現在、日本政府では、中小企業の場合、経営課題の解決を目的に客観的な立場で、知識、経験、人脈、スキル、ノウハウを持つフリーランスの顧問やプロ人材を外部から招聘し、積極的に活用することを推奨しています。
二代目の社長が会社を承継し、これまでの顧客を維持しビジネスの発展を目指すために、有益なアドバイスをくれる相談役の存在が大事な役割を果たすケースがあります。
一方で相談役を選任したことで、事業の方向転換ができない可能性も危惧されています。
今回、相談役とは何か、相談役と顧問の違い・仕事内容と役割について解説します。
■相談役とは?
相談役とは会社の経営時に生じるさまざまな問題へのアドバイスや調整を求められる役職のことで、常勤の場合と非常勤があります。
相談役は、英語で「counselor」と表記されます。ビジネスでは、主に代表取締役が行う会社の経営判断について、アドバイスや助言を行うために置かれる役割の意味があります。
相談役の役割としては、自身が就任していた会社の役員を退任した後になるケースが多いため、こうした経営者として培った経験やコネクションを活かして、現在の代表取締役をはじめとした経営者へのアドバイスや相談に乗る役割を果たしているケースが多く見られます。
ただし、「相談役」というポジションは、役割が不透明なケースも多く、相談役が影響力を持ち過ぎると「院政」になることもあります。
現在、東京証券取引所では、「コーポレートガバナンス」の観点から株式公開企業や、上場を準備しているIPO候補企業には、「相談役」を減らすことを推奨しています。
その理由としては、「相談役」を選任したことで、新たな経営陣が経営革新に取り組もうとする際に、古いビジネスの方向転換を図れない恐れが出る可能性があるからです。
■会社法的に相談役の設置の義務はあるのか?
会社法では、相談役について特段の定めはありません。そのため、会社法上で定められた権限は相談役には特になく、設置も法的な義務はありません。
相談役を設置するか、そのような権限を持たせるかという点については、それぞれの会社の判断に委ねられることになります。
相談役は、取締役とは異なりますので、会社の方向性を決める決定権限を持たず、経営者の裏方として動くことが多い役職になります。
相談役に求められる仕事や役割は会社によって大きく異なります。
会社によっては、相談役が人事決定権を持つなど、実質的に企業トップの役割を担っている場合もあれば、社長や会長職退任後の名誉職としての意味合いが強い場合もあります。
■相談役は海外でもあるポジションなのか?
アメリカ人のビジネスマンに相談役と言っても意味が通じないケースが多いです。
その理由としては、相談役という肩書は、日本企業ならではの独特のポジションになるため、英語では完全に一致する言葉がありません。
相談役を英語にすると、一般的には「advisor」(アドバイザー)や「counselor」(カウンセラー)と訳すことができますが、日本人が多く使う和製英語になります。
日本の会社の場合には、社長や会長が退任後に相談役に就くケースが多いことから「senior advisor」「executive advisor」「executive counsel」などと表記されることもあります。
■相談役が設置される4つのケース
相談役が実務上置かれるケースとしては、以下の様なケースが多く見られます。
1.会社の代表取締役に引き継ぎなどを行うために社内にとどまって貰うため
2.代表取締役の経営判断などについて相談やアドバイスをして貰う
3.経済界などと強力なコネクションを有する人間と会社の顔つなぎをして貰うため
4.突発的に生じた経営上の問題について助言をして貰うため
特に3つめのは、大企業において複数の相談役を置いているケースでよく見られる相談役の活用方法です。
しかし、昨今では、上場会社の場合、相談役というあいまいな役職を設けることについて投資家から批判を受けるケースも増えてきており、設置する企業は減少傾向にあります。
■相談役と取締役・役員との違い
会社法では、役員として「取締役」「監査役」「会計参与」という3つの役職を設けるよう定められています。
その中の一つである取締役は、株主総会で選任される、株式会社には必ず設置しなければならない機関です。(会社法第326条第1項)。
会社法上の役員ではない相談役は、「経営の意思決定権を持たない」という点で、役員とは明確に異なります。
■相談役のポジション役員と比較するとはどうなのか
相談役は事業に関連しないアドバイザーとしてのポジションとなるため、順位がつけがたいのが現実です。
企業全体で考えた場合、代表取締役→取締役→執行役という序列が成り立ちます。
相談役を役員に次ぐ立場として考えるなら、執行役に近いポジションになるでしょう。ただし、名刺の肩書は相談役になっているが、取締役など役員になっている場合は別になります。
ただし、社長・CEOを退いた人が相談役になっている場合、社内では取締役会長に近いポジションで院政を敷いていることもあります。
■相談役を設置するメリット
企業はどのようなことを目的として相談役や顧問を設置するのでしょうか。ここでは、相談役・顧問を効果的に活用するために理解しておきたいメリットをご紹介します。
1、専門知識や経験に基づくアドバイス
相談役は、経営や特定分野において高度な知識を持っています。そのため、相談役を設置すると、経営やビジネスの経験を踏まえた信頼性の高いアドバイスが得られます。
例えば、企業の事業分野が多岐にわたる場合、その分野に特化した人材からのアドバイスはとても有効です。
また、現役経営者では解決の糸口が見つけられない問題が発生した際も、経営経験のある人材からアドバイスを貰うことで、より有効な解決策を検討できるようになります。解決まで迅速に進むことで、問題の深刻化も防げます。
2、取引先との関係性の維持
相談役は、それまでのビジネス経験から、取引先への理解も深いと考えられます。取引先に対し、適切な解決策やサービスを提案するためには、相手との良好な関係と理解が不可欠。
既に取引先との関係性を築いている相談役からアドバイスを得ることで、ビジネスの持続性も高めることができます。
3、人脈を活用した事業拡大への貢献
企業にとって事業拡大や問題解決には、広い人脈も必要となります。相談役の長い経営者としての経験で得られた豊富な人脈から得られる情報はとても貴重。
取引先や顧客、財界活動を通じて社会ニーズを把握している相談役からのアドバイスにより、事業拡大がスムーズに進んだり、スピードアップしたりすることもあるでしょう。
■相談役の報酬はどれくらい?
相談役の役割は企業によって異なるため、報酬も役割や業務内容によって異なります。
大手企業や上場企業の相談役は、1年間で2,000~3,000万円の報酬を受け取ることもありますが、一般的にはその企業の役員報酬と同額程度と考えるとよいでしょう。
産労総合研究所の調査によると、役員退任後に相談役として就任する場合の平均年間報酬は、常勤で675万円、非常勤で498万円ということです。
しかし、名誉職としての意味合いが強い相談役の場合は、一般社員と同額もしくは一般社員より低い場合もあります。
■相談役と顧問の違い
顧問とは、事業計画や人材戦略など、経営の実務面についてアドバイザーとして助言を行う人材のことを指します。
相談役と顧問というポジションはいずれも会社法によって定められたポジションではないため、設置するかどうかは企業の判断で決められます。
しかし、顧問と相談役は、その役割や就任する人材の要件が異なります。
相談役はその会社の元役員が突発的な問題に対してアドバイスをするのに対し、顧問は仕事内容を明確に定めた上で、顧問契約に基づき、より専門的な立場からビジネスの実務についてのアドバイスや実行支援を行います。
また、相談役にはその企業に長年勤務した元社長や元取締役が退任後にアドバイザーとして就任することが多くなります。
顧問には、内部顧問と外部顧問の二つがありますが、内部顧問だと相談役と同じような立ち位置になります。
そのため、課題解決に必要となる顧問を登用する場合、専門分野に長けたエキスパート人材を「プロ顧問」として、外部から招聘する外部顧問がほとんどを占める形になります。
外部顧問とは、専門的な知見を元に企業の実務についてアドバイスする外部のフリーランス人材を指します。税理士や弁護士、社労士などの仕業も外部顧問に該当します。
雇用契約を伴わないため、企業と個人の間で業務委託契約を結ぶ形が一般的です。
■まとめ
相談役は、選任方法や役割などが明確化されていないケースも多く、株式を公開している上場会社の場合には、不透明な存在が問題視される傾向にあるようです。
しかし、企業にとっては相談役の幅広い専門知識や人脈を活用することができるため、問題解決が迅速に進むなど、メリットも多くあります。
相談役のポジションを社内に置くことで、会社をよく知る立場の人材からアドバイザーとして的確な助言を受けられる点が挙げられます。
一方で、外部顧問には社外の人材だからこそのメリットが存在します。外部顧問は、特定の分野に精通し、専門的な知識を持つプロ人材です。自社に関連する業界だけでなく、他社の事例を熟知した上での助言を提供できます。
外部顧問のアドバイスや実行サポートを受ければ、様々な課題解決に繋がります。経営者にとって経営課題がある際やトラブルが勃発した際にすぐに連絡できる専門家がいれば安心です。
現役の取締役との役割の違いや相談役の選任基準を明確化するとともに、設置する目的や必要性を十分に検討し、外部顧問の活用を含め、企業にとって有効となるように活用しましょう。
「安易に近道を選ばず、一歩一歩、一日一日を懸命、真剣、地道に積み重ねていく。夢を現実に変え、思いを成就させるのは、そういう非凡なる凡人なのです。」
<稲盛和夫>
■最後に
社会のめまぐるしい環境変化に伴い、企業に求められる課題も多様化し、複雑化しています。
また、クライアントとなる中小企業やベンチャー企業の成長フェーズ「創業期・成長期・熟成機・衰退期など」によっても、各社が抱える経営課題は様々になります。
現在は、アメリカでは、正社員の採用を控える会社が増え、フリーランスの労働人口が50%を超えています。
日本でも同様に、コロナ以降、リモートワークが増えたことで、正社員とフリーランスの境界線が曖昧になり、専門的な知識と多様な経験、豊富な人脈、特定分野のノウハウや卓越したスキルを持つフリーランス顧問、プロ人材のニーズは高まっています。
日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」は、年齢を問わず様々な業界や会社で、ビジネスマンとして今までに培った知識や経験、ノウハウ、人脈を複数のクライアント企業の課題解決に活かして頂くための顧問紹介サービスです。
月2回からの顧問活動、複数社の顧問活動、期限付き常勤としての活動まで、現在のライフスタイルをベースに、活動期間、提供時間を自由に設定することができるアドバイザーとしての働き方をご提案します。
顧問が受け取れる顧問報酬については、顧問紹介会社の中間マージンの取り分が多い場合には、顧問料の相場よりも少なくなります。
これまでの顧問紹介を活用した場合、顧問が受け取る報酬は、企業が支払う顧問料を顧問紹介会社と分配したものになります。
その比率は、顧問紹介サービスの会社によって相当に違います。
顧問と顧問紹介会社の報酬の割合が、50%:50%の顧問紹介サービスのエージェントもあれば、30%:70%という悪質な顧問紹介の会社もあります。
日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」は、企業様から頂くサービス利用料で運営しているため、「中間マージンなし」の「顧問報酬100%」を事業コンセプトにしています。
KENJINSは、フリーランスの求人サイトとは違い、両者の事前フォロー、アフターフォローなどを行いつつ、様々な角度からクライアント企業と顧問の両方の立場からエージェント機能を提供しています。
顧問と企業を仲介する立ち位置でありながらも、単なる人材紹介会社とはポジショニングが異なり、課題解決をゴールに両者のマッチングを行うことで、プロ人材の「人的資産」によりビジネスの成果を上げることに徹しています。
近年の傾向として顧問は、60歳以上の定年退職者のみを指す肩書では無くなりました。
フリーランスの30代や40代のプロ人材が男女を問わず、「顧問」の肩書と名刺を持ち、技術顧問やマーケティング顧問、営業顧問、海外顧問、広報・PR顧問としてアドバイスを超えた実務を担うケースが増えています。
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