日本企業の場合、法人営業というと正社員を雇用することが一般的です。アポイントの獲得やフィールドセールスなど、様々な営業プロセスを1人で行うワークスタイルが当たり前になっています。
ですが、海外企業の場合、インサイドセールスが社内いることが普通で、更にメーカーの多くは、営業マンを雇用せず、外部の営業のプロ人材やセールスレップを活用するなど、営業の分業化が進んでいます。
そこで今回、営業活動の分業化とは何か、営業の分業化が効率化と売上拡大に繋がる訳について解説します。
■営業の分業化とは?
営業の分業化とは、営業パーソンが一人で行っていた一連の業務を複数の部門で役割を分担する考え方です。
これまで法人営業では、自身の担当する企業や地域などが決まっていることも多く、案件の創出から受注後のアフターフォローまで、営業各々が全ての営業プロセスを実施している状況が多く存在しました。
しかし、終身雇用制度が崩壊し雇用の流動化が進んでいる現代では、育成に時間とコストがかかる従来の一気通貫型の営業体制は、「業績への直接的なリスク」となることが指摘されるようになりました。
各部門の担当領域が狭く深くなることで、営業全体の業務効率化や生産性の向上などが期待できます。
一般的な分業体制は以下の通りです。
・新規開拓(リード獲得)
・ナーチャリング(顧客の育成)
・アポイント獲得
・訪問や見積もりなどの商談対応
・契約成立後のフォローアップ
企業が安定した組織運営を行い利益を生み出すためには、1人の優秀な営業に依存することは以下のようなリスクが伴うのです。
・全てのプロセスをこなすため、教育に時間がかかる。
・雇用の流動化により、離職してしまうリスクが高い。
・組織拡大のハードルが高い。
■営業の分業化を図る企業が増えている理由
最初は、その道のプロと呼べるレべルではなくスキルが不足していても、誰でも分業して同じ仕事に専念し継続して取り組むと徐々に仕事に慣れます。
それに伴って、仕事のスキルが上がり、作業時間が短くなってコストが安くなります。これを別の言葉で「学習効果」による成果とも言います。
社長が1人でこなしていた大事な仕事でも主要なパーツとして分解し、3人のマネージャーを配置し個々が得意としている仕事をしつかりと担うスキームが作れれば、「特化」によるレバレッジが実現します。
これにより、経営者は社長業に専念できるだけでなく、個々が持つ知識や経験、強みを活かし、各々のポジションに必要となる最大の能力を発揮する「分業体制」が出来上がります。
■営業のプロセスを分解する効果とは?
例えば、法人営業の現場でも、アポイントの獲得から提案書の作成、商談、契約書の作成、受注後のフォローまでを一人の営業担当が行っているケースだと効率が悪いため、営業活動の分業化も進んできています。
このような状況下では、”いかに全ての営業プロセスをこなせる優秀な営業を育てるか” が重要視されてきたと言えます。
ですが、従来の一気通貫型の営業体制の場合には、優秀な営業人材の採用や育成に時間とコストが掛かるため、「業績向上には非効率」となることがセールスの現場でも指摘されるようになりました。
それゆえ、営業業務の効率化を図り、下記のように生産性の最大化を目指して営業組織を分業化する会社も増えています。
マーケティング
⇒顧客情報の獲得、メール配信やセミナーによる育成)
・インサイドセールス
⇒顧客リストへの電話、確度の高い商談機会の創出)
・営業(フィールドセールス)
⇒提案・交渉・受注、契約
・カスタマーサクセス
⇒契約後の納品・導入支援・運用支援による成果向上支援、契約継続やアップセル)
営業のプロセスを抽出してみても「分業体制」が構築できていれば、フェイズ毎の役割を担うメンバーが、それぞれが最も得意とする専門分野で目標に集中し、効率的に仕事に取り組み成果を上げることが可能になります。
■まとめ
中小企業の経営者は、ビジネスを運営する上で組織に秩序を与えるための「相対的な基準」を設定することです。
なぜなら、非凡な事業のオーナーであるならば、個々の業務に必要となる仕事内容を「明確に定義」し、長期的に安定した結果を出し続けるような「売れる仕組み」を構築しているからです。
例えば、創業時に起業家が会社経営に必要な仕事は3つあります。それは、戦略の立案などの社長業、職人としての仕事、そして、マジジメントの仕事です。
これを全て1人でやるのと、3人で役割分担を決めてやるのとでは3人で仕事をする方が効率的なのは明らかです。
これまで社長としてあらゆる仕事を1人で背負っていたものを、創業メンバーや新たに雇用したプロ人材と役割分担することで、1つ1つ個別にやっていた仕事を分担して取り組むことができるようになります。
「人々は、人生に見通しを必要としている。見通しのきかない人生は、行き先の決まらない難破船のようなものである。
見通しの不在は、崩壊へとつながる。見通しは、私たちが必要としている想定的な基準を示してくれるものなのだ。」
<アルビン・トフラー>『第三の波』
■最後に
法人営業のプロセスに対する考え方も徐々に変化しており、重要視されるポイントも「いかに優秀な営業を育てるか」から「いかにリスクを分散させるか」にシフトし来ていると言えます。
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