多様化が進んでいる現代社会では、「価値観」は人それぞれであることを前提とし、その価値観の違いを理解し認める、「ダイバーシティ」の動きが多く見られます。
会社としてあらゆる意思決定する際にも、会社の価値観が大きく関係してきます。
なぜなら、重要な物事を決定する際には、経営者が会社としての価値観となる営業方針に基づいて、会社の方向性や重要な物事を決定する形になるからです。
会社の損得勘定や意思決定の方法は、その会社の社長のビジョンや社員の価値観が大きく関わっています。
そこで今回は、価値観とは何か、社長の価値観がビジョンや意志決定に影響を与える訳について解説します。
■価値観とは?
価値観とは、固有の物事に対する固有の感じ方や好み、善悪に対する受け止め方など、その人なりの判断基準のことを指します。
価値観を英語で表すと「sense of values」「set of values」「concept of values」になります。価値観の元となるセンスは日本で「感覚」という意味を持ちます。
価値観は、どんなことに価値を見出すかという人の感じ方や思想のことです。価値観は人によってさまざまで、何に重きを置くかなど物ごとの捉え方によって大きく変わってきます。
人は成長する過程で、様々な価値観に触れ、自分なりの価値観を作り上げて行きます。
価値観の形成には、その人が元々持っている性格だけでなく、親からの影響や育った環境、時代背景、国に根付いている文化や地域性、その人が経験した出来事なども大きく影響します。
「価値観」=その人が今まで歩んできた人生であり、その人の考え方や行動を体現する「コア」を表すモノものと言っても過言ではありません。
価値感は、一人一人違っており、今後生きていく過程でも変化して行くものになります。
■価値観が人によって異なる理由
価値観は育った環境や接してきた人、人生経験、個性などに大きく影響されます。
例えば、仕事をスキルアップしたいと休みの日も勉強に費やす人がいれば、プライベートを充実させたいので仕事はストレスなく適度にお金が稼げればいいと考える人もいます。
何を大切にするのか、何が好きなのか、これからの人生をどう生きたいかなどは、良い悪いというよりも「違い」です。
こういった違いのことを「価値観の違い」と言います。
人それぞれ生きてきた人生が違うので、人によって価値観が違うのは当然のことです。
人間には個性や特性があって、その違い(性別や人種、宗教、思想、学歴)をお互いに認め合うことを「多様性」と言います。
多様性とは、自分と違う考え方認め、違いをを活かすことで、世の中が元気になり、社会が発展していくという考え方です。
簡単に言うと、「人間は色々あって良いじゃないか」という意味になります。
■会社にも価値観がある理由
会社の経営方針や企業理念は、経営者の価値観が反映されたものといっても過言ではありません。
企業の中では、大切にすべき価値観がベースになります。
企業がビジネスの営みを通じて提供する「本質的な価値」をステークホルダーと共有することが持続的な経営に繋がります。
従業員自らが主体的かつ自律的に行動するような経営のあり方、価値感を中心とした組織変革を「価値経営」と呼びます。
経営者、従業員、顧客、提携先、地域社会などステークホルダー全員が満足する理想の企業を作り上げるためには、従業員一人ひとりが会社の「価値観」となる経営者が掲げた「ビジョン」を理解することが重要になります。
経営方針やビジョンが組織の末端にまで浸透していない原因としては、価値観の共有が社員にできていないことが挙げられます。
経営者が掲げたビジョンに共感することで、従業員自身が、
・この仕事を本当にやりたい」と思えるよう変革を促すこと。
・企業の価値観を共有することで組織行動を変えていくこと。
というのが本来あるべき企業の姿なのです。
■価値観とパーパスの関係性
会社を経営していく上では、価値観は何を大切にするか、どのような事柄を優先するかという「パーパス」に繋がる指針になります。
「パーパス」とは、「何のためにこの会社があるのか」という、企業の最も根本的な存在意義や究極的な目的、ビジネスを通じた「存在意義」を表明することを指します。
・会社の提供する商品やサービスがどんな価値を提供するのか?
・何のために存在しており何を求めて会社を経営して行くのか?
などを経営方針として掲げ、それを目標に社員が日々の仕事や業務を推進して行くことになります。
会社の価値観は、「なぜそれをやっているのか」という問いに対する答えであり、事業の原点やビジネスを立ち上げた根拠と置き換えても良いです。
つまり、企業が困難な状況に遭遇したり、あるいは岐路に立たされたりした時にも揺るぐことがない軸と位置づけられるものになります。
■ダイバーシティ(diversity)の価値観の定義
価値観の違いを発展させたものとして、「ダイバーシティ」という取り組みがあります。
ダイバーシティとは、価値観が人にとって異なることを前提に、人それぞれの「多様性」や「相違点」を理解するという意味合いがあります。
グローバル企業では、会社組織内において、性別(ジェンダー)や年齢、職歴、人種、国籍、働き方、ライフスタイルなど、さまざまな属性を持った人々が所属している状態を指す際に用いられることが多い言葉です。
ダイバーシティの推進によって、人材の多様化や企業の持続的な成長、企業価値の向上などを実現できる可能性があります。
ダイバーシティ推進の考え方を生かした、企業のビジネス環境やマネジメントを「ダイバーシティマネジメント」、更には「ダイバーシティ経営」と呼ぶようになりました。
組織内の多種多様な人材の「違い」を尊重して受け入れ、「違い」を積極的に生かすことで、個人だけでなくビジネスの両方の成長を目指します。
■仕事の価値観とは?
仕事の価値観とは、「ビジネスマンが仕事に対してどう思うか」という価値観を意味する言葉で「仕事観」と呼ばれています。
仕事観とは、簡単に言うと「あなたにとって仕事とは何ですか?」という質問に対する回答になるものです。仕事をしていく上での価値観のことになります。
例えば、「スキルアップを重視して自己成長しながら働きたい」「社会の一員として貢献できる存在になりたい」などが仕事観として挙げられます。
仕事の価値観には、主に3つの種類があります。
1、内因的仕事観
やりがいや自己成長など、自身にとって精神的、心理的な意味合いが大きいという考え方。
仕事に対し、やりがいやスキルアップなどを求める。仕事をすることを、精神的・心理的な価値があるものと考える。
2、功利的仕事観
働くこと自体が目的ではなく、お金や社会的地位を得るための手段であるという考え方。
労働自体を目的としない考え方。金銭面や社会的地位を重視する。
3、規範的仕事観
仕事とは自分のためではなく、社会や人々のためにするものだという考え方。
自分のために働くのではなく、人々や社会の役に立つために働くものだと考える。
■仕事の価値観を知っておくべき3つの理由
自己成長のために認識しておきたいことが三つあります。
1、仕事の満足度ややりがいを感じやすくなる
仕事と自分の価値観合っていれば、満足度ややりがいを感じやすくなります。価値観が決まっていれば、ただ漠然と仕事をするのではなく、目的を持って仕事ができるでしょう。
持っている仕事観は同じだったとしても、「自分ならできる」と思えるか「自分なんてだめだ」と思ってしまうかで、行動は大きく異なります。
よって、やりがいには、健全な自己肯定感が必要なのです。
今の会社でスキルアップをしたいと考えているのであれば、仕事で得られる経験やスキルに価値を見出せます。
価値観が一致していれば、満足度の向上に繋がるといえます。
2、仕事に対するミスマッチが起こりにくい
世の中の環境はどんどん変わっていきます。自分と世の中の環境を客観的に見つめて「このままでは置いていかれてしまう」という危機感を持つことが、行動につながっていきます。
仕事に対する価値観は、適職を選ぶための重要なポイントともいえます。
万が一あなたが描く仕事の価値観が企業の価値観とズレていた場合は、早期退職に繋がる可能性があるからです。
せっかく就職したとしても、会社の考え方や方向性が合わないと感じれば、長く続けていくのは難しいといえます。
順調なキャリアを描くためには、価値観の合う仕事選びが大切です。
3、環境やライフステージによって価値観は変化する
仕事に対する価値観は、環境やライフステージによって変化するといえます。
年齢を重ねて、新しい経験をしたり、いろんな人の価値観に触れることによって、自分の価値観も変わってくるからです。
たとえば、新入社員として入社した際は価値観が一致していた企業でも、結婚して子供ができれば「家族と過ごす時間を増やしたい」と思うこともあります。
時間が経つにつれ、変化する価値観を冷静に把握できなければ「昔はマッチしていたが、今は企業との価値観とミスマッチしている」という状況に気づけないでしょう。
自己と環境を正しく認識できたら、これからすべきことを考えます。心の動機となる「価値観」を大切にしながら、能力を磨いて行きましょう。
■キャリアアンカーとは?
キャリアアンカーとは、個人が築き上げてきたキャリアに基づいた、生涯に渡ってブレない自己欲求や自己が望む価値観を指します。
キャリアアンカーは、個人が自らのキャリアや働き方を選択する際に、どうしても譲れない「価値観」や「欲求」、そして、個人の「コアコンピタンス(能力)」のことを指します。
そもそも価値観は十人十色なので、似ている仕事観を持っている人の間でも違いがあります。実際はそれぞれの要素を合わせ持った人もいますし、どの要素を見てもしっくりとこない人がいるのも事実です。
キャリアアンカーは、生涯に渡り自分の働き方の軸となるものです。瞬間的な好みや周囲の環境、ライフステージによって変化するものではなく、自身にとっての「核」に該当するものです。
なるべく早いタイミングでこの軸を理解しておくことは、満足度の高いキャリアや働き方を選択する上で有利に働きます。
キャリアアンカーは、価値観を知るひとつの手段として捉えるようにしましょう。
会社任せにしていてもキャリアを築くことができた一昔前とは異なり、「キャリアは自ら切り開いていくものである」という認識が一般的になりました。
変化の激しいこの時代では、自身の価値観を大切にし、いかにして自分らしいキャリアを築いていくかが重要です。
■まとめ
価値観とは、「何に価値を見出すか」という感じ方を意味する表現になります。美しい、正しい、心地よい、優先するべき、理想とするべき、というような、価値判断の基準を指す言葉です。
価値観は、個々人の個性や、共同体の文化にも密接に関連しています。
会社としての価値観は経営者の考え方や生き方の影響を受けるため、あらゆる点において完璧に一致する企業の存在はまずもって考えにくいほど、会社によって千差万別になります。
ビジネスマンの場合、自身の根幹となる軸「アンカータイプ」を把握することで、昇進や転職、結婚など様々な人生の節目で、自分の望む満足度の高い働き方を選択しやすくなります。
ただし、仕事に関する価値観には優劣はありません。
違う価値観を持つ相手には、その価値観を否定せずに、認めることが大切です。
・安定を求める人に対して、過度に転職することや独立することを勧める。
・フリーランスで働いている人に対し、会社員として働くことを押し付ける。
・起業に向けて準備している人に「安定した仕事に就くべき」だと訴える。
こういった「押し付け」は人間関係に傷がつく原因にもなりかねません。世の中には、まったく同じ価値観を持つ人は存在しないことを覚えておきましょう。
「夢をバカにする人間から離れなさい。器の小さい人間ほどケチをつけたがる。真に器量の大きな人間は、”できる”と思わせてくれるものだ。」
<マーク・トウェイン>
■最後に
「価値観は変化するもの」と意識しておくことが大切です。
20代や30代のころは「挑戦」に飢えていたビジネスパーソンでも、40代~50代になり、環境の変化や複数の会社で様々なビジネスの経験をすると心境が変わることもあります。
こういった「価値観の変化」に対して、柔軟に受け入れていくことが、気持ちのよい仕事ができるための秘訣でもあります。
様々な業界で、50代を超えるとの転職はなかなか厳しい市場だと言われています。
知識・経験・スキル、人脈のある方は、転職ではなくフリーランスの顧問やプロ人材として複数の企業にプロ人材として関与することを視野に入れてみても良いかもしれません。
フローランスの顧問やプロ人材として自分の「価値感」に気づいて日々の業務に携わることができれば、その対価として適正な報酬を顧問料の相場で頂くという意識も高まり、プロフェッショナル意識が芽生えます。
「価値感」を意識すると、もっと高い価値を提供できないかという欲求も芽生えます。自身の存在価値を感じることができれば、仕事に対する使命感も出てくるでしょう。
価値感を考え抜くことは、「やりがい」を高める効果も期待できるのです。
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会社員よりも個人事業主としてプロジェクトを請け負う形であれば、働き方を自分で選べる形になるでしょう。
■顧問やプロ人材として自分の価値観を大切にしたい方へ
起業家やフリーランスとして活躍するためには、「自分が得意とする仕事を通じて、自身の価値観を体現しているか」を言葉として表現し、伝えることが重要になります。
シンプルにいえば、新たな仕事の獲得には、会社や個人を問わず「どうして相手は私に仕事を頼むのか」ということを理解した上で、価値観を堂々と伝えて行くスタンスが大切です。
例えば、沢山の経営者が集まる異業種交流会に参加した際に、名刺交換で「私は営業の仕事をしています」とだけ言ったら、当然ライバルとなる営業マンは山ほどいるため、話が弾み、仕事に繋がる可能性が低くなります。
常にクライアントに対して価値を提供することを意識し、名刺交換する際でも、経営者から「あなたどういう人ですか?」と問われたら、「私が得意なのは、一緒になってお客様の利益を最大化する方法を考えることです」と答えることができれば、詳しく教えてくださいとなる可能性が高まります。
つまり、価値観を大切にし顧客に寄り添うことを体現することができれば、「それでは、あなたに仕事を頼もうかな」ということなる機会が増えます。
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