現在、大手企業を対象としたプロダクトを販売するスタートアップの間では、人脈を豊富に持つ営業顧問に「トップダウン営業」を依頼する会社が増えています。
ですが、企業によってはその価値を過少評価し、顧問の人脈を借りれば、大手企業の社長や役員クラスとアポイント」が獲得することが出来たにも関わらず、新入社員や若い営業マンにアプローチさせてしまったため、絶好の機会を無駄にしてしまう会社もあります。
そこで今回は、社長営業とは何か、大手企業の役員クラスとの商談の際に、どんな対応と提案をすれば良いのか、経営トップのCEOや取締役クラスと商談するための社長営業のコツについて解説します。
■社長営業とは?
社長営業とは、代表取締役がトップダウン営業で、新規開拓を行うことを指します。特にスタートアップの起業家や中小企業の社長には、営業活動が生命線になるため、自ら営業の最前線に立ち、挑戦をする覚悟がなければなりません。
創業期の会社を軌道に乗せるには、事業計画書の作成、資金調達、競争優位性のあるプロダクトの開発、マーケティングなど重要事項の取り決めは社長の考えで一つで決まります。
特に大手企業への営業活動や交渉においては、相手の要求に応えるだけでなく、お客様に伝えるべきことを伝えて対等な関係を築く必要があります。
そのため、社長が営業の最前線に立ち、大手のクライアント企業を自ら獲得する覚悟を持つことが重要な施策になると言えます。
新規開拓にあたり自力では厳しいと判断した際には、経営者が人脈を豊富に持つ顧問を活用して「トップダウン営業」を仕掛けることが大事な取り組みになります。
その際、大手企業の役員クラスや決裁権限者とのアポイントの獲得が出来た際に、最初の営業活動を行うのは、「社長営業」呼ばれます。
スタートアップの起業家や中小企業の経営者にとって「社長営業」大事な仕事の一つになると言えます。
■社長営業で顧客を創造することが大事な訳
ドラッカーは、企業の目的の定義は一つしかない。それは「顧客を創造すること」だと言います。つまり、顧客の集合体としての市場を創り出すことが企業の目的だと述べています。
企業が市場を創造するには、まず「市場に居る一人ひとりの人間を見よ」と言っているのだと思います。
ドラッカーは市場を市場として見ていたのではなく、市場を形成する一人ひとりの人間の集まりとして見ていたのでしょう。
そうなると、法人営業の場合には、「顧客を創造すること」に直結する企業トップをいかにして攻略するかの戦略を考え、社長営業を仕掛けることが、究極の武器になることがお分かり頂けると思います。
ですので、顧問の紹介で大手企業の社長とアポイントが取れた場合には、顧客を創造するために社長自身が表敬訪問し提案活動を行うことが理想です。
社長がどうしても訪問できない場合には、少なくても取締役クラスを立てることが、紹介してくれる顧問への礼儀になり、商談相手となる大手企業の経営者へのマナーになると思います。
■大手企業の社長の時間が大変貴重な理由
株式公開企業の創業社長や大手企業の経営者は、日々、沢山の大事な仕事をこなす必要があります。
まず何と言ってもどんな会社でも社長は、人と会う機会と社内会議や外部との打ち合わせを含めて、桁違いにアポイントの数が多いです。
ある東証一部上場企業の創業者には、毎日、10件を超えるアポイントが入っているのが普通で、3ヵ月先までスケジュールが一杯です。
そのような激務を遂行するために、秘書が5人いて優先順位を考慮しながらスケジュール管理をしている社長が実際にいます。
そして、アポイントをこなす量もさることながら、外部の会社から営業提案を受ける際には、時間が限られているため、商談時に会社に役に立つ商品やサービス、革新的なソリューションの提案であれば、「トップダウン」で即断即決で採用を決定を下すことも多いです。
■トップダウン営業とは?
トップダウン営業とは、顧問が築き上げた大手企業のクラスや決裁権限のあるキーマンとの人脈を活かした紹介営業になります。このような紹介営業の手法を「リファラル営業」とも呼ばれています。
特に創業オーナーの場合には、海千山千の人も多いため、価格交渉をされるケースも多いですが、スタートアップの起業家からのファイナンスの相談があった場合に3000万から1億くらいの投資であれば、その場で決断する丹力を持っているため、判断の質も凄いものがあります。
また、大手企業の社長の仕事の中には、メディアからの取材依頼やアライアンス企業との交渉、上場企業の場合には、IR活動がありますので、4半期に一度、機関投資家向けに業績を公開する必要があり、この仕事に忙殺される経営者も多いです。
株主総会で業績の説明をするだけでなく、新規事業に関するプレゼンテーションを行い、次なる事業戦略の方向性を発表し新たな投資家を募ったり、ビジョンを打ち出し株価を支える責務があります。
これらの仕事の特徴として、「一つの仕事のインパクトが会社に与える影響が大きく」非常に大事なものであるにも関わらず、「一発勝負で失敗が許されない」というものがあります。
最近のスタートアップでは、リーン形式で学習しながら改善することが基本スタンスになりますが、社長の仕事だけは失敗したら痛手が大きすぎたり、チャンスを失う仕事が多いです。
そのため、スタートアップの起業家は、顧問からの紹介で大手企業の経営者とアポイントが取得れば、顧客の創造に繋がります。
新規開拓や販路開拓の商談の際には、若い営業マン任せにせず、最重要事項として認識し、活路を切り拓くために、しっかりと準備をし「トップダウン営業」に臨むことが欠かせないと言えるのです。
■一般的な営業マンが抱える3つの課題とは
まず、営業がつまずきやすい「よくある課題」を3つご紹介します。
1、アポイントがとれず商談の機会がつくれない。
企業間取引において、法人営業を成功させるための第一歩は、大手企業との新規取引を獲得することです、
そのためには、キーマンと言える決済権限者と有効な商談機会を作り、完璧なプレゼンテーションを行い、自社の商品やサービスを「購入したい」「契約したい」と思って貰えるように持って行くステップが欠かせません。
その上で自社のソリューションの競争優位性を説明し、相手が断れないレベルの理由を作り、魅力的に提案するプロセスが必要となります。しかし、アポイントが取れなければ、その提案のキッケケさえ掴めないことになります。
2、顧客の課題の深堀ができない
若手の営業マンの場合には、大手企業の社長や幹部クラスと無事にアポイントを取って商談の機会を得ても、相手が大物や有名人であればあるほど、ビビりがはいるため怖気づき、会話の中で相手のニーズをうまく引き出せずに最適な提案ができなないという人も多いです。
カウンセリングやコーチングで使用されるコミュニケーション技法の一つとして「傾聴」というものがあります。
相手の話を深く聴いたり、話し方や表情、姿勢、しぐさといった言葉以外の部分に注意を払ったりすることで、相手の悩みや課題を引き出し、現在の問題に対する感情や真の要望を理解することです。
商談相手が経営者になる以上、卓越したヒアリングのスキルを十分に身につけて商談に臨まなければ、相手がどのような悩みを抱えているのかを導き出すことは難しいでしょう。
3、商品説明が響かず成約に繋がらない。
大手企業のリードが獲得できたら、顧客の元へ出向きもしくはオンライン会議で、ヒアリングやプレゼンテーションを行い、最終段階でクロージングを行います。
クロージングは成約を結ぶ段階であり、新たな顧客創造し売り上げを上げて行くために最も重要なフェーズになります。
クロージングの技術が上がれば、契約の成約率を上げられます。自社の商材の魅力を相手に伝えられず成約に結びつけられないというケースも多く見られます。
この場合には、いわゆる「クロージング」の部分に課題があり、「なぜこの商材が必要なのか」「この商材を導入するとどのようなメリットがあるのか」をうまく言語化できていないことが成約に結び付かない要因と考えられます。
■トップダウン営業で成約率を高める営業の5つのコツ
企業の成長を促進させるためには、新たな新規顧客の開拓が必要不可欠です。しかし、やみくもにアプローチしても思うような成果は得られないでしょう。
では、そうした課題を克服し営業で成約率を高めるためにはどうしたら良いのでしょうか。そのために必要となる5つのポイントを紹介します。
1、自社商品の強み・弱みを把握して置く
トッダウン営業により大手企業のキーマンとアポイントを獲得できても、商談時に自社商品について質問されてすぐに答えられないのでは商談で信頼を得ることは難しくなってしまうでしょう。
時にはライバル企業のサービスを引き合いに出し、自社のポジショングを明確に訴求することも大事になります。その理由としては、インターネットが普及した今、顧客自身が競合比較をすることが一般的になっているからです。
そのため、」商品の強みや弱みをあらかじめ十分に把握した上で、どのような質問であってもスムーズに答えられるように備えておくことで、見込み顧客からの信頼度が高まります。
2、企業リサーチの徹底
新規開拓先の営業リストが固まったら、ターゲットする大手企業との繋がりを持つ最適な顧問を探したり、顧問にアポイントを取って貰うことになります。
また、顧問の人脈リストから優先順位を考え、それぞれの企業を徹底的にリサーチすることが欠かせません。従業員数や主要事業、取引先や得意としている分野など、あらゆる情報を調査しておきましょう。
その上で営業先が抱えている課題を洗い出し、その課題に対して自社の商品がどのように役立つのか、相手にとってのメリットを明確にすることで、商談の際の説得力が向上します。
3、顧客ニーズの把握と不安を解消する
「現在、クライアント企業が抱えている課題をベースに「顧客は自社に何を期待しているのか」を見極めた上で、適切な商品やサービスを提案を提案し、顧客が抱いている不安を解消するためのサポートをすることが受注への近道です。
新規顧客はリードにあたりますが、初めて取引する顧客は、相手が大手企業であればある程、「この会社はどんな会社なのか」「この商品を使って課題が解決するのか」「どのような効果があるのか」「コストはどれくらいか」など、さまざまな不安を感じています。
その不安を一つひとつ取り除いていくことで、購入への意欲を掻き立てることができます。
4、迅速な対応を心掛ける
法人営業の効率性を考えた場合、伝統的なやり方の延長線上では改善できないことも多々あります。
例えば、大手企業を対象にしたプロダクトを販売する会社の場合、予めターゲットが決まっているため、極点な値引き要求をする会社や予算の少ない会社に経営資源を投下することは、好ましくありません。
そのような際は、「早い見切り」をして「営業活動の工程に分けて管理」し、営業のリソースを「優先順位の高い客」に集中投下することが大事になります。
また、新規顧客との商談時に、売れる可能性を感じた場合には、リード顧客への対応は迅速に行いましょう。質問や要望にできる限りスピーディーに対応することが顧客からの信頼獲得につながります。
逆に、連絡を長い間返さずにいるとライバル企業と比較されたりとせっかくの新規顧客からの信頼を失い、不安を抱かれて失注につながる可能性もあります。
5、KPIを設定しPDCAサイクルをまわす
新規開拓を行う前にKPIを設定し、定期的に進捗状況を振り返りながら営業活動を進めることも重要です。
KPIを重視した営業活動を重視する会社では、目標に対して「新規契約数」や「売上高」などを設定することが多いです。
例えば、全社的に「今月は、新規契約を10件取るために、100件のアポイントを獲得をしよう」「来月は、営業マン1人あたり、売上100万円アップを達成するために、月の前半に5社へアップセルの提案をしよう」といった形でKPIが定められます。
顧問を活用する場合でも「トップダウン営業」を駆使することで、「大手企業の役員クラスと3ヵ月で新規顧客10件」のアポイントを獲得する」など、具体的なKPI指標を設定し、目標に到達できているかを2週間に1回、1ヵ月に1回などこまめに確認することが大切です。
ただし、アポイントの獲得件数は、商品やサービスの競争優位性により大きく異なるため、「顧問のチカラ」で解決できないこともあります。
そのため、アポイントの獲得や商談が計画通りに進んでいるならそのまま営業活動を続けて構いません。
しかしながら、顧問の紹介でもアポイントがスムーズに獲得できない場合や沢山の商談が設定できても商品やサービスが売れないという課題が生じているならば、どこに問題があるのかを明確にし、プロダクトの改善策を講じるなど、PDCAサイクルをまわし続けることが大切です。
■まとめ
社長営業のコツは、「トップダウン営業」を仕掛けることです。トップダウンとは、「トップ(会長・社長・役員など)」が「意思決定」を行い、下の構成人員へと指示を流し、下層部(現場)がそれに基づいて行動していく管理方式のことです。
このような型は、欧米企業によく見られるほか、日本においてもベンチャー企業やスタートアップ企業に多いとされています。
トップダウン形式の場合、意思決定する者が「トップの1人」もしくは「直属部下数人(役員など含む)」のため、意思決定から行動を起こすまでの時間がとても早いです。
このようなことから、難攻不落の大手企業と新規取引をしたい場合には、既に繋がりのある顧問からの「リファラル紹介」でトップダウン営業で提案する方が、アポイントを獲得できるだけでなく、クロージングする際のスピードが速いとされています。
政治の外交でも団体や組織の最上層の地位にある人たちで行う会議を「トップ会談」や「首脳会談」と呼ばれています。
戦時と平時とを問わず、国際社会における重要問題を協議するため、関係国の政府首脳が会談することを言い、巨頭会談、頂上会談とも呼ばれます。
「ごくごく小さな事業を除くあらゆる事業で、CEOの仕事は、一人の仕事として組み立てることは不可能である。それは、共同して行動する数人からなるチームの仕事として組み立てる必要がある。」
<ピーター・ドラッカー>
■最後に
『スピード感が大切』と言われる中、大手企業の組織が「深い階層」で作られている場合、現場からボトムアップで営業を仕掛けても、稟議の申請と上司のハンコがどうしても必要になるため、市場の開拓と変化に乗り遅れることがあります。
ですので、スタートアップ企業が大手企業と新規取引をしたい場合には、大手企業の取締役や購買のキーマンとの人脈を豊富に持つ営業顧問を登用し顧問契約を締結した上で共通の知り合いで「トップ会談」を開催することです。
思い切った「トップダウン営業」を仕掛けることこそが、大手企業の経営トップと商談する社長営業のコツになり、コストパフォーマンスが圧倒的に高いことが多いと言えるのです。
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