MOT(技術経営)が製造メーカーに欠かせない理由とは?

投稿日: 作成者: KENJINS運営元代表 カテゴリー: プロ活用方法   パーマリンク

経済のグローバル化が拡大する中で、イノベーションを中心とした高い技術力を重視する企業が増えています。そのため、高い技術知識と経営能力を兼ね備えた経営人材を中心としたMOT(技術経営)の品質が、企業の存続に大きく関わるといわれています。

特に過去の成功体験を踏襲する傾向が高い日本企業には、MOT人材が足りていないと指摘されています。日本の大企業は自動車産業をはじめとした製造業で占められているため、技術経営(MOT:Management of Technology)視点での取り組みが、企業の成長戦略にとって極めて重要であることが認識されるようになってきました。今回はMOT(技術経営)の意味やメリット、MOT人材に必要な要件などついて解説します。

■MOT(技術経営)とは?
MOTとは、Management of Technologyの頭文字をとっています。技術経営と翻訳され、科学的知識や工学的知識をはじめとした技術的な知識をどのように管理し、役立てていくのかを示します。以前は経営スペシャリストである海外MBA(経営学修士)を取得している経営者が重宝されていた風潮がみられましたが、近年では高い技術知識と経営能力を合わせた経営手法であるMOT(技術経営)が注目されています。

MOT(技術経営)は、高度な技術知識を持ち、その知識を経済合理化させる戦略的マネジメントを策定・実行する能力が求められます。この作業は不確実性が高く、適切な方法論が確立されていない高度なマネジメントに分類されます。

かつて米国のビジネス界では、MBA(Master of Business Administration)が一世を風靡。企業戦略やプロジェクト戦略の構築を担う人材を育成するために、MBA教育がさかんに行われ、企業はMBA取得者を将来の経営幹部候補として積極的に雇用していました。しかし、MBAでは、技術や研究開発を経営資源として重視してこなかったという反省から、技術革新を理解し、それを企業経営に活かせるマネジメント人材を育てようという動きが高まってきました。MITのビジネススクールである、前述のスローン・スクールにMOTが導入された背景には、まさにそうした流れがあったのです。

■MOTの意味
「技術経営」とは、技術力をコアコンピタンスとする企業・組織が、その事業の持続的発展のために研究開発や技術開発の成果を事業化に結びつけ、新たな経済的価値を創出していくマネジメントのこと。あるいはそれを推進する学問的研究や教育プログラムなどを指します。

現在の日本の名目GDPにおける産業別構成比では、製造業が18.5%を占めており、独自の高度な技術力(テクノロジー)をコアコンピタンスとして位置付けている企業が多い傾向がみられます。それに伴い、MOTを重視する企業も増えています。

どんなに優れた技術力(テクノロジー)を持っていたとしても、製品化(商品化)・事業化し、経済的価値を創出していかなければ、意味がありません。そのため、自社が持つ独自の技術を経営資源と捉え、戦略的かつ効率的に活用できるMOTの取り組みに精通した経営人材の需要が高まっています。企業独自の技術を経営資源として捉え、戦略的に活用できる人材こそがMOT人材になります。技術を経営資源として戦略的・効率的に活用するためには、テクノロジーとマネジメントの双方に精通した人材が必要であり、こうした技術経営を担うMOT人材の育成が、日本の産業界においても喫緊の課題として浮上しています。

■日本の製造メーカーの技術力
現に90年代におけるわが国の製造業の国際競争力の低下は、世界トップクラスにある研究開発投資や特許取得に比べて、極端に低いマネジメントレベルが原因であるともいわれています。テクノロジーは自然科学分野、マネジメントは社会科学分野として切り離されてきた従来の日本の学校教育体制の下では、さらなる産業競争力の衰退さえ危惧されます。

経済産業省が発表している「特許庁ステータスレポート2017」では、2016年に日本国特許庁が受理したPCT国際出願件数が44,495件と過去最高の件数を記録しているものの、みずほ総合研究所が発表している「国際競争力後退の要因は何か」では、日本の国際競争力は8位と結論付けています。このレポートから、PCT国際出願件数の結果と比べて、高い技術力を事業に活かせていない傾向がみてとれます。また、同レポートでは国際競争力後退の主因は「企業経営者の自信欠如」とも結論付けています。

今後、日本企業が厳しい国際競争に勝ち残る上でも、コンセプト創造型リーダーシップマネジメント(新しいモノの創造力)への転換が必要不可欠といわれています。このコンセプト創造型リーダーシップマネジメントはMOTが目指すべきマネジメントであり、今の日本企業に必要とされる経営能力と考えられています。

★MOTが求められる背景
現在、デジタル化(IT化)とグローバル化の進展によって、開発した技術や製品がすぐにコモディティー化してしまう時代となってきています。技術とマーケットの変化のスピードは予想以上のものとなり、ついていけずに苦悩する企業が数多く存在しています。加えて、欧米やアジア諸国では、格差社会の広がり、高い失業率、深刻な少子高齢化などの影響で、企業はこれまでのやり方では成長軌道が描きづらい状況となってきています。

MOT(技術経営)が求められる背景には、日本型ビジネスモデル(キャッチアップ型)の崩壊と、技術革新を前提とした戦略的マネジメントの欠如が挙げられます。日本における特許取得率や研究開発投資額の水準は世界的に高水準であるのに対し、ビジネス効率性の水準は低いという現状となっています。そこで、技術と経営に関する専門知識の双方を理解し、科学技術の成果を効率的に新事業・新製品に結実させるような人材の育成が急務とされています。

■日本型ビジネスモデルの崩壊
日本型ビジネスモデル(キャッチアップ型)とは、欧米で開発された製品から発想を得て、徹底した安全・品質管理および生産プロセスの合理化によって、実現した低価格・高品質(機能的価値を付与した)の製品を創出するビジネスモデルです。これにより、Made In Japanの製品(商品)は世界市場で絶大な支持を受け、戦後、世界第2位の経済大国へと発展することができました。

一方で、過去のビジネスモデルの成功体験に囚われるあまり、イノベーションを前提とした、戦略的な製品(商品)・サービスの創出であるフロントランナー型ビジネスモデルへの移行に遅れを取ってしまいました。その結果、新たなイノベーションを生み出すためのMOT(技術経営)の需要が高まったと考えられます。

イノベーションという言葉の起源は、ヨーゼフ・シュンペーターが著した「経済発展の理論」(1912)の中に記述されている「経済発展の原動力は新結合(=イノベーション)にある」という概念によるものです。“イノベーションを起こす”とは、既存社会の中に新しい技術・新しいやり方を組み込む“創造的破壊”により社会や経済が発展していくというものです。彼の概念はピーター・ドラッカーなどの経営学者たちに引き継がれ、現代にブラッシュアップされています。

■技術革新を前提にした戦略的マネジメントの欠如
経済が急速にグローバル化する中で、画期的な製品(商品)・サービスは高度な技術力と密接に関連していることが多く、イノベーションをいかに早く、短期的に創出できるかが、企業の持続可能な成長の鍵になります。そのため、オープン・イノベーションなどの手法を使い、外部資源を積極的に活用した技術開発や明確な技術開発の目標設定、開発戦略の策定などの戦略的マネジメントが不可欠です。

しかしながら、日本の経営者は技術的・戦略的マネジメントの経験が不足しており、日本の国際競争力の低下を招いたといわれています。そのため、現在の日本企業の多くは、自社の技術力を経済的価値に結びつけることができるMOT人材が必要な時代に変化してきたと言えます。

ドラッカーによれば、「未来を予測する方法は、未来を自らつくりだすことだ」と語っており、これは非常に的を射た名言としてよく知られています。彼を含め多くの学者、識者、技術者たちによりイノベーションの概念に具体的事例や理論が導入され、体系化されました。これを集大成したものが、MOTという実践的なツール、方法論になります。

日本の製造業における技術経営の大きな問題点として、研究開発 (R&D)への投資が、下記のアンケート結果のように企業利益に結び付きにくくなっていることを挙げられます。

・他社より先に製品を市場に出そうとするために、モデル・チェンジが加速化している。デバイスを自社で開発する余裕がなく、他社から買い集めて 製品化するために原価高になりがち。
・エレクトロニクス製品は一機種に多くの特許技術を必要とするため、企業内で開発した特許技術でも、クロスライセンスによって他社製品との差別化が難しくなる。
・投資力が大きい中国・韓国・台湾企業と競争するにはR&D投資、設備投資を集中させなければならないが、国内主要電機企業グループは 横並び的に製品群をまんべんなく持っているために、どの分野のどの製品に集中させるかという判断が難しく、決断が遅れる。また、企業内におけるこれまでの 開発の歴史やしがらみが、開発作業の集約を難しくしている。
・優秀な技術や技術者を持っていても、それで勝てるような一貫した技術戦略・特許戦略・事業戦略・経営戦略ができていない。
・日本に多いフォロワー型企業は、プライス・リーダーが価格を下げると、低価格化で対抗せざるをえない。

★MOT導入の3つのメリット
世界経済の停滞や不確実性、社会の閉塞感などが漂う中であるからこそ、新たな成長エンジンとしてイノベーションがあらゆる場面で強く望まれているのです。このイノベーションを起こすために必要かつ有効な手段として、MOTを位置づけることができると思います。MOT(技術経営)を導入することで、企業には「新規事業の創出・収益化」、「研究開発マネジメントの向上」、「知財・外部資源の活用」などのメリットを享受できます。

1、新規事業の創出・収益化
MOT(技術経営)は、「自社の技術と社会のニーズを結び付ける」ことを前提に製品(商品)開発を行ないます。戦略的かつ横断的なマーケティングを実施し、新製品(商品)・サービスの創出のための専門組織を立ち上げる戦略が取れるため、新規事業を創出するための環境整備や、自社の技術が収益化につながる可能性が高まります。これらによって、新規事業を創出するための環境整備や、自社の技術が収益化につながる可能性が高まります。

2、研究開発マネジメントの向上
プロダクトライフサイクルの短期化に伴い、スピード感のある研究開発が求められるようになった結果、M&Aが主流となり、自社内での研究開発が衰退するというデメリットが生じています。しかし、MOT(技術経営)では、アイデアのテーマ化や分析、事業性検証といった研究開発プロセスを適切にマネジメントすることができます。その結果、研究・開発段階で研究開発投資効率の向上・管理ができ、不確実性リスクを低減させ、事業化の可能性を飛躍的に高めることができます。

3、知財・外部資源の活用
自社技術を事業戦略として活用する場合、知的財産として特許出願を行い、価値を高めなければいけません。そのため、将来性の高い技術に関しては、研究開発部門と知財部門が適切に連携し、多方面での活用を検討に加えた上で知財保護に努めることが大切です。また、大学やベンチャー企業といった外部機関との連携を強化(外部資源の活用)することで、新たな技術の模索と開発を可能にできます。

パートナー企業の技術力を適切に判断し、活用の有無を判断することもMOT(技術経営)に求められる役割のため、企業価値および技術力の向上も期待できます。

■欧米企業や海外のMOT成功例
 欧米では1980~90年代から、MOTの重要性を特に認識した施策(教育、実践)に取り組みました。それまでのプロセスイノベーション(単なる品質重視とコストダウン競争)のみの視点から脱皮し、プロダクトイノベーション(何を創りどのように付加価値をつけるか)への軸足転換を目指して発展してきました。こうした技術開発とビジネスルール作りに力を集中した結果、世界全体では多くの優良企業が台頭し、Gグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムに象徴されるような新興巨大企業を生み出してきています。

海外のユニコーン企業のいずれのケースでも、既存技術/既存市場から新たな隣接領域への浸み出しを企画した、MOT視点のマネジメント成果によるものです。また、日常的な新規テーマ創出活動、独自ステージゲートシステム、ビジネスモデルアイデア創出、技術者マーケティング活動、オープンイノベーション強化などの施策も、MOTの基本となるマネジメントツールに従って強化・推進したことが、ベガベンチャーとして成長と遂げた重要なポイントとして挙げられます。

■日本企業のMOT認識
しかしながら、我が国では欧米に遅れること15~20年、2000年以降になり、ようやくその重要性が認識されるようになり、企業戦略や国策としての取り組みを始めているところです。まさに“平成の失われた30年”が経過してしまった今、これから先の令和の時代が我が国の本当の正念場と言えるでしょう。

■MOT人材に必要な3つの能力
MOT(技術経営)人材には、不確実性の高い事業化計画や戦略的マネジメントの策定・実施が求められます。日本企業の多くがMOT人材の不足を懸念しており、日本の国際競争力を高める上でもMOT人材の獲得・育成は急務といえます。

1、イノベーションの先導力
MOT(技術経営)は、技術知を進化・展開、また実用化まで一貫したマネジメント能力が必要とされます。高い技術力がイノベーションに結び付くことが多く、新たな価値観と技術を如何に結び付られるかが鍵です。

MOTには、市場が求めている新たな価値を見出す「洞察力」と同時に、イノベーションを構築する上で重要な新たな価値や技術をどのように提供できるかという「構築力」、そして実際にイノベーションを実現できる「実践力」の3つが重要です。この洞察力、構築力、実践力こそがイノベーションを興す先導力といえるため、MOTには必須の能力として認識されています。

2、組織をまたがった事業推進能力
部分最適が主流となっていた経営スタイルが、全体最適を前提とした組織力の向上を目指した経営に移行しつつあります。この動きは縦割り組織から組織をまたいで、企業全体として成長を目指すことを重視する動きと同義といえます。

イノベーションを興すためには、組織間の軋轢をなくす「変革対応力」や「対人折衝力」を活かした上で、事業を推進する「目標管理力」、「業務遂行力」などの事業促進能力が求められます。同時に高度なコミュニケーション能力や意思決定能力、リーダーシップといった人間力もMOTには欠かせない能力です。

3、実践性・学際性・学術性の総合力
MOT(技術経営)には、技術と経営に関わる総合力が重視されます。自社の技術をビジネス化できるだけの「実践性」や、技術と経営両方の高度な知識である「学際性」は必須といえます。

さらに技術を実用化させる上では、開発した技術を科学的な裏打ちを取れている状態が望ましいため、分析や研究による裏打ちを担保できる「学術性」も重視されます。MOTは社会系の要素が強いMBAよりも実践が伴う総合力を向上させなければいけません。

■まとめ
日本において、大企業と中小企業の割合はそれぞれ0.3%と99.7%となっており、圧倒的に中小企業の数が多く、日本経済を成長させる上ではMOT(技術経営)を前提とした中小企業による事業開発を促す必要があります。しかし、中小企業の多くが旧態の経営環境から脱却できておらず、イノベーションを創出できる環境ではないと指摘されています。

イノベーションは高い技術力と密接に関連していることが多く、自社の技術を経済的価値に変える経営能力であるMOT(技術経営)が事業の飛躍には、欠かせない重要な要素になってます。そのため、中小企業でMOT人材を生み出すためにも、社員全員を対象に意識改革を行い、社員一同で技術経営に取り組む体制作りを行なわなければいけません。

良い業務経験を積む機会として、個々のプロジェクト(もしくは、技術戦略専門チーム)に、ポジションを含めて決定権限と責任を一定の制約範囲の中で全て委譲することが近道です。リーダーを中心にMOTを学習しながら実際の事業創出の考え方に適用して議論し、具体的な戦略を立案、実践することが、組織の中にMOT視点を根付かせる最も有効な手段となると思います。

しかし、MOT(技術経営)を採用ゼロから育成することは相当な時間とお金、労力が掛かります。そこで、自社の中でMOT視点を取り入れるために、技術と経営の両輪に精通した外部の経営顧問を頼る方法に取り組みことも非常に有効です。

■最後に
日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」では、5000人の顧問やプロ人材人材をネットワークし、顧問紹介の業界で業界で唯一、適正価格で経営サポートを行っています。顧問の中には、まさにMOT視点を持ちながら、技術を武器に海外企業と戦ってきたプロフェッショナル人材もおり、顧問としてそういった人材を活用することで、自社の中に有名企業のノウハウを取り入れることが可能です。

特に、グローバル化とIT化波が進む現在、我々を取り巻く環境はめまぐるしく変化しており、知見やノウハウが不十分な状態ではとても海外企業と戦っていくことはできません。技術やMOTなど豊富な知見を持つ日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」だからこそ、クライアント企業の課題を解決することが可能です。まずは、どうぞお気軽にご相談ください。

本田季伸のプロフィール

KENJINS運営元代表 連続起業家。著者。人脈コネクター。 大学卒業後、日本食研株式会社を経て、25歳で起業。複数のITベンチャーを創業する。1997年に新宿の高田馬場でWEB制作事業からスタート。その後、インターネット事業プロデュース会社として、日本初の事業であることにこだわり、クーポン専門サイト、地域コミュニティサイト、出前専門サイト、チケット共同購入サイトなど、数々の専門・特化型ポータルサイトを立ち上げる。 クーポンサイトの運営時にバーコードを電子化し、クーポンやチケットとして携帯電話の画面上に表示するアイデアを考案し、20件以上の特許を申請し事業化を推進。2002年に業界で初めて、「携帯チケット」のソリューションを開発。KDDIと共同で歌手の矢井田瞳のコンサートでモバイルチケット入場を実用化させ、電子チケット事業のパイオニアとして一躍注目を浴びる。 2012年に「賢人たちに学ぶ 道をひらく言葉」を出版。後に3部作となり累計販売部数は、75000部を超える。 2014年プライドワークス株式会社を設立。日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」のプラットフォームを武器に、顧問紹介業界で横行している極端な顧問料のピンハネを撲滅を推進し、「顧問料の中間マージンをゼロ」をコンセプトに業界で唯一、適正価格で顧問紹介サービスを提供している。

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