現在、大手企業の間では、役職定年の人事制度を設ける会社が増えています。団塊の世代の人口が多く少子高齢化が進んでいる日本では、役職定年に該当する人がこの先、どんどん増加すると言われています。そのため、企業は独自の役職定年制度を設けて、経験豊富な役職定年者への活躍の場を設けています。
そこで、今回は、企業が役職定年を推進する目的とスタートアップや中小企業の顧問として役職定年者が必要な理由について解説します。
■役職定年とは?
役職定年とは、役員や部長、課長など管理職などの役職に就いている社員は60歳前後の年齢に達するとその役職を外される人事制度です。役職定年では、役職段階別に管理職がマネジメント業務から外れて専門職などで処遇されます。このように50歳後半になると役職から外れて一般社員に肩書が戻るのが役職定年になります。
つまり、役職定年とは、定年する前に55歳から60歳くらいの年齢に達したことなどを理由に部長や課長などといったマネジメント職から外れる社内人事制度のことで、それぞれの役職に対して定年があるという考え方になります。
また、経験年数や年齢によって賃金や昇格が決まる年功序列制度では、若い人材には成果と評価が連動しないことが考えられます。そのため、人件費の増加を抑えるだけでなく、組織内の人材の新陳代謝を促すなどを目的に役職定年制度を作ることで、組織の活性化や若手の育成を図るようになりました。
役職定年制は、大手企業を中心に導入する比率が高いとされています。企業規模が大きいほど導入している企業の比率が高く、500人以上の企業では、4割弱の企業が導入しています。なお、定年退職制度は、一定の年齢に達した社員が退職するのに対して、役職定年制は役職が解かれるものの雇用は継続される形になります。
■役職定年の制度ができた背景
日本企業はこれまで年功序列や終身雇用により、ある程度の年齢に達すると部長や課長などの管理職のポストに就くと決まっていました。
年功序列の弊害としては、年齢や勤続年数に伴う賃金の上昇する点になります。そのため、年齢が高くなればなる程、シニア世代のの賃金は年々増えていきます。そうなると終身雇用で定着率が高ければ、経験豊富なベテラン社員の層も厚くなり、その分人件費の負担額は大きくなると考えられます。
社員数は変わらなくても、年功序列制度により上昇した分の賃金は増えていくため、高度成長期の時代のように企業が右肩上がりに業績を拡大していかなければ問題ないのですが、業績が悪化すると給料を支払い続けるのが難しくなることが予想されます
大手企業では、1980年代以前から役職定年を導入した企業もありますが、概ね1980年代から行われた55歳定年制から60歳定年制への移行に際して、主に組織の新陳代謝や人材の活性化の維持、人件費の増加の抑制などのねらいで導入されました。
1990年代以降は、職員構成の高齢化に伴うポスト不足の解消などのねらいから導入されたケースが多いとされています。しかし、2019年には働き方改革が施行されたり、多くの企業が成果主義を採用など企業を取り巻く環境は変わったのです。
こうした社会背景の中で、これまでのような勤続年数や年齢でポストに就いた管理職をそのまま残すことは莫大なコストとなります。そうした背景もあり、役職定年制度が導入されるようになりました。
役職定年制を導入している企業は、従業員として1000人以上の企業が多く、割合としは、23.8%になります。これを企業規模別にみると、従業員500人以上では、36.6%。100~499人では、25.5%。50~99人では17.1%となっており、企業規模が大きいほど導入比率が高くなっています。
■役職定年の年齢
役職定年の年齢は、企業によって異なりますが、50代後半から60歳までの間に定められていることが多いようです。
人事院が実施した「平成19年民間企業の勤務条件制度等調査結果」によると、部長級、課長級の役職定年年齢は、55歳と設定している企業の割合が最も高く、次に高いのが57歳となっています。
役職定年制を導入している企業のうち、部長級の役職定年年齢を55歳から60歳までに設定している企業は96.1%、課長級では91.6%でした。役職定年年齢で最も多くの企業が定めていたのは55歳で、部長級は41.0%、課長級は46.8%という結果です。
役職定年制がある企業のうち、部長級を役職定年の対象としている企業は83.7%、課長級を役職定年の対象としている企業は88.3%となっています。
また、部長級と課長級の双方を対象とする企業は81.3%にのぼる一方で、部長級、課長級のみを対象とする企業はそれぞれ2.4%、6.9%と少なくなっています。
この結果からも、多くの企業が役職定年を50代後半に設定していることが分かります。このような事情を背景に、外資系企業などの影響を受け、成果に応じてインセンティブが発生する「成果主義」を取り入れる企業が増えました。
しかし、役職定年が導入されたのは60歳定年の時代です。定年退職のの時期が伸びて65歳定年制となった現代も同じ形態で継続されるのは、実情に合っていないといえるでしょう。
■役職定年後に起きる給与の変化
1990年代のバブル崩壊により、「社員を定年まで雇い続ける」という「終身雇用」を維持できない企業が増加しました。停滞した経済状況の中で市場競争は激化し、コストを下げるために人件費を削減する必要があったためです。
また、業績が右肩上がりに成長し続ける見通しが立たなくなり、経験や年齢に応じて昇給させるという、年功序列制度自体も現実的ではなくなったのです。役職定年後は年収が減るケースが一般的です。
三菱系研究財団の資料「50代・60代の働き方に関する調査報告書」によると、役職定年をきっかけに9割以上の割合で年収が減少し、「変わらない」または「増えた」と回答した人はわずか10%未満でした。
平成19年民間企業の勤務条件制度等調査によると、課長クラスの役職定年後の年収水準が役職定年前と比べて「下がる」と回答した企業は、82.5%でした。
「変わらない」と回答した企業は8.8%とごく少数で、「下がる」と回答した企業の年収水準は「約75~99%」が最も高くて78.2%、次いで「約50~74%」が20.4%となりました。
また、役職定年後に減額する給与の項目は、基本給が36.6%、賞与が33.1%、役職手当が30.7%でした。
また、「管理職手当」とする企業の割合は30.7%といずれも3割台の比率を占めています。役職定年後に廃止する項目については、「管理職手当」とする企業の割合が最も多く37.7%になります。
■役職定年の導入状況
少子高齢化によって、労働力人口が減少しはじめていることも、役職定年を導入する企業が増えた要因の一つになります。人材不足が加速していく中で、インターネットへの対応や最新のDXに精通した若手エンジニアなどIT人材の確保が死活問題である企業は、優秀な若手人材を確保するため、より良い条件と環境を提供するようになります。この結果、成果主義が加速し人材の流動化が進みました。
このようなことから、役職定年後は、これまで管理職で恵まれた給与を受け取っていた人も、一気に収入が減少する方向性になりました。仕事の内容が報酬に見合うなら良いのですが、役職が解かれても実質的には同じような難易度、専門性の仕事を任されるにもかかわらず、給与だけが減らされるというケースもあるでしょう。
50歳代のキャリア管理に関する調査によると、50歳代の調査では、39.8%が「役職定年制」「役職の任期制」が導入されている(されていた)と回答しています。
また、50歳代前半の12.8%と、50歳代後半の3.6%が、制度によって就いていた役職を降りたと回答しました。降りた役職(対象となった役職)は、課長が最も多くて半数以上、次いで部長が21.8%、係長・主任・現場監督者が11.4%、次長が9.5%となっています。
こういった場合にやる気を維持するのは簡単ではありません。また、収入が大きく減少すると生活に不安を抱えてしまう可能性があります。
■役職定年によるモチべーション低下
50歳代のキャリア管理に関する調査によると、役職を降りた後の仕事の意欲に対する変化では、意欲が下がった(「大幅に下がった」「ある程度下がった」の合計)人は59.2%、意欲が上がった(「大幅に上がった」「ある程度上がった」の合計)人は5.4%でした。
およそ6割が会社に尽くそうという意欲を減退させたことが分かります。また、50歳代前半で役職を降りた人ほどモチべーション低下し、仕事に対する意欲が下がっていることも調査から明らかになりました。
厚生労働省の「2009年賃金事情等総合調査」によれば、従業員1000人以上の企業の47.7%が役職定年導入しています。しかし、その運用においては悩みを抱えている企業も多く、これからの導入を考えている企業もなかなか踏み切れない実態があるようです。
■役職定年の導入や所属異動に対する意見
2018年に50歳代、60歳代の男女を対象に働き方に関する意識調査を行ったところ、役職定年時に所属異動があって良かった(良かった、どちらかといえば良かったの合計)と回答したのは71.5%でした。
全体傾向としては、7割以上が「役職定年を導入すべき」というもので、「導入すべきでない」という意見は3割に程度でした。役職定年はオートマチックに運用できる制度なので、ポストが限られている中での世代交代の仕組みとしては使いやすいという旨の意見が多くありました。
もう一つ、「役職定年」は、会社や次世代だけのためにあるのではなく、人生100年時代では役職定年を迎える人のためにもなるという意見があったことが印象的でした。
●次世代を育成するための期限を持つことで、現役職者も次の役職者も意識(覚悟)を持つことができる。
●定年後の生活を考えたり、フリーランスの個人事業主として脱サラのきっかけとなったりするため。
●若手人材を登用することで、組織の活性化と早期選択定年制度の選択肢を考えるきっかけになる。
■役職定年者を中小企業の顧問として活用するには?
役職定年者は、待遇の激変により明らかに士気が下がり、モチべーション低下が落ちています。そこで企業サイドが社外顧問になることを許可するなど、新たな役割を明確にすると、新しい仕事に対しても前向きに取り組むことができるでしょう。
1、役職定年者を中小企業やスタートアップの顧問に
役職定年になる年齢まで、長期にわたり携わっていた部署や業務に関する経験、ノウハウを活用するためにも、スタートアップの顧問やアドバイザーなどの指導役になる選択肢があります。
役職定年者は、管理職ポストから外れて平社員になり給料も下がるため、モチベーションが下がる場合が多いです。
そこで本人のこれまで培ってきたキャリアや専門性、得意分野を最大限に活かすために、スタートアップや中小企業のアドバイザーや実行支援を行う外部顧問になることをお勧めします。これにより、前向きな気持ちで仕事に取り組むことが出来るようになるでしょう。
2、新たな外部顧問職を設置
役職定年後の仕事内容は、管理職から外れてスタートアップの顧問になる。これまでのスキルや専門性、得意分野の知識などが評価されて専門職となるなどさまざまです。
そうした得意分野の能力を活かしフリーランスになれば、1社から固定報酬を沢山貰う必要がなくなりなり、複数のスタートアップや中小企業の顧問に就任し、顧問契約をすることもできます。
役職定年時に所属異動があって良かったと回答する人は約7割います。役職定年後、本業に従事しながら心機一転し、パラレルワーカーとしてのやりがいのある業務を新たに見出すことができる環境の構築は重要になります。
3、外部顧問として新しい働き方を構築
役職定年者のみの新しい働き方を、企業独自で構築していくことも可能です。たとえば、会社に在籍したまま他の中小企業やスタートアップなど外部組織などの仕事を支援する副業や兼業を認めるケースでは、役職定年によって激減した収入を補えます。
またこれまでの経験で身に付けたスキルやノウハウを活かし、専門制を追求したエキスパートとして若手育成や技術の継承など、役職定年した人たちが活躍できる働く場を新たに設ければ、企業側にとっても大きなメリットを享受できるでしょう。
■まとめ
年功序列は、戦後の高度経済成長期に、働く人の安定雇用や生活を支えてきた制度です。しかし近年は、経済環境の変化やIT化、労働力人口の減少などを受け、年功序列を廃止し、「役職定年」制度を取り入れる企業も増えてきました。
「役職定年」とは、一定の年齢に達すると管理職などの役職を解く制度です。役職定年後は所属や仕事内容、収入などが大きく変わることもあるので、働き方ややりがいへの影響は少なくありません。
一方では、役職定年者の中には、多くの実績やノウハウを持つ、技術開発に優れたスキルや能力を持つ、人材開発や採用、企業研修、総務や経理などに熟知しているプロ人材もいます。
人生100年時代に突入した現代においては、50代後半といっても「高齢者」という感覚はなく、せっかく脂の乗った時期に権限を縮小させ、活躍の場を狭めるのは会社の営業上も本人のモチベーション維持でもマイナスになります。
現に、役職定年をきっかけに競合他社となる外資に転職したり、スタートアップや中小企業など役職定年制のない会社に「三顧之礼」で引き抜かれていくケースが多々あります。
役職定年後は、社内での活躍する場を設けるだけでなく、スタートアップや中小企業の顧問として活躍できる機会をつくることも視野に入れてキャリア開発が行われています。大手企業の中には、アウトプレースメント会社を使い、社外での再就職先を探すサポートを行う会社もあります。
こうしたシニア人材を活用する取り組みは、会社に長く貢献してきたプロ人材をただ切り捨てるのではないという会社の姿勢が見られ、若手社員のモチベーションにも良い影響を与える新たな働き方になると言えるのです。
■最後に
スタートアップや中小企業が顧問に対して求めるのは「単なるアドバイスや助言」よりも、経営課題に対していかに「実行サポート」をして貰えるかです。
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