アンゾフの成長マトリクスとは?リスクを抑えた多角化戦略のコツ

投稿日: 作成者: KENJINS運営会社社長 カテゴリー: 専門家インタビュー   パーマリンク

企業が持続的な売り上げを出し続けられるかは、どのような経営戦略を練るかという点にかかっています。

これからの成長戦略をどう描けば良いのか、どういった視点から新しいビジネスを考えていけば良いのか、と悩まれている経営者の方が増えています。

経営戦略を練るフレームは、数多く存在します。その中でも「アンゾフの成長マトリクス」は、企業の戦略を考える際に役立つ、代表的な手法となっています。

アンゾフは、近代の「経営戦略の父」と呼ばれており、『競争優位の戦略』の著者であるマイケル・ポーターや『コア・コンピタンス経営』の著者であるゲイリー・ハメルにも影響を与えました。

そこで今回は、アンゾフの成長マトリクスとは何か、リスクを抑えた多角化戦略のコツについて解説します。

■アンゾフの成長マトリクスとは?
「アンゾフの成長マトリクス」とは、「戦略は組織に従う」という言葉で有名な経営学者イゴール・アンゾフによって提唱されたフレームワークです。

アンゾフの成長マトリクスは、新たなビジネス戦略を考えるときに効果的なツールのことです。「マトリクス」という言葉があるように、縦軸と横軸に情報を分類することで、取るべき戦略を選びやすくするという特長があります。

このフレームワークでは、「製品」と「市場」について、「既存」と「新規」で4象限に分類し、事業拡大の戦略を探索していきます。

事業の成長を「製品」と「市場」の2軸におき、その2軸をさらに「既存」と「新規」に分けて表した企業の成長戦略をシンプルに表現しており、「アンゾフのマトリックス」や「製品・市場マトリックス」などとも呼ばれています。

■アンゾフの成長マトリクスは4つの戦略
以下では、戦略ごとの特徴について詳しく説明します。

1、市場浸透戦略
「市場浸透戦略」は、既存の市場ですでに販売している商品やサービスを浸透させる方法です。

最もリスクの低い、ビジネスを展開しやすい戦略が、既存の市場(顧客)に既存の製品を販売する「市場浸透戦略」です。

「顧客の購買数を増やす」「顧客1人あたりの購入金額を上げる」「リピート顧客を増やす」のように、既存の商品やサービスの売上を拡大させる手法を取ることで、企業を成長させやすくなります。

具体的には従来製品をブラッシュアップして品質を向上させる、アフターフォローの充実などサービスの質を高める、買い替えの促進や割引などのキャンペーンといった施策が挙げられます。

顧客ひとり当たりの購買数や購入金額を増やしたり、購入頻度・リピート率を高めたりする施策を考えて行きましょう。

2、新商品開発戦略
「新商品開発戦略」は、既存の市場に対して新商品や新サービスを打ち出す手法です。

商品開発に対して、研究施設・製造設備・従業員など、新たに投資を進めていくことになるため、リスクは市場浸透戦略よりも高くなります。

既存の商品に関連した新商品を開発したり、前回のモデルをグレードアップさせて販売したりすることで、既存顧客からの売上を増やします。

関連商品や付属商品、バージョンアップ商品、機能追加商品の販売などがあります。

3、新市場開拓戦略
「新市場開拓戦略」では、既存の商品やサービスを新たな市場に展開する手法です。海外進出によってマーケットを拡大したり、ターゲットを変更して新たな顧客層に既存商品を販売したりします。

どれだけ魅力的な商品やサービスを提供していても、市場のニーズが飽和すれば売上を伸ばすのは難しいでしょう。また、本来は需要の高い商品やサービスであっても、参入する市場や設定するターゲットが間違っていれば、期待する売上を出すことはできません。

新しいエリアやターゲットなど、これまでアプローチしてこなかった市場(顧客)の開拓を行います。

具体的には、他地方や海外に売り出したり、今までとは異なった顧客層(顧客の業種や業態、属性など)にアプローチしたりといった施策が挙げられます。

ただ、事業の拡大が見込める適切な市場を特定するためには、さらに専門的な調査・分析が必要になるため、市場浸透戦略よりもリスクが高いと考えられています。

新市場の開拓はリスクも伴いますが、市場のニーズや売上によっては大きな成果を出せる可能性があるため、慎重に検討して経営戦略を立案しましょう。

4、多角化戦略
「多角化戦略」は、新たな市場で新商品・新サービスを販売する手法です。今までにない商品をまったく新しい市場に売り出す場合は「多角化」が必要です。

既存のビジネスとは異なる方法で収益機会を得るようになるため、企業にとっては新たな分野に挑戦する機会になります。

多角化戦略は、これまでになじみのない市場・製品分野への進出となるため、4つの戦略の中で最もリスクの高い戦略とみなされています。

ただし、自社の既存事業の衰退に備えるためのリスク分散ができる戦略でもあります。

多角化戦略を成功させるには、ゼロから事業を手がけるのではなく、企業が持つ強みを活かしたり、他社との差別化を図ったりすることが大切です。

■アンゾフの成長マトリクスはいつ使うのか?
これまでおこなってきた事業の成長が伸び悩み、新たな「成長戦略」を模索するときに使います。

成長戦略とは、企業・団体・国家などが持続的成長を達成するために打ちだす方針・計画を策定するという意味合いがあります。

具体的には、研究開発、規制緩和、教育投資、競争政策、異業種との提携などでイノベーションの芽となる「技術革新」を起こし、将来にわたって成長が期待できる事業・分野に資金や人材などの経営資源を投じます。

企業の場合、将来市場で優位性を築き、業績を向上させるために製品・サービスの開発や市場の開拓をどうするかの戦略のことを指します。

また、貿易自由化や未開発市場の開拓で需要を生み、国際競争力を強化することを意味します。

アンゾフの成長マトリックスは、元々、企業の成長戦略や多角化戦略を検討する際に、理論的な柱となってきたフレームワークになります。

そのため、アンゾフのマトリクスは、本業の低迷に苦しんでいるものの、どうやって新しいビジネスを展開して行けば良いかを悩んでいるタイミングで企業が活用すると、大きな手掛かりを得られる有効なツールだと言えます。

■多角化戦略とは?
多角化戦略とは、主力事業とは別に、新しい業界などにおいて新製品やサービスを投入し、企業の成長を狙うビジネスの成長戦略になります。多角化戦略は、企業の成長戦略を考えるうえでの柱の一つになります。

企業が多角化すると、以下のようなメリットが期待できます。

・収益の拡大が期待できる。
・企業環境の変化によるリスクを分散できる。
・シナジー効果が期待できる。
・範囲の経済性が得られる。
・プロダクトライフサイクルに対応できる。
・経営資源の有効活用。

アンゾフの成長マトリックスは、元々、企業の成長戦略や多角化戦略を検討する際に、理論的な柱となってきたフレームワークになります。

多角化戦略は、生産技術および市場の観点から大きく以下の4つに分類することができます。

・水平型多角化戦略
・垂直型多角化戦略
・集中型多角化戦略
・コングロマリット型多角化

多角化を目指す際には、必ず本業に徹底的に注力すること、そして他の分野にも転用を想定した仕組みを作ることを意識する必要があると言えます。

中小企業が多角化を考える場合には、自社の経営資源や技術を十分に分析し、それに適した戦略を選択することが重要になります。

■アンゾフの成長マトリクスが示している重要なポイント
アンゾフの成長マトリクスが示している重要なポイントは2つあります。

1つ目は、企業を成長させようとするときは、自社の「製品(技術)」か「市場(顧客)」のどちらかを軸に展開していくことです。

・技術が強いのなら、その技術を新しい市場に展開する。
⇒「新市場開拓戦略」を図ること。

・顧客接点が強いのなら、その顧客に新しい技術を提供する。
⇒「新商品開発戦略を図ること。

2つ目は、「製品(技術)」または「市場」のどちらかに強い力を持っていなければならないことです。こういった自社の強みのことを「コアコンピタンス」と呼びます。

アンゾフの成長マトリクスは、「市場(顧客)」と「商品」のそれぞれが、「新規」か「既存」かを組み合わせたものです。

従ってアンゾフの成長マトリクスは、製品戦略や販売戦略ではなく、新規事業立上げもしくは新たな企業戦略を検討する際に使うことに注意しましょう。

・あなたの会社の強みは何ですか?
・自社の製品・技術を新しい市場に展開したり、既存の市場に新しい製品・技術を投入したりすることはできますか?

それがアンゾフの成長戦略の第一歩の問いかけなのです。

成長を続けるというのは短期的な目標ではなく、中長期的に目指すものですので成長戦略を練る際も同様に先を見据えて判断することが推奨されます。

■まとめ
アンゾフの成長マトリクスは、自社の既存事業が成熟、縮小、伸び悩みなどしていて、打開する方法を知りたいときに活用できます。

事業のポートフォリオの範囲を視覚的に整理し、考えられる4つの戦略のうち、どこに注力するのが企業にとってより有益であり、潜在的にもリスクが少ないかを検討することが可能です。

アンゾフの成長マトリクスのフレームワークを使うことで、市場と製品の両軸から自社がどの領域に進出するかを決定することができます。

自社の製品の性質・特徴が活かせる市場はどこか、新規事業として取り組むべきものは何かを見極めることに役立ちます。

アンゾフのマトリクスを有効に活用するためには、それぞれの戦略のメリットとリスクを把握できていることと、費用対効果をある程度つかめていることが重要です。

それぞれを比較しながら、自身のビジネスアイデアにより適した戦略をとっていくことが肝要です。

「企業の事業拡大は、まず既存事業の市場浸透から始まり、そこでの成長が難しくなると他の方向へ向かう。」

<イゴール・アンゾフ>

■最後に
企業が成長を続けるためには、利益が必要です。企業は利益を上げるための販売戦略や経営戦略を練るために様々なマーケティングや分析を行います。

どのような企業であっても、現状維持だけでは、事業が伸び悩むことはあります。

既存市場浸透の領域で成長戦略を考えるならば、売上の要素となる「顧客数」「売上単価」「購入数」「購入頻度」のいずれかを伸ばさなくてはなりません。

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アンゾフの成長マトリクスでは市場と商品を軸にしますが、ビジネスの課題に顧問やプロ人材を活用する際には、顧問料のコストに対するリターン、つまり、施策に対する投資対効果のバランスにも留意する必要があります。

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本田季伸のプロフィール

Avatar photo 連続起業家/著者/人脈コネクター/「顧問のチカラ」アンバサダー/プライドワークス株式会社 代表取締役社長。 2013年に日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」を開設。プラットフォームを武器に顧問紹介業界で横行している顧問料のピンハネの撲滅を推進。「顧問報酬100%」「顧問料の中間マージン無し」をスローガンに、顧問紹介業界に創造的破壊を起こし、「人数無制限型」や「成果報酬型」で、「プロ顧問」紹介サービスを提供。特に「営業顧問」の太い人脈を借りた大手企業の役員クラスとの「トップダウン営業」に定評がある。

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