キャリア自律の取り組みが今、なぜ注目されているのか?

投稿日: 作成者: KENJINS運営元代表 カテゴリー: 働き方改革   パーマリンク

政府が進める「働き方改革」では、ワーク・ライフ・バランスを確保し柔軟に働ける環境整備、ライフスタイルやライフステージに応じたキャリア構築などをテーマにあげています。これから企業には、社員が自ら多様なキャリアを選べるようにする「キャリア自律」に向けた支援を行うことが求められます。

会社の経営者や管理職にある方であれば、若手・中堅社員の仕事に対するモチベーションが高くないことに問題意識を持っているかもしれません。本来であれば各自が自分のキャリアをどのように確立していくかを考える必要がありますが、中にはただ漫然と仕事をこなしている社員もいます。ここでは社員一人ひとりの仕事に対する熱意を高めるためのキャリア自律について見ていきましょう。さらに社員のキャリア自律を支援するために、組織として行うべき取り組みについても考えます。

■キャリア自立とは?
キャリア自律とは、企業ではなく個人が自分のキャリアに興味を持ち、自律的にキャリア開発を行っていくことを指します。変化の激しい今、個人がキャリアについて自分なりの考えを持ち、自身の力でキャリア開発を行うキャリア自律の環境を、企業が支援していく必要性が出てきました。

政府が進める「働き方改革」では、会議テーマとして「副業など柔軟な働き方への環境整備」「雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成など」「高齢者の就業促進」などがあげられています。その背景には、将来の労働力人口の減少、維持が困難になった終身雇用や年功序列といった雇用制度、年金支給の延期による労働の長期化などがあります。

社員からみると、終身雇用や年功序列といった雇用制度が維持されず、そこに成果主義などが導入されたことで、年齢による節目でみる「ライフステージ」と、職制や職位・資格・等級などの節目でみる「キャリアステージ」を、自らが計画して同期させることが困難になっています。そのため、社員自らがライフステージとキャリアステージの将来について考え、その希望に向けて二つのステージを同期させていくためにも、キャリアの自律性が必要となっています。

■キャリア自律が個人と企業に与えること
一般的に、自分のキャリアに主体的に向き合う意識は、学校卒業前の就職活動の時期にピークを迎えます。高校受験や大学受験など進学決定においても将来を漠然と考えてはいるが、大学生を例にとれば、3~4年次の就職活動の短い期間に、自己分析や働く意義を考え抜くことで、自分のキャリアを初めて主体的に考えることになります。

ところが、いったん就職してしまうと、その先は就職した組織に自身のキャリアを委ねていくのが多くの職業人の姿でした。配属部署や配属先で割り振られる仕事などに関して、自分の将来設計に基づいて自らが選択していくという場面はほとんどありません。その意味で、就職後のキャリア形成については、ほぼ組織が決定権をもっていたと言って良いでしょう。

入社した会社で定年まで勤めていれば、ある程度のキャリアが企業側から与えられるのが一般的でした。しかし近年、終身雇用や年功序列という制度が崩壊し、社会の構造も不確実・不透明になってきています。そのため苦労して入社したとしても、その企業で確実に定年まで勤められるかどうかは分かりませんし、企業によるキャリア形成が保証されているわけでもありません。

労働者側の考え方も変化しており、気軽に転職してより好待遇の、自分に合った企業で働くことを選ぶ人も年々増加しています。そのため5年後、10年後にどのような働き方をしたいのか、どのような立場で仕事をしていたいのかを十分前もってプランニングして置かなければならないのです。

一方で、企業にとってもキャリア自律を促すことにはメリットがあります。キャリア自律によって社員の能力をより効果的に引き出すことができるようになります。出世や昇格、栄転、さらにより高度で専門的な資格を取得することなど、キャリア自律の考え方はいろいろあります。どのようなものであれ自分が目指すキャリアや目標が定まっていれば、その目標に向けて努力するので、キャリア自律は社員のスキルアップに繋がるのです。キャリア自律の必要性を社員が認識していれば、新規事業や新プロジェクトにおいても社員のモチベーションを維持することが可能になります。

■自律型人材を育成する5つのメリット
では、組織の中の多くの人達が自律型人材になることで、組織にはどのようなメリットをもたらすでしょうか。自律型人材が増えることで、組織には「上司の負担が減る」「新しいアイデアが生まれやすい」「組織課題へのコミットメントが向上する」「生産性が高まる」、などのメリットがもたらされます。どうしてこのようなメリットが組織内で生まれるのか、一つずつ簡単に説明していきたいと思います。

1、上司の負担が減る
指示されたことだけをするマニュアル人間とは違い、自分が任された業務に対し、自ら試行錯誤しながら取り組む人たちが増えると、上司の負担が少なくなります。部下や新入社員に指示を与えることが仕事ではなく、彼らの成長を促すようなサポートに費やせる時間が増えるため、お互いの更なる成長に繋がるような関係性を築くことができるようにもなります。

2、新しいアイデアが生まれやすい
自律型人材の多い組織では、新しいアイデアが生まれやすいと考えられます。自律型人材が多いということは、社員それぞれが自分の考えをしっかりと持っているということです。そのため、新しい取り組みや問題の解決策を考える際に意見交換が盛んに行われ、新しいアイデアや発想が生まれやすくなります。

3、組織課題へのコミットメントが向上する
自律型人材が多い組織では、組織課題に対する各社員のコミットメントが高いと言われています。自律性が高い人材は、自分に関連する物事に責任感を抱きやすいため、組織で起こった問題を解決することにも責任感を発揮します。そして、組織の課題に対して「自分に何ができるか」を考え、すべきことを判断することができます。

4、生産性が高まる
自律型人材は、自分で考えて仕事をするため、受け身の姿勢を持った社員よりも仕事に対するモチベーションが高い傾向があります。ですから、自律型人材が多い組織では、社員の時間に対する活動量が高まり、生産性が高まります。

■自律型人材の企業内での育成方法
1、会社の理念と社員の志をつなぐ
自律型人材を育成するためには、会社の掲げるビジョンや理念に、社員が強い親和性を感じていることが重要になります。組織がどこに向かって何を目指しているのかがわからないと、迷いや疑心が生まれ、正しい判断を下せなくなってしまうときが出てきてしまうからです。

2、責任のある仕事を任せる
自律性を高めるには、自分の判断力を強めるために、自ら考え行動する経験を積み重ねる事が大切になります。そして適切な判断を基に実際の行動を移すには、十分な情報を得られて、かつ業務を遂行できるほどの権限を与える必要があります。

3、指示ではなく情報が得られる環境づくり
自律性の低い部下や新入社員に対しては、特に1-10まで指示を与えてしまいたくなりがちですが、指示を与えるのではなく、情報を与えるようなマネジメントを意識してみると、部下や新入社員の自律性を促せるかもしれません。そのような機会があればあるほど、自らの自律性を沢山訓練することができるので、成長の促進に繋がるのです。

4、心理的安全性の確保
心理的安全性とは、「他者の反応に怯えたり羞恥心を感じることなく、自然体の自分を曝け出せることのできる環境や雰囲気」のことです。アメリカのGoogle社の調査で、心理的安全性は成功するチームの構築に最も重要なものである、との結果が出ました。

自律性を養う過程は、挑戦の連続です。失敗しても大丈夫、という若手がためらわずに挑戦できる環境を作り出すことで、彼らは積極的に学びや成長の機会を掴みにいけるようになるのです。

5、社員の行動指針を定める
自律型人材を採用・育成するには、「規律」の存在が重要になります。組織がどこを目指し行動しているのか、そしてその行動の源は何かという情報を開示します。そしてそれと同じものを従業員が持つことで、誰かがそこから外れてしまった際の判断基準を持つことができるからです。より客観的に自分や相手を見ることで、適切な判断ができたり正確なフィードバックを送り合うことが出来るのです。

■企業が外部と連携しキャリア自律を支援する4つの方法
社員のキャリア自律を促進することが企業のためにもなることがわかっているものの、実際に十分な支援を社員に与えている企業は多くありません。それではどうやってキャリア自律を支援することができるのでしょうか。「キャリア自律を促す施策」=”企業が人事制度として実施する”、社員に”所属する企業の境界を越えるよう促す”取り組みとしては、4つの人事施策があります。

1、副業・兼業の許可
副業・兼業の許可は、個人のキャリアの充実につながるような業務外の活動を企業が許容するということであり、職務専念義務の例外として企業が新たに措置をした制度です。人生100年時代の働き方の支援策として、政府においても副業・兼業に関する法制度整備を進めるなど、社会的な後押しは強くなっています。

2、海外留学支援制度
会社の業務から外れ、決まった年数について海外の大学・大学院等へ通学する際の支援です。異文化での経験や多様なバックグラウンドをもつ人々との交流を通じて、視野を広げ、個人の知識や人的ネットワークを拡充します。海外のキャリア自律意識の高い価値観に触れることで、自律性を高める効果もあります。

3、社外ボランティア支援制度
ボランティア休暇など、社外活動としてボランティアをする際のサポートです。ボランティアに取り組む社会人は日本では少数にとどまりますが、得られるスキルやネットワークには自己のキャリアを見直すきっかけになるものもります。

4、独立・開業支援制度
企業の経営資源を用いた、スピンアウトベンチャーの開業支援などが該当します。個人のスキルを活かした新しい会社横断的なキャリアトランジションであり、業務外の社員の活動を支援するもの、のひとつとして考えることができます。

■副業や兼業を認める動きが顕在化
キャリア自律支援の一環として、大手企業を中心に副業や兼業を解禁する動きがみられています。副業や兼業を容認することは、企業にとっては「個人が持つ情報・スキル・人脈が広がる」「個人のモチベーションアップにつながる」「優秀人材の囲い込みに役立つ」「人材採用で有利になる」「研修代わりになる」など、様々なメリットがあります。

副業や兼業の容認状況をみると、平成26年度の中小企業庁の調査では、副業や兼業を容認している企業は14.7%とまだ少数です。容認している企業の手続き方法は、「特に会社への報告義務等はなし」(48.6%)、「申請書類はないが会社で許可を出している」(28.3%)、「申請書類をもって許可を出している」(23.1%)となっています。これから副業や兼業の容認に踏み切る企業では、対応する就業規則の整備や禁止事項の確認(勤務時間の重複の禁止、労働時間の管理の徹底、競合での就労禁止など)、社員の健康への配慮、情報漏えいの防止といった作業が必要であり、これらの対応は人事に任されることになります。

■オーダーメイドのキャリア開発の必要性
キャリア自律の重要性は認識できても、具体的に何をしたらいいのかわからない社員も多いです。そのため、キャリア自律支援に当たっては、まずこれまでの仕事や人生を振り返ることから始めるべきです。

キャリアには大きく分けて、専門性を深掘りして追求していく時期と、未知の分野にチャレンジして自分の幅を広げる時期があります。それぞれの時期をフェーズと捉えて、人生の中で各フェーズが交互にくるようにしたほうが、結果としてバランスがよく、変化に適応できるキャリアになります。出産、育児、介護などライフイベントの影響でキャリアが途切れたとしても、新しいフェーズを経験できる機会と捉えれば、再スタートしやすくなります。

基本的にキャリア自律の方向性は当人が主体となって決めていくものですが、転職や異動は、本人が希望したからといって必ず実現できるものではありません。また、多くの人にとってやりたい仕事と向いている仕事は違います。向いているかどうかは実際にやってみないと分からない部分もあります。

その理由としては、人はそれぞれ仕事観や能力、適性が異なるため、一律の対応マニュアルが作ることは難しい言えるからです。それ故、社員一人ひとりが自分の内的な動機や価値観を顧みて、重要なもの、譲れないものは何かを考えながらキャリアを見直し、どうしたらいいかを考えていく必要があるのです。

企業はそこを理解したうえで、個々人に合ったオーダーメイドのキャリア支援をしていく必要があります。自己啓発の支援や研修・セミナーの実施、マンツーマンのカウンセリング、異動希望の受け入れシステムの整備など、メニューはさまざま考えられます。社員本人のマインドセットとともに、受け皿となる制度やシステムを整えることが、現実的なキャリア支援となるだろう。

■まとめ
キャリア自律の支援をすると、社員の業務が滞ったり、社員の離職を促してしまったりするのではないかと懸念する方も少なくありません。しかし実際にはその逆で、キャリア形成を社員自身に考えてもらうことで、より優秀な人材の発掘や、モチベーションの維持に役立ちます。

企業と社員個人にとって、理想のキャリア自律とはどういうものなのか。それは、互いが理想を模索し続けようとする姿勢が生み出すWin-Winの関係の中に存在するのかもしれません。企業として行える支援策をできるだけ多く講じ、キャリア自律を促すことも検討してみましょう。まだ注目され始めたばかりのキャリア自律ですが、これからの人事には理想のキャリア自律につながる環境づくりの役割が求められています。

AIの活躍の場が広がっていき、人口が減少している今、これから企業の中で自律型人材の採用・育成は重要だと考えられています。また、変化のスピードが速く、多種多様な状況に対応出来る、強い組織を作るためには自律性の醸成は必要不可欠です。そして自律型人材の採用や育成には、実は目に見えにくい理念やビジョンなどの、思考や価値観を整えることが必要になってくるのです。

本田季伸のプロフィール

KENJINS運営元代表 連続起業家・著者・エンジェル投資家 新卒で日本食研株式会社を経て、25歳で起業。これまでに自身で複数のITベンチャーを創業する。 1997年の起業時は、新宿の高田馬場でWEB制作事業からスタート。その後、インターネット事業プロデュース会社として、日本初の事業であることにこだわり、クーポン専門サイト、地域コミュニティサイト、出前専門サイト、チケット共同購入サイトなど、数々の専門・特化型ポータルサイトを立ち上げる。 クーポンサイトの運営時にバーコードを電子化し、クーポンやチケットとして携帯電話の画面上に表示するアイデアを考案し、20件以上の特許を申請し事業化を推進。2002年に業界で初めて、「携帯チケット」のソリューションを開発。KDDIと共同で歌手の矢井田瞳のコンサートでモバイルチケット入場を実用化させ、電子チケット事業のパイオニアとして一躍注目を浴びる。 2014年プライドワークス株式会社を設立。日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」のプラットフォームを武器に、顧問紹介業界で横行している極端な顧問料のピンハネを撲滅を推進し、「顧問料の中間マージンをゼロ」をコンセプトに業界で唯一、適正価格で顧問紹介サービスを提供している。

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