本日の「賢人たちに学ぶ 道をひらく言葉」を贈ります。
「何かを発明したり、いいアイデアを思いついたりするだけでも大仕事だが、それだけでは足りない。まわりを乗り気に気にさせる術も心得ておく必要がある。」
<ラリー・ペイジ>グーグルの共同創業者
社会的なリーダーとして、人の上に立つことを目指す経営者や起業家、ビジネスマンは、いにしえの時代から「説得の技芸」と呼ばれた正しい「レトリック」の技術を身につけることです。
なぜなら、古代ギリシャでも、大勢の人の前に雄弁に話すことのできる人は、物事の真理や理屈がわかる「高名な賢人」であり、これを大衆に対して説得的に語れるということは、人々を正しい方向性に導く社会的なリーダーとして相応しいと見なされていたからです。
「レトリック」とは、「言葉のチカラ」によって他者の感情や思考を刺激し、判断や行動に影響を与える「広義の説得術」という意味合いを持ちます。
歴史を振り返れば、大勢の人を動かす皇帝、戦国時代の武将などが学んでいる教養科目の1つで必要不可欠な素養スキルでした。
アリストテレスは、この話法を3つのプルーフに分け、
(1)ロゴス(logos):論理的な理由づけ
(2)パトス(pathos):人間の様々な感情の名称や原因
(3)エトス(ethos):人の人格や善良さ
これらを人々の「心の中に創造し」、スピーチを通じて説得へと向かわせる修辞技法として「弁論術」を提唱していました。
ビジネスマンが営業活動の中でクライアント企業に対して、プレゼンテーションをする際にも、以下のようなレトリックの配置法を利用して話すと相手に伝わるため、非常に有効です。
1、問題提起(争点)
論じようとしている問題は何か。どのような点が会社の利害、行動基準、社会的評価に関わっているのか(争点)を明らかにする。
2、適用すべき原理・原則・基準(ルール)
問題を解決するには、どのような原理・原則。または、ルール(基準)によって解決すべきなのか、一般的な基準で十分か、その事案の解決に最も適した他の合理的な判断基準があるのかを提示する。
3、結果の功罪の検討(議論)
それぞれの基準を適用した場合のメリット・デメリットは何かを立場を変えて議論する。
4、結論
以上の議論を踏まえて総合的な判断をすると、どのような考え方を選択するのがよいかの結論を示す。
このような「プレゼンテーション」の順序に関する法則(配列法)が発見されるまでに、人類は何千年もの間も試行錯誤を続けてきました。
今から考えれば、人前で話す順序などたいした工夫ではないと思われるかも知れませんが、古代ギリシャでこの配列法が発見された当時は、この配列法(1、序論、2、本論(論証と議論)、3、結論)を人に教えるだけで莫大な収入が得られるほどに価値の高いものでした。
自身の経験からも会社経営を長年していると、相手から不当な訴えを受けたり、当事者同士ではどうしても紛争を解決できない場合には、裁判所で第三者を交えて公平に争うことが避けられないケースがあり、何度も法廷で裁判をしたことが実際にあります。
裁判になった場合には、答弁書の作成や反論書面の作成、陳述書の作成、口頭弁論により正当性を裁判所に対して立証する必要性がありますが、このような際には、一般的に専門の弁護士を使うことになります。
ですが、自分自身でも「レトリック」を習得していれば、ある程度の裁判書類を書くことも出来るし、仮に弁護士を付けなくても法廷で立ち振る舞い、自らの主張を証拠書類とともに展開し、相手弁護士とも正々堂々と戦い、書面と弁論で打ち勝つことも出来るのです。
ですので、「合意形成」のための「レトリックの技術」を持つ人と持たない人とでは、その後の人生に雲泥の違いがあることが事実で、経営者にはこのスキルが絶対に欠かせない大事な局面があるのです。
社会的なリーダーになるためにレトリックの技法を学んでますか?
<本田季伸>