大手企業であれば、組織内に法務部があり法務部の中に「社内弁護士」がいる会社もあります。
社内法務部があれば、トラブルや紛争を防ぎ、問題がが起きた場合には迅速な対応ができる体制が整っていることが多いです。
しかし、中小企業の場合、そもそも社内に法務部があることすら珍しいというのが実態です。ですが、法務部がないというのは、会社経営するにあたり大きなリスクとなります。
そのような際に頼りになる存在が「顧問弁護士」や「法務顧問」になります。
そこで今回、顧問弁護士とは何か、弁護士の役割と契約するメリット・費用の相場について解説します。
■顧問弁護士とは?
顧問弁護士とは、会社経営者が、特定の弁護士もしくは、法律事務所と顧問契約をして、定期的な相談をしたり、アドバイスをして貰えする弁護士のことをいいます。
具体的な問題が生じた段階になって相談、依頼する場合には、スポット契約になります。顧問弁護士はスポットでの相談や訴訟の依頼と違って、一定の期間、継続的に法的サポートを受けることができるというのが特徴になります。
会社を運営しているとクレームや社内の不祥事、ネット上への悪質な書き込み、取引先や従業員からの訴訟など、さまざまなトラブルが発生することがあります。
顧問弁護士がいれば、
・契約書を締結する際に法的な立場から会社にリスクが発生していないか?
・ビジネスモデルやサービス内容に法的な問題がないか?
・どうすれば法的なリスクを抑えてビジネスモデルを構築できるか?
などを事前にチェックすることが可能になります。万が一トラブルが発生した場合には、損害を最小限に抑えるため、様々なアドバイスや法的な手続きを行うことが可能になります。
■中小企業にこそ顧問弁護士が必要な理由
中小企業は、大手企業と異なり経営資源に乏しく、しっかりとした法務部門がありません。そのため、ビジネスを推進する際に常に法的トラブルのリスクを背負っています。
ひとたび法的トラブルが発生すれば、事態は容易には解決せず、経営者や担当者が対応に追われ、社内は大混乱に陥ります。
顧問弁護士がいることで、以下のような問題が発生した際に、企業内の負担や不安を減らすことができます。
【顧問弁護士への相談や対応できるトラブル内容の例】
・各種訴訟、仲裁等への対応
・売掛金の回収
・従業員からの残業代請求、セクハラ・パワハラ、解雇等の労働問題
・従業員が逮捕されたなどの刑事事件
・悪質なクレーマーや反社会的勢力への対応
・会社の再生や経営立て直しの相談
・秘密情報や個人情報の漏洩への対応
・不祥事への対応
・事業再生
顧問弁護士がいない場合、どうしてもトラブルがある程度、明確になってからの相談になりがちです。
しかし、実際は、トラブルをうまく解決するためには事前の予防とリスク対策が必須です。トラブル発生が明確になってからの相談では、自社の意向に沿う解決をすることが難しいことが多いです。
■顧問弁護士の5つのメリット
法務部を設けるだけの人的余裕のない会社は、法務機能のアウトソースとして顧問弁護士と契約するという発想もあり得ます。
1、電話やメールでいつでも気軽に相談できる
顧問弁護士がいない場合、自社で気づいた問題点があるときのみ、弁護士に相談することになります。
その結果、自社では思ってもいなかった重要な問題点や法令違反について、トラブル発生後にはじめて気づくことになりやすく、より重大なトラブルに発展しがちです。
トラブルにならないと弁護士に相談しないことが多くなり、事前のリスク対策、トラブル対策が疎かになりがちです。
2、予防法務でトラブルに強い会社を作ることができる
顧問弁護士がいれば、日ごろから、トラブル予防やリスク対策について提案を受け、トラブルに強い会社を作ることができます。
一方、顧問弁護士がいない場合、このような予防法務の取り組みができずにトラブルが増えたり、トラブル発生時の会社の損害が重大化することになります。
3、トラブルが起きたときの依頼もスムーズ
顧問弁護士がいれば、トラブル発生時の依頼がスムーズです。
一方、顧問弁護士がいない場合、トラブルが起きたときに依頼できる適切な弁護士が見つからないケースもあります。
あるいは、弁護士が見つかっても、一般的には顧問先企業の対応が優先されるため、顧問契約していなければ忙しくて相談を受けて貰えなかったりします。
その結果、自社が納得できる弁護士に依頼できず対応が遅れてしまう可能性があります。
4、ホームページでの掲載や会社概要での記載が可能
自社のホームページや会社概要で顧問弁護士についての表記が可能になることもメリットの1つです。
顧問弁護士をホームページや会社概要に表記することで、外部に対して、法務対応やコンプライアンスについてしっかり取り組んでいる企業であることを印象付けることができます。
また、悪質ないいがかりや不合理なクレームを付けられることに対する予防策にもなります。
5、顧問弁護士は、多岐にわたり会社を支えてくれます。
顧問弁護士がいれば、そのような法的トラブルの発生を未然に防げる可能性が高まります。
なぜなら、法的対応を弁護士に任せることで、会社は弁護士の指示を受けて必要書類を整備したり、対応したりすることができるからです。
【顧問弁護士への相談すると良いシーン】
・契約書等の書類関係の作成・チェック
・内部監査の書類や方法などの相談・作成
・コンプライアンス研修のサポート
・解雇や退職勧奨の方法の相談
・労働災害の対応に関する相談
・事業承継やM&A・アライアンス等の相談
・会社設立、資本政策、資金調達に関する法律相談
・株式公開(IPO)に関する相談
・海外企業との取引、海外進出に関する相談
・知的財産権の取得や侵害に関する相談
・下請法、景品表示法違反など不当な取引に関する相談
新しいビジネスを始める場合などにあらかじめ弁護士に想定されるリスクや法的な問題点を確認しておくことで、スムーズにビジネスを進めることが容易になります。
■顧問弁護士の費用の相場
弁護士、法律事務所と顧問契約を結んで、顧問弁護士と顧問契約をすれば、法務部門のアウトソーシングとして、事実上法務部を設置する以上のメリットを享受できます。
日本弁護士連合会が弁護士に対して行ったアンケートによると、顧問料の相場は、以下になります。
月額5万円:45.7%
月額3万円:40.0%
月額2万円:6.7%
月額10万円:5.7%
月額3万円~5万円の顧問料で顧問弁護士を依頼している会社がほとんどのようです。
そのため、顧問弁護士との契約は、法務部員一人を雇用することに比べれば、低コストだと言えます。
■顧問弁護士を探す3つのポイント
インターネットで「顧問弁護士を引き受けます」と書いてあるからと言って、あなたの会社に合うとは限りません。より会社に合う顧問弁護士を探す場合は3つのポイントを踏まえ、探すことをおすすめします。
1、自社と同じ業界で実績がある・対応できる
企業法務を得意とする弁護士でも、さらに注力している業界を絞っている方も少なくありません。
例えば、ネットサービスを中心とする会社が「建築業は得意だけど、IT業界はあまり詳しくない」弁護士と顧問契約するのは、お互いによい結果が得ることが難しいことが分かります。
また、自分が依頼したい内容、例えば「国際取引」を依頼したい場合、その弁護士が対応できるか、経験があるのかを確認することが重要です。直接でも間接でもよいので、必ず注力している業界や対応できる内容を確認しましょう。
2、継続して依頼しても費用に無理がない
継続して顧問弁護士を依頼する際に、費用に無理があってはいけません。継続して依頼する場合、費用はいくらか、その他訴訟や書類チェック・作成をした場合いくらになるのかもあらかじめ確認しましょう。
3、長く付き合えそうな人柄
顧問弁護士とは、1回の契約である程度長期間において密に付き合うことになります。
そのため、自社の雰囲気に合い、気軽に相談しやすい人を選ばなくてはなりません。お互いの信頼関係ができることが重要です。
そのためにも、必ず対面での相談をおすすめします。
■まとめ
顧問契約を締結している企業の場合、顧問弁護士は、たとえ多忙であっても、最優先で対応してくれます。
会社側も顧問弁護士として契約していれば、比較的気軽に弁護士に相談をすることもできるため、早め早めに連絡することもできます。
また、取引先などとの交渉の際、「顧問弁護士から、契約書を作るようにうるさく言われている」とか、「顧問弁護士から、契約書にこの条項を入れてくれとうるさく言われている」などと、顧問弁護士の意見として伝えることができます。
会社が直接的に要求するケースと違って、顧問弁護士の存在がワンクッションとなって、取引先との信頼関係を崩さずに、有利な取引・交渉も可能となるでしょう。
法的な問題が仮に起こっても、そこからの被害を最小限に抑えやすいというのが顧問弁護士がいることのメリットの一つです。
顧問弁護士は、会社や経営者の方に本来的な企業活動に専念して収益を挙げてもらい、企業の更なる発展に尽くせるようにサポートしてくれます。
■最後に
大手企業の法務担当者は、日々発生する大量の法務業務をさばいています。
しかも、現場担当者と協働して契約書チェックなど案件を毎日のように進めることも少なくありませんので、リアルタイムに動いて行く取引に対応して、スピード感を持って仕事をさばいて行くことが求められています。
日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」は、大手企業の法務部での実務経験を豊富に持つ「法務顧問」や「弁護士」として国家資格を持つプロ人材が揃っているため、相談内容や目的に応じて、顧問弁護士、法務顧問のいずれのアサインも可能です。
顧問弁護士も法務顧問は、社内では裏方と位置付けられることが多いですが、「ビジネスを推進して行く重要なプロ人材」であることは間違いありません。
例えば、海外企業との取引の際に、訴訟大国のアメリカの企業と契約を行う際には、日本の企業と比較すると契約書の内容が厳しいことが一般的です。
そのため、大手弁護士事務所に英語での契約書の作成や英語での交渉を依頼すると莫大な弁護士費用をチャージされます。
そのような際に、グローバルな業務に精通しており、英語が堪能な法務顧問や海外顧問とタッグを組むことで、弁護士とは異なる視点と立場から専門家としての見解を投げかけ、第三者視点とプレーヤーとしての意識を持ちながら、リーズナブルに対応することも可能です。
KENJINSなら士業の登録者も多いため、弁護士を法務顧問としてアサインすることも可能です。
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