スキルマップとは?スキルマップを作成するメリットと活用とは?

投稿日: 作成者: KENJINS運営会社社長 カテゴリー: 専門家インタビュー   パーマリンク

人材育成・採用の効率化に課題を抱えている企業も多いかと思いますが、効率化を行うためには、業務内容や人員の能力に関する可視化が重要です。

スキルマップを導入することで、社員のモチベーションアップなど、思わぬ効果も期待できます。

そこで今回は、スキルマップとは、スキルマップを作成するメリットと活用など、業務内容と人材の能力を可視化する時に有用なツールである「スキルマップ」について解説します。

■スキルマップとは?
スキルマップとは、従業員が業務を遂行するにあたって、必要な能力=スキルを持っているかどうかを確認、記録し、見える化するためのツールです。

従業員一人ひとりまたはグループや部門単位で、業務を遂行するうえでの知識や技術を誰が備えているか、ひと目で分かる一覧表といえます。業務で必要となるスキルと社員が持っているスキルを可視化して、一覧表にまとめたものです。

スキルマップは、製品やサービスの品質のマネジメントに利用されるISO9001においても採用されており、日本においては、基本情報技術者などのITエンジニア試験を実施しているIPA(情報処理推進機構)が定めた、ITスキル標準(ITSS)が有名です。

IPAでは他にも、「情報セキュリティスキルマップ」などを作成し、情報セキュリティ人材が必要とするスキルやそのレベルを定義しています。

■企業におけるスキルマップの導入状況
少子高齢化や競争のグローバル化等の社会的背景から、人材育成を優先度の高い経営課題として捉え、今いる人材を育て、活かそうと考える企業が増えています。

そのような中、計画的な人材育成を行うためのツールとして、様々な業種でスキルマップの導入が進んでいます。

業種別に見ていくと、製造業はあらゆる業種の中で最もスキルマップの導入が進んでいます。中でも、製造部門や技術部門では、ISO9001の要求事項を満たすために、また顧客企業からの要請に対応するために、従業員のスキルを、スキルマップを用いて管理しています。

最近では、建設・工事業や保守サービス業、IT企業などの技術系企業でも、製造業と同様にスキルマップを導入する企業が増えてきました。また、銀行等の金融業やデパート等の小売・サービス業の現場でも、スキルマップを用いた人材育成の取組みが始まっています。

スキルマップを作成することで、事業の運営に必要となるスキルと組織内部で充足しているスキル・組織内部に足りないスキルを簡単に把握できるため、多くのメリットを組織にもたらします。

■スキルマップの導入の7つのメリット
1、スキルの可視化により公平かつ正確な社員の能力評価ができる
評価は見えづらく曖昧になっている場合も少なくありません。

スキルマップを作成し公開し、共有することで、なぜその社員がこの評価になっているのかを社員本人が公平に正確に知ることができます。上司も社員それぞれの評価基準がはっきりするため公正な判断ができ、自信をもって評価することができます。

また、どのスキルを向上させ身につけた場合に、どのように昇格や昇進が可能になるのかも可視化する、という応用的な活用方法もあります。

社員のスキルを可視化することで、誰を教育係に置けばよいのか、困った時に誰に教えを請えば良いのかマネジャーも社員も簡単に理解できます。

2、従業員への教育が効率的にでき、効果が上がる
各人のスキルが可視化されることで、自社全体に不足しているスキル、今後強化しなければならないスキルが把握でき、人材育成へ効果的に注力できます。

一つ例を見てみると、機器の販売からソフトウェア開発まで幅広く手掛けるソフトウェア開発会社では、社員を評価する視点が「公的資格・ベンダー資格」の取得に偏っており、経験や習熟度が適切に評価されていない課題がありました。

そこでスキルマップを導入したところ、本来であれば遂行できる項目の点数が低いことや実際には外部委託する業務のスキルがあることが判明し、育成の強化に繋げられたとしています。

3、社員のモチベーションがアップする
スキルマップを公開することで、スキルマップは必要となるスキルを可視化しているため課題となるスキルや必要となるスキルを磨くための道筋が見えやすく、社員のモチベーションアップにも貢献します。

スキルマップを作成することで、社員自身が自分のスキルを客観的に把握できます。そのため、自分の現在のスキルレベルから今後の明確な成長目標やキャリアへの道筋が把握でき、社員のモチベーションアップにつながります。

4、組織において最適な人材配置ができる
社員個々人のスキルを把握できることで、組織内でそのスキルが必要とされている部署に適切に配置することができます。

適材適所をすすめることにより、業務の効率化が期待できます。スキルマップから得られた情報を全体で共有することで、個々の社員だけではなく部門、部署ごとの問題や目標が具体的に見えてきます。

ここから、今後その問題についてどのように対処すべきか、どう改善すべきか、そのように会社の業績につなげるかなどの対応ができ、業務全体の効率化へつなげられます。

5、人材採用面で大きな効果を発揮する
採用候補者の専門性が重要となる中途採用において、何の専門性を重視して人材を獲得すればよいのか容易に把握できるのです。

現在行っている事業を遂行する上で足りないスキルを持った人材、将来的に必要となるスキルを持った人材など、獲得する人材像を可視化できます。

個々のスキルを正確に把握することで、本人と職場にとって適切な人員配置やローテーションなどが可能となります。新規事業の立ち上げやイベント開催などでも、必要なスキルや人材を的確にピックアップした採用や配置できます。

6、リスク管理が容易になる
例えば、業務において重要なスキルを持っている人が突然に休職や退職をした場合、その人の担当している部署の仕事が回らなくなるという事態が起きるリスクが考えられます。

このようなリスクを事前に防ぐためにスキルマップを活用できます。

7、より効果的な従業員教育
スキルマップで従業員のさまざまなスキルを可視化できるため、適切な教育を絶妙なタイミングで計画的に実行可能です。職場全体と個人のスキルを把握するため企業としても効率的な教育体制が整うでしょう。

計画的な教育は、先輩の技術を後輩に受け継ぐことも可能とします。

スキルを洗い出し業務の流れを可視化することで業務内容の基準が明確になるため、それに従った業務検定を構築することができます。この検定試験を利用して、さらに評価レベルの基準にすることも可能です。

また、業務検定試験のためのテキスト作成や、講習にも活用できます。

■効果的なスキルマップの作成方法
スキルマップは、厚生労働省の「職業能力評価シート」のテンプレートが業種別に用意されています。また無料でダウンロードできるものなどもあります。しかし、用意されているものをそのまますぐに利用できるわけではありません。

なぜなら、業種が同じでも各企業や組織ごとに必要な「スキル」は細かく異なり、全く同じではないからです。自分の会社や組織オリジナルのスキルマップを作成し、それを使いこなすことで、スキルマップ導入の効果が見られ業務改善などに結び付けられます。

それでは、スキルマップはどのように作成し、どのように導入していけばよいのでしょうか。

1、スキルマップ作成の目的を明確化する
なぜスキルマップを作るのか、どういうふうに活用し、会社をそれによってどう改善したいのか、新しいことができるのか、などを決定します。

部門やグループ単位でスキルマップを作成することで、経営者や管理者は、組織内にどのようなスキルを持った人が何人いるのか、人材やスキルの状況を可視化し、一覧にて把握することができます。

これにより、組織内で現在または将来的に不足するスキルを明確にし、組織としてどのようなスキルを強化し、補充していくべきかが明らかになります。

2、作成責任者を決める
管理責任部門(人事担当など)がセクションの管理職などにヒアリングし、最終的にとりまとめる方法が考えられます。ただし、おおまかな部門ごとなのか、現場に限りなく近い部署ごとに用意するのかは組織や業態によって異なるでしょう。

スキルマップの必要なセクションごとに項目は選定し、実際にスキルマップを作製し、上司が部下を評価することで運用となります。客観的な内容にするため、複数の管理職でミーティングを行いスキルマップに必要な項目を選定し記載していくことになるでしょう。

3、スキルマップの項目と階層を決める
厚生労働省では職業能力評価基準の策定について、以下のように述べています。

「職業能力評価基準では、仕事の内容を「職種」→「職務」→「能力ユニット」→「能力細目」という単位で細分化しています。そのうえで、成果につながる行動例を「職務遂行のための基準」、仕事をこなすために前提として求められる知識を「必要な知識」として整理・体系化しています。」

目的にあった適切なスキル体系を作成するためには、以下の5つのポイントがあります。これらは多くの担当者様がお悩みになっているポイントですので、順にご紹介していきます。

1.スキルの分類方法・・・「スキル体系はどう分類するのか?」
2.スキルの階層数・・・「スキルは何段階で整理するのが良い?」
3.スキルの粒度・・・「スキルの細かさはどれくらいにすべきか?」
4.スキルの内容・・・「スキル項目に知識は入れても良いの?」
5.スキルの表現・・・「スキル名はどう表現する?」

4、スキルの評価をするための「レベル」を設定する
(1)評価を何段階にするのか決める
厚生労働省では4段階のレベル区分(レベル1~レベル4)に設定しています。これも自社で3~6のレベルで設定しても問題ありませんが、あまり細かく設定すると評価がしづらく、わかりづらくなります。

(2)段階ごとに自社の職能階級や肩書などの制度と照らし合わせる
自社の職等級や各種制度の段階に合わせ、現実と合わない部分はないか確認し、微調整します。

5、試験導入し、現場の意見を反映させる
本格的なスキルマップ導入の前に試験的に現場に実際に使用してもらい、検証し、修正を行います。必要に応じてヒアリングを行い、不足や不要な項目がないか調べ、スキルマップへ反映させます。実際に導入してから円滑な利用と定着をすすめるためにこの手順は必要です。

6、マニュアルを作成する
スキルマップの使い方、スキルマップの目的、課題の可視化と評価基準を、ここまでの調査やヒアリングをもとにマニュアル化します。誰が評価するのか、どの部署がスキルマップを管理するのかなども制定します。

また、現在の業務水準と目標水準とのギャップについても記載し、今後の課題として設定します。この目標水準は現状に応じて変更する必要も出てくることが予想されますが、頻繁に変更するのではなく、マニュアル全体の定期的な見直し時期も決めておくとよいでしょう。

7、社員ごとにスキルマップを作成する
出来上がったスキルマップへ個々の社員ごとにスキルレベルを記入します。本人へのヒアリングを行ったり申告書を提出させたりした資料を参考に、直属の上司が各項目ごとにレベルを判断します。この時点で業務バランスや人材配置の問題点や課題が見えてきたら、今後の業務改善へ検討を開始します。

スキルマップを用いると、従業員一人ひとりのスキルがどのレベルなのかが一目瞭然になります。従業員のスキルごとの達成状況が明確になりますので、個人毎の教育計画を立てて、人材育成を図るためのツールとして活用できます。

8、社員への通達・実践・課題の可視化と定着化へ
社員への通達、定着化を図ります。

スキルマップを利用し始めてからも、現場からの意見は常に汲み上げ、より実情にあった内容にアップデートしていきましょう。スキルマップを従業員に共有することによって、次の点によって、従業員の成長意欲やモチベーションの向上を期待できます。

・自身に求められているスキル要件が明確になる。
・自身のスキルの現状が視覚的に明示されることで、スキル向上への達成意欲が湧く。
・他のメンバーのスキルの保有状況を見れるようにすると、競争心を刺激する。

スキルマップの従業員への共有は、職場の壁に張り出す、または個別面談の際に見せるといった方法がよく使われています。

■スキルマップ導入のワークショップ
スキルマップ作成のためのワークショップの実施はチェック表と実態とのずれをなくすためにも非常に重要です。
スキルマップ導入にあたっては、ワークショップの実施も非常に重要です。

その理由として、管理者が業務内容に基づいて作業の流れを分解・階層化した際に、実態と乖離しているケースがよく出てくるからです。

ワークショップを実施して、社員にスキルマップの方法論を身に付けさせつつ、社員の指摘から実態との乖離を把握して、スキルマップをより適切に運用できる形に修正していくことが重要です。

■まとめ
今回はスキルマップを導入する重要性や作成・導入にあたってのポイントについて見てきました。

スキルマップを導入してスキルを可視化することで、業務や人材育成、採用を効率化できます。業務や採用の効率化に課題感を抱えている企業は導入を検討されてみてはいかがでしょうか。

スキルマップの目的は、業務に必要なスキル一覧表が存在する、この業務は誰がよく知っているか、困ったとき誰に聞けばよいか、などが客観的に分かることです。マニュアルを作成したほうがよい、どの人員がいなくなると困るのかなどリスクが見える化されます。

さらに従業員各自がスキルチェックを行うことで得意分野や足りないスキルを見い出せます。本人の目標設定や会社の人材育成計画の指標としても活用できるでしょう。

■最後に
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本田季伸のプロフィール

Avatar photo 連続起業家/著者/人脈コネクター/「顧問のチカラ」アンバサダー/プライドワークス株式会社 代表取締役社長。 2013年に日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」を開設。プラットフォームを武器に顧問紹介業界で横行している顧問料のピンハネの撲滅を推進。「顧問報酬100%」「顧問料の中間マージン無し」をスローガンに、顧問紹介業界に創造的破壊を起こし、「人数無制限型」や「成果報酬型」で、「プロ顧問」紹介サービスを提供。特に「営業顧問」の太い人脈を借りた大手企業の役員クラスとの「トップダウン営業」に定評がある。

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