になります。日本語では、「最高デザイン責任者」を意味します。
CDOは、経営陣の1人として、デザインを武器にブランディグとイノベーションを推進する目的で任命されるCXOとしての責務を担うポジションになります。
トップマネジメントとして、CEOのビジョンを元に経営戦略とクリエイティブの両輪の視点から商品やサービスを創造することで成果を上げ、企業価値向上を目指すことをミッションとする役職がCDOだと言えます。
デザイン経営を行うべく、CBOやCINOと連携を図り、競争優位性の高い新商品の開発や新規事業の立ち上げ時に、ブランディングに繋がる効果的な訴求を実現するための役割を担う、ジョブ・ディスクリプションになります。
■CDOのジョブ・ディスクリプション
CDOの主なジョブ・ディスクリプションとしては、以下になります。
・製品、サービス、ビジネスモデルを顧客起点で見極めイノベーションを起こすこと。
・ブランド形成に繋がるかを判断し、ブランド構築に繋がるデザインを構想すること。
スタートアップの場合、最高デザイン責任者である「CDO」には、自ら手を動かしアウトプットを求められることもあります。
ですが、CDOの基本的には仕事としては、経営戦略に基づくデザインの総合プロデューサーとしての立ち位置になります。
デザインを核にブランディングに繋がるCIを構築したり、プロダクトやサービスの新規開発や改善をする役割を担います。
CDO自身の持つデザインのセンスと経営の知識、経験、スキルをベースに、フリーランスのWEBデザイナーやプロダクトデザイナーなど、組織外の優秀なクリエイターのリソースも積極的に活用します。
■デザイン経営とは?
デザイン経営とは、デザインを企業価値向上のための重要な経営資源として活⽤する経営手法を指します。
デザイン経営は、デザインを重要な経営資源として活⽤し、ブランド力とイノベーション力を向上させる経営の姿になります。
「デザイン経営」と呼ぶための必要条件は、以下の2点であると言われています。
1.経営チームにCDO「最高デザイン責任者」のポジションがあること。
2.CDOを中心に、事業戦略構築の最上流からデザインを重視すること。
現在、規模の⼤⼩を問わず、世界の有力企業が経営戦略の中⼼に据えているのが「デザイン」による差別化になります。
競合が増えた今、例えば、店頭やインターネットを問わず、自社が開発した商品を選んで貰うためには、機能や品質などに加えてデザインをコア・コンピタンスに他社商品との差別化優位性をアピールすることが重要なキーファクターになります。
その効果的な方法のひとつになる要素が、商品のパッケージデザインを工夫したり、商品自体の独自性を打ち出すデザインによる差別化になります。
例えば、地方の特産品などでもパッケージデザインに力を入れることで、競合他社との差別化ができ、商品をより際立たせることもできます。
■デザイン思考とは?
「デザイン思考」とは、デザイナーやクリエイターが業務で使う思考プロセスを活用することで、前例のない課題や未知の問題に対して最適な解決を図るための思考法になります。
デザイン思考を英語では、「Design Thinking」と表記します。
デザイン思考には、以下の特徴があります。
・問題解決に向けて最も重きを置くこと。
・ユーザーの「共感」、「満足」が重要である。
・問題の定義付けと解決意図を明確にすること。
・アイデアの創出と組み合わせすること。
・試行錯誤を繰り返しブラッシュアップすること。
・バイアスや固定観念を取り去り、前例にも捉われないこと。
デザインによる伝達手段が優れていても、商品・サービス自体が顧客のニーズと合致させることと、ユーザーの利便性やメリット、使い易さを追求しないなぎり、長期的に売上を伸ばすことは難しいと言えるからです。
それを実現するために現在、CDOにはサービスとユーザーを繋ぐUIを快適にするための設計「UIデザイン」が求められているのです。
■顧客起点のデザインとUIが重要な理由
インターネットが普及した今、CDOに求められる大事な仕事としては、顧客起点のデザインで重要するために、アナログの視点で商品やサービスのデザインを考案するだけでなく、デジタルを駆使し「UI」(ユーザーインターフェース)を最適化することが必要不可欠になりました。
UIとは、インターネットを駆使し、ユーザー(利用者)と製品やサービスとのインターフェース(接点)すべてのことを意味します。
インターネットが浸透した現代社会では、DXを推進しいかにユーザーのことを考えられているかが求められます。
差別化を図るためにもユーザーに寄り添ったWEBデザインを実現することがビジネスを成長させるための原動力になります。
ネットを駆使した事業を展開する会社の場合、使い勝手が良い「UX」体験が得られる、プロダクトの開発やサービスの設計、Webサイトのデザインを考え抜くことは、事業のスケールアウトの必須要件になります。
以下のようにユーザーのことを考えた「顧客起点」の発想が欠かせない言えるでしょう。
・製品がシンプルで使いやすい。
・サービスの使い心地が煩わしくない。
・WEBサイトの構成が分かりやすい。
CDOを中心に、独自性と便益を併せ持った「プロダクトのアイデア」「サービスのアイデア」を生み出すことが、顧客起点のデザインの肝になる部分だと言えます。
■CDO「最高デザイン責任者」の7つの役割
デザイン経営では、CXOの1人であるCDO「最高デザイン責任者」が、トップマネジメントとして企業全体の経営のデザインプロセスに関わります。
1、デザイン最高責任者「CDO」の経営チームへの参画
デザインを企業戦略の中核に関連付け、デザインについて経営メンバーと密なコミュケーションを取ります。
「CDO」は、「ユーザー起点でデザイン思考を活用し、UX「ユーザーエクスペリエンス」を設計し、要求としてまとめあげる「デザイン最高責任者」に位置付けられます。
2、事業戦略・製品・サービス開発の最上流からデザインが参画
現在、ユーザーニーズを基に解くべき課題を見出し、解決策を創り出す能力が、企業の勝敗を分ける時代になっています。
デザイン最高責任者がデザイナーの統括責任者として、最上流から商品開発のプロジェクトやサービス計画段階で参加します。
3、「デザイン経営」の推進組織の設置
デザイン経営の最大の特徴は、「人間中心設計」であることになります。
人間中心設計とは、商品やサービスを使用する当事者の気持ちに寄り添いながら、課題や悩みを理解しようとする考え方のこと。
これらを実現すべく、組織図の重要な位置に「デザイン部⾨」を位置付け、デザイン最高責任者を中心に社内横断でデザインを実施します。
4、デザイン⼿法による顧客の潜在ニーズの発⾒
単に表面化した問題を解くのではなく、ユーザーの立場から本質的な課題を見出し、根本的な解決策を探っていくことを重要視してします。
観察⼿法の導⼊により、顧客の潜在ニーズ「ユーザーインサイト」を発⾒します。ユーザーインサイトとは、「ユーザーの内側に隠れている本音」になります。
なんとなく気分で行動を起こすとき、その人の裏側には自分でも気づかない本音が隠れていることがあります。この本音や本質的な欲求を、ユーザーインサイトと呼びます。
5、アジャイル開発プロセスの実施
「Chief Design Officer」は、デザイン部門のリーダーとして、商品やサービスを開発する際に、マーケットの観察、ユーザーニーズの仮説構築、試作品の開発、再仮説構築の反復により、「プロダクトマーケットフィット」を目指し、質とスピードの両取りを行います。
アジャイル開発とは、ソフトウェア開発におけるプロジェクト開発手法のひとつなります。
事業開発においても大きな単位でプロジェクトを区切ることなく、小単位で実装とテストを繰り返して開発を進めて行く手法になります。従来の開発手法に比べて開発期間が短縮されるため、アジャイル(素早い)と呼ばれています。
6、採⽤および⼈材の育成
デザイン最高責任者は、さまざまな立場の人や異なる経験を持つ人たちとの対話でインスピレーションを得て、新しいアイデアや価値を共に生み出すことを大切にすることが求められます。
そのため、デザイン⼈材の採⽤を強化し、ビジネス⼈材やテクノロジー⼈材に対するデザイン⼿法の教育を⾏うことで、社内のデザインマインドを向上させことも大事なミッションになります。
7、デザインの結果指標・UXの設計を⼯夫
CDOは、指標作成の難しいデザインについても、「UX」を鑑み、観察可能で⻑期的な企業価値を向上させるための指標策定を試みます。
UX「ユーザーエクスペリエンス」とは、「顧客体験価値」を指し、製品・サービスとのやりとりでユーザーの中で生じる主観(感覚・感情・反応など)のことです。
デザイン経営では、ユーザーにとっての理想的な体験のために、製品・サービスを企画・提供することが最重要テーマになります。
ユーザーエクスペリエンスには、エンドユーザーと、企業、サービス、製品とのやりとりのあらゆる側面が含まれます。
■デザインへの投資効果
欧米企業では、デザインへの投資を⾏う企業パフォーマンスについての研究が⾏われています。それらによれば、デザインへの投資を⾏う企業が、⾼いパフォーマンスを発揮していることを示されています。
例えば、「British Design Council」は、デザインに投資すると、その4倍の利益を得られると発表しています。
また、「Design Value Index」はS&P500全体と⽐較して過去10年間で2.1倍成⻑したことを明らかにしました。
その他の調査を⾒ても、「デザイン経営」を⾏う会社は⾼い競争⼒を保っていることが分かります。
これがデザインを取り巻く世界の常識となっています。
⼀⽅、⽇本の経営者がデザインに積極的に取り組んでいるとは⾔い難く、⽇本では経営者がデザインを有効な経営⼿段と認識しておらず、グローバル競争環境での弱みになっています。
■CDOを登用しUXデザインを実践するメリット
UXデザインとは、「ユーザーにとって理想的な体験をして貰えるように、製品・サービスを企画・提供すること」を指しています。
1、アイデア提案の習慣化
ユーザーがうれしいと感じる体験となるように、製品やサービスを企画の段階から理想のユーザー体験(UX)を目標にしてデザインしていく取組みとその方法論をUXデザインと呼びます。
「デザイン思考」では、リーンマネージメントの取り組みと同様に、“とりあえず”アイデアを提案してみる。“とりあえず”プロトタイプを開発してみるというスタンスが奨励されています。
リーンマネージメントは、失敗したらどうしようという意識を持たなくても良いので、新規事業の立ち上げや事業開発の提案が習慣化しやすくなります。
2、イノベーションの創出
イノベーションの創出も「デザイン思考」のメリットになります。「デザイン思考」は、従来のような市場中心型のアプローチではありません。
UXデザインの流れは、「ユーザー中心設計」や「人間中心設計」と呼ばれる、ユーザーを巻き込んだデザイン活動にあります。
デザイン経営のコアもユーザー中心設計の考え方になります。CDOを中心にユーザーのニーズと向き合い、課題の本質に迫って行くため、全く新しいアイデアが生まれやすい環境作りにも繋がります。
3、多様なビジネスデザイン意見の受容
UXデザイン、ユーザーにとって理想的な体験をして貰うためのデザインプロセスには、現状のUXの理解やデザイン案の評価が必要になりました、
ビジネスの成功には、ユーザーの参加やユーザー視点の評価が不可欠です。デザイン思考プロセスの最初のステージでは、共感する姿勢で顧客が解決したい課題や問題と向き合います。
「デザイン思考」では、複数のデザイナーの意見だけでなく、経営陣やユーザーを含めて多様な意見を受容することが要求されます。
それぞれの意見に向き合い、合意形成を図っていくなかで、画期的な視点や発見を得られるからです。CDOが居ることで多様性が重視されるマーケット環境において、こうしたスタンスが会社全体に広がっていくのは好ましいと言えます。
4、UXデザインを推進する必要性
デザイン経営とは、ユーザーにとって理想的な体験をしてもらえるように、製品・サービスを企画・提供することです。
不確実性に立ち向かうため、職種や役割の枠を越えて他者と協力し、いち早く試し、ユーザーにより多くの価値を提供するための思考と実践が必要となっています。
最高デザイン責任者であるCDOが担う役割の中には、製品・サービスを具体化する前に、現状のUXを把握し理解するという調査の活動が不可欠になります。
そのため、デザイン案・プロトタイプ作成後にはユーザーからフィードバックを貰うという評価の活動が含まれています。
5、チームによるデザイン経営の強化
理想のUX実現する製品・サービスの企画・開発には、CDOだけでなく、デザインを担当するデザイナーがユーザー思考が求められます。
UXとは、どのようなものなのかを認識し、様々なデザインに活かす必要があります。
そのためには、UXデザインのプロセスの中に、マーケット調査を通じたユーザーの参加が不可欠であり、デザイン経営にはCDOを中心としたチームのメンバー同士でのコミュニケーションが重要になります。
デザイン経営を進めるためのプロセスには、社長や取締役、CXOなど経営陣が参加し、役職や上下関係に関わりなく自由かつ公平に発言できる環境作りが欠かせません。
なぜなら、経営者の応援があれば、デザインチームによる会社への貢献意識が高まるため、デザイン経営の推進に繋がるからです。
■まとめ
商品やサービスの市場投入後に、以下のような課題に直面する企業も多いのではないでしょうか?
・初期顧客をスピーディーに獲得することができない。
・想定していた機能やサービスに対する顧客の反応が悪い。
・新たに別の機能を付加しなければいけない。
デザイン経営を目指すためには、CDOを中心に経営陣が「デザイン思考」を持つことが欠かせません。
なぜなら、プロダクトのデザインやサービスのデザインは、デザイナーやクリエイターだけに必要な取り組みや問題解決の方法ではないと言えるからからです。
売れる商品やサービスを生み出すためには、経営に「デザイン思考」を取り入れることが必要な時代になりました。
・ユーザーの共感や満足感を得られる、製品やサービスを生み出したい。
・ビジネスモデルを昇華させ、もっと利用される様にしたいと考えること。
そのためには、「ユーザビリティ」のことを真剣に考え抜けるCDOを任命することが必要だと言えます。
経営視点を持つデザイナーがプロダクト、UI、XUにコミットし、プロダクト開発や新規事業立ち上げ、組織作りに参加することで、高品質でスピード感のある「デザイン経営」が実現します。
世界的な巨大企業も、一流のCXOが参加するMBAのトップスクールでも、「デザイン思考」の必要性を説いています。
その理由としては、何かをデザインすることは、ビジネスの本質をたどり、可視化することに繋がるからです。
自社の本質が何か分からなければ、経営をデザインすることができません。
企業の存在意義「パーパス」をクリアにした上で、社長が掲げるビジョンを元に組織文化やイノベーションを生み出すということが、本当の「デザイン経営」だと言えるのです。
「デザインとは、特定の目的を最良な方法で達成するために、要素をどう配置すべきか、計画することだ。」
<チャールズ・イームズ>
■最後に
革新的な技術を開発するだけで、自然にイノベーションが起きるのではなく、社会のニーズを利用者視点で見極め、新しい価値に結び付けること、すなわちデザインが介在してはじめて真の「イノベーション」が実現します。
高品質なプロダクトやサービスをスピーディに作れる組織になるためには、意思決定速度に加えて、中長期を見越した判断を下せる体制が必要になります。
インターネット領域のサービスの場合、特に「UI」と「UX」への投資が高品質に欠かせません。良いUIは、存在を特に意識させたり、使い方を考えるために思考を停止させたりすることがありません。
デザインは、プロダクトやサービス、Webサイトの使いやすさに大きく左右します。
ユーザビリティという言葉には、「使いやすさ」「使い勝手の良さ」という意味がありますが、Web関連ではより具体的に「ユーザーの満足度」や「効率」などの意味を含んで用いられています。
日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」では、クライアント企業のデザイン経営を支援する「最高デザイン責任者」となるパートナーを募集しています。
CDO「Chief Design Officer」は、あるひとつのプロダクトやサービスが完成に至るまでに、そのビジネスデザインにおいて、総括、監督、総合的設計、プロデュース等で主要に関わる役割を担います。
その多くはデザインを本業とするデザイナーになりますが、どちらかと言うと経営陣としての考え方を持ち、様々なデザインをマネジメントするスキルに重きを置かれます。
プロダクト開発の経験やインターネット領域の新規事業を立ち上げ、成功に導いた経験があれば、事業開発の完成過程において必要とされるプロ人材であれば人物の属性を問いません。
KENJINSは、求人サイトや単なる人材紹介とは異なり、顧問契約をベースにフリーランスの活動に欠かせない営業活動やマーケティング機能を担い、クライアント企業の課題解決に一緒に取り組むパートナーとして活動しています。
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