人事考課とは?社員を適切に評価するための人事考課が大事な訳

投稿日: 作成者: KENJINS運営会社社長 カテゴリー: プロ活用方法   パーマリンク

日本の会社の多くは、年齢や勤続年数に応じ役職や賃金が上がっていく年功序列制が一般的でした。

バブルが崩壊するとともに、年功序列という考え方だけでは会社を維持することが難しくなりはじめ、目標管理制度を取り入れた「人事考課」の制度が日本の企業間で広く知られるようになりました。

人事考課は企業にとって重要なものですが、人事考課が適切に行われている企業は少ない現状があります。

そこで今回、人事考課とは何か、社員を適切に評価するための人事考課が大事な訳について解説します。

■人事考課とは?
人事考課とは、企業で定めた基準に基づき社員の実績や業務態度、能力を評価する制度です。人事考課は、経営者や人事部、または管理職が、従業員の貢献度や業績、また個人の能力を査定する形になります。

一定の期間における社員の成果や取り組みを、四半期や半期に1回、1年に1回など、定期的に評価します。

人事考課の結果は、給与や賞与、また昇格・昇進など役職などに反映されます

給料や等級を決める人事査定の判断材料となり、適切な人事処遇を実現するために不可欠な取り組みです。企業の業績と社員のキャリアを左右するため、公平・公正で納得性の高い制度運用が求められます。

人事考課の本来の意味合いは、昇給・昇進だけでなく、「昇給や昇進」を目標に社員の意欲やモチベーションを向上させ、組織を活性化させることが重要であり、企業の成長につなげることが真の目的だといえます。

■人事考課と人事評価の違い
人事評価とは、社員の人事処遇や育成・能力開発のために社員を評価する取り組みを示す言葉で、人事考課より広義な意味で用いられます。

「人事評価」は社員のもつ能力開発および育成をおこない、適材適所に配置するなどして、社員の評価をおこないます。

人事考課と人事評価は、いずれも社員を評価するという点で違いはありません。人事考課は、社員のやる気やモチベーションを向上させ、間接的に企業の発展へと繋がります。

同義として扱われる場合も多いですが、評価の目的によって区別するケースや、人事評価の一部に人事考課があると捉えるケースもあります。

人事考課を適切に運用することで、従業員は目標の明確化、働く意欲の向上などを得ることができ、また企業は適材適所の実現によって人材投資によるリターンを最大化することが出来るでしょう。

■人事考課の目的
人事考課の目的の1つは「公平・公正な人事査定」の実施です。人事考課は、ただ「社員を評価する」だけではなく、「企業の業績向上」、「個人の潜在能力を最大限に引き出す」、「企業の理念やビジョンの共有」を果たす役割をもっています。

企業で定めた基準に基づく客観的で公平な評価により、給与や賞与、昇進・昇格等の待遇を決定します。可視化および透明化された評価基準を設けて、業務内容や人間関係による不公平感を排除します。

また、「企業の価値観や目標、ビジョンの共有・浸透」も重要な目的です。企業理念やビジョン、経営計画に基づいて評価基準や制度を作成すれば、社員は行動指針を明確にできます。

目標達成に向けて「何を重視すべきか、どう行動すべきか」の判断基準を定かにして、企業の目指す方向性を社員と共有することが狙いです。

そのほか、「戦略人事や組織開発に役立てること」も人事考課の要件です。戦略人事とは、事業戦略や経営理念実現のための人材マネジメントを通じた経営への参画を意味します。

組織開発とは、人やチーム、組織の相互的な作用で組織全体を活性化し、効果的に企業課題を解決するための組織づくりです。

いずれも、人的資本を公正に評価して現状を客観的に把握し、適切な人事処遇を実現する取り組みが欠かせません。人事考課を通じた経営視点と現場視点の相互の情報共有や信頼関係の構築は、経営戦略を推進するために極めて重要です。

■人事考課のメリット

1、社員と企業、双方の理解促進
社員と企業の双方が互いの理解を深められる点で、人事考課は優れています。社員の能力や課題を明らかにする人事考課は、人的資本を効果的に活用するために不可欠な情報収集の機会です。

人材の適正配置や個人の課題に見合った研修の実施など、社員のキャリア形成を助ける人材マネジメントに活かされます。

また、社員にとっては、会社の方針や価値観を再確認する機会になります。具体的な行動を評価される経験により、実務レベルで企業の方向性や理念を理解できます。

2、モチベーションの向上
従来の日本の人事考課は、「年功序列制」による評価が主流であり、「勤続年数」を主な評価基準として査定がおこなわれるため、社員が「目的意識」をもちにくく、企業の成長につながりにくいという問題点がありました。

現在の人事考課では、人事処遇に対する根拠や基準が可視化され、理想とする待遇への道筋が明確になるため、社員は納得感を持ちながら高い意欲で働けます。

目標の達成が評価や報酬に反映される体験をした社員には、さらなる意欲の向上が期待できるでしょう。

3、コミュニケーションの活性化
人事考課のフィードバックは、考課者であるマネジメント職の社員と被考課者である社員との大切なコミュニケーションの機会です。

適切に信頼関係が構築できれば、コミュニケーションの活性化やエンゲージメントの高まりが見込めます。

可視化された透明性の高い人事考課制度と信頼関係を構築するコミュニケーションは、愛社精神・帰属意識・モチベーションの向上による離職率の低下や、企業としての生産性向上に貢献します。

■人事考課の評価基準
人事考課の評価基準には「業績考課」「能力考課」「情意考課」の3種類があります。

この3つは、従業員の肩書や職務によってウェイトが異なってきます。

ベテラン社員に対しては業績考課を重視し、若くて経験が浅い従業員は仕事に取り組む姿勢などの情意考課に重きを置いて評価します。

1、業績考課
業績考課は、「この1年でどの程度目標を達成できたか」を査定します。業績考課は、「会社への貢献度や売上への寄与度」という数値化できるものを目安にするので、公平性を保つことができます。

しかし、結果までのプロセスを重視しないため、高い能力を持ちながらも、社会情勢や経済状況によって業績を上げられなかった従業員の査定が低くなってしまう場合もあります。

最近ではプロセスを重視する評価基準として、「パフォーマンスマネジメント」という評価制度を導入する企業も増えてきています。「パフォーマンスマネジメント」についてはこちらをご覧ください。

2、能力考課
能力考課では、従業員が仕事を通じて身に付けたスキルや自宅学習などで獲得した能力を積極的に評価していきます。

業績が出せていなくても、難易度が高い仕事に取り組んだ人を高く査定することもできます。

また、裏方に徹したり、大きなトラブルを回避したりといった、売上金額に現れない貢献をした社員を正しく査定できます。

3、情意考課
情意考課は、従業員の行動と業務態度に注目する査定方法です。

「情意」とあり、本人にしかわからない感情を評価できるのか?と思われがちですが、本人の意欲は必ず普段の勤務態度や言葉に現れます。

経験が浅く知識も足りないけれど今後に期待できる要素を持つモチベーションの高い従業員を評価できるため、情意考課は有効です。

業績考課や能力考課と異なり、管理職や人事部などの評価者による主観が入りやすいのが特徴です。上司だけでなく、同僚や部下など職務に関わる様々な立場の人からの評価をあつめると、より正確な評価が下せるでしょう。

■人事評価の注意点
考課者によって評価の厳しさが違うなど、不適切に人事考課が運用されると、社員に不満が溜まります。処遇に納得できない状況が続けば、モチベーションの低下や離職も招きかねません。

人事評価において「フィードバック」はとても重要です。フィードバックがない場合、被評価者が、「自身の評価に納得できない」ことや「上司に不信感を抱く」、「成長できない」などの問題が出てくる可能性があります。

社員の成長と信頼関係を保つためにも、フィードバックを大切にしましょう。

そのため、人事考課を行う上司には、心理現象の認知バイアスを排除した評価スキルや、的確なフィードバックで信頼関係を構築するマネジメントスキルが求められます。

また、経営層や人事部門には、適切な人事考課制度を設計するスキルが不可欠です。

■まとめ
人事考課は、社員と企業の将来に関わる重要な取り組みです。人事考課で得られる情報は人事制度の根幹に関わります。

人事考課をおこなう際は、まず「目標設定」を行います。

目標設定は具体的な「期間」や「数値(業績)」を設定しておくと、評価対象者が取るべき行動もわかりやすく、客観的な評価がおこないやすくなります。

従業員に人事考課を行う目的を正しく理解してもらい、正しい査定をするためには、適切な人事考課シートの作成、面談の際気を付けるポイントの伝達など、人事部員の仕事は多岐にわたります。

人事考課を適正に運用するためには、制度の目的と阻害要因となる人事評価エラーを理解したうえで、適切な評価手法を用いて制度設計する必要があります。

本田季伸のプロフィール

Avatar photo 連続起業家/著者/人脈コネクター/「顧問のチカラ」アンバサダー/プライドワークス株式会社 代表取締役社長。 2013年に日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」を開設。プラットフォームを武器に顧問紹介業界で横行している顧問料のピンハネの撲滅を推進。「顧問報酬100%」「顧問料の中間マージン無し」をスローガンに、顧問紹介業界に創造的破壊を起こし、「人数無制限型」や「成果報酬型」で、「プロ顧問」紹介サービスを提供。特に「営業顧問」の太い人脈を借りた大手企業の役員クラスとの「トップダウン営業」に定評がある。

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