優れた経営者の中には、会社全体の経営戦略を考え、今後の経営方針を打ち出し、自社の社風にカルチャーフィットする人材を集めるのが得意な社長が多いです。
同じようなビジネスを展開している会社でも発展する会社と伸び悩む会社があります。
企業の発展に大きな違いをもたらす重要な鍵となる要素が「組織文化」になります。
なぜなら、そこで働く一人一人の人材のポテンシャルを開花させ、ビジネスを発展させて行くかは、どんな考え方を基本にし、「組織文化」にどんなメッセージを盛り込むかで、企業の未来が大きく変わるからです。
人を惹き付け、躍動させる組織文化が定着している企業は、共通のビジョンの実現に向けた迅速な意思決定が可能になり、社員が自発的に行動する傾向が高くなります。
しかし、組織文化に興味があるものの、自社に置き換えた場合に、経営者の信念や理想のカルチャーをどのように社内に形成して行くべきか分からない社長もいるでしょう。
そこで今回、組織文化とは何か、企業に原理原則となる哲学や行動指標が大切な理由について解説します。
「優れた組織の文化は、昨日の優れた仕事を今日の当然の仕事に、昨日の卓越した仕事を今日の並の仕事に変える。」
<ピーター・ドラッカー>
■組織文化とは?
組織文化とは、事業目的を達成するため、事業を管理している経営組織で共有され、正しい行動をするための「原理原則」となる考え方の基礎を成すものです。
会社として大事にしている「思想」を共通化し、固有の文化を表す言葉として明文化され、社員にも共通認識として根付いている思考と行動のパターンになります。
組織が大切にしている価値観や信念とも言えます。企業では組織文化と社風を同等の意味で用いられることがあります。
組織文化は、組織のあるべき姿を明確にするために作られるルールや規則などを指します。
自然に定着していく組織風土とは明確に異なり、組織文化は意図的に構築されます。
企業経営において組織文化の形成が重要視されるのは、企業のコアとも言える行動指標に基づき、全社員が同じ価値観を共有できるようになるからです。
正しい倫理観に基づき、社会に貢献するビジネスを運営するための「共通認識」を持つことで、社員は同じ価値観や考え方、そして「共通言語」に基づいた適切な行動を自発的に取ることが可能になります。
■組織文化の基礎は経営者が作り上げる
組織文化は、社員にとって共通認識となる「道しるべ」になるものです。
組織文化を形成するコアとなる考え方は、その会社を起こした創業者が信じている「ビジョン」を基準にし、経営者の人間性や哲学に基づいて考えられる判断や行動についての「行動指標」と言い換えられます。
社内に組織文化を根付かせるためには、そこで働く全ての人が働く「原動力」となるような魅力的な「スローガン」を作り、誰もが分かり易いように文章化することが大切です。
「行動原則」として社内の目立つ所に貼り付け、常に意識付けすることを徹底すると組織に浸透し、機能するようになります。
組織文化を社内に浸透させるためには、経営者や部下の模範になる立場にあるリーダーが行動で示すことが大切です。
なぜなら、リーダーが組織文化に基づいた行動を取れば、部下の意識を高めることができ、自然に組織内に浸透して行くからです。
■創業者の想いを組織文化として根付かせる重要性
組織が大切にする考え方や価値観の根幹には、創業者の意思・理念が基になります。
組織文化は、創業者がどのようなことを考え、何をするために会社を設立したのか、創業者の行動や意志が浸透し、創業メンバーのみならず、新たにジョインする人材にも引き継がれるからこそ、独自の組織文化が形成されて行きます。
創業者がこれまでに行ってきた行動も、企業の理念の基本になるため、創業者の言葉や行動が組織文化を作り出す重要な要素となります。
次世代に組織文化を継承するためには、創業者は創業当初に大切にしていた創業者の想いを受け継ぐことが重要です。
スタートアップやベンチャー企業など、企業の歴史が浅い企業では、起業家が信念を持って立上げたビジネスを通じた経済活動と、顧客に接する日々の対応や行動そのものが組織文化の一つになる可能性があります。
企業の経営理念に、創業者の意思を反映させ、企業が求める人材の要件を定義し、組織に求められる理想の人材に育つような言葉や行動に繋がるメッセージが盛り込まれているか確認しましょう。
■組織文化を作り上げる7つのメリット
1、行動指標に繋がる。
組織文化は、経営理念や就業規則、会社の判断基準など、社員にとって方向性や行動が整ってくる指標でもあります。
会社の規模が大きくなると社内の結束が弱まってしまう場合や、それぞれ別々の方向を向き始めてしまう傾向にありますが、判然とした組織文化があれば、組織に一体感が生まれ、社員は同じ方向を向いて進むことができるでしょう。
2、意思決定の間違いが少なくなる。
ライバルが多い市場であれば、サービスそのもののブランディングだけでなく、組織文化の強さによって、競合を上回ることもありえます。
魅力的な組織文化が根付くことで意思決定の指針が定まりやすくなります。また、トラブルが起きた時も早期解決できるスピードが大幅に向上します。
なぜなら、経営陣やマネージャーの意見が分かれた際にも組織文化を思い出すことで、問題解決に向けての優先順位を確認することができるからです。
3、企業ブランドが形成される。
企業ブランドとは、ある企業の商品やサービスについて、同じカテゴリーの他企業の商品やサービスと区別するために構築される認知やイメージのことを指します。
その企業の組織文化が、「社員を大切にしている」「お客様満足度を最優先で意識する」「品質やオリジナリティを第一にしている」などであれば、企業が自社のPRとして打ち出していくアピール部分にもなるので、外部には企業イメージとして広がっていきます。
4、ビジネスの軸となる考え方ができる。
顧客重視の組織文化であれば、お客様第一の物の見方や振る舞いができる社員が増えます。
チャレンジ思考が望まれる組織文化であれば、新しいアイデアを提案する社員や自主性の高い社員が増えるでしょう。
組織文化が優れており、行動を促す大切さが明文化されていれば、「自分はこの組織にどのように役立てるか」という疑問に対して、自発的に行動する人材が増えます。
5、組織内の経済活動に良い影響を与える。
良い組織文化が形成できると、営業活動やマーケティング活動の活力が生まれるため、会社全体を通して創出する様々な経済活動に良い影響を与えます。
経済的価値を継続的に生み出していくことは、会社の存続に関わる重要な要素になります。
組織文化は組織の経済活動に大きな影響を与えます。顧客に役立つ商品やサービスを提供することで、その会社で働く人材が仕事のやりがいを感じ、会社に貢献すべく成果を出そうとエネルギッシュに向き合うでしょう。
6、組織文化に共感した仲間が集まる。
企業が目指している方向への共感度が高い人が集まりやすいこともメリットです。
適切なブランドイメージが蓄積され、企業のブランドイメージと実情との間に乖離がなければ、マッチ度が高く離職率の低い、エンゲージメントの高い人材を集められます。
採用活動で組織文化を魅力的なスローガンとして発信していくことができれば、同じ意識で仕事に臨める人材が入社希望してくることが期待できるでしょう。
7、人材の定着率向上
組織文化は、経営者によって形成され、確立されていくものです。その核にあるのが企業および各ブランドの理念や哲学、パーパス(存在意義)になります。
組織文化が浸透するメリットとして、カルチャーフィットする人材を採用できるだけでなく、優秀な人材の定着率が向上します。
経営者が作り上げた独自の組織文化に馴染める人材は、愛社精神が高く、会社への不満が少ないため離職しにくい傾向にあります。
■組織文化がコミュニケーションの土台になる理由
組織文化は歴史の浅い会社でも、まだ大きな業績を上げていない会社でも存在します。
「こういう価値観を持つ方がいい」や「あの哲学を大切にした方がいい」など、組織文化の模範回答は存在しません。
創業者の考え方やポリシーを企業内でどれだけ多くの人が賛同し、同じ組織文化として共感することができるか、ビジョンの達成を強く信じられるかが重要なポイントになると言えます。
理想の組織文化が形成されると、経営者の「ビジョン」に基づき行動することが可能になるため、社内のコミュニケーションが円滑に行えるようになります。
組織文化が浸透している企業でコミュニケーションが取りやすくなる理由は、創業メンバーであるか、営業職やマーケッター、エンジニアなど、その立場に関係なく共通の価値観や考え方を全うすることが、企業にとって大事であるという前提条件があるからです。
組織文化は、社員の行動だけでなく社会から持たれる企業イメージにも影響を及ぼします。
■組織文化の形成にはインナーブランディングが必要
組織文化が確立しておらず、「企業らしさ」が浸透していない会社では、社員ごとに考え方や目標が異なるため、方向性が統一できず、無駄なコミュニケーションコストが掛かってしまいます。
共通の組織文化を形成することができれば、経営者の仕事に対する考え方や企業が大切にしている事柄を共有できます。
これにより、意思疎通や様々なプロジェクトの合意形成が取りやすくなり、余計なコミュニケーションコストを大幅に減らすことが可能になります。
企業文化が組織や社会に浸透することは、競争優位性を高めることにも繋がります。
長い時間をかけて醸成された組織文化は、他社が簡単に真似できるものではありません。
仮に見せ方を模倣できたとしても、経営者が異なれば、「パーパス」の基となる「何のために、自社は存在するのか」という問いの答えが違うため、同じ効果が得られるとは限りません。
組織文化は、日々のコミュニケーションを通じて浸透していくため、インナーブランディングの設計を見直すなどして、戦略的に構築していくことが大切です。
■まとめ
組織文化とは、ビジネスを通じて「ある目的を達成するために構成された組織内で、共有されている考えや価値観、哲学」のことを言います。
組織全体の雰囲気や特徴を表す時に、「組織のカラー」と言った言葉が使われることがありますが、これらもこの組織文化に含まれるでしょう。
従業員同士が同じビジョンを描きながら進められるため、新規事業の立ち上げや新に商品ラインナップを増やす際にも「企業らしさ」を盛り込んだ理想のプロダクトが出来上がるでしょう。
強い組織文化を形成するためには、経営者のみならず、組織に所属する人が企業が掲げるビジョン、ミッションを軸に、近い将来で達成すべき長期的な目標をしっかりと理解していなければいけません。
そのため、組織のトップが企業を取り巻く「ステークホルダー」に対して、経営者としての考えを発信する際は、日頃の言葉遣いや表現、伝える内容に注意して伝えることが大事になります。
共に働く仲間に対してビジョンを伝える際のポイントは、企業として目指すべきゴールやあるべき姿を自分自身でしっかりと噛み砕き、「こうあるべきだ」という「模範行動」を示すように心がけることが必要です。
従業員が企業のビジョンに賛同し、共通のゴールに向けた目標を一緒に達成したいと思えなければ、文化の統一は難しいと言えます。
組織文化の形成を目指す際には、まず従業員には自社のビジョンを理解し、共感を得られるように「インナーブランディング」の活動から始めましょう。
■最後に
日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」では、企業理念やブランド価値を社員に伝え浸透させる活動を支援することを目的に、「インナーブランディング」のプロによる実行サポートを推進しています。
インナーブランディングとは、企業理念や組織文化、ブランド価値を現在、社員に対して共有するだけでなく、新たに採用する人材に向けて情報発信を行うことで、企業イメージを対外的にも向上させる取り組みを指します。
効果的にインナーブランディングを実施すれば、自社の価値や企業理念について社員の理解を深めることが可能になります。
組織文化が浸透することで自社に対するイメージが向上し、社員同士の連帯感や愛社精神を高めことにも繋がります。
その結果、会社が掲げるビジョンに到達すべく中長期的な目標達成を目指し、社員全員が一丸となって取り組めるようになるため、組織としてのパフォーマンスの向上も期待できます。
KENJINSでは、人材採用や人材定着と「組織文化」作りの課題を抱えた企業の「インナーブランディング」を推進するCBO「Chief Branding Officer」最高ブランディング責任者をアサインし、実行支援を行っています。
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