IT化やDX「デジタルトランスフォーメーション」推進の動きが加速する現代において、企業にとって技術を全く活用せずに行えるビジネスは殆ど存在しません。
デジタルシフトが加速する今、エンジニアを中心にMOT「技術経営」に取り組むことは、製品開発の現場でもイノベーションを起こす上で有効的な手段の1つとして考えられています。
そのため、特に技術を用いて急成長を目指す企業では、テクノロジーと経営に精通した「CTO」を任命し、重要なポジションとして位置付ける会社が増えています。
そこで今回、CTOとは、CTOの意味・技術トップの最高技術責任者の役割について解説します。
■CTOとは?
CTOとは、プロダクトの技術開発における立案など、テクノロージーの視点から経営陣の一人としてビジネスの方向性を定める重要な役割を担う、企業の技術領域における最高位のポジションを指します。
CTO英語で、「Chief Technology Officer」の略語になります。英文では「Chief Technical Officer」と呼ばれることもあります。日本語では、CTOは「最高技術責任者」を意味します。
会社の競争優位性の源泉となる「コア技術」を企画・開発するために、会社の技術面におけるトップマネジメントの立ち位置で、プロダクトの研究開発の中枢を担います。
日本では、これまで技術部長や開発部長といった役職はありました。ですが、CTOは、従来の技術部長や開発部長よりも上の取締役としての立場で経営に携わる形になります。
CTOは、CEOやCINOをテク二カルな知見とスキルで支えるNo.3のジョブタイトルになります。
■CTOの責務とミッション
近年、日本企業においても「MOT」「Management of Technology」(技術経営)への関心の高まりに比例して、IT企業を中心にCTOを置く企業が増加しています。
CTOという肩書は、米国企業のCEO、CFO、COOなどの立場と同じく、CXOの肩書になります。
製造業やIT企業など、技術革新がビジネスに大きく影響する企業において設けられていたポジションです。
CTOが担う責務とミッションとしては、以下の3つになります。
・技術経営「MOT」「Management of Technology」
・技術戦略の方向性の打ち出しと意思決定
・エンジニアの採用と教育、技術者のマネジメント
日本の企業の場合、CTOというポジションは会社法で定められている取締役の役職ではありません。最近は日本でも外資系企業や上場を目指すスタートアップを中心に浸透しつつあります。
なぜなら、企業の新たな成長エンジンとしてイノベーションがあらゆる場面で強く望まれおり、イノベーションを起こすために必要かつ有効な手段として、CTOの役割が期待されているからです。
■CTOとCEOの違い
CEOを経営トップとした場合、CTOは、技術部門のトップというジョブタイトル「肩書」になります。
CEO:経営トップ「最高経営責任者」「Chief Exective Officer」
CTO:技術トップ「最高技術責任者」「Chief Technology Officer」
CEOは、欧米の会社では、代表取締役など社長を指します。CEOは、企業の方向性、事業の方向性を決定し、実現するための経営方針、事業戦略の策定し、経営計画書を作る役割を担います。
CEOの役割は主に以下の3つになります。
・業務執行の統括
・経営方針、事業戦略の策定
・ステークホルダーへの説明、適切な情報開示
CEOの詳細については以下を参照してください。
「CEOとは?意味や役割、COOとの違いについて」
欧米企業では、、技術トップ「CTO」にも、財務トップ「CFO」、情報トップ「CIO」、経営戦略トップ「CSO」、マーケティングトツプ「CMO」などのCXOの肩書を持つ、それぞれの最高責任者が置かれるケースが一般的です。
CTOは、CXOのポジションの中で、CEOをテクノロジーを駆使して経営を支える技術部門のトップ「最高技術責任者」という立場になります。
■CTOの5つの仕事内容と役割
CTOの仕事内容は、主に以下の5つの役割を担います。
1、技術的経営「MOT」の実現
CTOは技術面から経営を支え、会社が目指す方向性やビジョンをMOTとして実現する立場です。
MOTとは、「Management of Technology」の略で「技術経営」と呼ばれます。
MOTは、「科学的知識や工学的知識などの技術的な知識をベースとした研究開発の成果を実際の製品に結び付けて、経済的な価値を創出していく経営」を意味する言葉です。
CTOの役割は、MOT経営の実現に向けて事業部門の垣根を越えて、技術に関する様々な情報を一本化し、CEOなど他の経営陣と連携して技術戦略を立案・実行していくことで、企業全体の収益を高めることです。
そのため、技術内容を整理し、それをどのように管理し経営に生かすべきかを見極め、経営方針の策定を行わなければいけません。
2、技術面での意思決定
技術やテクノロジーにおけるすべての意思決定に責任を持ちます。技術の高さが企業のコアコンピタンスとなる企業では、CTOをおき、将来にわたっての技術ロードマップを明確にする必要があります。
CTOは、最新技術の動向や知見を生かしながら、自社の企業戦略に沿った技術を予算・リスクなどを考慮したうえで選択し、新規事業の推進や既存業務の改善などを図っていく役割を担います。
そこで、CTOには、自社の企業戦略を踏まえて技術経営の方針を策定し、新たな価値を生み出していくことが求められているのです。
自社の目的達成のためにどのような技術を選択すべきか、常に市場の動向をチェックしながら最善の意思決定を行います。
3、技術開発チーム内に技術を浸透させる
CTOは、単に自社に導入する技術を決定するだけでなく、自身がリーダーシップを取りながら技術開発チーム内に技術を浸透させていくことにも責任を持つのが一般的です。
技術開発チームが各プロジェクト内で利用する技術の種類は、プログラミング言語・インフラ・プログラマーの開発環境など多種多様です。
そこで、CTOには、それぞれの技術から長期的視点から自社の目標を達成するために必要となるものを選定し、適切に管理・運用する能力が求められます。
4、エンジニアの採用
企業として目標を達成するために今の技術チームに欠けているものは何かという視点から、CTOがエンジニア採用の方針を決定することは少なくありません。
CTOは、技術分野の知識・経営知識・マネジメント能力を備えており、自社の技術開発チームが抱える問題点を洗い出す役割もあります。
そのため、「自社の目標を達成するうえで、現在の技術開発チームに欠けているものは何か」という視点からエンジニア採用に関する方針を策定する役割を担うことがあります。
中小企業やスタートアップに属する多くのCTOは、エンジニアの採用方針を定める役割も担います。
採用によって自社が補いたい技術力をベースに、既存社員とのバランスやマッチ度を見ながら、採用すべきエンジニアの人物像を明らかにしていきます。
5、エンジニアの育成
採用後のエンジニア育成に携わり、技術開発チームのスキル向上を図ることも、CTOが担う大切な役割の1つとして捉えられています。
技術開発チームのカルチャー作りも、CTOの重要な役割です。ここでいうカルチャーとは、チーム内の価値観・マインドセット・共通言語などを指します。
これらのカルチャーをチームに根付かせることで、共通の指針ができ、一体感が生まれます。
また、チーム内の各メンバーに「自分はどのようにチームに貢献できるか」を考える習慣を身につけさせることもでき、結果的にパフォーマンスが向上し、現場の自走につながるのです。
■大手企業のCTOとベンチャー企業のCTOの違い
CTOは、企業規模によって責任・役割が異なることがあります。
1、大企業におけるCTO
大企業においてCTOは、自社のビジネス戦略にもとづいた技術方針の策定・投資の意思決定・システム構築およびその運用などを担います。そのため、中小企業やスタートアップと比べて、CTOの責任領域が拡大するケースが多いです。
その反面、大企業のCTOは、自社プロダクトに対して、直接コードを書くことがほとんどなくなります。
また、大企業のCTOには、「経営上層部として、企業の技術に関する活動に対して影響力を持つポジションを担う」といったニュアンスが強まります。
CTOは人の上に立つ役職であることから、チームをまとめ上げるためのリーダーシップは必要不可欠です。
その上で、トップダウンによるチーム運営ではなく、メンバーとの双方向のコミュニケーションを図ることが大切です。各メンバーの声に耳を傾けながら信頼関係を構築することで、チームのパフォーマンスの効果的な向上に繋げます。
大企業のCTOには、研究開発の監督として現場をまとめ上げるリーダーシップや、技術面のあらゆる意思決定を行う思考力など、企業全体を率いるための高度な能力・知識などが求められるのです。
2、中小企業・スタートアップにおけるCTO
大企業と比べて中小企業やスタートアップでは、CTOは現場により近い距離からプロジェクトのマネジメントや技術開発チームの成果を最大化するための施策を打ち出し実行していく役割を担うことが多いです。
プレイングマネジャーとして、CTO自らが自社プロダクトのコードを書くことも珍しくありません。加えて、エンジニアの採用担当として、面接・選考を行うことも多々あります。
特に中小企業やスタートアップでは、経営方針の変更や事業の成長などに伴い、企業の立ち位置・事業領域・業務内容が変化することもあるあります。
CTOには、日頃よりタイミングを見極めながら臨機応変に業務を遂行していく能力・知識が求められます。
スタートアップや小規模企業などの場合、CTOは、プロジェクトの進捗管理・コードレビュー(ソースコードの体系的な検査)・チームマネジメント・顧客との折衝業務など、技術開発チームのリーダー的な役割も果たすことがあります。
各プロジェクトで得られた成果や改善点を次に生かせるようチームを運営することも、CTOの大切な仕事です。
■CTOに求められる3つのスキル
豊富な技術や知識、経験はCTOを担うために大前提となるものです。それ以外にも身につけるべき能力はいくつかあります。
1、多角的な技術運用
手元にある技術や知識、経験を「いつ・どこで・どのように」運用するのが最適であるかを多角的に考え判断する能力がCTOには求められます。
CTOとしてのCEOと会社を成長させる方向性を決めることも必要になります。
つまり、経営者の視点で物事を捉え、状況に応じた柔軟性のあるテクニカルなアクションを起こすことが必要です。
企業方針や企業戦略も踏まえ、どの選択が最も会社の利益最大化に繋がるのか?という視点とともに技術を活かし、プロダクトやサービスの方向性を判断を下します。
技術を用いて自社の利益を最大化するためには、経営戦略も含めて事業全体をマクロな視点で俯瞰して物事を捉えることが重要になります。
2、技術だけでない経営陣としての思考力
CTOの役割としては、高い技術力があることも大事ですが、エンジニアとして現場でスキルを発揮するだけでは、不十分だと言えます。
なぜなら、CTOは企業における経営陣として、技術を用いて企業にどのような利益をもたらすことができるかを考えることが大事な仕事になるからです。
求められているコストや品質などの基準を定め、テク二カルな高い目標をクリアするためにどうしたら良いか、あらゆる観点から技術的な要素を思考する「テクニカルマネジメント」のスキルも必要です。
また、起こり得ることをあらかじめ想定しつつ、突発的なトラブル時にも対応できる思考の瞬発力も鍛えるといいでしょう。
さらには、自分の思考を明確に言語化し、周囲に適切に共有する能力も欠かせません。
3、技術チームをまとめるリーダーシップ
CTOは、エンジニアの上に立つ立場である以上、研究開発やシステム開発チームをまとめ上げるリーダーシップは必須です。
経営陣の立場になりますが、プロジェクトの内容に応じて、トップダウンが必要になるケースもあります。エンジニアとの双方向のコミュニケーションを図ることが大切です。
技術チームの声に耳を傾けエンジニアひとりと信頼関係を構築することで、テク二カルチームのパフォーマンスをより向上させることができます。
思い込みはあらゆる可能性を狭め、得られる成果を限定的にしてしまうものです。CTOも、自分の固定観念にとらわれず常に柔軟な思考で物事を判断しなければなりません。
■CTOの報酬・年収の相場
最高技術責任者という立場上、CTOの年収は一般的な技術職の社員より高く設定されている場合が多いです。
企業の規模や業績、個人の能力や実績などによっても差はありますが、1,000万円~2,000万円程度が相場だと言われています。
しかし、スタートアップでまだ実績がない企業の場合はそれよりも下回ることもありますし、逆にCTOのポジションを早急に用意したい企業では、年齢が若くても1,000万円以上の高い報酬を提示する場合もあるようです。
IT業界で年収が異なる大きな要因には、システムの受託開発を中心とした多重請負を行うピラミッド構造にあります。システムの上流工程におらず、二次受け三次受けでシステム開発の請負を行う会社は、単価が安価になりがちです。
IT業界の仕事は、高額な案件も非常に多いのが特徴になりますが、建築業界のゼネコンと同じような多層構造になっているため、ピラミッド構造が成り立っています。
大手企業からの受注を専門でやっているシステム系受託開発の請負企業は、下請けであるがために安い単価で仕事を引き受けざるを得ない環境にあります。
そのような下請け企業のCTO、エンジニア、プログラマーなどの技術者は、総じて年収が低く勤務時間が長くなりがちです。下請け専門の受託開発企業の社員として働いている間は、CTOとしての年収アップも難しいと言えるでしょう。
そのため、今の仕事をしながら新しいスキルを習得したり副業で知見を磨き、MOT経営を担うCTOを目指して転職したり、フリーランスのCTOとして独立を目指すエンジニアも少なくありません。
■CTOになるための注意点
取締役会を設置している企業のCTOは、役員の立場となるケースが多くなります。
一般の従業員のような労働契約ではなく委任契約を企業側と締結することになりますが、役員は労働基準法の対象外のため、雇用保険や労災、解雇規程などが適用されません。
また、勤務形態などを示した就業規則もCTOには適用されず、役員規程に則る形となります。役員には定時や時間外労働といった概念がなく、必要な時に必要な業務をこなさなければなりません。
CTOや役員は報酬が高いから魅力的だと思われている方もいるかもしれませんが、そのぶん従業員のような保証がなく、経営陣の1人になるため、仕事の責任が重くなる可能性があります。
■まとめ
CTOとは、経営トップであるCEOを支え、会社の経営陣として技術部門を担う責任者の立場になります。経営戦略と開発技術チームの問題解決をサポートする役職になります。
CTOは、IT技術が進化する中で事業を展開する企業にとって重要な役割を担うポジションです。
CTOの役割は、事業部門の垣根を越えて、技術に関する様々な情報を一本化し、CEOなど他の経営陣と連携して技術戦略を立案・実行していくことで、企業全体の収益を高めることです。
また、CTOは、「技術経営」の役割を果たす必要もあります。
技術経営とは技術を具体的な事業に結び付け、経済的な価値を創出する経営のことを指し、CTOは企業戦略を踏まえた技術戦略を立て、新しい事業を生み出すことを求められるのです。
CTOは企業内で技術戦略についての意思決定を担います。 経営層として企業の目標を達成するための技術とは何かを、長期的な視点で判断することが求められます。
具体的には、企業が新規事業を開始する際や既存の業務についての改善を行う際に用いる技術の選定から、テクのロジーの観点かた最終的な意思決定までを行うということです。
CTOの責任は大きなものですが、役割を果たしビジネスで成果を上げた時の達成感は、大きなものとなります。
「技術を持つ人間が、それをどのように利用するか、世の中に貢献するか、しないかで、その価値が決まる。」
<本田宗一郎>
■最後に
現職の企業にCTOがいない場合、今後その企業でCTOの役職が導入される可能性はあるものの、すでにポジションが設置されている企業への転職を検討するのも1つの方法です。
このときには、創業から間もないスタートアップへの転職を図るのも良いでしょう。
転職によって創業メンバーになったり、創業メンバーよりもCTOとしての適性が高かったりすれば、そのスタートアップのCTOに就任できる可能性が十分にあります。
そんなCTOへのキャリアアップを、あなたもぜひ考えてみてはいかがでしょうか。
高年収のCTOの特徴は、以下の通りです。
・専門分野がある。
・新しいスキルを持っている。
・サービスの幅が広い。
・フリーランスである。
エンジニアとして一流になり高い年収を目指すなら、自分にしかできないサービスや需要の高いスキルを売り込むことが必須です。フリーランスは不安定な働き方と見られがちですが、スキルと経験があれば会社員よりも高い年収に期待ができます。
ITはもはや日々の生活に欠かせないものとなり、その技術は進化し続けています。技術に関する豊富な知識と経営的視点を持ち合わせたCTOは、DXやAIの進化によりこの先さらに多くのシーンで求められます。
■フリーランスのCTOや技術顧問になる選択
働き方の自由度やバリエーションも増えていくことが予想されますが、特定の企業に縛られず、フリーランスの社外CTOとして活躍する選択肢があります。
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