インテグリティとは?ドラッカーが経営者の誠実さを重視する訳

投稿日: 作成者: KENJINS運営会社社長 カテゴリー: 運営会社社長   パーマリンク

組織のリーダーやマネジメントに求められる重要な資質のひとつとして、誠実さを意味する「インテグリティ」という言葉が注目を集めています。

欧米では、インテグリティのある経営者と呼ばれるのは非常に名誉なことになります。

なぜ今、インテグリティが重要な資質として挙げられるようになったのでしょうか?

コンプライアンスを重視する欧米の企業では、インテグリティは、頻繁に使われる言葉となりますが、日本でもエグゼクティブには、誠実さが評価されます。

そこで今回、インテグリティとは何か、ドラッカーが経営者の誠実さを重視する訳について解説します。

■インテグリティとは?
インテグリティは、企業経営をする上で、社長のビジネスに対する考え方やマネジメントにおいて最も重要な資質、価値観を示すものです。

コンプライアンスが重視される時代になった今、企業は誠実さを最優先し、法令遵守をはじめ幅広く社会的責任の遂行と企業倫理の実践を目指しています。

インテグリティは、英語で「integrity」と表記されます。日本語では、「誠実」「真摯」「高潔」などの概念を意味します。企業経営におけるインテグリティという用語の定義や解釈は様々になります。

主に欧米企業で経営方針や社員が持つべき価値観として頻繁に使われるようになり、次第に企業経営や組織マネジメントの領域でも使われる用語となりました。

近年では特に、組織を率いるリーダーやマネジメント層に求められる重要な資質である「誠実さ」を示す表現として用いられています。

■インテグリティマネジメントとは?
法令や規範の遵守だけでなく、幅広い社会的責任を実行するのが広義のコンプライアンス経営であり、その実践がインテグリティマネジメントです。

「経営者が組織の管理活動の中で直面する倫理的諸問題についてオープンな討論と計画化された意思決定を促進する方法である」 (J.A. Waters, 1988)ともあります。

なぜ今コンプライアンス経営が重要視されているのでしょうか?

インテグリティマネジメントの必要性が提起される理由は、企業や経営者のインテグリティの欠如です。

・倫理的リーダーシップの不備や経営理念の腐敗が引き起こされている
・倫理行動基準や倫理戦略などといった一連のプロセスが未確立
・その基盤を形成している共通の倫理基準(common ethical standards)が認識されていない

これらによって、インテグリティの欠如が起こっています。改めて、コンプライアンス経営を見直すことが大切なのです。

■マネジメントを担う人材にとって決定的に重要な資質
ピーター・ドラッカーは、「インテグリティこそが組織のリーダーやマネジメントを担う人材にとって決定的に重要な資質である」と述べています。

ただし、インテグリティの定義については、ドラッカー本人も「難しい」と語っており、インテグリティが欠如している人物を例示することで、逆説的にインテグリティの定義を浮かび上がらせようとしています。

インテグリティが欠如している人物の例として、『現代の経営』では以下のような点を挙げています。

・人の強みではなく、弱みに焦点を合わせる者
・冷笑家
・何が正しいか』よりも誰が正しいかに関心をもつ者
・人格よりも頭脳を重視する者
・有能な部下を恐れる者
・自らの仕事に高い基準を定めない者

■経営・人事におけるインテグリティの意味
誠実、高潔、完全な状態、といった意味を持つインテグリティは、経営・人事の世界では、誠実さ、高潔さ、真摯さなどを指す言葉として使われます。

上場企業の場合、社外取締役を登用することが会社法で義務付けられていますが、上場を目指すスタートアップのインテグリティのある起業家は、コーポレートガバナンスを重視し、上場会社でなくても外部から社外取締役を招へいする会社が増えています。

ビジネスにおいて誠実な社長には、企業経営における利害関係者となるステークホルダーを大切に扱うことを掲げ、「法律や社会規範を守る」、「顧客や取引先、株主、社員、また社会に対して誠実で真摯な経営をする」などの特徴があります。

リーダーを目指す人は、管理職である人間にも、インテグリティが重要になります。

例えば、「管理職の態度が悪い」「頼りない」「知識が浅い」といった場合、リーダーになる人は、部下を信頼し、頼りなさを感じ取っても重要なプロジェクトを任せます。

例えば、新規事業の立ち上げのシーンでは、偉大なリーダーは、マネージャーに権限委譲を行い、成果を上げることを期待し、チャレンジした結果に対する失敗については、許容することができると言われています。

しかし、インテグリティの欠如については、許さないものなのです。

ドラッカーは『現代の経営』の中で、経営者に知識と魅力が備わっていてもインテグリティ(誠実さ)が欠けていれば組織は腐敗すると記しています。

そのため、組織を率い会社経営を行うトップマネジメントであるCXOには、インテグリティは欠かせないのです。

■経営者にインテグリティが重要である理由
世界一の投資家といわれるウォーレン・バフェットは、人を雇う際に求める3つの資質を挙げています。

1、「誠実であること」=「integrity」インテグリティ                                  2、「知性があること」=「intelligence」インテリジェンス                                 3、「活力があること」=「vitality」バイタリティ

ドラッカーは、高潔さを伴わずに知性と活力を持つ人材は、危険だとも述べています。

スタートアップの起業家でビジネスで成功を勝ち取るインテグリティを持つ経営者とはどんな人物なのでしょうか?

それは、崇高なビジョンを掲げ、世の中の課題を解決するミッションを持ち、目標を達成するために、以下のような要素を持つ人物がインテグリティを持つ経営者であると言えます。

・公正で正義感がある。
・非利己的な動機を持つ。
・法的義務と倫理基準に対応しながら利益を求める。
・倫理的行動の範囲内で実践できる。

特徴を持つ経営者は、経営の意思決定や行動の際、すべての利害関係者となるステークホルダーにとって公平となるかといった視点で経営判断します。

■企業経営にインテグリティが重要である3つの理由
ドラッカーもマネジメントにおけるインテグリティの重要性を述べています。なぜインテグリティはこれほどまでに重要なのでしょうか。

1、コンプライアンス経営を実践するため
日本では1990年代から、年功序列から成果主義へとシフトする動きが始まりました。

しかし、業績に応じて評価される成果主義が過度に進んだ結果、不正や不祥事が明るみになったり、その場しのぎの対応で信用を失ったりといった弊害も出てきました。

こうした状況の反省から、企業経営では、売り上げ至上主義に偏ることなく、コンプライアンスを大事にした取り組みが必要不可欠になり、マネジメントにおけるインテグリティが注目されるようになったのです。

企業のインテグリティを最優先し、法令遵守だけでなく、より幅広い社会的責任の遂行と企業倫理の実践を目指す広義のコンプライアンス経営は、インテグリティ・マネジメントと呼ばれています。

2、人事採用においてインテグリティが重要な理由
インテグリティが欠如していると、組織運営に大きな影響をもたらすことになります。

例えば、エンジニアを採用する現場においても、技術的なスキルフィットだけでなく、経営者が掲げたビジョンを実現するための組織文化にカルチャーフィットするかどうかを意識することが大事だと言えるでしょう。

ただし、誠実さや真摯さといったものは個人の姿勢や態度を示すものであるため、定義するのが難しいといった一面も備えています。

しかし、社会的に信用される企業やビジネスマンとなるためには、インテグリティを意識し、企業努力をしたり、個人として自己研磨をすることは不可欠でもあるのです。

3、健全な組織運営を推進するため
組織を牽引するリーダーやマネジメント層が率先してインテグリティに基づく行動を取ることは、健全な組織運営にもつながります。

状況判断に迷う部下に対して自らの考えを指し示し、模範となるような行動を示すことで、部下自身、ひいては組織、企業のインテグリティを保つことに貢献します。

部下の立場に立って考えると、知識や経験やスキルが豊富で仕事ができる人物だとしても、ビジネスを推進する上で、誠実さに欠けるリーダーには「付いて行きたい」とは思えないでしょう。

誠実さに欠けたリーダーの元で取り組む場合、仕事に対しての自信が持てず、仕事に対するモチベーションが下がってしまう可能性もあります。

結果として一定の業績を上げたとしても、部下は疲弊し、帰属意識が薄れ、組織全体の会社の取り組みに対する、エンゲージメントが弱まってしまうこともあり得るのです。

■インテグリティのある企業と・インテグリティがない企業の違い
インテグリティが「ある状態」と「ない状態」とはどのような場合のことを指すのでしょうか。

まずインテグリティがある状態を考えていくうえで、基本的な意味である「高潔さ」「真摯さ」に主眼を置くとき、経営のあるべき姿が見えてきます。

1、インテグリティがある状態とは?
インテグリティがある状態とは、公正、公平な経営が維持されているため、立場やポジションを問わず、組織としてオペレーショナル・エクセレンスが実現している状態にあります。

この「公正、公平な経営」は、マネージメントをする上で従業員が成果を上げるための原動力の土台となる士気を劇的に高め、組織としてのパフォーマンスを引き出し、リソースベースドビューの最適化に向けて、非常に良い効果をもたらします。

インテグリティに溢れた人材が揃う企業は、会社の不祥事などの問題を事前に摘んでしまう役割も果たし、結果として会社に対して多大なベネフィットをもたらします。

2、インテグリティがない状態とは?
ドラッカーは「インテグリティがない状態の方が定義は容易い」ということも言及しています。

インテグリティがない状態とは、経営においては「公正、公平な経営ができていない」ことを指しますから、会社においては遅かれ早かれ様々な問題が噴出します。

高潔さや真摯さが欠如している状態であり、容易に定義することができます。

SNSにおける「炎上」などを含めた様々な不祥事が起こることで、最悪の場合には、経営が傾いてしまうということも考えられます。

世間における会社の不祥事には様々な原因がありますが、その根本原因となるボトルネックの一つが「インテグリティがない」ことに起因するものも少なくないでしょう。

■日本人や日本製品が信頼されるのはインテグリティが高いから
インテグリティが注目されるようになったのは、行き過ぎた成果主義や経営理念の腐敗が企業の不祥事を招いてしまう出来事が頻繁に発生していたことに理由があります。

企業規模が大きいほど、社会に与える影響も甚大なものとなるため、コンプライアンスや企業の社会的責任となるCSRが重視されるようになったのです。

日本人の資質や日本製品が世界的に信頼される理由は、誠実で真摯に製品やサービスへの取り組みを行うなど、インテグリティの高さにあります。

海外では、日本製というだけで勤勉で誠実な人間が作り上げた高品質なブランドだという良いイメージが強くあるため、メイドインジャパントと言えば、商談が成立する場合もあるそうです。

同様に、震災時における日本人の助け合いの精神も海外で広く知られています。嘘をつかない誠実さや助け合いの精神、おしゃれで繊細な部分などが信頼される理由なのです。

インテグリティは、欧米の卓越したエクセレントカンパニーの間では、CSRの取り組みと同じく頻繁に使われる言葉となりますが、日本でも組織としての誠実な対応がユーザーから評価されたことで大きな成功を収めた企業が沢山あります。

■まとめ                                          誠実、高潔、完全な状態、といった意味を持つ「インテグリティ」は、経営や人事の世界では、誠実さ、高潔さ、真摯さなどを指す言葉として使われます。

インテグリティのある企業や人には、以下のような特徴があります。

・法律や社会規範を守る
・顧客や取引先、株主、社員、また社会に対して誠実で真摯な経営をする

インテグリティは、企業の経営やマネジメントにおいて最も重要な資質、価値観を示すものです。

ビジネスは競合他社との競争に晒されるものではありますが、成果主義ばかりに軸足を置き過ぎると倫理基準を軽視してしまうといった事態も招いてしまいます。

多くの人から信頼される企業となるためには、インテグリティの考え方を重視した経営を行う必要があります。

企業や経営者が認識すべき共通の倫理基準としては、「コミュニケーションにおける正直さ」「公平な処遇」「特定の配慮」「公平な競争」「組織的責任」「企業社会責任」「法の遵守」などがあげられています。

このような要素を盛り込みながら社内ルールを決めていくことが、インテグリティ・マネジメントにおいては重要だといわれているのです。

企業にとってインテグリティは、健全な組織を運営し、公正なビジネスによって成果を上げるために欠かせない要素になります。

持続的な経営を目指すためには、企業として「インテグリティ」=誠実さを最優先し、コンプライアンスをはじめ幅広く社会的責任の遂行と企業倫理をベースにしたCSRの実践を目指す必要があります。

社内にインテグリティを浸透させるためには、社内の行動規範にインテグリティが求められることを明確にするとともに、組織を率いるリーダーやマネジメント層へのインテグリティ教育も必要です。

あらゆる企業にとって誠実で信頼される組織を作り上げるためには、リーダーが先頭に立ち模範となる態度を示しつつ、インテグリティ教育をビジネスの中で実践し、顧客価値を高めることに取り組む必要があると言えるのです。

「まず何よりも、自分に正直でありなさい。自分自身を変えなければ、社会に影響を与えることなど決してできません。偉大なピースメーカーはいずれも、誠実さと正直さ、そして謙遜さを兼ねた人たちです。」

<ネルソン・マンデラ>

■最後に
「インテグリティのある経営者」という表現は、欧米のビジネスシーンでは、組織のリーダーとして活躍する、CEOを始めとするトップマネジメントに対する最高の褒め言葉とされています。

インテグリティを持つ経営者と同様に、フリーランスとして経営顧問に就任したり、CXOのコーチとして第一線で働くためには、クライアント企業の経営者やマネージャーから「信頼できる」「指導を仰ぎたい」と思わせる人間性を持ち、裏表のない行動が取れるリーダーを目指すことが欠かせません。

例えば、社外取締役に就任する場合でも、常に正しさを求め、コーポレートガバナンスを推進しながらも、経営者に寄り添いチャレンジする心を忘れず、一貫した行動で成果に貢献することが期待されています。

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本田季伸のプロフィール

Avatar photo 連続起業家/著者/人脈コネクター/「顧問のチカラ」アンバサダー/プライドワークス株式会社 代表取締役社長。 2013年に日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」を開設。プラットフォームを武器に顧問紹介業界で横行している顧問料のピンハネの撲滅を推進。「顧問報酬100%」「顧問料の中間マージン無し」をスローガンに、顧問紹介業界に創造的破壊を起こし、「人数無制限型」や「成果報酬型」で、「プロ顧問」紹介サービスを提供。特に「営業顧問」の太い人脈を借りた大手企業の役員クラスとの「トップダウン営業」に定評がある。

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