コンプライアンスとは?最高コンプライアンス責任者CCOの役割

投稿日: 作成者: KENJINS運営会社社長 カテゴリー: 専門家インタビュー   パーマリンク

あらゆる企業がビジネスを推進する上では、経営者や従業員もコンプライアンスの知識を身に付け、正しい倫理観とインテグリティに基づき、事業を展開する必要があります。

なぜなら、肩書や立場を問わず、コンプライアンス違反は、取引先や顧客の信頼を大きく失い、その後の経営に多大な悪影響を与える可能性が高いからです。

経営陣や従業員による甚大なコンプライアンス違反が起きたことにより、マスコミに報道された場合、上場企業でも企業価値が大幅に失墜し株価が暴落する引き金になります。

会社としての信頼が損なわれると、企業経営に多大なダメージを与え、最悪の場合には、上場廃止や売上が激減し、倒産に追い込まれる危険性さえもあります。

そこで今回、コンプライアンスとは、最高コンプライアンス責任者CCOの役割について解説します。

■コンプライアンスとは?
コンプライアンスとは、企業経営を展開する際に、経営者、従業員が法令や社会的ルールを守ることを指します。

コンプライアンスは、英語で「compliance」と表記され、日本語では、「法令遵守」を意味します。

法令とは、国民として個人や企業が守るべきものとして、国会で制定された法律、国の行政機関で制定される政令、府令、省令等の総称です。地方公共団体の条例、規則を含めて用いられることもあります。

現代の会社経営においては、コンプライアンスの言葉のニュアンスは、社会規範、社会道徳、ステークホルダーの利益・要請に従うことなども含む広い概念になっています。

特に企業規模が大きな上場会社においては、パブリックカンパニーという位置付けになるため、違法行為が及ぼす社会的なインパクトが非常に大きくなります。

上場会社の従業員が法令違反を犯した場合には、子会社やグループ会社の社員を問わず、適切なコンプライアンスを推進する管理体制を作り上げ、再発防止に向けて従業員教育を実現することが必須要件になります。

企業経営においては、経営者がコンプライアンスの正しい意味と目的を問いかけ、社会から求められる企業像を理解し、ビジネスマンとしての在り方を指し示すことも重要です。

コンプライアンス違反により、刑事事件など何らかのトラブルが発生した際には、経営トップや従業員が潔く罪を認めた上で、捜査協力を行うことも非常に重要な決断になると言えます。

そのことが、会社の社会性を問う「企業倫理」の試金石になります。

企業倫理とは、企業活動を行う上で最重要かつ守るべき基準となる考え方のことを意味します。

企業倫理における守るべき基準としては、法令遵守はもちろん、自然環境や社会環境、人権保護といった道徳的観点から企業活動の在り方を定義し、行動原則を規定することが必要になります。

組織として統率する行動指針を打ち出し、組織作りを行い、運用方法を含めた仕組みを作ることで、今後、新たなコンプライアンス違反による再発を防止し、法令違反によるトラブルを未然に防ぐことが可能になります。

企業の目的としては、顧客を創造し、正当な利益を追求することが大事ですが、収益を上げるためにはコンプライアンスを徹底し、倫理観、公序良俗などの社会的な規範に従い、公正・公平に業務を行うことが経営者にも求められます。

■企業がコンプランス違反を起こした際の問題点
「社会的な規範を逸脱している」と社会に判断されれば、企業は一瞬で取引先や顧客からも信用を失いかねない時代になりました。

インテグリティに欠ける、従業員や経営幹部によるコンプライアンス違反は、企業にとって大きな損出をもたらします。

明らかな法令違反のケースでは、行政機関による営業停止命令、免許取り消し、裁判所から罰則や罰金などの処分を受けます。

また、従業員が犯した犯罪行為により、刑事事件に発展すれば、本人だけでなく、経営者が逮捕され、禁固刑になることもあるでしょう。

健康被害などにより消費者にも何らかの被害が及んだ場合、問題を起こした会社がその経緯を情報公開したり、説明責任を問われ、謝罪会見を行わなけらばならないケースも想定されます。

重要な機密情報の漏洩やハッキング、ノウハウ等への不正アクセスなどのサイバー犯罪を起こした場合には、その行為によって懲役や罰金などが刑罰に定められています。

刑事事件として起訴され有罪になれば、前科がつき今後の人生に大きな影響を与えかねません。更に民事訴訟を起こされ、損害賠償金を支払わなければならないケースも想定されます。

コンプライアンス違反が世間に発覚した場合には、その情報はインターネットで瞬く間に広がり、その犯罪行為はいつまでも消えることがありません。

マスコミの報道による企業のイメージダウン、社会的信用の失墜、ブランド価値の失墜などにも繋がり、最悪の場合、上場会社の場合には、株価の低迷の要因になるだけでなく、倒産に追い込まれることもあるでしょう。

■企業経営にインテグリティが必要な訳
コンプライアンスは、「法令遵守」を意味しますが、近年その意味するところは多様になりつつあり、企業の持続的な発展のためには、社会規範や社会道徳を含めた「インテグリティ」を持つことが大切になっています。

インテグリティとは、英語では「Integrity」と表記されます。日本語では、「誠実さ」「真摯さ」「高潔さ」を意味します。

インテグリティは、ビジネスの場で注目されている言葉で、経営者の姿勢、ビジネスパーソンの在り方など、企業経営にとって非常に重視されています。

企業経営においては、必ずステークホルダーとなる、株主、経営者、従業員、顧客、取引先など利害関係者の存在がありますが、継続的な発展を実現するためには、利益を追求するだけでなく、経営陣や社員が正しい価値観を持ち、行動を行うことも欠かせない要件になると言えます。

インテグリティは、欧米企業を中心に企業経営や組織マネジメントでも使われるようになりました。

近年ではリーダーやマネジメント層に求められる「誠実さ」の素質として広がり、その中には、当然、コンプライアンスも含まれるようになっています。

■最高コンプライアンスオフィサー「CCO」とは?
最高コンプライアンス責任者とは、コンプライアンス(法令順守)や内部統制の責任者となるCCOを指します。

最高コンプライアンスオフィサーは、英語で「chief compliance officer」(チーフ・コンプライアンス・オフィサー)と表記されます。

日本語では、CXOの1人として、企業内において適切なコンプライアンスがなされているかどうかを管理し、適正にマネジメントする責任者を意味します。

CCOは、法令を社会的通念が守られているか「内部統制」を図るうえで重要なポジションです。

内部統制とは、 業務の適正を確保するための体制を構築していくシステム のことです。

内部統制は、コンプライアンスをはじめとして、会社における業務全般の適正確保体制を構築するための手段と考えられます。

・手段=内部統制
・目的=コンプライアンス

コンプライアンスは「法令遵守」と訳されますが、従業員が取引先に対して、違法行為が起こした際には、ただ単にメールで不正アクセス等の違法行為を慎むように促すだけでは、解決に繋がりません。

従業員が法令違反を起こした場合の処罰を会社として取り決めるだけでなく、時には会社を辞めて貰うという厳しい対応を取ることも、今後の企業防衛には必要になります。

社内規定などの書類だけを作成しても社内には、浸透しませんので、最高コンプライアンスオフィサーのポジションを置くことで、法令遵守をすることはもとより、企業の理念・規則などを定着させていくことも重要な取り組みになります。

■最高コンプライアンスオフィサーCCOの役割
企業が経営をするには、CSRに取り組み、自社の利益だけを優先させず、社会とより良い関係を築いていけるような企業であることが重要になります。

CSRとは、英語で「Corporate Social Responsibility」の略語になり、日本語では「社会的責任」を意味します。

最高コンプライアンスオフィサーは、法令遵守に関する専門的な知識はもちろんのこと、企業理念や社会常識などを理解した上で、企業倫理をマネジメントします。

そのため、法令違反があった場合にはCCOが厳重に対処し、処分する責務があります。そうすることで、「コンプライアンス体制が徹底されている企業」という評価をして貰えるようになります。

コンプライアンスを管理する仕組みがない、システムが脆弱で情報漏えいしやすいなど、企業の組織体制や環境に問題があるケースも多いです。

数人の社員が起こした不祥事がネットやSNSで拡散され、ニュースになり、会社全体の社会的な信用がガタ落ちになってしまうこともあります。

社内に法律に触れるような不正行為をしている人がいても、それらを指摘したり正す人がいないと持続的な経営が危ぶまれます。

口コミで信用が落ちたせいで、短期間で経営が危なくなってしまった会社も沢山あります。

コンプライアンスは、会社の存続そのものを左右するほど大切なものになります。

誰に報告していいのかわからないケースや誰もが簡単に機密情報にアクセス可能な仕事環境では、コンプライアンス違反を防ぐことができませんので、以下のような対策が必要になります。

・最高コンプライアンスオフィサー「CCO」を任命する。
・社内に内部告発の受け皿を作り、外部に相談窓口を作る。
CISOと連携し、様々な情報セキュリティー対策を行う。

内部告発の窓口の整備を効果的に行うためには、最高コンプライアンスオフィサーによる企業倫理を踏まえた対策が求められます。

CCOの役割としては、社内において防止すべき違法行為は何なのか、どのような仕組みを作れば従業員が不正行為を通報しやすいのかなど、様々な観点に留意しながら、より良いコンプライアンス体制の整備を目指することが大事なミッションになります。

■コンプライアンスとコーポレートガバナンスの違い
コンプライアンスに関連する用語に、コーポレートガバナンスがありますがその違いは、大きく下記になります。

コンプライアンス:経営者から見た従業員などを含む会社業務全般に着目した概念
コーポレートガバナンス:取締役会から見た代表取締役や業務執行者に着目した概念

コーポレートガバナンスとは、取締役会などが経営者を監視・監督する仕組みのことで、「企業統治」と言います。

企業統治により、企業内の不正をあらかじめ防止したり、効率的な業務遂行を促すことで、株主の利益を最大化することが目的です。

コンプライアンスとの違いは、コンプライアンスは法令や規則を守ることに対し、コーポレートガバナンスはコンプライアンスの管理体制や仕組みを作ることになります。

両者を実現するためには、社外取締役や最高コンプライアンスオフィサーを任命するこで、それぞれの視点から会社の改善点を見出し、会社の健全化を目指す取り組みが必要になると言えます。

中小企業か大企業かによらず、経営者や従業員が誠実な態度を心がければ、職場に良い影響をもたらすことができます。

ビジネスマンが人や社会に対して、誠実な態度を取ることは、企業の持続的発展にとって欠かせない要件になります。

人としてのインテグリティが高いことは、業務に対応する責任能力を会社側に示すことができるだけでなく、キャリアアップに繋がる鍵となる要素となり、明るい社風を生み出す効果もあります。

■コンプライアンスに対する近年の動向
近年、欧米を中心に従業員を「付加価値を生み出す資本」と捉える動きが広がっており、日本でも情報開示の義務化の動きが進んでいます。

人的資本を通して、投資家が財務情報だけでは測れない企業の本質的な価値をみる材料となっています。

人的資本とは、自社で雇用している人材を資本の一つだと捉える考え方です。

従業員数や一人あたりの人件費などで計る方法もありますが、近年における「人的資本」とは従業員の一人一人がウェルビーイングな状態であることを指します。

現在、上場企業の場合には、証券市場に参画するパブリックカンパニーとして、ビジネス規範に関するコンプライアンスを問う指標も重視されるようになっています。

その理由としては、インテグリティを重視して企業なのか、倫理的な問題を起こさなかったか、従業員の懲戒処分や懲戒免職の件数が抑えられているかで企業の健全性が計れるからです。

2018年に国際標準機構(ISO)が発表した、ISO30414「人的資本に関する情報開示ガイドライン」では、人的資本の情報開示の義務化されました。

今後、企業はコンプライアンスに関して、下記の内容を開示していく必要があると記載があります。

・提起された苦情の種類と件数
・懲戒処分の種類と件数
・倫理・コンプライアンス研修を受けた従業員の割合
・第三者に解決を委ねられた紛争
・外部監査で指摘された事項の数と種類

誠実な従業員を採用しようと取り組んでいる企業は、質の高いサービスを提供し、評判の高さを維持する体制が整っています。

人的資本経営を目指すには、コンプライアンス研修を受けた従業員の割合を高めるなど、ポジティブな対策をすることもできるでしょう。

インテグリティが高い経営陣がいる企業では、ステークホルダーは、従業員の真摯さと真面目な仕事ぶりを信頼しています。

■コンプライアンス違反を防止する7つのポイント
コンプライアンス違反を防ぐためのポイントにはどういったものがあるのでしょうか?

1、行動規範を作成する
従業員にコンプライアンスを徹底させるためには、まず行動規範を作成し、それに従ってもらうようにします。

行動規範は、企業が企業として存続し継続的運営を行うための基準となります。

企業が守るべき考え方を事柄を行動規範に定め、従業員の法令遵守を促進し、活動することは非常に重要な取り組みになります。

行動規範とは、企業が企業として存続し、継続的運営を行うために適用される法律、基準、法的リスクへの対応を行う意味を持ちます。

基準を定めることで、企業が目指す方向性や従業員がどういった行動をしていくべきかが明確になり企業全体が統一化された活動ができます。

行動規範は企業が守るべき法令など遵守する企業存続そのものにあたるため、企業倫理よりも広義の意味を持つことになります。

2、企業倫理を定めリスク管理を行う
企業倫理とは、企業活動上で最重要かつ守るべき基準となる考え方を指します。

企業倫理を策定する際には、企業が守るべき法令や目指す姿についての棚卸や整理を行います。

経営層からの率先垂範、役員から現場レベルまでの全社での教育・研修、企業倫理の浸透状況の継続的な評価といった組織への浸透を推進します。

企業の今後を見据えた長期的な視点でのあるべき姿を議論し追求することで、今までにはなかったあるべき姿の可視化を実現します。

社内規程や業務マニュアルの整備は、会社の業務が法令等に沿った形で行われることを確保するために重要です。

リスク管理のマニュアルが十分に揃っていない会社では、法務担当者が主導して早めの整備を図ります。内容をしっかり覚えて実践していれば、コンプライアンスについてのトラブルに見舞われることはないでしょう。

もし、行動規範が作成してある場合は、企業倫理に基づき、現状の働く環境などと照らし合わせて適したものに修正しつつ、定期的に見直しを行いましょう。

3、コンプライアンス研修の実施
従業員の中には何がコンプライアンス違反に当たるのかわからない人も一定数いることが想定されます。

従業員や他の会社の情報に意図的に、不正アクセスを行っているなど、実際の事例を踏まえて自社に起こりうるリスクを認識させる必要があります。

行動規範を策定すると、従業員への周知を行い、企業文化、風土としての定着を促進する必要があります。

この一連の活動から、組織のあり方やあるべき姿の理解を促進させ、組織としての姿を周知、定着させ行動に結び付けていきます。

大手企業の場合、入社時にコンプライアンスや情報管理についての社内規定の研修が実施されています。

コンプライアンス研修がなかったとしても、書類の形で社内規定が共有されるはずです。

社内規程や業務マニュアルを制定・刷新した際には、その内容を社内に周知することも大切です。コンプライアンス研修を定期的に実施することで、違反を防止していきましょう。

4、環境整備のチェックと働き方の改善
自社の行動規範が無く、働き方のルールの取り決めや職場環境が悪いと、コンプライアンス違反が起こりやすくなります。

働き方を改善するためには、様々な環境整備を行い、企業としての行動規範を策定するこすることが従業員の規律を高め、モチベーションアップにも大きな影響を与えます。

企業のあるべき姿が明確になり、どう行動するべきかを理解することで、従業員による企業理解や信頼の促進が図られます。

まずは社員にヒアリングやアンケートなどを行い、社内で問題になっていること、改善したほうがよいことなどを洗い出しましょう。

内部通報者は、企業にとっては邪魔な存在ではなく、より良い方向へと導いてくれる人材になります。

問題が発覚した際には、会社のトップや役員などの上層部を巻き込み一丸となってトラブルの要因となっている事柄を改善していく必要があります。

基本的には、経営陣が方針を決めて、法務部やその他専門部署などがコンプライアンスの体制構築を実際に進めていくことになります。

コンプライアンスを強化する上では、社内向けのアナウンス資料を作成したり、従業員研修を実施したりして、社内全体への浸透を図ることが大切になります。

5、内部告発の相談窓口を設置する
コンプライアンスを相談できる内部告発の窓口を設置するのもおすすめです。

内部告発とは、企業内部の人間が、公益保護を目的に、所属組織の不正や悪事、法令違反などを、外部の監督機関や監督官庁、報道機関などへ知らせて周知を図る行為になります。

多くの組織の不祥事やその隠蔽は、この内部告発によって明らかになるケースが多いと言われています。

そのため、倫理規範違反が発生した際には、事実の開示と厳正な対応といった施策が必要になります。

社内で違法行為が発生し、深刻化するリスクを防ぐには、従業員に通報を促し、早い段階で違法行為の端緒を把握することが大切です。

内部通報の窓口を設置すると、社内における違法行為の芽を早期に摘むために効果を発揮します。

「コンプライアンス違反予備軍」を発見したときに、気軽に報告や内部告発の相談ができるようにして置くことで、コンプライアンス違反前に対応することができます。

企業としてコンプライアンス違反をしないためには、再発防止の仕組みを作り上げ、ヒヤリハットの段階でいかに情報をキャッチアップできるかが非常に重要になります。

6、外部のコンプライアンスの専門家への相談
元警察など外部の専門家に、行動規範や働き方、環境などを客観的な目で確認・判断して貰うことで、社内だけでは見えなかった問題点が浮き彫りになることもあります。

専門家のアドバイスにより、コンプライアンス上の問題点を早期に発見・改善することで、法令違反を未然に防ぐことができます。

労働法をはじめとした法律の専門家である弁護士や社労士、警察などに相談できるようにして置くことも、コンプライアンス違反を防ぐことに繋がります。

社内規程や業務マニュアルの整備に当たっては、外部の弁護士からのサポートを受けることも有力な選択肢です。

企業内におけるコンプライアンスに関する窓口担当者には、中立的な立場の従業員や外部専門家を配置し、通報によって不利益に取り扱われることはない旨を明示するなどの方法が有効になります。

一般の企業は、「法律を守る=善」としか考えていないので、「法律を破る=悪」(企業不正)を想定していません。

内部不正やサイバー犯罪を放置し、捜査機関となる警察への被害申告や弁護士への情報提供をしなかった場合、犯人は野放しになり、新たな被害が発生し、企業自体が犯罪の温床になります。

そのような企業は、もはや社会的責任を果たしているとは言えないので、顧客を含めたステークフォルダーが離れること多くなります。

今後、社会全体がその企業を厳しく取り締まり、事業自体が継続不可能となって、マーケットからの撤退を余儀なくされる可能性もあるでしょう。

7、弁護士会への相談窓口を告知する
組織の不正を明るみに出し、不法行為を正すためには、「内部告発」が非常に重要な働きをします。

内部告発の窓口に関する制度設計を行う際には、従業員が法令違反を通報しやすい体制を整えることが重要になります。

企業からの内部告発を促すためには、公益性がある機関へ相談できることや、コンプランス違反の取り締まりを強化することが組織の利益を上回ることが非常に重要になります。

通報により個人が特定され、不利益を被るような体制の職場では、何か問題が起こったときに誰も関心を示さなくなります。内部通報をした社員が不利益にならないように生まれた法律が「公益通報者保護法」です。

内部告発を考えている人の相談窓口として、「公益通報者保護法」に基づき、弁護士会は無料もしくは、廉価な相談窓口を開設しています。

「公益通報者保護法」では、内部告発者が保護されるための様々な要件が決められており、不用意に企業の外部へ内部告発を行うと保護の対象にならないケースもあります。

その点、弁護士には守秘義務があるため、内部告発の相談を行っても、企業外部への告発とみなされることなく、告発の方法や身分の保護について確実な手順を示して貰うことができます。

弁護士会と連携し、組織的な法令違反による問題点を早期に発見し、適切な改善策を講じることで、コンプライアンス違反を未然に防ぐことができるでしょう。

■インテグリティのある企業を目指し経営者ができること
企業がビジネスを展開する上で、コンプライアンス違反があれば、社会からの信頼を失い、業界や企業規模を問わず、企業活動にも様々な悪影響を与えます。

米国企業の経営方針や社員が守るべき行動規範を記した文面には、「インテグリティ」という言葉が頻繁に使われています。

伝説の投資家と呼ばれるバフェットは、「インテグリティを伴わない知性や活力は危険でさえあり、それならばいっそ愚かで怠惰な人間を雇うほうがましだ。」と、明言しています。

「人を雇うときは、三つの資質を求めるべきだ。すなわち、高潔さ、知性、活力である。高潔さに欠ける人を雇うと、他の二つの資質が組織に大損害をもたらす。」

<ウォーレン・バフェット>

ここで言う「高潔さ」と訳されている概念こそがインテグリティです。

企業のトップがコンプライアンスについて正しく認識し、守るべき規範を提示しなければ、従業員のコンプライアンス意識も高まりません。

まずは、経営トップが意思を示した上で、以下のようなコンプライアンス対策を行なうことをオススメします。

・法令遵守:最高コンプライアンス責任者CCOの任命
・ルールの整備:就業規則・行動規範の策定
・コンプライアンス体制の整備:専門委員会・専門部門の設置
・研修の整備:従業員の啓発・コンプライアンス指導

誠実さは、雇用主である会社と従業員の友好的な関係の基盤となるものです。

会社と従業員が互いに信頼し合い、敬意を持って仕事に取り組むことで、ステークフォルダーに公明正大に接する企業文化を醸成することが可能になります。

インテグリティを重視する職場では、経営者や従業員の心技体のバランスの取れた人間形成が成されているため、仕事をする上での生産性とモチベーションが向上しやすくなると言われています。

経営者や経営幹部、従業員が「インテグリティ=誠実さ」を持ち、倫理や道徳に関する規範をしっかりと持つことは、社会から高く評価されます。

コンプライアンス意識の高い会社は、持続可能な社会の発展に貢献できる資質や能力を有する、優れた人材が溢れる魅力的な企業になると言えます。

■まとめ
コンプライアンスとは、法令遵守を指しますが、企業が社会から求められる倫理観や公序良俗の意識を指します。

高いインテグリティを持って経営をしている企業は、最高コンプライアンスオフィサーCCOのポジションを置き、あらゆるの企業活動に対して「法令遵守」を徹底し、誠実さ、真摯さ、高潔さを持ってビジネスに取り組みます。

法令遵守をはじめ、企業倫理、社会規範に従った企業経営は、顧客や取引先からの社会的な信頼が得られます。

企業による不祥事が増えた経営においては、顧客や取引先からの信頼を獲得するために、組織的にコンプライアンスを推進することは必須となりました。

なぜなら、顧客や取引先、従業員に対して公正公平に接する姿勢を企業が持つことで、社会的な評価に繋がるからです。

情報漏えい、データ改ざん、ハラスメント、ジェンダー平等など、法令の有無を問わず、企業は社会倫理に従って判断し、経営を行うことが求められています。

従業員が他社に不正アクセスを行うなど、犯罪行為の場合には、法令違反になるため、刑事事件や裁判に発展することもあります。

現代においてコンプライアンスという言葉が浸透した理由は、インターネットやSNSなどの使用が一般的になって企業を取り巻く環境が大きく変化したことが挙げられます。

こうした社会が求める企業像は、社会情勢はもちろん、国民の意識や時代の移り変わりによっても変化していくため、定期的な見直しと改善が必要になります。

経営層や総務、人事などにコンプライアンスの知識がなく、結果的に法令を無視してしまうこともあります。

企業が社会から求められる倫理観の理解が甘く、知識不足によるコンプライアンス違反が、よくあるケースのひとつになります。

最も重要で、優先すべきコンプライアンス対策は、「経営トップがコンプライアンス違反を許さないという決意を、社内外に示す」ことです。

健康経営を目指すためには、様々なコンプライアンス対策を行なうと同時に、経営トップの本気度が従業員に伝わらなければ、企業風土の改善は望めません。

勤務する部署やキャリアの段階を問わず、職場では誠実さを発揮することが重要になります。

周囲に対して手本を示す機会がある指導的立場の仕事では、誠実さを欠かすことはできません。

自分の行動を通じてゆるぎない価値観を体現することで、他の従業員に同じような行動を促すことができます。

「経営者が学ぶことのできない資質、習得することができず、元々持っていなければならない資質がある。それは、才能ではなく真摯さである。

部下たちは、無能、無知、頼りなさ、不作法など、ほとんどのことは許す。

しかし、真摯さの欠如だけは許さない。真摯さに欠けるものは、いかに知識があり才気があり仕事ができようとも、組織を腐敗させる。」

<ピーター・ドラッカー>

■最後に
インターネットの登場やスマートフォンの普及、SNSやプラットフォームの誕生により、人々の生活は便利になり豊かになりました。

しかし、インターネットが普及した今、DXに取り組む重要性が増しました。DXとは、ビッグデータなどのデータとAIやIoTを始めとするデジタル技術を活用して、業務プロセスを改善する取り組みを指します。

DXの推進とは、製品やサービス、ビジネスモデルそのものを変革するとともに、組織、企業文化、企業カルチャーをも改革し、競争上の優位性を確立することを意味します。

デジタルトランスフォーメーションに多額の投資をする企業が急速に増えたことで、DXの波に比例する形で、インターネット企業だけでなく、サービスを利用する個人へのサイバー犯罪による被害が急速に増えています。

それに伴い、2000年に「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」が施行されています。

従業員によるハッキング行為や不正アクセスを含めて、些細な行動が企業の大きな問題に発展してしまうリスクを抱えています。

インテグリティの意味である「誠実さ」は、今の時代にこそ大きな意味合いを持っているのではないでしょうか?

法令遵守とは、法律で明記されている事項を守ることを言います。

一見、コンプライアンスと法令遵守が同じ意味であると勘違いされがちですが、コンプライアンスと法令遵守は同義語ではありません。

企業が法令違反をしてしまうと、罰金や懲役などの処罰が課される恐れがあります。

企業に対して警察や裁判所、行政から処罰が課された場合、ビジネスを展開する上でも顧客からの信頼を失い、会社のイメージ低下も否めません。

コンプライアンスとは、法律を守ることに加え、法律に記載されていないインテグリティに重きを置き、社会的モラルや企業倫理までも守ることを意味します。

つまり、法令遵守よりもコンプライアンスの方が、より意味が広い解釈になります。

会社とは本来、社会の公器であり、公共性や社会正義をもたらす存在になります。

企業は、混沌としたこの世の中に事業を通じて、社会貢献を行うこそが存在理由であり、企業で働く人の行動は常に高い倫理性を持って、世界を照らしていけるよう尽力していかなくてはなりません。

組織として法令を守るだけではなく、企業としての社会的責任を果たすことを含めて、広義のコンプライアンスに取り組むことで、社会からの信頼を得られ、企業のブランドを形成し、企業価値が向上します。

企業経営においては、代表取締役がビジョンを掲げ、経営陣となる取締役が率先してコンプライアンス(法令遵守)しながら、一人一人の従業員が誠実な振る舞いをすることが、会社とコアバリューとなる中心となる価値観をあらゆる場面で表現することに繋がると言えます。

本田季伸のプロフィール

Avatar photo 連続起業家/著者/人脈コネクター/「顧問のチカラ」アンバサダー/プライドワークス株式会社 代表取締役社長。 2013年に日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」を開設。プラットフォームを武器に顧問紹介業界で横行している顧問料のピンハネの撲滅を推進。「顧問報酬100%」「顧問料の中間マージン無し」をスローガンに、顧問紹介業界に創造的破壊を起こし、「人数無制限型」や「成果報酬型」で、「プロ顧問」紹介サービスを提供。特に「営業顧問」の太い人脈を借りた大手企業の役員クラスとの「トップダウン営業」に定評がある。

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