ベンチャー企業にとって役員、従業員のモチベーションアップのための有効な手法の一つがストックオプションです。とくに、将来的に株式公開を目指す企業にとっては、有効なインセンティブ手法の一つになります。
ストックオプションを上手に活用することができれば、会社の業績を大きく伸ばせる可能性があります。
そこで、今回は、ストックオプションとは、ストックオプションの導入が絶大な理由について解説します。
■ストックオプションとは?
ストックオプションとは、あらかじめ定められた「価格」、「数」、「期間内」に株式を購入することができる権利です。
ストックオプションを付与された社員は、会社が上場した後にストックオプションを権利行使して株式を取得し、その株式を市場等で売却することによって利益を得られます。
ストックオプションの権利を付与された社員や取締役にとっては、得することはあっても損することは基本的にありません。
ストックオプションは売却時の株価が権利行使価額よりも高ければ高いほど利益になるため、将来的に株価が大きく上がる可能性のある企業、つまりIPOを目指している企業に向いています。
特に、資金力がなく高額な給料を払えないベンチャー企業にとって、ストックオプションは優秀な人材を確保するためのインセンティブとなります。
■Appleがストックオプションを発行した理由
スティーブジョブズはアップル社の共同創立者の1人でありながら暫く同社から離れていましたが、同社の赤字が長く続いていた1997年に暫定CEOとして復帰し戻って来ました。
その際のジョブズの実質的な年間の給与所得は、わずか1ドルでした。
ですが、過去および将来の職務に対する報酬として、新しいジェット機『ガルフストリームV』とアップル社の1000万株分のストックオプション「自社株購入権」を付与されました。
一時は20億ドル以下まで株価が下がっていたアップル社の市場価値と時価総額が急上昇し、ジョブズ暫定CEOのリーダーシップの下、180億ドル以上にまで伸びました。その後のimacなどの新商品開発で業績がV字回復しました。
ちなみにスティーブが生み出したiPhoneの売上高は、2021年9月期決算によればiPhoneプロダクト単体で、約21兆円もの売り上げを叩き出す形になっています。
■ストックオプションのメリット
1、企業側のメリット
人件費を節減しつつ社員へインセンティブを与えられるという点が、企業側のメリットとして挙げられます。
ストックオプションは、発行する企業からすると「株で払う給料」みたいなものです。
高い人件費は払えない、という上場準備企業が多い中、損益計算書の人件費に計上しなくて良いストックオプションは、人件費を節減しつつも社員へインセンティブを与えることができ、モチベーション向上に繋げられます。
■社員側のメリット
ストックオプションで得られた利益に対する税負担の割合が、給与所得の税負担と比べて軽いことが社員側のメリットとして挙げられます。
給料をお金で受け取った場合、日本では累進税率で最高55%の税金がかかります。
しかし、株式でもらうストックオプションの場合には、 権利行使後の売却でどれだけ利益が出ても、20.315%の税負担で済むのです。お金でもらうと最高「55%」、株式でもらうと「20%」ですから、その差は歴然です。
ただし、20.315%の税負担で済むのは後述の「税制適格ストックオプション」の要件を満たしている場合に限るため、注意が必要です。
■ストックオプション制度の導入に必要な手続き
法的には「新株予約権」がベースになります。では実際にストックオプション制度を導入するにあたって、どのような手続きが必要になるのでしょうか。
株式を上場しているかいないか、つまり公開会社か非公開会社かにかかわらず、基本的な手順は同じです。まず、会社法第238条1項の規定に従って、ストックオプションの考え方のベースになっている「新株予約権」の募集事項を決定します。
■新株予約権とは?
「株式会社に対して行使することにより当該株式会社の株式の交付を受けることができる権利」(会社法2条21号)のことを指します。
「新株予約権」にはいくつかの種類があり、中には社債などもありますが、そのうち「会社がサービスの対価として取締役や社員に付与する新株予約権」をストックオプションと位置付けています。
新株予約権の募集事項は、次の通りです。
【基本的な手続き内容】
1、募集事項の決定
募集新株予約権にかかわる次の事項を決定
2、募集事項の通知・告知
非公開会社は不要
3、募集新株予約権の申込み
募集新株予約権の引受の申込みをしようとする者に通知
4、募集新株予約権の割当・引受
株主総会の特別決議により、割当者、割当数を決定
5、引受人の払込み
払込期日までに払込金額の全額の金銭払込み
【募集事項の決定】
株主総会の特別決議により、募集新株予約権にかかわる次の事項を定めます。ただし、公開会社の場合は、取締役会決議で足ります。
内容・数
無償発行の場合にはその旨
1個あたりの払込金額またはその算定方法
割当日
払込期日を定めるときは、その期日
■ストックオプション制度を導入する際の注意点
ストックオプションの旨みは「権利行使価額」と「売却時の株価」との差額にあります。
したがって、既に株式を上場している公開会社の場合には株価がある程度高くなっていることが多いため、ストックオプション制度を導入してもさほど大きな効果は見込めない可能性はあります。
すなわち、株式上場(IPO)をこれから達成する見込みが高い未上場企業など、株価が上がる可能性の高い企業ほど、ストックオプションに向いているということです。
ストックオプション制度は必ずしもどんな企業にも適しているというわけではなく、企業によって向き不向きがある制度です。
また、付与するストックオプションの数にも注意が必要です。
例えば、株式上場を果たして株価が上がり、大量のストックオプションが行使された場合、発行済み株式総数が増えることになります。つまり、既存の株主にとっては権利が薄まる「ダイリューション」に繋がります。
■ダイリューションとは?
ダイリューションとは、増資などで発行済み株式が増加することにより、1株あたりの価値が低下し「希薄化」することを指します。企業にとってストックオプションを発行することは優秀な人材を集め、モチベーションを高める有効な手法になります。
ですが、株主にとっては1株あたりの配当が下がることによって利益は減る可能性が高くなります。
このため既存株主にとっては当該株への魅力が低下し、株価が下がる可能性が高くなります。
経営者側ではこうした株主の不満を小さくするため、増資による企業価値向上策の説明、議決権を制限した優先株を発行するなど普通株の議決権の希薄化を防ぐ何らかの対策が併せて行われることが多いです。
このようなことから、ストックオプションを発行する場合は全体の10%程度に収めておくのが一般的です。また、誰にどの程度ストックオプションを割り当てるか、社員間に不公平感が生じないようにしなくてはなりません。
■まとめ
ストックオプションは、幹部社員のモチベーションアップと税制優遇が魅力になり。社員の努力が報酬につながるため、モチベーションアップにも役立ちます。
税制の優遇を狙うなら各種条件をクリアして「税制適格ストックオプション」としておけば、権利行使時の課税を免れることができます。導入すれば、優秀な人材獲得や、外部協力者を経営に取り込むための切り札にもなりえるのです。
また、将来、株価上昇が見込まれる会社では、株価の低い段階で、後継者にストックオプションを付与しておけば、少ない負担で後継者に株式を承継させることも可能です。
役員、従業員のモチベーションアップのためにも、各種専門家と連携をとりながら効果的な導入が求められます。
ストックオプション制度にはさまざまな種類や条件があり、会社法など諸法令の規定に基づいて設計を練る必要があります。導入にあたっては、専門家のアドバイスを受けながら進めるのが良いでしょう。
■最後に
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