就業形態や働く価値観が多様化した現代では、組織内の人や部署間のつながりを強化し、組織全体のパフォーマンス活性化するための組織開発が注目されています。
働き方の多様化が進む現代社会においては、コミュニケーションの強化は非常に有効になります。ダイバーシティの観点からも、外国人やフリーランスなどの多様な人材を受け入れられる「組織開発」が必要になっています。
今回、組織開発とは、人と人の関係性を深める組織開発の意味について解説します。
■組織開発とは?
組織開発とは、会社などの組織で働く、人と人との関係性を高め、組織を活性化させるための行動指標を作り上げ、様々な課題解決の相互支援を実施する取り仕組みのことです。
組織内における人と人の関係性や部署間の関係性へ働きかけることで、組織を活性化し組織全体の生産性を高め、仕事のパフォーマンスを高めていく取り組みになります。
1958年頃にアメリカで誕生し欧米を中心に拡大した言葉で、組織開発には、その組織が抱えている問題を表面化させて、解決策を当事者たちで考えて実行していくというプロセスが含まれます。
組織開発は、英語で「Organization Development」「OD」と訳されて略語でも使われています。組織が抱えている問題を明らかにし、解決策を考え実行します。
組織開発には、組織を健全化するなどしてより良くするという指標はありますが、組織開発そのものは手段であり目的ではありません。
組織開発はあくまで、現状よりもさらに良い組織にするための手段です。そのため、組織が目指すべきゴール、つまり目的を明確にすることが、ぶれることなく進むための道標になります。
■企業における組織開発の目的
組織開発では、組織のパフォーマンスを最大化させるのが狙いです。
組織の仕組みを改善することで、意思決定のスピードや生産性の向上、イノベーションの誕生など、最終的に企業力強化につながるような組織づくりを目指します。
企業が組織開発に取り組む目的として、以下の点があげられます。
・集団のシナジーが高まるような組織風土を醸成
・組織のメンバー自ら課題解決に取り組む姿勢を持つ
・目標設定と課題解決により、企業の生産性を上げる
目標が大きすぎてしまうと実現することが困難になってしまい、結果として部下のモチベーションを下げてしまいかねません。
反対に目標が曖昧すぎてしまっても、達成した時の成長が感じづらくなってしまいます。 イメージで言うと「階段を昇っていく」ような目標設定が適切です。
組織開発は、「一度取り組んで終了」という簡単なものではありません。組織が成長し続けるよう、目標を定め課題解決に向けて継続して取り組んで行くことが必要になります。
■組織開発が注目されている背景
組織開発が注目されている背景は、個人の働き方が大きく変化する時代を迎え、組織自体にも変化が求められているからです。
日本社会では、終身雇用が当たり前であったことから、基本的に横並びの考え方や風土により企業主体の価値観が植えつけられ統治されてきました。
しかし、現代は激しい社会の変化に対して、機動的な事業運営が求められています。個々のスキルや能力に対する正当な評価が重視され、自己成長やより良い職場環境に就くための転職は当たり前になりました。
ダイバーシティの観点から、外国人採用も積極的に行われるようになり、組織内の価値観にも多様性が生まれ、相互理解が必要になっています。
相互理解とは、言葉の通り互いに理解を深めていく行為です。それにより、上司と部下の間の信頼関係を構築させていくことができます。
コミュニケーションにも変化があり、テクノロジーの進展によって対話やメールが主ではなく、チャットやWEB会議などのツールを活用する企業も増えています。
これらの大きな変化により、価値観の異なる個人同士の「関係性」を組織として強化・改善するために、組織開発が注目されているのです。
互いに支えあい、チームワークを形成していきます。相互支援が高まると、部下のモチベーションアップにも期待できます。
■組織開発と人材開発の違い
人事を担う方たちの中には、「組織開発は皆無だが、人材開発には着手している」というケースも多いのではないでしょうか。
1、人材開発とは?
人材開発とは、従業員個人に対して知識やスキルを直接与えることであり、対象となる個人のレベルアップを目的とした施策です。
組織をターゲットとする組織開発に対して、人材開発では「人」をターゲットとし、組織内の従業員のパフォーマンスを向上させる取り組みを行います。
人材開発は、具体的には社内研修、キャリア開発、セミナー、OJTなどを通じて、従業員が業務上必要な知識を直接習得するなど、個人の能力を向上させるものです。
たとえば、新入社員の社会人スキルを磨くために実施する研修などは、人材開発に当てはまります。
2、組織開発とは?
組織開発は組織内の人と人との関係性や相互作用により、課題を解決していくことを目的とした施策であるため、根本的なアプローチ手法が異なります。
組織開発のアプローチは、若手従業員だけではなく教える側の先輩や上司といった職場全体の“関係性”に着目し、チームや部署内でのミーティングや対話の機会をコーディネートしながら、より良い環境を築きます。
組織開発では、個人だけではなく「個人対個人の関係」、「グループやチームでの関係」、「グループ間・部署間の関係」など、個人以外に対してもアプローチをおこなう点が特徴です。
組織全体に良い変化をもたらすことを狙いとし、「面」で改善の対象をとらえるのが組織開発といえます。
■組織開発のプロセス
ここでは組織開発を実践する場合、どのようなプロセスを踏んで実行に移すのかを紹介します。
1、目指す組織の姿を明確にする
組織としてどのような状態になりたいのか、目指す姿を言語化します。
「組織内で新しいアイディアを出すことを促進したい」「部署間のつながりを強化し協業体制を整えたい」など、目指す姿をメンバー間で共有できるように言語化することが、組織開発を成功させる第一歩です。
2、客観的事実にもとづき課題を把握する
目指す方向性に対して課題となっている点を、事実をもとに整理します。
経営陣や従業員が「こう思っている」という印象だけに頼らず、インタビューや調査を用いて客観的事実を把握することが重要です。
事実やデータにもとづき認識された課題に対して、適切な解決方法を決定します。
3、組織のメンバーを巻き込み組織開発の必要性を共有する
組織開発の主体は、その組織に属する個人です。
そのため、課題解決に関係するそれらの人々を巻き込み、組織開発の必要性を共有しておく必要があります。
4、スモールステップで実践する
組織開発は、研修のように数日で終了するものではありません。そのため、長期的視点を持ちつつ、小さな段階から実践を重ねることが重要です。
たとえば、はじめのうちは部門全体ではなく、小さなチームから成果を出し、全社に拡大するといったプロセスが有効です。
5、検証と実践を繰り返し、データを集める
スモールステップで実践をおこなうなかでは、組織開発に効果を発揮する案もあれば、効果が見られない案も出てくることでしょう。
検証と行動を繰り返し、それらのデータを蓄積することで、組織開発に役立てることができます。
6、現場の自立的な取り組みを支援する仕組みを整える
実践した改革の内容をナレッジとしてまとめます。
他部署のマネージャーや管理職クラスと共有することで、同じような取り組みを継続的に実施できる仕組みを整えることができます。
■まとめ
組織開発とは、戦略や制度といった組織のハード面だけでなく、人と人との関係性といったソフト面にも働きかけ、相互作用によって組織を活性化させていくアプローチのことです。
組織開発の目的は、経営者が掲げる組織の目標達成のために、組織と人々の状態を整えることにあります。
仕事には個人で取り組むケースとチームとなってプロジェクトに取り組むケースの二つが存在します。チームで取り組むプロジェクトにおいてはメンバー間の相互理解がとても大切になります。
組織開発は、幅広い階層で組織の仕組みを改善することで、最終的に企業力強化につながる組織づくりを目指すものです。
また、現場の実情を把握するために、プロジェクトメンバーに調査やインタビューを実施する、組織開発の事例として行ったプロセスや結果をまとめ、ナレッジとして社内で共有するなど、組織開発のプロセスを活性化させる重要な役割も担います。
組織開発をおこなう過程において人事が果たすべき役割は、目指すべき組織の姿を、正社員という枠を越えてフリーランスの顧問や副業のプロ人材とも共有することです。
「組織力を高める秘訣は、「チームメンバーそれぞれが同僚のことや担当外の業務にも関心を持ち、いい意味で“お節介”をし合えるようにすること」だ。部下たちが知恵を出し合える風土作りが、管理職の役割だと考えている。」
<櫻木秀邦>
■最後に
組織開発における相互理解とはどういったものなのでしょうか?相互理解とは「他人同士で互いに異なる価値観や人間性、考え方を理解し合う」というような意味合いで使われることが多いです。
組織内では従業員同士の関係性においてだけでなく、フリーランスや副業のプロ人材など、どういった関係性であったとしてもこの相互理解が重要になってくるのです。
相互理解が十分にできているチームであれば、チーム員同士の連携がスムーズになり、個人で取り組む時と比較して何倍ものパフォーマンスを発揮することができるのです。
外部人材となるフリーランスにとっても組織開発によって、働く環境整備を行い、居心地の良いチームを提供することで成果に対するコミット力が上がり、業務上も良い影響を及ぼすことになるでしょう。
なぜなら、相互理解が深まっていれば、コミュニケーションが円滑に行えるようになり、連携も取りやすくなり依頼を受けたタスクに対する生産性の向上にも繋がるからです。
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