リスキリングとは?企業の持続的発展にリスキリングが必要な訳

投稿日: 作成者: KENJINS運営会社社長 カテゴリー: 専門家インタビュー   パーマリンク

現在、デジタル化や脱炭素化、コロナ禍における人々の意識の変化など、経営戦略と人材戦略の連動を難しくする経営環境の変化が顕在化しています。

非財務情報の中核に位置する「人的資本」が、実際の経営でも課題としての重みを増してきています。

なぜなら、多様な個人やチーム・組織が活性化されていなければ、生産性の向上やイノベーションの創出には繋がらないからです。

2020年のダボス会議において、「リスキリング革命」(Reskilling Revolution)が、発表されたことで、現在、ビジネスの世界で「リスキング」が注目されています。

そこで今回、リスキリングとは?企業の持続的発展にリスキリングが必要な訳について解説します。

「成長に必要なのは技術的なエンジニアリングではなく、人の心理を読んで活動することソーシャルエンジニアリングである。」

<ジェリー・ヤン>Yahoo! 共同創業者

■リスキングとは?
リスキリングとは、技術革新やビジネスモデルの変化に対応するために、新しい知識やスキルを学ぶことを意味します。英語では、「Reskilling」と表記されます。

経済産業省は、リスキリング「Re-skilling)を以下のように定義しています。

日本語では、「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること。」

今や企業価値の決定因子は、有形資産から無形資産に移行しています。

その無形資産の中核が紛れもなく人材になります。従って、DX時代では人材の価値を高めれば、無形資産の価値が高まり、それが企業価値を持続的に押し上げることに繋がります。

ビジネスモデルや事業戦略の変化に伴い、人材戦略も必然的に変わため、DX時代の人材戦略は、「リスキリング」にあると言えます。

リスキリングは、社会の要請により就業者のスキルを変質させるという意味において、学びを提供する企業側の視点が強い言葉になります。

しかし、学ぶ本人の主体性なしに成功はないため、『獲得する/させる』と双方の視点からの表現が併記されています。

■DX時代は、CXO人材にもリスキングが重要な理由
経営戦略と人材戦略の連動を難しくする経営環境の変化は、以前から始まっています。

特に2020年以降のデジタル化の進展によって、人材に求められるスキル・能力がデジタル系の知見を重んじる方向性に急速に変化しています。

多くの企業にとって、今後のAIの普及やロボットと協調しながらも、イノベーションを起こすための人材のスキル、能力をどのように定義し、育成を行っていくかも課題になります。

リスキリングは、企業として取り組みうべきテーマです。

近年では、特にデジタル化と同時に生まれる新しい職業や、仕事の進め方が大幅に変わるであろう職業につくためのスキル習得を指す必要が増しています。

リスキリングによって、デジタル技術の力を使いながら価値を創造できるように多くの従業員の能力やスキルが再開発が必要な時代に急速に変化したからです。

DXは、企業の価値創造の全プロセスを変化させ得る取り組みになります。

デジタル戦略を考え、ロードマップを描く「一部の人材」ではなく、フロントラインの人々を含む全人材に対して必要と考えるべきだと言えます。

■リスキングとリカレント教育の違い
リスキリングと並行して語られることが多いのが「リカレント教育」です。

「リカレント(recurrent)」は、「循環する」「繰り返す」といった意味を持ち、それぞれの必要なタイミングで教育を受け、また仕事に戻るといったことを繰り返す仕組みのことです。

リカレント教育は、「働く→学ぶ→働く」のサイクルを回し続けるありようのこと。新しいことを学ぶために「職を離れる」ことが前提になっています。

業務と並行しながら学ぶリスキリングと違い、一度仕事を離れて大学などの教育機関で学び直すことを指します。

■リスキリングが注目されている背景
ビジネスの変化が激しく、求められるスキルも変わってくる時代に、企業はリスキリングを導入する必要性に迫られています。

2020年のダボス会議では、「リスキリング革命」が主要な議題に上りました。「2030年までに全世界で10億人をリスキリングする」宣言しました。

ダボス会議とは、スイスのダボスで開催される、世界経済フォーラム(World Economic Forum)の年次総会のことです。この会議には、各国から様々なリーダーが集まり、よりよい社会のための議論が行われています。

そのテーマは、環境問題、経済、技術、雇用、健康、国際協力、社会平等など幅広く、社会に責任を負う「ステークホルダー資本主義」という概念をもとに、様々な議論が行われています。

世界の有識者が、「第4次産業革命により、数年で8000万件の仕事が消失する一方で、9700万件の新たな仕事が生まれる」と提言しています。

その要諦は、第4次産業革命に伴う技術変化に対応するために、「2030年までに全世界で10億人により良い教育、スキル、仕事を提供する」というものです。

第4次産業革命にはバイオ革命やロボティクスなど様々な技術の変化が含まれますが、なかでも注目されるのはやはりDXの加速です。

タボス会議が発端となり、DX人材育成の文脈のなかでリスキリングという言葉が使われるようになりました。

■企業がリスキリングを推進する5つのメリット
企業がリスキリングを推進するメリットを、具体的に紹介します。

1、リモートワークではリスキリングが不可欠。
コロナ禍が、働くこと自体や働き方に対する人々の意識を大きくそして確実に変化させています。

特にリモートワーク等が新たな日常として浸透し、対面でのコミュニケーションの頻度が確実に減少しています。

デジタルスキルの習得が間に合わず、新たなツールに順応できない主に50代~60代の社員と、若手の社員の間で、コミュニケーションの齟齬と価値観の相違が生じています。

現在、いかに従来とは別の手法で、企業の進む方向性や戦略を共有し、日々の生産性を上げていくか、組織としての対応が求められています。

2、人材不足に対応すことができる。
三菱総合研究所の推計によると、向こう10年以内に、国内では事務職や生産職に数百万人規模の大幅な余剰が生じるとされています。

一方では、デジタル人材をはじめとした専門・技術職は同程度以上の不足が予測されています。不足するDX人材を採用といった方法で外部調達しようと思っても、難しい状況となるでしょう。

このような変化がますます顕在化するにつれ、非財務情報の中核に位置する「人的資本」が、実際の経営でも課題としての重みを増して来ています。

日本企業は今こそ、人的資本経営に具体的に取り組んでいく必要があると言えます。リスキリングを行い、必要なスキルを身に着けて貰うことは、企業にとって理に適った選択だと言えます。

3、エンゲージメント向上に繋がる。
長引くリモートワークにより、各部署の目標や、個々人の役割分担について認識を共有しづらくなり、組織全体の管理コストが上がっています。

企業の中核人材における多様性の確保に向けて、管理職における多様性の確保(女性・外国人・中途採用者の登用)についての考え方と測定可能な自主目標を設定すべきであるとされています。

企業がリスキリングの推進によって、従業員に学びの機会を提供し、キャリア形成の支援をすることは、従業員エンゲージメントの向上に繋がります。

エンゲージメントが上がれば生産性は向上し、業績にも貢献することになるでしょう。

4、自律型人材を育成できる
2021 年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードにおいて、人的資本に関する記載が盛り込まれました。

サステナビリティを巡る課題への取組として、人的資本等への投資等について、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきであるとされています。

企業がリスキリングを推進することで、従業員のなかにも自分で新しいスキルを獲得しようという風土が生まれます。

自発的に考えられる「自律型人材」が増えることで、イノベーティブな組織に変わるきっかけになります。

5、社内の業務に精通した人材に取り組んでもらえる
コーポレートガバナンス・コードでは、中長期的な企業価値の向上に向けた人材戦略の重要性に鑑み、多様性の確保に向けた人材育成方針・社内環境整備方針をその実施状況と併せて開示すべきであるとされています。

リスキリングを行った社員は、既存事業に精通しているため、すぐに業務のなかで新しく身に付けたスキルや知識を活かすことができます。

同等のスキルや知識を持った外部人材を採用することも方法の1つですが、既存事業の要諦や社内における仕事の進め方等に馴染むまでに時間が掛かります。

その点、リスキリングを社内で推進すれば、スムーズに仕事を進めることができるでしょう。

■リスキリングを進める上での注意点
リスキリングを進める際、以下の点に注意をしましょう。

1、取り組みやすい環境をつくる
リスキリングに取り組みやすい制度や仕組みをつくるには、まずは周囲の理解が必要です。なぜリスキリングが必要なのか、社員にしっかり説明をすることで、対象となる受講者への協力体制がうまれます。

リスキリングに取り組む人へのインセンティブを設ける、業務時間内に学ぶ時間をつくる場合などは、より周囲の理解が必要といえるでしょう。全社一丸となって、必要なスキルを獲得できるような環境整備は必須です。

2、社員の自発性を尊重する
特にこれまでまったく違う職種についていた人がリスキリングを行う場合、学習に対する負荷やストレスがかかります。本人のスキルを身に着けたいという意思がなければ成功しません。

対象者を設定するときは挙手制にするなど、社員の自発性を尊重しキャリアプランとマッチするようにしましょう。

3、リスキリングしたことを実践で活かす
繰り返しですが、リスキリングは手段であって目的ではありません。宝の持ち腐れにならないよう、実践で活用することが重要です。

業務中に実践する機会を用意しておきましょう。実践の結果に対しフィードバックの機会も持ち、繰り返しスキルを磨き続けることも行いましょう。

■まとめ
新型コロナウイルス感染症への対応の中、働き方を含めた人材戦略の在り方が改めて問われています。

ですが、働き方改革は、以下のように企業や個人を取り巻く環境への対応と、本質的には同じ方向性であると言えます。

・第4次産業革命等による産業構造の急激な変化
・少子高齢化や人生100年時代の到来
・個人のキャリア観の変化

DX時代に対応するために、リスキリング「Reskilling」に取り組むことは、企業の持続的な成長のためには不可欠ですが、あくまで手段であって、目的ではありません。

経営戦略に連動した人材戦略を固め、その人材戦略を実現していくために必要となる人材像やスキルを明確にすることが必要になります。

人材戦略は、産業や企業より異なるものの、俯瞰してみると、3つの視点が存在します。

1、経営戦略と連動しているか?
2、目指すべきビジネスモデルや経営戦略と現時点での人材や人材戦略との間のギャップを把握できているか?
3、人材戦略が実行されるプロセスの中で、組織や個人の行動変容を促し、企業文化として定着しているか?

という点になります。

今後の事業に必要なDX推進のスキルやデジタル人材の育成ノウハウが、社内に無いという場合は、フリーランスの外部人材を登用することも視野に入れ、「リスキリング」を強化すべきだと言えます。

■最後に
企業は様々な経営上の課題に直面していますが、これらの課題は、人材面での課題と表裏一体であり、スピーディな対応が不可欠だと言えます。

このため、各社がそれぞれ企業理念や存在意義「パーパス」まで立ち戻り、持続的な企業価値の向上に向け、人材戦略を変革させる必要です。

変化が激しい時代には、これまでの成功体験に囚われることなく、企業も個人も、変化に柔軟に対応し、想定外のショックへの強靱性「レジリエンス」を高めていく変革力が求められています。

中長期的な企業価値向上のためには、非連続的なイノベーションを生み出すことが重要であり、その原動力となるのは、多様な個人の掛け合わせになります。

このため専門性や経験、感性、価値観といった知と経験のダイバーシティを積極的に取り込むことが欠かせません。

同質性の高いチームから多様なチームへと変わるに当たっては、社内外の協働の在り方を見直す必要があります。

外部の知と経験を活かす「ダイバーシティ&インクルージョン」は、多様な属性を持つ人材のみならず、社員全員に関わるテーマになります。

時代の変化に伴って、ダイバーシティの意味合いも変化する中で、人によって与える機会に制限をかけない、ということが重要だと言えるのです。

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本田季伸のプロフィール

Avatar photo 連続起業家/著者/人脈コネクター/「顧問のチカラ」アンバサダー/プライドワークス株式会社 代表取締役社長。 2013年に日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」を開設。プラットフォームを武器に顧問紹介業界で横行している顧問料のピンハネの撲滅を推進。「顧問報酬100%」「顧問料の中間マージン無し」をスローガンに、顧問紹介業界に創造的破壊を起こし、「人数無制限型」や「成果報酬型」で、「プロ顧問」紹介サービスを提供。特に「営業顧問」の太い人脈を借りた大手企業の役員クラスとの「トップダウン営業」に定評がある。

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