社内ベンチャーを立ち上げる意義としては、社内から事業アイデアを公募することで社内起業家を育成することが大きなミッションになります。
ですが、最初のアイデアを元にビジネスプランを作成しても、簡単に売れる商品やサービスになる革新的なテーマが出てくることはまず期待できません。
なぜなら、本気で商品や事業にしたいのであれば、ベンチャー企業の起業家と同様に起業家精神を携え、アイデアをブラッシュアップし「事業ピポッド」も厭わない覚悟が限界突破の鍵になるからです。
また、本業が上手く行っている大手企業であればある程、新商品や新サービスが本業とのカ二バリーゼーションが起こる可能性が否めません。だからと言って、全く違い分野で新たなビジネスへの挑戦しようとすると失敗する確率も高くなりがちです。
そこで、今回は、社内ベンチャーとはどのようなものか、社内ベンチャーのカ二バリーゼーションとは何なのか、成功するために競争環境も必要な訳について解説します。
■社内ベンチャーのカ二バリーゼーションとは?
社内ベンチャーのカ二バリーゼーションとは、企業内において本業に近い新規事業を立ち上げようとした際に、同じ企業内のプロダクトやサービスが売上の食い合いや顧客の奪い合いをしてしまう現象を指します。
例えば、ある商品でシェアを獲得しているにも関わらず、売れ筋商品と似たような新たな新商品を開発してしまうと同じフィールドの中でシェアの奪い合いになってしまいます。
その結果、同じ企業の中によく似たプロダクトがある場合、他社のライバル製品と競い合うのではなく、自社内の製品で潰し合いをしてしまい、経営資源を無駄にするという自体が起こる形になってしまいます。
本業のビジネスモデルが構築できている大手企業の場合には、事業が軌道に乗っている状態にあるため、全く違う分野での新規事業に乗り出すリスクを避ける傾向があります。
ですが、社内ベンチャーは、企業が確立している資金力やノウハウを用いることで、クロスセリング可能なプロダクトを増やす戦略と全くの新しいマーケットに参入し、これまでにない新規事業に乗り出すかのいずれかの選択肢になります。
つまり、カニバリゼーションを防ぎ、既存事業に依存しすぎない新規事業を立ち上げるためには、企業内の別組織として稼働する形態をとった方が成功確率が上がると言えます。
■新規事業のカニバリゼーションを避けるために
社内ベンチャーのカニバリゼーションを避けるためにはどのような方法が考えられます。
1、ターゲットの設定
カニバリゼーションは、新商品と既存商品のターゲットが重なってしまうからこそ起きる現象です。ですから、カニバリゼーションを防ぐには最初から新商品のターゲットを既存商品と違うところに設定してやれば良いのです。
何よりも大事なのは、同じ企業内の商品がターゲットとする顧客層をずらすことです。世の中にはさまざまな市場がありますが、その市場の中からどの市場セグメントに参入するかどうかを決めることを「ターゲティング」と言います。
ターゲティングを行うことで細分化したそれぞれの市場を事業性や成長性などからニーズを評価し、自社の商品・サービスを売り込むべきセグメントを絞ることが可能になります。
2、戦略的カニバリゼーションを歓迎
戦略的カニバリゼーションとは、企業の発展のためにわざと起こしたカニバリゼーションのことです。
戦略的カニバリゼーションを敢えて行う理由としては、自社の市場シェアをより盤石にするためや自社内での競争環境を促進し、さらなる発展を目指すといったことが挙げられます。
例えば、リアル店舗であれば、エリアマーケティングが可能なため、顧客分布をもとに実勢商圏を作成することで、店舗ごとに顧客のカニバリゼーションを確認できます。ですので、店舗同士の競争があることでモチバーションが高まり、売上アップに繋がると言えます。
3、企業内での意思疎通を行う
本来、新商品は既存の自社商品ではなく他社の商品と比較され、選んで貰うべきものです。カニバリゼーションが起きるような企業は、自社で何種類も製品を作ることができるような大きな企業です。
その場合、部署間の意思疎通がうまくいっていないことが往々にあります。そして、それがカニバリゼーションの原因となってしまうことが多いのです。ですから、自社商品ではなく他社の競合商品と比較した際の優位性を訴求するように社内で了承を得ることが重要です。
■社内ベンチャーの目的
既存ブランドとの差別化や社内ベンチャーのカ二バリーゼーションを防止することを目的に別会社を設立することもあります。
社内ベンチャーとは、既存の事業にはない新たなビジネスモデルを創出するために設置する独立した組織を指します。社内ベンチャーを起ち上げる目的としては、具体的には以下のようなものがあります。
1、新たな方向性で利益を生み出す
社内ベンチャーは、企業側にとって新たな収益が得られる可能性が高まります。長く既存事業を継続している企業では、現状維持のために利益の伸びしろが行き詰っているだけではなく、業務のマンネリが起こっていることが多いです。
このように現状維持を続けていると、市場に大きな変化が起きたときに流れに対応するのが難しく、経営が危ぶまれる事態にもなりかねません。そこで、新規事業を起ち上げ別ルートで利益を生み出す仕組みを作り、業績向上やリスクを回避することに役立てます。
主力事業とは全く異なる新たなジャンルの事業を生み出すことは、大きな利益をもたらす絶好のチャンスになると言えるでしょう。
2、企業の競争優位性を増やす
企業が、既存事業に注力し続けマンネリが起こると、業務が単調化し凝り固まってしまいがちです。この状態では、従業員のモチベーションも上がらず、成長が止まった社風をそのまま引きずってしまいます。
社内ベンチャーの存在は、新規事業によって従来の社風に新しい風を取り入れ、社内に活気を取り戻す効果も期待できます。
社内ベンチャーは企業から独立した組織ではあるものの、企業の枠組みからは外れない存在であるため、強固な本業のブランド力を盾に運営を進めていけます。さらには、社内ベンチャーの存在により、既存事業との相乗効果で双方の成長も見込めます。
3、新たな事業を創出できる人材が育つ
社内ベンチャーの担当者は、事業のアイデアを創出して具現化するための思考力、実行力が求められます。さらに、経営ノウハウを身に着けることも重要です。
社内ベンチャー制度を取り入れることで、前向きな企業文化の醸成にもつながります。起業精神をもつ優秀な人材や本業以外で発揮できる優れた才能を発掘できることは、近年の起業に求められているダイバーシティを推進していくことにもなるでしょう。
このような経験により、既存では得られなかった経験やスキルを積めるため、急激に成長を遂げ優秀な人材が育つ要素になりえます。
■社内ベンチャーを成功させる7つのポイント
1、従業員が参加しやすい環境を作る。
企業側の姿勢として、従業員が積極的に社内ベンチャーに参加できる環境を作ることは課題です。数値以外の目的として、社内の人材育成や失敗に寛容で挑戦できる企業文化の醸成施策の一環 として行われるケースも少なくありません。
そのためには、新規事業への後押しをする意向を示し、協力体制をしっかり構築しなければなりません。また、万が一の事態が起きた場合に備え、担当メンバーへのアフターサポートの体制を整えるなどの施策が求められます。
2、自社の意思決定を素早く行う。
前述のとおり、社外のベンチャー企業やスタートアップと競合する時には、柔軟かつ迅速な意思決定が必要です。
高いマネジメント力が求められる社内ベンチャーの経験により、既存事業では得られないマネジメントスキルの非連続的成長も期待できます。
企業の管理下に置かれる社内ベンチャーにおいては、経営者や上層部の介入はできるだけ少なくし、意思決定や人員配置などの権限は担当者に一任することが得策です。
3、自社リソースの活用を有効に行う。
社内ベンチャーは、既存会社の実績や信用情報を活用できるため、資金や取引先の開拓など一般的なスタートアップ企業にとって難しい点がスムーズに行えます。
そのため、企業は、社内ベンチャーに対して自社の資金やノウハウなどのリソースを積極的に提供し、社内ベンチャーの事業に有効活用させる仕組みを確立させなければなりません。
リスクを恐れてリソースの提供を惜しんでいては、新たな事業の成長を効率的に後押しすることが難しくなります。
4、自社内の既存事業と切り離す。
事業アイデアは宝玉混合であり、より見込みのある事業を立ち上げるためには、複数のアイデアを集めて判断することが必要です。
社内ベンチャーは、あくまで企業内の別組織であり、自社内の既存事業とのつながりを重視しすぎると新規事業への可能性が狭められる危険性もあります。
既存事業との兼ね合いを考えすぎるとアイデアの幅が狭まり、フラットな判断が難しくなります。企業は、既存事業と社内ベンチャーの癒着をできるだけ避け、別の競合組織として双方が成長し合う関係を作り出すのが良いでしょう。
5、ひとつのチームで検証を行う。
スピード感を持って事業を進めるためには、本社への報告義務や干渉は極力減らし、人事権や予算配分など事業判断は、できる限り担当者に任せることが重要です。
そのため、社内ベンチャーの担当メンバーをひとつのチームと考え、あくまでチーム内で新規事業における戦略立案と検証、問題点の抽出などを繰り返し行う体制を整えると良いでしょう。
様々な検証を行い、試行錯誤を一緒に経験することは、チーム内の結束を固めるだけではなく、人材のさらなる成長にもつながります。
6、社内ベンチャー内の仕組みを独立させる。
社内ベンチャーは、既存事業に比べると比較的短期間で成果を求められます 。これに対応して、担当者の意思決定スピードも重視しなければなりません。
企業内の組織であるとはいえ、社内ベンチャーはひとつの企業です。そのため、経営の指針を決定する役員制度や経理部門など、会社組織としての仕組みは独立させておくべきです。
このような、会社運営にかかる重要な位置を大元の企業に依存すると、事業のスピード感が失われるだけではなく、各事務処理も混乱をきたす可能性があります。
7、ベンチャー企業同様ビジョンとモチベーションを持つ
新規事業を行うにあたっては、具体的かつ明確なビジョンを打ち立てることが必須です。社員にとって挑戦しやすい環境を企業側が先に提供することで、社員にとっても挑戦しやすい環境が作られていきます。
担当メンバーだけで新たな道を切り開いて事業展開するためには、事業の目標となるビジョンを明確にしなければ迷走してしまいます。これは、社外のスタートアップやベンチャー企業がモチベーションを保つために実践している過程です。
そのため、社内ベンチャーも競合他社と同等のモチベーションと情熱を持つ必要があります。
■社内ベンチャーを立ち上げる3つの方法
1、経営者主導で行う
新規事業の展開について、企業の経営者から提案しトップダウンで主導を行う形になります。
また、経営者から命じられた「新規事業開発プロジェクト」などの組織が主導するケースが多く見られます。テーマはトップから与えられ、組織のメンバーはそのテーマに沿ったビジネスモデルの構築を行います。
このケースでは、新規事業のミッションや目標について経営者が決定し、社内ベンチャーを担当するメンバーは経営者が提示したミッションなどの実現に向けて動きます。
ただし、経営者の意図と市場の動きにずれが生じる可能性もあり、経営者と社内ベンチャーの間では綿密にコミュニケーションを取ることが求められます。
2、従業員からアイデアを募る
社内ベンチャーの立ち上げにあたり、ボトムアップ型で従業員からアイデアを募って実行に移す形になります。
従業員から集まったアイデアやミッションの中で、実現可能なものや事業として成功できる可能性があるものを経営者が選出し、実際に社内ベンチャーとして実行します。
最近では「社内ベンチャー制度」を作り、事業のテーマを社内公募する会社も増えています。この形態であれば、実際の市場や現場の状況に即した事業の創出ができ、経営者の同意を得られれば比較的柔軟な事業展開が期待できます。
3、外部からアイデアを募る
全て自分でやろうとせず、社内外の人を上手く使う事が重要です。社内ベンチャーの強みは、企業から資金・人材などのサポートを受けられる事。人付き合いを大切にし、協調性を保ちながら社内外との人脈を広げ、周りに「味方」を増やしていきましょう。
社内ベンチャーの利点は、大元の企業が後ろ盾になっていることです。そのため、企業から独立した組織として運営するとしても、有事には企業のサポートを積極的に受けて問題はありません。
さらに、社外の取引き先などにも人脈を広げておけば、多くの人々の支えを受けながら事業を成功に導く道が開けます。
■まとめ
企業は魅力的な新製品を発売し、少しでも売上を伸ばそうとするものです。カニバリゼーションは、自社内で同じターゲットに向けた商品開発を行うことによって生じる共食いという現象です。
カニバリゼーションが生じないように、自社内での意思疎通が欠かせません。カニバリゼーションが生じる危険性は無いか、まずは自社の商品、ブランドのターゲットを見直してみてはいかがでしょうか。
この企業努力が健全な競争につながれば、経済の成長や発展が期待できるのですが、時には自社の事業や商品同士が顧客を奪い合ってしまうこともあります。
カニバリゼーションは、企業にとって諸刃の剣になる可能性があるため、マイナスに捉えられがちですが、戦略的に社内競争を作り上げることができれば、安定企業にとってもチャレンジを生み出す強力な武器にもなりえます。
大規模な企業では多額の利益を出し資金を増やすものの、資金の有益な活用方法が見いだせず持て余している場合もあります。そのような際には、社内ベンチャーを起ち上げて新会社に投資することで、新たな資金の活用法が開けてきます。
さらに、新規事業が成功すれば大きなリターンを得られ、企業の経済状況に潤いをもたらすでしょう。
■最後に
日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」では、社内ベンチャーの立ち上げには新規事業開発に精通した外部のプロ人材として「顧問のチカラ」が必要だと考えています。
顧問の活躍の場は作戦立案のサポートに留まらず、社内での新規事業の企画や営業支援まで幅広く広がっていきます。
顧問のサブスクモデルを提供しているKENJINSなら、人脈を活用した営業支援を問わず、社内ベンチャーの立ち上げや新規事業の開発の戦略的なアドバイスと実行サポートが可能です。
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