働き方改革が進む日本。従来の雇用形態も見直そうという動きが見られます。日本のこれまでの雇用形態で主流だったのはメンバーシップ型という形でした。
それに対し欧米で大半を占めるのはジョブ型で、生産性向上といったメリットにつながる働き方として注目する日本企業が増えています。
雇用環境の変化に対応し、成果を出せる組織作りを進めるためにジョブ型・メンバーシップ型の働き方それぞれの違いやメリット・デメリットについて押さえておきましょう。
そこで今回、ジョブ型雇用が進化し、顧問やフリーランス時代が到来する理由について解説します。
「何かをすることに決めたら、何を期待するかを書き留める。9か月後、1年後に結果と照合する。私自身これを50年間続けている。
そのたびに驚かされる。誰もが驚かされる。こうして自らの強みが明らかになる。自らについて知りうることのうち、この強みこそ最も重要である。」
<ピーター・ドラッカー>
■「ジョブ型雇用」とは?
ジョブ型雇用とは「職務を中心に採用する雇用契約」のことで、採用してからポジションを与える従来の日本企業の採用方法と異なり、明確化した職務に対し、雇用するプロセスです。
2013年6月に行われた規制改革会議から、ジョブ型正社員の雇用形態について議論が始まり、2019年6月には、労使で合意した業務範囲の明文化が義務付けられる案が提言されています。
また、経団連が2020年の春闘方針に日本雇用型システムの再検討をしています。働き方改革の新たな提案として、従来のメンパーシップ型雇用を残しつつ、職務で採用するジョブ型雇用の普及をすすめるという提案が盛り込まれています。
欧米では、職種や拠点がなくなれば自由解雇できるということで、問題として取り上げられていますが、無期限雇用かつ社会保険にも加入できるため、育児・出産をする女性や介護をしている人材の活用につながるともいわれています。
ジョブ型雇用は、従業員のジョブ(職務)をベースに雇用する形態を意味し、もともとは欧米で浸透していた雇用方法です。
日本では会社でジョブローテーションを繰り返し、会社に最適化された人材を育成するメンバーシップ雇用が一般的でした。
しかし、年功序列・終身雇用の崩壊に伴い、徐々に成果主義をベースにした欧米型の雇用手法が日本に浸透していくにつれて、日本企業においてもジョブ型雇用を導入する企業が増加しています。
■ジョブ型雇用の特徴
ジョブ型雇用とは仕事を基準に人を割り当てる雇用形態です。ジョブ型雇用では、勤続年数や年齢ではなくスキルに応じて給与が決まるので、社員には常に自己研鑽が求められる傾向があります。
営業なら営業、経理なら経理といったように必要な業務に応じてスペシャリストを社内外から採用するので、能力を磨けば年齢に関係なく会社の要職に就き、高給を得られる可能性があります。そのため、能力を磨き、より条件の良い会社に転職していく方が多いです。
ただし、日本は解雇規制が厳しくジョブ型雇用は浸透しづらい傾向にあります。
一部成果主義的な要素を取りいれても年功序列の人事制度をベースにしている企業は多いです。また転職市場も十分に発達していません。
■ジョブ型雇用が見直されている3つの背景
ジョブ型雇用が見直されているのはなぜでしょう?そこには、「低所得層の増加」と「高度IT人材の不足」「柔軟性のある経営環境を構築」という背景があります。
1、正規と非正規の格差是正
正規社員と非正規社員では、未だ福利厚生や賃金の面で格差があり、問題となっています2020年4月からは、「同一労働同一賃金」が実施されます。
これは、同じ仕事をする正規・非正規の待遇を同一にするもので、ジョブ型雇用はこの「同一労働同一賃金」と非常に親和性が高く、格差是正の一つの方法として期待されています。
2、高度IT人材の不足
2019年4月23日に経済産業省が発表した「IT人材需給に関する調査」によれば、AIやIoTに関わる人材、いわゆる高度IT人材は55万人不足、それと同時に受託開発や保守運用を担う従来のIT人材は10万人余剰するといわれています。
従来型のIT人材に対しての教育、または高度IT人材の採用の門戸を広げるなどしなければ、優秀なプロフェッショナル人材は国内で育たず、海外へ流出してしまいます。
ジョブ型雇用を積極的に行うことで、高度IT人材は専門スキルを活用できる場が増え、国内外の優秀な人材を呼び込むことが可能となります。
3、ジョブ型雇用で柔軟性のある経営環境を構築
ジョブ型雇用を進めている欧米では人材を流動化させるために転職市場が発達し、解雇規制が緩くなっています。
一方でメンバーシップ型雇用中心の日本では解雇規制が厳しく、転職市場も発達していません。
このことが日本企業の組織を硬直化、時流の変化へ対応しづらくしていますが、ジョブ型雇用が浸透することによって、欧米型の変化に対応しやすい経営環境を構築できるようになると考えられます。
■ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違い
メンバーシップ型雇用は、日本型雇用ともいわれ、仕事内容や勤務地などを限定せず、会社にマッチする人を採用するプロセスで、会社に就くため、”就社”と言われています。
それに対し、ジョブ型雇用は仕事に人を就ける採用プロセスで、能力やスキルで採用を判断します。欧米では主流の採用方法であり、ジョブスクリプションと呼ばれる職務記述書に基づき、職務が明確に定められます。
■メンバーシップ型雇用とは?
メンバーシップ型雇用は、仕事や勤務地が限定していないため、新卒採用でスキルゼロの大学生も雇用し、教育します。たとえ、部署や事業部が統合・消滅しても、他の部署に配置換えされ、またそこでOJTなどの研修を通し、新しいスキルをセットされます。
メンバーシップ型雇用とは日本企業によく見られる雇用システムで、会社に最適化された人材を育成する雇用方法です。
年功序列・終身雇用と相性の良い雇用制度で、人口ボーナスによる経済成長のタイミングでは効果を発揮します。ただし、人口ボーナスが発生しないタイミングでは規模拡大よりも生産性の高い業務遂行が求められるので、メンバーシップ雇用の弊害が大きくなります。
★メンバーシップ型雇用のメリット・デメリット
長らく日本では、このメンバーシップ型雇用が採用されています。多くのメリットがある反面、会社都合の転勤や異動、長時間労働になりやすいといった問題点も存在します。
■メンバーシップ型雇用のメリット
メリット1:安定した雇用
メンバーシップ型雇用は、職能ではなく人柄を重視した採用方針であり、部署や事業部が消滅しても会社が存続する限りは何かしらのポスト・役職に就くことができます。
メリット2:手厚い社員教育
会社に長く勤めてくれて、かつ社風に合った人材を採用する傾向が強く、一つの分野だけでなく、幅広い分野を任せられるよう、OJTなどの研修で社員教育を徹底して行います。
しかし、近年は、終身雇用や年功序列制度が崩壊し、また人手不足により、実質この社員教育が成立していないケースも増えてきています。
■メンバーシップ型雇用のデメリット
デメリット1:会社都合の転勤・異動がある
雇用が安定している分、自由度は下がります。
従業員は職に対してではなく、会社に所属しているため、会社都合の転勤・異動といった望まない人事異動にも従わなければなりません。
デメリット2:残業時間が多い
職務が限定されていない分、有能な人材に仕事が集中し、残業が増えます。
また、メンバーシップ型雇用では、先に採用してから仕事を割り振るため、必ずしも自分に合っている業務、得意領域の業務とは限らず、これが結果的に作業効率を下げる原因になってしまいます。
■「新卒」が存在しないジョブ型雇用
ジョブ型雇用には魅力的な面がたくさんありますが、反面、新卒採用が存在しない、雇用主が自由に解雇できる、実力主義など、デメリットも存在します。
1、新卒採用が存在しない
ジョブ型雇用の場合、ポジションに欠員が出た時にしか採用が行われないため、実質新卒採用が存在せず、即戦力採用になります。スキルゼロ、能力ゼロの人材が採用されるためには、自力で採用基準に見合うスキルや能力を習得しなければなりません。
2、雇用が安定していない/実力主義
職務記述書に基づいて職務が明確化されているものの、それは裏を返せば、その職務に関しての成果やスキルを求められるということであり、業績が悪かったり、成果が悪い場合は、解雇されることもあります。
また、職務を持つ部署や事業部自体が解体・消滅になれば、契約終了になります。
★ジョブ型雇用で働き方はどう変わる?
もし、日本にジョブ型雇用が定着したら、働き方はどう変わっていくのでしょうか?ポイントとして「ポジションに合った人を確保できる」「人材の多様化」と「雇用主と労働者の関係性の変化」の3つが挙げられます。
1、ポジションに合った人材を確保できる
ジョブ型雇用では一から担当者を教育するのではなく、事業内容に応じて必要なポジションにあった人材を転職市場から募集します。
よって環境の変化に合わせてスピーディーに組織を最適化し、育成コストも削減できます。
ただし、解雇を伴う組織の最適化を行う場合は日本の法律に準拠している必要があり、転職市場に人材が揃っていなければ、すぐにポジションに合った人材を確保できるとは限りません。
2、年齢・国籍・性別に依らない多様な人材が活躍する
ジョブ型雇用は、人柄ではなくスキルや能力を重視するため、そこに年齢・国籍・性別は問いません。下は20歳から上は70歳、80歳まで、多様な人材が採用されます。
「新卒社員だから」という言い訳も通用しなくなるでしょう。人柄を除外した純粋な自分のスキルや能力を測られるため、よりシビアな実力主義社会になります。
スキルをつけようと努力する人は、メキメキと頭角を現します。成果を問われ、よりプレッシャーのかかる環境になりますが、裏を返せば、成果を出していて、自分の仕事さえ終わっていれば、休暇や働き方は柔軟で自由です。
3、雇用主と働き手の関係がフラットになる
従来のメンバーシップ型雇用には、「雇い主>従業員」というパワーバランスが存在していました。
それは、スキルゼロの社員を雇用して一人前になるまで育て上げたという借りを、社員が会社に成果という形で返すという構図が出来上がっており、途中で退職することは、会社への恩義を忘れていると、後ろ指を刺される行為としてみなされます。
しかし、ジョブ型雇用に変われば、雇用主の労働力確保というニーズと、労働者のスキルや能力がマッチするフラットな契約関係です。
そのため、恩義などの貸し借りが存在しません。ある意味ドライな関係です。しかし、それは、労働者からすれば非常に風通しがよく動きやすい労働環境でもあり、雇用主も、人情に振り回されることなく、淡々と優秀な人材の採用・確保ができます。
■まとめ
ジョブ型雇用とは、職務をベースに人材を雇用する形態です。働き方改革を推進したい政府や経団連が注目しており、富士通などの大手企業も移行しています。
企業側はポジションに合った人材を確保できる形になるため、労働側の仕事内容や成果を明確に把握する必要があり、正しい人事評価を行う必要があります。
現在、コロナウィルス対策によるテレワーク下の環境の中で、多くの企業では人事評価制度設計にも有効と考えられ関心が高まっています。
今後、日本でも欧米と同様にメンバーシップ型雇用という形が薄れ、時代の流れとともに間違いなく変わってきます。また、大手企業でもこれからの社会では終身雇用という概念がなくなり、より専門性の高いスキルや能力を求められるようになることが予想できます。
そうなると、労働側する側としては、ジョブ型雇用では給与は年齢ではなく、業務内容に応じて決定されるのが一般的になります。
年齢に関係なく社内のポジションや担当する業務によっては高給を得られます。
それ故、ジョブ型雇用で転職を繰り返し、給与を高めていくキャリアプランを描いているのならば、市場価値の高いスキルや職務経歴を意識して仕事をすると良いでしょう。
■最後に
日本でもこれまでは、終身雇用という制度を前提とした正社員という働き方が主流でした。ですが。現在、近年働き方は大きく変化しました。ITベンチャー中心に香若くても高額な年収を支払うが退職金制度のない企業も増えています。
また、年金制度も崩壊しつつある中で正社員として定年まで働くというより、個々の専門性やライフスタイルに合わせた働き方を望む人々が多く、フリーランスという言葉や働き方がより世の中に広まってきています。
フリーランスの経済規模は約20兆円以上にも上がっており、2018年のフリーランス人口は日本の総労働人口の約17%に当たります。このことから現時点でも日本の総労働人口の約5人に1人がフリーランスということになります。
また、業務委託ベースのパラレルワーカー数が増加傾向にあり、会社員から副業を経てフリーランスとして独立するケースも多く見られます。
アメリカでは2027年、フリーランス人口の割合が会社員人口を上回るという結果が出ています。
経済大国アメリカでフリーランス市場の普及率が割合の半数を占める可能性があることを考慮すると、今後日本のフリーランス市場がさらに拡大をし、アメリカと似たような成長をしていく可能性は大いにあります。
日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」は、ジョブ型雇用を推進する企業が確実に増えている中、フリーランスとして働くプロ人材や特定の分野で高いスキルを持ったパラレルワーカーを支援しています。
フリーランスはどこでもいつでも仕事ができるため、労働生産性の向上はもとより、時間の有効活用・地方業務の活性化などにも貢献するでしょう。
また、フリーランスによっては正社員以上に高収入で安定した生活を送れる方・やりたい仕事を選びながら精神的に安定した生活を送る方も多くいます。
これからの時代、正社員やフリーランスなどの雇用形態や契約形態にとらわれず、臨機応変に企業や社会との関わり方を選択出来る時代が来るのではないでしょうか?
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