ブランドを武器に広告宣伝費や販促にかかるコストが削減できれば、その分を商品開発や機能的価値の向上、顧客サービスの充実に投下することができます。
世界的なブランドを保有する会社では必ず、CXOの一人として「CBO」という肩書を持ち、企業価値の向上とブランド価値の向上の二つの責務を担うブランディングのプロ人材を任命しています。
なぜなら、経営者の視点からブランド戦略を考え、ブランディングを実行する「CBO」の存在が、集客、販促、PR、採用といった局面において、他社との差別化を図ることに繋がり、様々なビジネス活動を有利に進めることに大きく寄与するからです。
そこで今回、CBOとは何か、最高ブランディング責任者となるCBOが果たす責務について解説します。
■CBOとは?
CBO「Chief Branding Officer」とは、最高ブランディング責任者を指します。企業のブランドマネジメントを統括する役職です。ブランドマネジメントに対し、組織上の責任を負うことにあります。
CBOは元々、欧米の一流ブランド企業より発足した役職ですが、近年では日本でも大手上場企業などをはじめ、明確なポジションとして設けるケースが増えています。
経営陣の一人として企業やその製品、サービスなどにおけるブランドの意思決定を担い、経営戦略の視点に立ってブランディングの施策を練り上げ、実行して行きいます。
商品、サービスのブランド作りだけでなく、企業自体のブランディング戦略も担います。企業の成長に欠かせないブランド構築の責務を担いつつ、企業価値向上を目指す最高責任者というポジションになります。
■CBOの役割とミッション
CBOは、経営陣の一人として、CEOやCOO、CSO、CINOと共に商品や技術、サービスのブランドを開発する役割を担います。
企業独自の強みや競争優位性を活かし、価値あるブランドを構築するために、経営資源を全体最適化を推進し、企業ブランドを作り上げるミッションを担います。
企業価値を最大化するためのブランディングには、大きく分けて「インナーブランディング」と「アウターブランディング」の二つがあります。
・インナーブランディング:社員に目指すべき姿を理解・浸透させるための啓蒙活動
・アウターブランディング:顧客に自社ブランドの認知・拡大を目的とした宣伝活動
インナーブランディングは、自社の企業理念やブランド価値を「社内」に伝えて浸透させる活動です。一方、アウターブランディングは、対象市場や見込客など「社外」に向けたブランディング活動になります。
「社内」と「社外」を問わず、いずれも商品やサービス、会社に対して特定のイメージが抱かれるため、企業収益を大きく左右するポイントでもあります。
この両輪が正しく機能してこそ、初めてブランドが理想の姿として広く伝わるのです。
企業の理念やビジョン、ミッションを正しく理解した上で、以下のような質問に対して的確に応えることができる社員は少ないと思います。
・会社がどこを目指しているのか?
・何を実現しようとしているのか?
・どういった行動が求められているのか?
しかし、「インナーブランディング」を実施することによって「企業ブランドとは何か?」を社内に浸透させることに繋がるため、社員一人一人が正しく「組織文化」を理解し、仕事への志や使命感を持った、愛社精神の高い社員を育てることができます。
■ブランドとは?
ブランドというのは、ある商品を別の類似した商品から区別するための一連の要素が組み合わせた価値を意味します。
商品のデザインやシンボルマーク、ブランドロゴ、商標、名称、キャッチフレーズ、記号など、様々な要素が組み合わさってブランドを形成します。
ブランド・アイデンティティを表現するためには、ブランド要素を適切に設定しなければなりません。ブランド要素同士はブランド・アイデンティティに則って相互に連関して設定される必要があります。
真の価値を発揮するブランドには、誕生背景や創業者の思想が伴ないます。
なぜなら、競合他社にはない特徴などを元に、自社の強みや魅力をストーリーに沿って訴求することで自社のブランド価値を高めることが可能になるからです。
企業にとってブランドは、顧客のブランド・ロイヤリティを得て、安定的かつ中長期的な収益を確保する基盤となります。
ブランド展開による事業拡大の可能性を含み、競合他社との競争優位を可能にする無形資産のひとつです。
■ブランディングとは?
ブランディングとは独自のブランドを作り、これに対する信頼や共感を通じて自社の価値向上や他社との差別化などを目指すマーケティング戦略の一つになります。
ブランディングとは、ブランドを顧客に認知させ、市場におけるニーズを知り自社の商品やサービスの強み、ポジションを明確化する活動も含みます。
顧客にとってブランドは、製品の品質を判断する基準となるほか、商品選定の手間を省き、心理的な満足度を高め、失敗のリスクを回避する重要な役割を果たします。
ブランド価値は一朝一夕で構築できるものではなく、企業の長期間にわたるブランド普及活動により構築されていきます。
そして、ブランドが約束する便益、価値観、文化、パーソナリティ、ユーザー層などが消費者に理解・評価されるまでには、地道な努力が必要不可欠です。
■ブランティングの目的
ブランドを通じて自社の考えや思いなどのメッセージが伝わり、顧客のみならず社内においても安心感が生まれます。
分かりやすく言うと、「〇〇といえばあの商品」「このシンボルマークはあのサービス」といったイメージをターゲット市場に愛着を感じさせ、浸透させるのがブランディングという活動の目的です。
社会的な信頼性が向上し、発信情報の影響力も高まるでしょう。すると周囲の目を惹きやすくなり、マーケティング活動全般においても継続して大きな効果が期待できるようになります。
【ブランドの持つ役割】
・商標登録を行うことで法的に保護され、自社優位性を訴求し差別化しやすくなる。
・品質を保証し、顧客に安心・安全を届けることができる。
・ブランド展開など、ブランドの成長による収益拡大が見込める。
・中長期的な収益確保の源泉となる。
・安定した売り上げ、値崩れ防止。
ブランディングの目的の一つとして挙げられるのが、利益率の向上です。ブランドによって他社との差別化を行い、ブランドイメージが認知されれば、マーケティング活動を通じて選ばれる確度が高まります。
その結果、価格とは異なる価値で勝負できるようになり、安定して高い利益率を維持できるようになるでしょう。
■CBOがブランドコンセプトを作り上げる重要性
ブランドコンセプトとは、企業の商品や事業に対する『想い』です。ブランドの価値は「機能的価値」「情緒的価値」「自己表現的価値」「社会的価値」の4つからなります。
1、機能的価値
ブランドが持つ基本的な機能価値。
機能的価値というのは、簡単に言うと製品やサービスの機能・性能に対する価値であり、商品の使い勝手で商品価値を判断することです。
メリットを主に重視した考え方になり、その商品やサービスの機能面や品質面において、顧客に提供できる価値のことです。
分かりやすく言えば、競合他社の商品やサービスと比較した際に、「その商品が機能的に優れている所はどこなのか」ということです。
2、情緒的価値
ブランドから受ける印象(イメージ)に対する価値。
情緒的価値とは、ブランド提供価値のうち、ステークホルダーの情動に訴えかける価値のことを指します。機能価値と対を成す概念。人が何かに憧れを感じるとき、その何かの機能面だけを見ているのではありません。
むしろ、そのものを持つことで覚える誇りや、そのものを利用することで感じるワクワクした感情などが羨望の的となります。
機能的価値とは真逆に、憧れのものをやっと手に入れた時の高揚感を味わう感情のことです。
3、自己表現的価値
ブランドを所有することでお客様の価値観やスタイルを表現できる価値。
ブランドの価値基準の中で重要になるのが、自己実現価値です。自己表現的価値とは、自分の価値観を表すのにふさわしいものとしてそのブランドを所有していること。
つまり、自分のスタイルや価値観を表現するための手段としてそのブランドを使っている状態です。
商品を手に入れてから、どれだけ顧客の生活が変わったのか、なりたかった自分に近づいた充実感を得られたのか、などがあります。
4、社会的価値
ブランドを所有することで社会的集団やコミュニティに所属することができる価値。
そもそも人は家族、学校、会社といった「コミュニティ」に必ず位置するもの、そして所属するコミュニティと個人の評価は連動します。
社会的価値の特徴としては、周囲から見た個人とその個人が所属するコミュニティの評価は連動します。
会社における自らの評価を上げたい場合には、所属している会社の評価を上げること。つまり、会社の看板となる企業ブランドを磨かく必要があると言えます。
■ブランドステートメントとは?
成熟期を迎えている市場では、「似た機能、似た価格帯の商品」は沢山あります。そんな市場の中で「機能的価値」のみを重視していても、他社競合と差別化を図るのは困難だと言えます。
ブランドステートメントとは、ブランドが理念や使命を顧客に向けて掲げるメッセージになります。
ブランドステートメントとは、そのブランドの目指すところやありたい姿、提供価値やスタイル、社会やステークホルダーとの関わりなどについて簡潔に表現した文章のことを指します。
ブランドコンセプトを一般の人に分かりやすく、心に響く文章に落とし込んだ物語だとも言えます。
企業が掲げる企業理念「コーポレートステートメント」に近いと言えます。
企業理念は、企業運営においての根本理念「どう在るべきか」を示すものですが、ブランドステートメントはブランドが顧客に提供する約束という意味合いが強くあります。
■ブランドストーリーとは?
ブランドストーリーとは、ブランドコンセプトと同様の意味を持つものです。ブランドコンセプトとは企業が掲げるスローガンや目標を指します。
特に価格競争に巻き込まれてしまった場合、「安さのみがウリ」のブランドは、価格帯以外の部分で差別化を図ることができません。
このような機能的価値で差別化が難しい場合、その他の価値で差別化を図る必要があります。
CBOは、これらの4つの価値を考慮した上でブランドストーリーを作る必要があります。
・経営者が今後の事業を⾒据える上での『判断基準』
・顧客が企業を選ぶ時の『選択基準』
・社員やパートナー企業の『⾏動基準』
・ブランディングが機能しているかを⾒る『評価基準』
ブランドストーリーにより、商品やサービスが出来上がるまでの物語や誕生秘話、開発の過程での苦労話なども隠すことなく提供することで、商品に共感し、価値と魅力に気づいて貰うことが実現します。
■ブランディングの3つの分類
ブランディングには、大きく以下のように3つの分類が存在します。
1、インナーブランディング
企業文化を作り上げること。インナーブランディングの主な目標は、「社員に企業の理念や価値観の共有をして貰うことになります。
インナーブランディングの場合、社内向けの発信であるため、社内報などで発信されるなど、インターネット上やSNS上での発信はあまり多くありません。
従業員のなかには、会社に対して不満を持つ人もいます。しかし、インナーブランディングを行うと、従業員の不満が減って満足度向上へ繋がるケースもあります。
従業員満足度の上昇で、退職者の減少や仕事のモチベーションアップに結び付く確率が上がります。
2、商品・事業ブランディング
事業の核となる商品やサービスを作り、独自のビジネスモデルと「ブランド価値」を提供すること。
自社のファンとなるブランドロイヤルティの高い顧客を増やせば、新規顧客を獲得するよりも低コストで利益を上げていくことが可能になります。
ブランドロイヤルティとは、ある特定のブランドに対する消費者の忠誠心のことで、日本語では「銘柄忠誠度」「銘柄忠実度」などと訳されます。
消費者が商品やサービスを購入する際、同じブランドのものを繰り返し購入することを意味し、そうした消費者が多いブランドは、ブランドロイヤルティが高いと言えます。
3、採用・育成ブランディング
人・組織を作り上げること。独自の魅力や差別化に関わるポイントを伝えることで、人材採用おいて自社を選択する動機づけを行います。
自社の考え方に共感できる人材が増えるため、自社の組織文化と「カルチャーフィット」する人材の採用に繋がります。自社の価値を正しく伝えられることで、自社に合う優秀な人材を採用しやすくなります。
採用ブランディングは、人材の定着や確保にも大きく貢献する可能性があります。
■まとめ
CBOとは、「Chief Branding Officer」の略で、ブランド責任者のことを言います。ブランドの世界観を醸成し、かつ顧客がブランドに抱くイメージをプラスにするための一貫性ある戦略を考え、実施して行きます。
ポイントとなるのが、CBOは、経営視点から俯瞰し、ブランドを軸に企業の成長戦略を練っていくということになります。
CBOは、ブランド・マネージャーと呼ばれることもありますが、市場調査、製品開発、販促活動など全ての施策に関わるため、CBOの資質や能力がそのブランドの成功の鍵を握っていると言えます。
経営層との意思疎通を図り、チームを指揮してマーケティング活動を行う必要があるため、社内外様々な関係各所との連携が欠かせません。
ブランドイメージは、消費行動を左右する重要な要素と言われいます。
例えば、異なるメーカーの「同じ性能」「同じ価格」の商品が目の前にあった際に、より知名度が高く、高性能だと評判のブランドの方を選びたくなる購買心理が働きます。
CBOを活用したブランド作りは、長期的な観点でのイメージ向上や中期的な目標達成のみならず、企業イメージに向上にも繋がるため、採用においても強力な効果を発揮します。
中でもインナーブランディングは、具体的なKPIとして、採用の強化や離職率の低減に繋がります。
「トレンドにのめり込むな。流行に惑わされるな。その代わりに、自分がどうありたいかを自身で決め、洋服とライフスタイルでその自分らしさを表現しなさい。」
<ジャンニ・ヴェルサーチ>
■最後に
現在、日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」では、CBOとして複数の企業経営者に対して、ビジョンやミッションを定義し、ブランディングの実行支援を担う、フリーランスの顧問やプロ人材を募集しています。
ブランディングの業務を一社で請負うブランディング専門のコンサル会社もありますが、KENJINSでは、CBOやCMOを中心にインターブランディングなど特定の部分の強みをプロ人材を集結させ、一気通貫型でブランド構築やリブランディングの実行支援を行っています。
【CBOによるブランディングのプロジェクトの例】
1、ブランド課題の発見
・ブランディングによって解決させたい経営(事業)課題の把握
・対象となるブランドの現状把握
・ブランド力向上に向けたアプローチの提案
2、ブランドエクイティの可視化
・ブランドの持つコアバリュ―や周辺価値の明確化
・ブランドバリュー・ビジョン・ミッションの見える化
3、インナーブランディングの企画・推進支援
・社員意識の把握
・ブランド価値の社内共有と社員の自分ゴト化
・ブランディングに向けた社内の意識変革
・ビジョン実現に向けた部門ミッションの設定支援
・新規事業、新商品の企画支援
4、アウターブランディングの企画・実施
・ブランド価値の浸透策の企画と実施
・広報活動の支援
・商品周辺サービスの強化策
・パッケージ、広告表現の企画と制作
5、ブランディングのPDCA支援
・ブランドの状況把握
・効果的なブランディング策の企画と実施
日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」では、顧問報酬のピンハネが横行している顧問紹介の業界において、事業コンセプトとして「顧問報酬100%」を両者にコミットし、顧問契約をベースに中間マージン無しで顧問やプロ人材として仕事をアサインしています。
この機会に「アウターブランディング」と「インナーブランディング」の両輪から、中小企業やベンチャー企業のブランド構築の課題を解決するために、CBOやブランドマネージャーとしてコンサルティングと実行支援を推進するパートナーになりませんか?
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