AI、IoT、ビッグデータ解析など、もはやどの事業分野にもデジタル人材は欠かせないものとなっています。ニューノーマルにも敏感に反応し、自社の事業にとって必要なDX人材をいち早く獲得する必要性が増しました。
従来の人事部では、デジタルシフトの波に対応しきれなくなっています。課題をいち早く発見して解決するために、HRBPの機能が強く求められています。
そこで今回、HRBPとは何か、HRビジネスパートナーのHRBPが果たす役割と機能について解説します。
「人が第一、戦略は二の次と心得ること。仕事でもっとも重要なことは適材適所の人事であって、優れた人材を得なければ、どんなにいい戦略も実現できない。」
<ジャック・ウェルチ>
■HRBPとは?
HRBPとは、「Human Resource Business Partner」の略です。HRビジネスパートナーと呼ばれ、企業における戦略的人事機能の一つで、事業成長のための問題解決を担うことが主な仕事です。
HRBPは、経営者や事業責任者のビジネスパートナーとしての視点から、組織の成長を促す「戦略人事のプロ」を指します。
人事機能の中でも特に事業部門の経営者や責任者のパートナーとして事業成長を人と組織の面からサポートする役割を担います。
HRBPは、企業における人事観点とビジネス観点の両面で事業成長をサポートする役割を担います。
終身雇用や年功序列が当たり前だった日本企業の人事においては比較的新しい概念だと言えるでしょう。
■HRBPが果たす役割と機能
変化の速い社会の中で企業が成長していくには、人事領域においても「戦略」が必要です。事業を成長させるための採用や育成、配置を戦略的に行う人事を「戦略人事」と呼びます。
HRBPは、戦略人事の実現において重要な役割を担います。HRBPの仕事は、事業成長のための問題解決が主な仕事ですが、その内容は多岐にわたります。
採用活動から研修、制度設計まで人・組織におけるあらゆる手段を通じて事業成長を支援します。
ただし、企業によってHRビジネスパートナーの業務内容や意味は異なります。
単に部門所属の人事担当者を意味する場合もあれば、特定の部門に対して人事コンサルティングを行うプロ人材を指す場合もあります。
■HRBPが必要になった背景
近年、日本企業においても、HRBPの考え方が求められるようになってきました。その理由には、社会環境の変化や人材獲得競争の激化が深くかかわっています。
HRBPの概念の始まりは、アメリカのミシガンビジネススクール教授であるデーブ・ウルリッチによって提唱されました。
ウルリッチ教授は、著書「MBAの人材戦略」の中で、これまでビジネススクールでは研究されて来なかった人事部門の重要性と組織構造を「パラダイムシフト」する必要性を説きました。
その著書の中で、人事は単に事務処理係ではなく、経営者の右腕として意思決定に影響を与えるパートナーであるべきとしたのです。
さらにウルリッチ教授は新たに提唱する人事機能の一つとして、「HRBP」の考え方を紹介しました。
HRBPは、社員の意見を吸い上げ、社員の意欲を高めるために人事戦略の策定を行いながら、経営層と社員をつなぐ、社員側の代表的な役割を果たミッションがあると言えます。
■HRBPの定義はチェンジエージェント
HRBPは、人材戦略のもとで、組織における「変革」を推進していく役割を持ちます。経営者の代理人として現場のメンバーと信頼構築をしながら変革を進めていく存在になります。
HRBPは、ウルリッチ氏によって初めて提唱された概念であり、日本企業においては、チェンジエージェントの担い手が不足している言われています。
チェンジエージェントとは、もともと組織開発論で使われていた言葉です。組織を改革するために、「 心理学や行動科学の専門家が、組織構成員が変化にうまく対応できるように支援する役回り」 のことを指します。
チェンジエージェントは、「改革推進者と改革を余儀なくされる人との間を仲介して信頼関係を構築し、改革が一層効果的に進められるよう支援を行う役割」を指していると捉えられます。
ウルリッチによれば、HRBPは、営業部門などの「現場」に近い場所にいて、部門からリクエストされる人や組織の課題に対して人事の視点から問題解決を図る機能だと定義しています。
現在、AIやビッグデータ解析など、デジタルトランスフォーメーション「DX」の推進により、専門知識やスキルを持つデジタル人材が欠かせなくなりつつあります。
今後、社会の変化に柔軟に対応し企業が生き残っていくためには、労務管理など既存の人事機能だけではなく、人事戦略の立案と遂行ができる機能が必要になってきたのです。
■HRBPと従来の人事の3つの違い
HRBPは、人事のひとつの機能です。ウルリッチの定義によれば、これからの人事は3つの機能が必要だとされています。
1、ドゥアブル「doable」
従来の人事機能である給与計算や入退社手続き、勤怠管理などの事務作業を提供する。
採用や育成、評価など、人事部が従事している活動で応えようとするアプローチは、「ドゥアブル」(doable)=行為としてできることをする発想と呼ばれます。
ドゥアブル発想は、これまでの人事・労務管理に似た思考方法であり、「管理エキスパート」はその代表的なものと言えます。
2、センター・オブ・エキスパタイズ「CoE」
「CoE」とは、「Center of Excellence」の頭文字からなる略語で、組織を横断する取り組みを継続的に行う際に中核となる部署や研究拠点のことを指します。
業界によって「CoE」が指す意味は異なりますが、大きくはトップレベルの人材やノウハウ、ツールなどが集結した組織・グループのことを言います。
人事領域では、中央の人事機能を指し、採用のプロ、給与体系構築のプロ、能力開発プログラムデザインのプロなど、各分野における専門家が集う組織のことをCoEと呼ばれます。
3、デリバラブル「deliverable」
経営への貢献から人事部の機能を定義するアプローチは、「デリバラブル」(deliverable=提供価値)発想と呼ばれるようになりました。
デリバラブルの視点でいえば、「研修や採用は、1人1人の成長機会のヒントを提供し、会社に事業貢献する人や組織を増やしている」となります。
「何ができるか」という行為の内容ではなく、その行為の結果、「誰に、何をもたらすことができるのか」という観点で考えるのがデリバラブルです。
人事マネジメントが企業の経営機能の一部である以上、その機能を任されている人事部が、「どういう価値を経営に提供できるのか」が、問われるようになったのです。
■HRBPとCHROの違い
HRBPに近い概念として、CHRO「Chief Human resource Officer」(最高人事責任者)という言葉があります。
HRBPは「人事のプロ」として戦略的に経営と現場をつなぐ役割であるのに対し、CHROは「経営者の一人」として人事機能の統括を担うという違いがあります。
CHROは、経営陣の1人として戦略人事を実行しつつ、人事関連の業務全般に責任を持つポジションを指します。
CHROと類似する言葉に、CHOが挙げられます。CHOは、「Chief Human Officer」の頭文字を取った略称であり、日本語に訳すとCHROと同じ意味を持ちます。
■HRBPと部門人事との違い
一番紛らわしいのが、HRビジネスパートナーと部門人事の違いです。というのも、企業によっては部門人事のことをHRBPと呼ぶことがあるからです。
HRBPが求められるようになったのは、近年「戦略人事」の重要性が高まってきたからに他なりません。
一般的に戦略人事では、経営戦略に基づいて各部門の事業計画が作成され、それらに基づいて各従業員の業務計画を設定する仕組みが、人事マネジメントの中に組み込まれます。
これによって各自がやるべきことが明確となり、経営戦略を具体的に実践することができます。
ただし、部門人事と呼ぶ場合は部門機能のうち従来の事務作業中心の人事を指すことが多いでしょう。
例えば、「海外で生産拠点を展開する」という経営戦略が決定された場合、人事部門は日本とはいろいろな面で異なる海外において、能力・スキルを発揮できる人材の採用や育成を事業計画に盛り込む必要が出て来ます。
HRBPは、部門の問題解決やコンサルティングを行い、ヒューマンソリューション「人的課題解決」を担う、戦略的人事という立ち位置であるため、従来の部門人事とは大きく異なる機能を持った存在であることは、理解しておいた方がよいでしょう。
■HRBPと労務管理の違い
HRビジネスパートナーと労務管理も全く異なる概念です。労務管理は一般的に職場環境を整えることで従業員が働きやすくする業務を指します。
従業員の健康管理や職場環境の改善などが労務管理の主な業務です。
人事部の仕事と言えば、労務管理や人事制度の運用や調整など、管理業務が中心であると認識している企業が未だに多く、HRBPのように戦略的な機能を担っている人事部門は少ないのが実情です。
そのため、HRBPの業務の中には、労務管理が含まれることもあるでしょう。
これまでの人材採用や配置転換などに代表される、「人と組織に対してどのように活動するか」という観点ではなく、「いかに価値を提供し、企業経営に貢献するか」という観点から、人事部門に求められる役割を『再構築』する必要があると言えます。
■まとめ
HRBPとは、HRビジネスパートナーの略で企業経営や各事業のビジネスパートナーの役割を担い、人事や組織の面から事業成長をサポートする機能を持ちます。
HRBPは経営的、労務的観点で組織を見渡し、見いだした問題点を経営側につなぐことが求められます。そして、収益につなげる経営者のパートナーとしての役割があります。
よってHRBPには、「人事戦略の見識」と「経営的な視点」、そして、「デリバラブル志向」が必要です。
なぜなら、この三つの事柄を持ち合わせていなければ、人事部や人事担当者を単にHRBPと呼び変えただけになってしまうからです。
HRBPの推進においてデリバラブルな考えを養うことは、単に人事的な行動をとるだけでなく、自分の行動により相手や社会へ何をもたらすことができたのか、何を提供できたのか、ということを考える視点のこと持つことを意味します。
デリバラブル志向の人材マネジメントは、個々の活動よりも、人事部全体として果たすべき役割や提供すべき価値は何か、という観点から、マネジメントや理想とするべき会社と連携し、人事部門のあり方を構想するのが特徴です。
HRBPに適任と考えられるのは、人事部の出身者だけではありません。特定の事業会社での社長や取締役の経験者を登用するのも効果的です。
プロダクトの開発力はあるが営業が弱い会社の場合には、売上を上げる組織を作り上げることを目的に、大手企業で営業部長の経験があるフリーランスのプロ人材をHRBPとして任命することも良い施策になるでしょう。
「組織のトップを走らなくても二番手、三番手でキチンと仕事をしてくれる。そういう人材もまた必要なのです。」
<野村克也>
■最後に
従業員と組織のパフォーマンスを最大化させることにより、業績向上を実現させることがHRBPのミッションです。したがって、事業部門を支えるサポーター的な意味合いが強かった従来の人事部門とは、その役割が大きく異なります。
事業責任者である事業部役員や事業部長とパートナーシップを組み、成果を生み出すために人的側面から支援を行なうのです。
例えば、中長期の事業戦略を見直すとしましょう。経営戦略が変われば、必要な人物像や人数も変わってきます。
HRBPはそれらを事業戦略から導き出し、その確保のための採用手段や育成方法、評価制度などを構築して行くことがミッションになります。
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なぜなら、事業会社で経営の経験を豊富に持ち、戦略的人事を推進することが可能な「CHRO」と「戦略人事のプロ」である「HRBP」が揃っているため、経営者やコンサルタントの視点から、人的ソリューションの提案ができるからです。
「KENJINS」は、ビジネスをスケールアウトさせる「HRBP」として、経営戦略と人材マネジメントが融合させ、ヒューマンリソースを最大化する戦略人事の実行支援を行うことが可能です。
スタートアップの場合には、事業の成長フェイズに合わせて、その瞬間の経営状況に応じて要所要所で、豊富な「人的資産」を持つ外部の優秀なフリーランス人材を登用し、積極的に活用することが経営課題の解決に繋がます。
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