法人営業では、高額な商材単価、複数人に及ぶ決裁者、企業単位の課題解決、リードタイムの長期化することは一般的ですが、これらはBtoB営業ならではの難しさになります。
BtoB営業では、個人営業とは異なり、例外なく画題の把握と予算の確保が必要になり、企業規模を問わず最終的な決裁者となるキーマンが存在しています。
そのため、極めて重要な要素となるのが、「BANT」というキーワードになります。
日本の法人営業の現場では、「BANT情報」重要性を認識しつつも効率的な取得に課題を抱えている企業は多いものです。
そこで今回、BANTとは、BtoB営業のBANTの意味・売れる営業になるコツについて解説します。
「組織の成功の鍵は、自分の情報を必要としているのは誰か、それはどのような情報か、逆に自分は誰の情報を必要としているかを全員が自問することである。」
<ピーター・ドラッカー>
■BANTとは?
BANTとは、法人営業の際にヒアリングして置くべき項目として、「Budget(予算)」「Authority(決裁権)」「Needs(ニーズ)」「Timeframe(導入時期)」の4つの頭文字をとったものです。
BANTは、日本語では、バンドと呼ばれていますが、予算、決裁権、ニーズ、導入時期をリード顧客からヒアリングするための汎用的な営業のフレームワークを意味します。
BANTは、法人営業におけるニーズを炙り出すヒアリングの手法や、確度を高めるテクニックであり、そこから得られる情報が営業活動における最重要データといっても過言ではありません。
なぜなら、営業にとって必要なデータが、BANTにすべて集約されているからです。
法人営業の商談では、「売り込みたい商品やサービスを導入するための予算が取引先で確保されているか」が重要になります。
特に「導入予算はい幾らくらいなのか」を知ったうえで、導入を決定する決裁権を持つキーマンは誰なのかを聞き出し、誰に売り込めばいいのかを把握することが次のステップに進むかどうかの判断材料になります。
【BANT条件】
B=Budget:予算
A=Authority:決裁権
N=Needs:必要性
T=Timeframe:導入時期
この4つの条件を元に収集してきた情報データがあれば、営業活動で成果に結びつくであろう案件を選別して絞り込んでいくことが可能になり、「商談成立の可能性がどのくらいあるのか」を把握しやすくなります。
■BANTの4つの情報が最重要な理由
BtoB営業では、予算・決裁者・必要性・導入時期、これら4つの情報が揃っていれば具体的な営業方針が立てられるため、BtoB営業の現場では、早い段階でまずBANT情報を聴取すべきとされています。
1、Budget(予算)
BtoB営業で扱う商品やサービスは、車や住宅のような例外的に高額な商材を除き、BtoCの商材よりも単価が比較的高額です。
そのため、初回のコンタクトで成約まで至るケースは稀であり、衝動買いもほぼありません。
商談相手が決裁権を持っていて、サービスへの関心が高くても、導入予算がなければ当然、成約にはつながりません。
年間予算や決算の問題であれば、次年度に再検討してもらえるかもしれませんが、直近の成約はまず望めないでしょう。
【BANTの予算で確認する事項】
・どの程度の購買予算金額を想定しているか?
・予算確保の目処はあるのか?
・予算金額確保目処の確からしさはどの程度か?
「予算質問くらい営業活動の基本だろう」と思うかもしれません。ですが、BANTの予算は、営業質問スキル次第で得られる情報の質が大きく変わります。
まずは購入を検討している商品やサービスに、どれだけの費用を投じられるのかを確認することが重要です。
なぜなら、いくら商品やサービスを気に入ってもらえたとしても、そのための資金がなければ成約には至らないからです。
予算の金額に応じて、自社に提案可能な商材やサービスがあるかどうかの判断ができ、提案内容も絞られます。
ある程度の関係性がなければ聞きづらい情報のひとつではありますが、詳細な金額がヒアリングできれば、自社の売上予測も立てやすく、商談化すれば話が進みやすい傾向もあります。
2、Authority(決裁権)
BtoC営業の場合は、購入者本人と決裁者はイコールであることがほとんどです。買いたいと思った本人が購入者であり、同時に決裁権も持っています。
一方BtoB営業においては、商品やサービスを購入するのは基本的に「企業」ということになります。
さらに、決裁権を持つのは多くの場合、商談担当者の上司や特定の部署、役員/経営層です。商談担当者が稟議をあげて決裁者に承認を得るのが一般的です。
企業規模が大きくなるほど決裁に関わる人数や部署も増える傾向にあります。
商談相手がサービスへの関心度が高く、予算が潤沢に確保されていても、決定権がその商談相手になければ、成約には至りません。
ファーストコンタクトでいくら商談担当者の心を掴んでも、最終的に決裁者が「ノー」と言えばその商談はなくなってしまいますので、どこ(誰)に決裁権があるのかを把握しておくことは重要なのです。
【BANTの決裁権の確認事項】
・今回の商談金額で、最終決裁者は誰か?
・最終決裁者の判断基準は何か?
・普段の基準は?今回は?
・承認過程で、方針に影響を与える人は誰か?
・最終決裁者に上がる前に止める人物はいないか?
・キーマンがいるとしたら、どんな影響を与えるか?
3、Needs(必要性)
Needs(必要性)とは、BtoB営業においては主に企業が抱える「課題」を指します。
企業が新たに商品やサービスの購入を検討する目的は、売上拡大やコスト削減などさまざまです。
このNeeds(必要性)におけるBtoCとの違いは、購入に至る意思決定プロセス(=心理的プロセス)に現れます。
商談相手が決裁権を持っていて、予算が潤沢に用意されていた場合でも、サービスに必要性を感じてもらえなければ、成約しないでしょう。
つまり、相手の企業としてどのような課題を感じていて、それに対して自社のサービスや商品の内容が合っているかを確認し、提案しなければなりません。
【Needs=顧客ニーズで把握する内容】
・何に対するニーズか?
・誰にとってのニーズか?
・ニーズは確かにあるか?
・ニーズは強いか?
BtoC営業の場合、顧客(個人)は欲求や興味、「欲しい」という感情が主な購入理由になります。
BtoB営業の顧客(法人)は、より合理的で客観的な意思決定プロセスを踏みます。
投じたコストに対し、自社にどれだけのメリットがもたらされるかという費用対効果や事実・論理をより重視するのです。
4、Timeframe(導入時期)
BtoC営業の場合、一般消費者(個人)は商品やサービスを認知してから比較的短期間で購入に至ります。
日用品などはなくなればすぐに、保険商品や住宅など、検討期間が必要なものでも数週間から数か月ほどで購入を決めるのが平均的です。
一方、BtoB営業では商材単価が高額なため、同じ商品やサービスであっても、実際の購入までに最低でも数社から見積もりを取って比較検討するのが一般的です。
購入の意思決定にも多くの人物が介在し、総じて検討期間が長くなりがちです。
商談相手が決裁権を持っていて、予算が潤沢に確保されていて、サービスに対する関心が高い場合でも、時間的な余裕がない場合は、それが落ち着くまでは、成約することができません。
【導入時期の把握】
・必要な時期や導入タイミングはいつか?
・導入時期から逆算して商談スタートから商談決定全体のスケジュールはどうなるか?
・全体スケジュールのうち主要なマイルストーン(クリアしないと次に進めない中間地点)は何か?
・それぞれのマイルストーンはいつか?
・各マイルストーンでキーとなる顧客メンバーは誰か?
・マイルストーンをクリアするために自社はどんなスケジュールで動くべきか?
また、企業ごとの事情が存在し、直近の成約が難しいことがあるのもBtoB営業ならではと言えます。
例えば「システムの買い替えは検討しているが、既存のオプションサービス契約があと半年残っている」といったケースなどです。
その場合、半年後の有望見込み客として、現実的な導入時期が近づいたら再度アプローチすることになります。
■BANTを活用する5つのメリット
ここまで基本的な内容をお話してきたBANTですが、活用することでどのようなメリットが得られるのでしょうか。代表的なものをいくつかご紹介します。
1、成約に至る確度を把握しやすい
自社が提案したい商品やサービスに見合った予算を、商談相手が今期確保できているかどうかを把握することは、成約の見込みを確認できる大きなポイントです。
BANTを用いることで、営業の成約基準が明確化されます。顧客ごとに成約までの課題は異なります。
この成約までの課題を明確に把握することができれば、案件ごとにどのようなアクションを取るべきなのかが、おのずと明らかになります。
BANTを用いてヒアリングを行うことで、成約に至る確度を把握しやすくなります。
BANT情報を全て明確にできている場合は成約の確度は高くなりますが、いずれかの情報が欠けている場合では、成約するかどうかはまだわからないと言えるでしょう。
2、成約までのプロセスが具体的になる
「BANT条件」を利用してこの課題を明確にして置くことで、案件ごとにどのような対応をすれば受注に繋げることができるのかが明確になります。
すると、より的確な提案や案内を行うことが可能になるのです。
BANTを意識して営業活動を行えば、成約に向けて何をすべきか明確になります。クリアすべき課題もわかるため、踏むべきステップも可視化できます。
例えば、導入時期が認識できていれば、「いつ」「どんな形で」「何を」「どうする」という具体的なフレームで適切な案内を行うことができます。
案件ごとの個別の事情を踏まえたうえで、最も効果的なアプローチができるでしょう。
営業担当者による成約率のバラツキも少なくできる可能性があります。
3、戦術が立てやすい
明確な基準で案件が管理されているので全体の営業戦略の立案もしやすくなります。
つまり、BANTを基にそれぞれの案件に対して、最適なアプローチを組織として行うことが可能になり、成果を挙げることにつながります。
成約に至る確度が把握しやすいということは、どの顧客に対して優先的にアプローチすべきか、どのようなアプローチを今後行うべきか、なども検討しやすくなります。
そのため営業戦術立案の一助にもなるのです。
4、営業部門全体で共有しやすい
BANTを用いることで、営業内での共通認識を持つことができます。
社内においてBANTという共通認識があると、チーム内の情報共有もスムーズになります。社内での情報共有が可能となり、営業活動を管理しやすくなります。
具体的には、聞き出したBANT条件から、「A社のリードはBANT条件がそろっているから早めのアプローチよろしく」とか、「B社はTがそろっていないから、一度違うアプローチをかけてみて」や、「C社はBとAとTがそろっていないから今は追わなくても良い」などと一目で見分けることができます。
また、BANTの情報を明確に管理することで、営業担当者だけでなく、営業部門全体での共有もしやすくなるという利点があります。
その分営業担当者が気づけていない機会などを、周りの営業メンバーが気づいてカバーするといった組織的な行動も活発化するでしょう。
5、ボトルネックが見えやすい
BANTを通して各案件の状況をチェックしていれば、ボトルネックになっている部分も見えやすくなります。
ボトルネックが明確になれば、それを解消するための対策も講じやすくなるでしょう。
担当者個人が悩んでいる場合は、チーム内で意見を出し合うことも可能です。
その結果、チーム全体の成約率がアップし、営業成績の向上も期待できます。
■まとめ
BANTとは、ヒアリングの際に必要な4つの要素である、Budget(予算)・Authority(決裁権)・Needs(必要性)・Time frame(導入時期)の頭文字をとってできた言葉です。
海外では、これらを基本のフレームワークと捉えて、法人向けの営業活動を行っている企業が多いです。
BANTを駆使したヒアリングでは、最終決裁者と顧客担当窓口との役職階層が離れているほど、最終決裁者の意向を掴むことが重要です。
なぜなら、大手企業を対象に大きな商談を行うケースでは「役員決裁が必要になるため、稟議書を作成した顧客担当者が、最終決裁者に会うことは年に数回しかない」ということも珍しくないからです。
BANTで把握すべきは「最終決裁者」となるキーマンです。
BANT条件のヒアリングは、日本のビジネススタイルにはあまり合っていないとも言われることがあります。
ですが、コツさえ押さえておけば、日本の法人営業でも非常に役立つセールススキルとなります。
「BANT条件」を活用することで、自社での成約基準の明確化や成約率向上が期待できるだけでなく、商談相手にとっても導入までのプロセスを明確化することができます。
■最後に
BtoBビジネスでは、決裁権を持たない実務担当者と商談を行うことがありますが、その場合、決裁権のある人物が他にいます。
最終決裁者は、その名の通り最後の意思決定をする人、この人がOKを出せば購買契約が成立する人です。
例えば担当者を味方につけ、社内での説得を手伝うなど、決裁者を引き出す営業テクニックはさまざまです。
ですが、目の前の担当者に決裁権があるのか分からなければ、そういった交渉をすることもできません。
スムーズに商談を運ぶためには、決裁権を持つ相手に直接プレゼンテーションを行うことがベストなります。
そのため、アポイントの獲得とプレゼンテーションの機会を貰えるような流れを作る必要があります。
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なぜなら、人脈コネクターとなる顧問を活用し、思い切った「コネクション営業」を仕掛けることこそが、見込み客とのアポイント件数を増やし、最短での売上アップに繋がるからです。
ですが、キーマンとの商談が有効だと頭では分かっていても、大手企業の最終決裁者に若手の営業マンが代表電話からアプローチしを行い役員クラスとアポイントを取得し、有効商談を行うのはなかなか難しい場合も多いでしょう。
そのような際には、顧問契約をベースに大手企業の経営トップとのアポイントやキーマンとの商談設定を推進することが可能な営業顧問の人脈を借りることが、限界を突破に導く大きな武器になります。
つまり、BANTのフレームワークを理解し、スピーディに売れる仕組みを作り上げるためには、適切な顧問料を設定した上で、営業顧問の実行支援を受けトップダウン営業を推進することが、コストパフォーマンスが圧倒的に高い最強の手法だと言えるのです。
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