多角化経営とは?事業の選択と集中のメリットと多角化の比較

投稿日: 作成者: KENJINS運営会社社長 カテゴリー: 運営会社社長   パーマリンク

新型コロナウイルス感染症による社会的混乱などを受けて、本業が停滞している業界が増えており、いかに会社と事業を存続するかが大きなテーマになっています。

特に顧客のニーズが多様化する傾向にある時代となった今、どの業界でも企業は新たな収益事業を立ち上げる多角化経営を求められています。

そこで、今回は、企業が成長する契機として注目を集める多角化経営を取り上げ、その特徴やメリット・デメリットと事業の選択と集中と多角化の比較などについて解説します。

「今日、再び起業家精神を強調すべき時代に入った。ただし、それは一世紀前のような一人の人間が起業し、マネジメントし、支配する起業家精神とは異なる。それは新事業のために組織を使い、方向づける能力である。」

<ピーター・ドラッカー>

■多角化経営とは
多角化経営とは、企業が経営活動を多種多様な分野へと拡張する経営戦略のことです。元々、多角化経営は、経営戦略論の創始者であり、経営学者のイゴール・アンゾフ氏によって提唱された、「成長マトリックス」の戦略の1つになります。

これは、「製品」と「市場」という2つの要素を、それぞれに「新規」と「既存」という視点から選択すべき4つの戦略を明確にした経営戦略となっています。

ただし、一口に多角化経営といってもその形態は多種多様な戦略があります。

例えば、主力事業分野をもちながら、多角化する「本業中心型」、主力事業は持たず、相互に関連したさまざまな事業を展開する「関連型」、異業種の会社が合併吸収した場合のように、事業間に関連性がない「非関連型」などがあります。

また、一つの企業が数種の業種の事業を経営することを多角経営と呼んでいます。

■多角化経営が注目される背景
多くの日本企業が多角化経営に取り組む背景には、大きな成長を見込むことができない停滞した経済状況があります。

経済のグローバル化が進むなか、将来的に起きる事象に伴うリスクが高く、思い切った投資をするのが難しいといわれています。

そのことを裏付けるかのように、財務省の法人企業統計が発表したところによると、ビジネスリスクへの備えである日本企業の2016年度末の内部留保が406兆2348億円と400兆円を超え、過去最高額を更新しました。

政府は、内部留保を設備投資に回すよう求めていますが、十分には行われていないことがわかります。

世界各地では紛争やテロも相次ぎ、外交の不安も高まるばかりで不確実性は今後も高まるとの見方が支配的です。そのため将来の競争を想定し、中長期的な視点で成長しようとする多角化戦略が、合理的な経営判断として注目を浴びるようになってきました。

■多角化経営の5つのメリット
現在、コロナの影響により深刻な打撃を受けた会社では、有事に備えたリスクヘッジを考える必要性に迫られています。そのような際に、長期的な事業の成長を考える時、本業以外に「多角化経営」という選択肢があります。

1、事業のリスクを分散できる
技術革新、企業環境の変化、緊急事態による事業の継続危機など、ビジネスは、いつ起きるかわからないリスクと隣り合わせです。

1つの事業に注力する場合、事業の根幹を揺るがす変化が起きると、会社もろとも倒れてしまうリスクが高まります。

経営の多角化によって事業の柱を複数持つことで、事業活動に柔軟性が生まれ、大きな変化が起きた時にも対応しやすくなります。

また、経営資源を複数の事業で共有・活用することで、個々の事業を別々の企業が行う場合に比べて、コストを抑えることができる可能性が高まるメリットもあります。

2、事業同士のシナジー効果を見込める
人材・技術・知識・経験など、企業にはさまざまな経営資源があります。既存の事業で培った経営資源を活かして事業を多角化していくことで、事業の間にさまざまな相乗効果が生まれやすくなります。

多角化することで、企業内のブランドや技術、ノウハウなどの経営資源を活用することが可能になります。これまで使われていなかったリソース(人材を含めて)を活用する機会にも繋がります。

新規事業により関連するビジネスや関連会社の働きが相互に促進されたりすることで、企業全体の活性化が期待できます。「範囲の経済」を得ることで、大幅なコスト削減につながるというわけです。

3、プロダクトライフサイクルに備える
企業は絶えず時代や消費者行動の変化にともなう収益の変動リスクにさらされています。一つの事業しか持たない単一的経営の場合、事業の収益が思うようにいかなかった場合、企業の経営が著しく悪化してしまいます。

多くの開発やサービスは「開発→導入→成長→成熟→衰退」のサイクルをたどります。

これをプロダクトライフサイクルと呼ばれています。一つのプロダクトやサービスが衰退のステージに来ていても、別の事業が成長したり、成熟していれば会社全体への打撃を抑えることができます。

経営の多角化によって、企業全体の売上高を安定的に維持しやすくなるのです。

4、単一事業はハイリスクハイリターン。
ベンチャー企業の中には、事業領域の選択と集中を実施したことにより成功しているニッチャー企業が沢山あります。ですが、事業領域をフォーカスすることは想像以上に難易度が高いです。

また、経営資源を集中する分野を間違えたことで、それ以上に失敗している企業も少なくありません。

得意分野の事業のみ行っていれば、ニッチャー企業として短期的に高収益を得る可能性が高まりますが、何十年も長期的に継続することは難しいといえます。

事業分野を特定して先鋭化させると、外部からの影響にも大きく左右されるため、ハイリスクハイリターンの経営になる可能性が高まります。

5、社員のモチベーション・主体性を高めやすい。
経営の多角化は、組織運営の視点から見てもメリットがあります。主力事業を一つに絞ったピラミッド型の企業は、従業員の選択肢や、将来的なポストが限られます。

事業を複数展開していると、同じ会社内でも業務やキャリアパスの多様性が生まれ、従業員のモチベーションや主体性を高めやすくなります。

■経営の多角化の3つのデメリット
多角化経営にはデメリットもあります。

1、事業領域の選択と集中から外れる。
経営における「選択と集中」とは、自社の強みや領域を選び、そこに資金や人材などの経営資源を集中的に投入することで、業績アップや経営効率化をはかる経営手法を意味します。

複数の事業分野へ経営資源を分散している企業が、自社が競争優位性を獲得できそうな事業の見極めと選択を行い、経営資源を集中することによって競合差別化をはかる場合に用いられます。

2、経営資源の分散に繋がる。
リソースを一つの事業に集めることができないため、非効率的な経営となる場合があるのです。抱える事業の種類が増えれば増えるほど、スペシャリストが必要になります。

集中戦略のように、大量発注による原材料・経費の削減が見込みにくく、事業毎に性質の異なる経営資源を投入する必要があります。

多角化経営では、資本と労働力の分散が避けられず、単一的経営にはないコスト上昇のリスクを抱えなくてはなりません。

3、投資コストが掛かりリスクもある。
経営の多角化は、経営資源を分散させることになるため、短期的にはコストの上昇が避けられません。

短期的に複数の新規事業を立ち上げる戦略を取る場合は、開発や販売活動のため多大な投資が必要になります。

多角化戦略は、潤沢な資本金と経営資源があってこそ、高い収益が期待できます。そのため、資本力や経営資源が少ない中小企業にとっては不向きな経営戦略ともいえます。

■経営の多角化に取り組むにあたり注意すべき3つのポイント
多角化経営に乗り出す前に、まず既存事業の価値を十分に高めることができているかを掘り下げましょう。

1、新たな事業は必ずしも成功するとは限らずリスクもある。
企業は将来にわたって存続することが求められており、主力事業で収益を上げるとともに次の事業への投資も必要です。

選択と集中は、結果的に経営のスリム化やチャレンジを封印するものとして認識されています。

事業の失敗や収益の低下と、一見不採算事業に分類されることがあっても、企業を永続していくためには必要な投資であり、経営が好調な段階に実行しなくてはなりません。

2、既存事業の事業価値を高めきっているかどうか?
経営を多角化するには資金と投資が必要です。そのため、多角化経営に耐えうる経営資源・基盤があることが前提となります。

「既存事業での商品・サービスのアイデアは出尽くしたか」「既存事業の収益性や付加価値に改善の余地はないか」といった視点で事業の価値を見定めます。

主力事業の社会的な影響力やブランディングがしっかりと確立していれば、新規事業の成功率も上がりやすくなります。特に、大企業に比べて一度に大きな投資をしにくい中小企業の場合は、主力事業の価値が重要になってきます。

3、経営者が新規事業に注力できる組織になっているか?
経営の多角化に取り組むタイミングについて、既存事業が経営者不在でも回るくらい、運営が仕組み化されているかどうかも一つの指標になります。

事業分野を広げるためコスト増加や組織の拡大化により、マネジメントが難化するリスクも持ち合わせています。

既存の事業に不安がある状態で新規事業に取り組むとリソースが分散し、どちらの事業にとっても非効率な運営になってしまうリスクが高まります。

■まとめ
多角化経営をしていれば、仮に一つの事業の業績が深刻化しても、収益の変動を低く抑えることが可能になります。

国内の需要が狭まる一方で、労働人口の減少にも歯止めがかからない日本では、少なからぬ企業が経営多角化を生き残りをかけるための重要な戦略として位置付けられています。

現在の世界情勢、経済状況下では、一つの事業に注力する経営手法は大きなリスクを抱えることになります。とはいえ一つの事業に集中することで成功する企業も少なくありません。

時代の流れと自社の環境や条件を見極めつつ、単一化か多角化か、適切な経営判断をすることをお勧めします。

■最後に
日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINSlでは、一般的な求人サイトや従来の顧問紹介会社とは異なる立ち位置でビジネスの課題から、顧問へ依頼したいプロジェクトの要件定義を徹底しています。

そのため、一般的な求人サイトとは異なり、人を紹介して終わりのスタンスではなく、顧問のエージェントとして機能しており、事業課題を解決に導くまでをゴールとして帆走しています。

「顧問報酬100%」で「中間マージンの搾取は行わない」ことを事業ポリシーに掲げ、顧問のアサインから実行支援までを手厚くサポートしています。

基本的にクライアント企業の成功が当社のミッションになるため、人数毎の課金が行う合わない「サブスクモデル」でサービス提供を行っています。

顧問のサブスクモデルを提供しているKENJINSなら、販路拡大に欠かせない人脈を活用した営業支援を問わず、経営戦略の助言を含めプロジェクトに応じて外部のエキスパートを定額で何人でもアサインすることが可能です。

無料お試しもできるため大事な局面でノンリスクで顧問チームを活用頂けます。

【人数無制限】顧問のサブスクと言えば、業界最安値のKENJINS
https://kenjins.jp/lp/subscription/

本田季伸のプロフィール

Avatar photo 連続起業家/著者/人脈コネクター/「顧問のチカラ」アンバサダー/プライドワークス株式会社 代表取締役社長。 2013年に日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」を開設。プラットフォームを武器に顧問紹介業界で横行している顧問料のピンハネの撲滅を推進。「顧問報酬100%」「顧問料の中間マージン無し」をスローガンに、顧問紹介業界に創造的破壊を起こし、「人数無制限型」や「成果報酬型」で、「プロ顧問」紹介サービスを提供。特に「営業顧問」の太い人脈を借りた大手企業の役員クラスとの「トップダウン営業」に定評がある。

経営者・採用担当者の皆様へ 日本最大級の顧問契約マッチングサイトのKENJINSでは、年収700万年収1500万クラスのハイクラス人材を、正社員採用よりも低価格で活用可能です。顧問のチカラで圧倒的な成果をコミットします。

この記事にコメントする


この記事の関連記事

汗をかいて働く前に、良く考えることを怠っていませんか?

本日の「賢人たちに学ぶ 道をひらく言葉」を贈ります。 「考えるということは、あらゆる作業のなかで一番の重労働なのですが、そこを省いてしまう人が多い。そこを楽しようとしても、何も手に入らないのです。」 <マイケル・ブルームバーグ>アメリカ合衆国の実業家、政治家 大きな富を生み...[続きを読む]

小さなことでも感謝の気持ちを声に出して伝えていますか?

本日の「賢人たちに学ぶ 道をひらく言葉」を贈ります。 「深い思いやりから出る感謝の言葉をふりまきながら日々を過ごす。これが、友をつくり、人を動かす妙諦である。」 アメリカ合衆国の実業家、作家<デール・カーネギー> 人に何かをして貰ったら、どんなに小さなことであれ感謝し、「あ...[続きを読む]

バーンレートの高騰を抑え、キャッシュフロー経営をしてますか?

本日の「賢人たちに学ぶ 道をひらく言葉」を贈ります。 「規模の大小にかかわらず、何か新たな事業を興す場合には、予想した以上に時間と金がかかることを絶対に頭に叩き込んで置かなければならない。 事業計画が大掛かりなものであれば、たとえ売り上げが急増していても、一時的に利益以上の額...[続きを読む]

ビジネスの断捨離を行い本業に集中し高見を目指してますか?

本日の「賢人たちに学ぶ 道をひらく言葉」を贈ります。 「やることを決めることは簡単だ。難しいのは、やらないことを決めることだ。」 <マイケル・デル>(PC製造のデル創業者) リソースが限られたスタートアップの事業立ち上げで重要なことは、多角的な経営を目指すのでは無く、ビジネ...[続きを読む]

どんな困難が待ち受けていても挑戦する理由は何ですか?

本日の「賢人たちに学ぶ 道をひらく言葉」を贈ります。 「われわれが進もうとしている道が正しいかどうかを、 神は前もって教えてくれない。」 理論物理学者<アインシュタイン> 新しいビジネスを開始する時は、ビジョンや戦略課題の目標達成に向けて、「何を」「どこで」「いつまでに」「...[続きを読む]