資本提携とは?スタートアップと大手企業が資本提携する意味

投稿日: 作成者: KENJINS運営会社社長 カテゴリー: 専門家インタビュー   パーマリンク

ライバルとの競争環境や市場の変化は、日々激しさを増しており、どの企業も生き残りをかけて様々な方法を模索しています。

このような厳しい状況の中で、有力なパートナー企業と強固な関係を築き、レバレッジによるリスクを下げながら、相乗効果による双方の利益の最大化を目指して行われるのが「資本提携」です。

「資本提携」のスキームは、上場会社などがスタートアップの第三者割当増資の引き受けにより、資本関係を持つことで、単なる「業務提携」 によるアライアンスに比べ、より強いパートナーシップを構築することが可能になります。

そこで今回、資本提携とは、スタートアップと大手企業が資本提携する意味について解説します。

■資本提携とは?
資本提携とは、2つの企業がエクイティによる繋がりをベースに、それぞれの会社が持つ、技術やノウハウ、人材などの経営資源を提供し合い、1社単独では達成することが困難な成果の獲得を目指す提携関係を指します。

資本提携は、英語で「alliance with capital involvement」、「capital tie-up」、「capital partnership」になります。

大手企業同士がアライアンスにより企業同士の結びつきを強くしたり、スタートアップと上場企業が資本提携することで、将来的な上場、M&A、合併などを見据えたアライアンスを推進します。

経営権を取得しない範囲で、マイノリティ投資(出資)することで強固な協力関係を築きます。

資本提携は、ベンチャーキャピタルによる第三者割当増資とは異なり、エクイティファイナンスによる企業同士の強固な関係を作り上げ、お互いの経営資源となるリソースを提供し合うことで、レバレッジ効果を生み出すことを目的にしています。

■資本提携と業務提携の違い
資本提携と業務提携の大きな違いは、「提携にともない株式の取得があるかどうか」という点です。

大手企業とスタートアップの資本提携の場合、第三者割当増資により新株式を取得する対価としてスタートアップ側に、「エクイティファイナンス」による資本が投入されます。

一方で、業務提携では、アライアンスのみで資本の移動を伴わず、企業同士が事業を共同で推進することを指します。

・資本提携:アライアンスと第三者割当増資を行うこと。
・業務提携:アライアンスのみで資本関係・出資はない。

資本提携では、上場会社など有力な企業が自社の株式を取得するスキームになります。

これに対して業務提携は、一般的に契約で期限が設けられている場合が多く、提携によるメリットが薄れたと判断した場合は提携を解消できます。

両者の間で大きな違いがあるのが、アライアンスによるシナジー効果です。

資本提携も業務提携も、どちらも提携がうまく進めばシナジー効果が現れます。しかし、資本提携の方が業務提携と比べると、結びつきが強くなるため、業務提携よりも強固なシナジー効果が現れると考えられます。

■資本提携とベンチャーキャピタルの投資との違い
資本提携は、パートナー企業という繋がりを超えて、スタートアップの安定株主という形になります。

そのため、上場時のキャピタルゲインを得ることを目的にスタートアップに投資するベンチャーキャピタルとは大きく異なります。

あくまでビジネスを通じて双方が収益を上げることを目指し、利害関係が一致した強固な関係になります。

資本提携では、ベンチャーキャピタルとは、その目的とポジショニングが異なります。株式を引き受けつ会社は、財務基盤を持つ業界の大手企業が中心になりますが、上場を狙った第三者割当増資による新株式の引き受ける単なる出資ではありません。

あくまでアライアンスによる相乗効果を創出することを前提としているため、提携面や財務面も結びつきが強化され、お互いの事業のレバレッジが期待できます。

アライアンスを行う際に、資本提携による関係が深いことで、スタートアップ側が不利になるような形ではなく、両者の「WIN WIN」が成り立つ、パートナーシップの関係が構築し易くなるため、シナジー効果が生じやすくなります。

■資本提携とM&Aの違い
資本提携と株式譲渡などのM&Aは、広義的には同じ資本提携のカテゴリーに分類されることがあります。しかし、この両者には大きな違いがあります。

それは経営権に関する扱いについてです。

・資本提携:増資により新株式の一部を引き受ける「マイノリティ投資」
・M&A:発行済株式の全部を譲渡する(子会社化)「マジョリティ投資」

資本提携は、M&Aと同じように、株式の取得による資本の移動があります。しかし、資本提携は一般的に経営権の取得に及ばない範囲で株式を取得、各社の独立性を保持します。

資本提携では、経営者を除いた最大株主ではないことを前提にしています。あるいは、引き受け会社のPLにおいて最終利益に影響がない投資のことを指します。

例えば、株式保有比率が、経営者60%、他の投資家Aが30%、当社が10%といった状態で、子会社でも持分法適用会社でもないこと。

ベンチャー界隈では、資本提携はこの狭義の意味合いで使われることが多いです。

これに対してM&Aは、相手企業の支配権を取得して組織再編を行うことが目的であるため、経営権を取得できる割合で株式の取得を目指します。

50%を超える出資は「マジョリティ投資」と呼ばれ、起業した経営者は過半数の議決権を手放すことになり、自身だけで会社の経営判断ができなくなります。

すなわち出資先の連結子会社となります。この点で、資本提携とM&Aは、その意味合いとスタンスが大きく異なります。

■資本提携のメリット
ではここで、資本提携のメリットについて解説していきます。資本提携によって得られるメリットは、主に以下の3点です。

1、強固な関係を築けるため、シナジー効果を創出しやすくなる
上場企業がスタートアップへの投資を行う場合には、既存事業とのシナジーを期待した資本提携を目的にファイナンスに応じるケースする場合が多くなります。

スタートアップと上場会社との資本提携は、スタートアップと大手企業が単に業務の一部を提携するにとどまらず、提携相手となる大手企業に株式を譲渡するため、既存の顧客への営業提案や、販売チャネルを活用した販路拡大の支援など、経営面で様々なサポートを受けやすくなります。

資本提携は、両社の強固な関係性によって、新たな顧客の開拓や単なるアライアンスよりも取引条件が有利に進めることができるなど、シナジー効果を発揮しやすい状態を作り上げることが可能になります。

2、ブランディングの向上に繋がる
提携先が社会的に認知度、ブランド力の高い上場企業や業界の大手企業の場合、資本提携することでスタートアップのブランド価値が短期間で向上し、企業やサービスの信頼性を高めることにつながる可能性が高まります。

特に創業数年のスタートアップの場合、資本提携を前提に大手企業から出資を受けることで、会社の社会的信用を高め、新規取引先からの与信や新たにジョインする従業員にもインナーブランディングによる安心感を高める効果もあります。

資本提携により、新たに入社を検討している人材が、大手企業が評価した会社であることが分かり、アライアンスによって競合他社との差別化にも繋がります。

既存社員も上場会社と資本提携したことで、「競争優位性が高まった」「社会的な信用力が増した」「自社にしかない価値が増えた」ことを理解することができ、会社に対して愛着を抱くようになります。

出資元企業としても提携先とのシナジーによって自社の株価が上がったり、企業価値向上にポジティブな影響が期待できます。

3、経営リスクを抑えてチャレンジしやすくなる
企業が成長するためには、投資→回収(収益創造)→投資の循環を確立し、持続的な売上・利益の拡大を図ることが欠かせません。

スタートアップが大手企業との資本提携により資本を受け入れると、資本金の額が増えるため財務基盤が強化され、その結果、経営リスクを低減できます。

資本提携により、財務体質を強化することで経営を安定的に行ったり、銀行から資金調達をしやすくなったりして、成長のための積極的な投資を行いやすくなります。

このような財務的な側面以外にも、提携企業同士が協力して新規事業に投資を行う際に、双方が協力して投資を行えば金額を抑えることが可能になるため、失敗するリスクを抑えられます。

■資本提携を推進する際のポイント
スタートアップの経営者が大手企業との資本提携を行いたいと考えた際にに、アライアンス可能な優良な提携企業を探すより前に何よりもやらなければならないのが、資本提携を行う目的を明確にしておくことです。

経営者は以下の内容を十分に理解した上で、資本提携の目的をできるだけ明確にする必要があります。

・VCからの増資ではなく、資本提携が良いのか?
・なぜ、大手企業との資本提携をしたいのか?
・本当に資本提携でなければならないのか?
・資本提携を行うことで何を実現したいのか?
・資本提携を経て会社をどのように発展させていきたいのか?

これと並行し、自社の市場における競争優位性やポジショニングを理解した上で、資本提携先へのメリットを訴求できるアライアンス提案書を作成する必要があります。

資本提携は、ベンチャーキャピタルとは異なりますので、不足する経営資源を補うことが最大の目的になります。

そのため、相手のビジネスの状況や現在の課題、今後、どの分野に注力して行くかを把握した上で、魅力的な提案を行うことがポイントになります。

資本提携相手を探す時には、ロングリストを作成するだけでなく、相手に提供できる価値とアピールするポイントを整理する必要があります。

スタートアップの起業家にとっても、自社の不足分を補ってシナジー効果が得られやすい理想的な提携相手がどのような企業なのかを認識し、相手に役立つような提案を行うことができれば、ターゲットとなる企業とのコネクションを持つ顧問から紹介をして貰うことも可能になります。

その他、資本提携を行う際の注意点としては、一定割合以上の議決権を保有する株主には「少数株主権」という権利が会社法上認められており、原則として、議決権の20%~50%未満を所有する場合は、「持分法適用会社」となる点になります。

マイノリティ投資を前提にした資本提携を行なう際には、「どの程度の出資比率を与えるか」、「相手企業と長期に渡り関係を維持できるか」といった点に注意する必要があります。

■まとめ
業務提携は簡単に提携したり解約することができますが、資本提携では、経営に参画してもらったり、財務面で支援してもらうなど、より強力な関係を構築することが実現するため、狭義のM&Aに近い効果が得られます。

ただし、資本を受け入れ株主になってもらうことは、経営に一定の参加権を与えることになるため、機密情報などの情報開示も含め、どの程度の出資比率とするか、社内戦略上、明確にする必要があります。

資本提携の場合は、アライアンス先のスタートアップが提携によって増収した際には、大きな事業収益に繋がるだけでなく、社会貢献を実現する革新的なベンチャー企業をバックアップしていると言う意味で、企業価値向上も期待できます。

資本提携のスキームは、提携相手となるスタートアップのビジネスが認知され、大きな成長を遂げ増収すればするほど、株主側の配当額や株価にも良い影響を与えるため、アライアンスを超えたWIN-WINの関係を築きやすいと言えます。

「自立から相互依存の領域に足を踏み入れた瞬間に、リーダーシップの役割を引き受けたことになる。あなた自身が他者に影響を与える立場になるからである。そして、効果的な人間関係におけるリーダーシップの習慣は、「Win-Winを考える」である。」

<スティーブン・R・コヴィー>

■最後に
スタートアップにとって、資本提携を経営戦略の一環として活用する上で、経営基盤とブランドを持つ大手企業からのマイノリティ投資によるエクイティファイナンスは、大きな飛躍の一歩になる可能性を秘めています。

事業会社との資本提携は、ベンチャーキャピタルによる投資とは違い、事業を手掛けている会社にしか見出せない価値を創造に繋がります。

日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」は、5000人を超える顧問やプロ人材の知識・経験・人脈・スキル・ノウハウを駆使し、「資本提携」の引き受け先となる、上場会社や大手事業会社の紹介を行うことが可能です。

その際、資本提携先へのアライアンス提案から株価交渉を含め、クライアント企業毎のアライアンス推進プロジェクトを立ち上げ、チーム体制でファイナンスを強力にバックアップします。

資本提携先の紹介だけでなく、必要に応じてアライアンス候補が見つかった後も、事業プレゼンへの同席や株価交渉、社外取締役の紹介、株主総会への参加など、第三者割当増資だけでなく、財務戦略に精通した実務経験が豊富な財務顧問が、社外CFOとしてサポートします。

本田季伸のプロフィール

Avatar photo 連続起業家/著者/人脈コネクター/「顧問のチカラ」アンバサダー/プライドワークス株式会社 代表取締役社長。 2013年に日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」を開設。プラットフォームを武器に顧問紹介業界で横行している顧問料のピンハネの撲滅を推進。「顧問報酬100%」「顧問料の中間マージン無し」をスローガンに、顧問紹介業界に創造的破壊を起こし、「人数無制限型」や「成果報酬型」で、「プロ顧問」紹介サービスを提供。特に「営業顧問」の太い人脈を借りた大手企業の役員クラスとの「トップダウン営業」に定評がある。

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