社外取締役の報酬相場はいくらなのか?社外取締役が必要な訳

投稿日: 作成者: KENJINS運営会社社長 カテゴリー: 働き方改革   パーマリンク

近年はダイバーシティの観点から、女性役員の登用に多くの企業が積極的です。とはいえ、女性であれば誰でも良いわけではなく、取締役社外取締役にふさわしい知見やスキルを持つ人材はごく少数になります。

その少数の人材を企業が取りあう状況でありますが、以前と比べると社外取締役の女性活用に門戸が広がっている言えます。

海外の有名企業や一部上場企業などでは、社外取締役に支払われる莫大な報酬額がたびたび話題に上がります。欧米では複数の会社の社外取締役を兼任するケースでも1社から、年収1200万の役員報酬が貰えるケースもあります。

ですので、日本でも上場会社の社外取締役に就任すれば、結構な報酬が貰えるのではと期待している方も多いと思います。

そこで今回、社外取締役の報酬相場はいくらなのか?社外取締役が必要な訳について解説します。

■社外取締役が必要とされる訳
近年は会社法改正において上場会社は、社外取締役の設置が義務付けられています。上場企業の場合、社外取締役の任命にあたっては、会社法第2条第15号に定義があります。

条文の定義によると、過去10年間を含めて社外取締役となる会社の役員、従業員などの関係者でない人でなければ、その会社の社外取締役には、就任が制限されるという規定があります。

また、東京証券取引所の未上場会社が上場を目論む際に、上場審査の規程でも、独立社外取締役の設置が義務付けられています。

上場を視野に入れている会社にとって、社外取締役の設置は必要不可欠だと言えます。

上場会社の社外取締役に対しては、コーポレートガバナンスの観点で企業を外部からチェックする立場としての役割が期待されています。

会社と利害関係のない第三者を取締役として取締役会のメンバーに加えることで、各取締役の業務執行が適正に行われているかより強く監督できるという点を期待しています。

社外取締役は会社経営の健全化やコーポレートガバナンスの観点から求められる役職であると言えます。

■社外取締役に対する期待や役割の変化
社外取締役の就任前は利害関係がなくても、就任後は会社から報酬を受ける立場になります。

そうなると、思うように社外取締役は機能せず、社外取締役を設置している大手の上場企業でも不祥事が相次ぎました。

そうした状況を受け、近年はコンプライアンスを強化する観点から、社外取締役に対する期待にも変化が見られます。

監視役としての役割も変わらず期待されてはいますが、より積極的な経営への参画が求められる傾向にあります。

海外の企業では企業規模や上場の有無を問わず、社外取締役を任命することは一般的になっています。

社外取締役を英語で、「Chief Executive Director 」「outside director」「outside board director」「outside board member」になります。

社外取締役の英語の名刺では、「CED」や「OBM」と訳された肩書になります。

日本の場合、上場会社では「独立社外取締役」の意味を持ちます。

近年ではスタートアップ企業の台頭やグローバル化に伴い企業間の競争が加熱しており、市場で生き残るためには、豊富な知見やスキルを持つ人材が不可欠になっています。

そのため、企業が高額な報酬を支払ってまで、優秀な社外取締役を確保したい理由は至ってシンプルで、金額に見合うだけの知見やスキルを持つ人材が欲しいからです。

日本企業においては、社外取締役の報酬は一律といった決め方をしているケースも多いようですが、役割や労力の反映は必要ではないでしょうか。

■社外取締役の報酬相場はいくらなのか?
社外取締役に対して支払われる報酬は、企業ごとに大きく変わります。デロイトトーマツが発表した2021年度役員報酬サーベイによると、社外取締役の報酬の中央値は800万円となっています。

2018年に朝日新聞と東京商工リサーチが共同で行った調査によれば、東証1部上場企業約1980社が支払う社外取締役の平均報酬額は663万円でした。

社外取締役の報酬額が上昇傾向にあることを考えると600万円~800万円という金額は相場を考える上で一つの指針となる金額になります。

もちろん平均ですので、なかには報酬額200万円未満の企業もあれば、反対に2000万円以上を報酬として支払う企業もあったようです。

■社外取締役の報酬に違いがある理由
社外取締役の報酬を含めた役員報酬は、会社法や法人税法などで規定されており、「定款または株主総会の決議によって定める」とされています。

社外取締役の報酬を決める際にはまず、株主総会で役員報酬の総額(枠)を決定します。

株主総会は決算日から3ヵ月以内に実施されます。株主総会で過半数の賛成票が得られると可決されます。

次に、取締役会にて、株主総会で決められた枠内で役員の個別報酬を決定します。こちらも株主総会同様、過半数の賛成票が得られると可決となります。

社外取締役の報酬額に差が出るかというと、一つは社外取締役に求めている役割の違いだと言えます。

また、企業規模が大きくなると、人材の経験・実績に関する要件水準も高くなります。

付加役割とは、取締役会以外の各種委員会などへの参画や取締役会議長としての役割付与のことで、責任の重さが増し、時間的拘束の長さにもつながります。

社外取締役の設置義務だけを満たすのが目的であれば、高額報酬は無駄でしかありません。

逆に優秀な人材を招くためには、国際水準の高さまで報酬を引き上げる必要があります。

社外取締役の積極的な経営への関与を望む企業は、負担も増える分報酬額も高めに、あまり関与を求めてない企業においては、低めの傾向にあるといえるでしょう。

■企業の社外取締役に対する考え方の変化
社外取締役の人数は増加傾向にあり社外取締役に求められる役割が増大する中でその報酬額も増加していくことが今後も続くことが予想されます。

近年は社外取締役として優秀な人材を迎えようと考える企業が増えつつあることもあって、社外取締役への考え方にも変化が見受けられます。

その変化のうちの一つは、非常勤ではなく常勤で社外取締役に就任してほしいと考える企業がしばしば見受けられる点です。

経営に参画し、事業拡大の加速に貢献してもらうためには、非常勤程度の関わりでは不十分です。常勤としてかなりのコミットを求めたいのが企業の本音です。

そのため、非常勤での参画を希望する方の場合、実力があっても企業とマッチングするのは難しいかもしれません。

常勤での参画を求める企業が増えてくると、社外取締役の掛け持ちにも自ずと限界があります。取締役会に臨むための準備や本業との兼ね合いを考えると、おそらく3~4社が限度でしょう。

■社外取締役の報酬はどのように決まるのか?
社外取締役を設置するとしてその報酬はどのように決定すればよいのでしょうか。

これについては社外取締役であってもその他の取締役と同様に株主総会による決議が必要となります(会社法第361条第1項)。

実務的には株主総会では取締役全体の報酬の総額を決議しておき、各取締役の報酬の分配については、任意の報酬委員会や取締役会などで決定するといった方法が採用されているケースが多いように思われます。

日本では社外取締役は基本的に固定報酬になります。欧米企業でみられるように、社外取締役に対して業績に連動しない株式報酬を支払う企業はほとんどありません。

また、監査委員等の兼任であっても、報酬額は変わらず、同じ社外取締役であれば一律とする企業が大半です。

■社外取締役の報酬を決める際の判断要素
企業が社外取締役の報酬を決めるうえで、重要となる要素は3つあります。

1、社内の常勤取締役の報酬額とのバランス
実務的には最も大きな要素となる事項です。

社外取締役はあくまでも取締役の業務執行の監督役であるという観点からは経営や業務執行を中心に行う社内取締役の方が高い傾向にあるというのが一般的と思われます。

また、現実的に会社が負担できる報酬という意味でも社内取締役の報酬額は一つの基準となるでしょう。

社外取締役のモチベーションを維持して、他の取締役や従業員の不満を生じないように報酬額は設定することが必要だと言えます。

2、社外取締役に求めるスキル・知見
社外取締役に選任される方は他業種での経営者としての知見を有する方が多いです。

そのため、社外取締役に対し積極的にそうした知見を活用して経営への関与を希望される場合には高いスキルや知見、また相応の業務負担を求めることとなります。

想定する職務内容に比べて報酬が安すぎれば、当然募集しても人材は集まりません。スキルに応じた報酬額を設定しなければ求める人材は得られにくくなるでしょう。

特に社外取締役として選任される方は他の企業で役員をされている方のほか、弁護士や公認会計士、税理士といった資格を持たれて仕事をされている方が多く、こうした職種で得られている収入を考慮する必要があります。

3、社外取締役にどのレベルの人材を求めるか?
社外取締役の多くの方は本業を別に持っている方や前職で大きな功績を残されている方が多いため、前職や現在、兼業関係にある職業での収入を考慮する必要もあります。

求めるレベルが高ければ高いほど、企業間の獲得競争は激しくなるため、水準以上の報酬を設けなければ、人材を確保することは難しくなります。

逆に経験が浅い人であれば無報酬で社外取締役を担ってもらうことも可能でしょう。

なので、企業が高いレベルの社外取締役を求めており、それに見合う能力をもっているほど、高い報酬を得やすくなります。

■まとめ
社外取締役の報酬は企業によってマチマチで、期待される役割や月間の稼働頻度にもよりますが、東証一部上場レベルにおいても、支払う金額には大きな差があります。

社外取締役の報酬制度は、役員に対する期待役割を明確にし、その役割にふさわしい目標に向かって業務を執行し、組織活性化や業績向上への貢献度を処遇に反映することが重要です。

スタートアップの場合、評価を業績連動とし、報酬に直結させるなどのインセンティブを盛り込むことで、全社経営への意識を高め、事業目標の達成に繋げることができます。

社外取締役を含めた経営陣の意識改革は、中長期的な企業価値の向上につながります。

社外取締役は、他の会社との兼任が可能でありながら、年間で600万円~800万円の役員報酬が支払われると聞けば、多くの人にとって非常に魅力的なポジションに映るでしょう。

ですが、高額な報酬が支払われるということは、その金額に見合うだけの能力や負担、責任が求められるということでもあります。

近年では、企業も社外取締役に対して積極的な経営への参画を求める傾向にあるので、決して楽して稼げるようなことはないので注意が必要です。

従業員は、企業と雇用契約を結び給料を受け取りますが、社外取締役になると他の取締役と同様に、企業と委任契約を結び、役員報酬を受け取ります。

取締役が受け取る役員報酬と、一般の従業員が受け取る給料は法律においても、異なる区分に分類されているからです。

社外取締役と委任契約を結ぶと、正社員とは立場が異なるため、1つの会社に雇用される形で企業に雇われず、あくまで仕事として依頼を受けます。

つまり、社外取締役の仕事としては、複数のクライアントを持つ弁護士や税理士などの専門家と同じような働き方で、兼任が可能な外部のプロ人材としてのワークスタイルなると言えます。

「トップの座にあるものは君臨することに気を使うよりも、常日頃から組織の風通しを良くしておくことに細心の注意を払うべきだ。人材がそろい、組織もしっかりすれば、リーダーの役目は調整係なのだから。」

<鈴木精二>

■最後に
社外取締役の対象となるのは、大手企業の取締役の経験者など、経営を担える人材や高度な専門スキルを持つ人材など、エグゼクティブCXOと呼ばれるハイクラス人材になります。

上場企業の社外取締役の就任は、通常の転職活動と異なり、社長や取締役からコーポレートガバナンスを強化する施策の一環として、「役員に就任して欲しい」という打診を受けて社外取締役の就任に至ります。

企業側から今よりも高水準な報酬や待遇を用意して貰える可能性が高くなるため、市場価値の高いエグゼクティブ人材だと認められた証でもあります。

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本田季伸のプロフィール

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