ピーターの法則とは?ピーターの法則の無能化のメカニズムとは?

投稿日: 作成者: KENJINS運営会社社長 カテゴリー: 働き方改革   パーマリンク

優秀なビジネスマンであれば、どうしてこの人が上司なのか?と感じる人が会社にもいるかも知れません。

このような、無能なリーダーが生まれる組織構造上の原因を指摘したのが「ピーターの法則」です。無能な上司の誕生は、どの会社でも回避したいものです。

組織がピーターの法則に陥ってしまう原因を考えてみることも打開際に繋がります。

そこで今回、ピーターの法則の詳しい内容や、無能化のメカニズム、回避するための対策について解説します。

「人の強みよりも弱みに目がいく者をマネジメントの地位につけてはならない。人のできることに目の向かない者は組織の精神を損なう。」

<ピーター・ドラッカー>

■ピーターの法則とは?
ピーターの法則とは、企業などの組織を構成する最小単位である各個人の成長によって、組織の成長は達成されていくと言う考えに基づき提唱されている法則です。

ピーターの法則の中では、適正な評価をせずに社員を昇進させ、その社員が自己成長を止めてしまうと、組織全体が無能化していくと考えられています。

ピーターの法則は、1969年に南カリフォルニア大学の教育学者・ローレンス・J・ピーターが、レイモンド・ハルと共同で発表した著作『ピーターの法則―〈創造的〉無能のすすめ―』の中で提唱したものです。

「掃除機が吸引機として使われてしまうように、たとえその物の有効範囲を超えていたとしても、人は以前有効だったものを他の場所でも使いたくなってしまう」という現象を指摘したものです。

この提唱は物を対象としていますが、ピーター博士はこの現象を人間の組織にも適用できると考えました。ある有効な手段でも、次々と難しい問題に当てはめていくと、最後はうまくいかなくなると言う法則があります。

彼は、これを組織にあてはめて考え、「組織集団の成長が止まり無能化・機能不全に至るメカニズム」を解析しました。

そこで提唱されたのが「ある仕事で成果をあげた人物が、その仕事を評価されて昇進しても、その地位において有能とは限らないため、やがて無能な上司になる」という状況がピーターの法則に骨子になります。

■ピーターの法則の3つの主張
ピーターの法則は、従業員の昇進や昇進後におけるパフォーマンスについて述べています。

1、組織の中で、人は自身の能力の限界まで昇進する。
能力主義に基づく階層社会において、人は個人の能力の限りに昇進する。そのために、最初は有能な部下は、最終的に使えない中間管理職になる。

2、昇進した人材は高いレベルの仕事に従事することで、能力を無能化していく。
時間の経過とともに、人は全て昇進していく。使えない平構社員は、そのままの地位から変動しない。

なお、有能な平社員は使えない中間管理職に落ち着く。よって、それぞれの階層のあらゆるポストは、使えない人間によって網羅されてしまう。

3、最終的には、組織全体が無能な人材集団と化してしまう。
その組織の仕事は、未だ昇進の余地を残す者が成し遂げます。階層社会では、基本的に人は昇進を繰り返します。

ただ、そのような昇進の結果、その人がいるべきポジションに落ち着くわけではないというのがピーターの法則の主張です。

実際に企業活動においても、昇進後に期待されているようなパフォーマンスが出ず、組織全体が沈静化している状況は枚挙に暇がありません。ですので、この法則の内容や対応策を理解することはとても重要になると言えます。

■ピーターの法則の3つの要素
ピーターの法則の内容をまとめると、以下の3つの特徴があります。

1、優秀な人でも、昇進し続けるうちに能力の限界に達し、いつしか無能になる。
何かの仕事で成果を上げた人でも、昇進先の地位でその能力が有効とは限りません。

どんなに優秀な人でも、昇進を続けるといつしかその人の能力の限界点に達してしまい、自己成長が止まって無能な管理職になってしまうというのです。

2、無能な人は今の地位にとどまり、組織が無能な人ばかりになる。
優秀な人が昇進していく一方で、すでに限界を迎えている無能な人は現在の地位に留まり続けます。

前述の通り、優秀な人でもどこかの地位で限界点を迎えて無能になるとすると、最終的にはどの階層も無能な人で埋め尽くされてしまうことになります。

3、「まだ限界に達していない人」によって組織は機能する。
ピーターの法則では、限界点に達した無能な人は、そのポストに落ち着いてしまい、自己成長を止めてしまうとされています。

まだ昇進の余地がある人がステップアップに向けて成長しようとすることで、組織が前進するとしています。

■出世した人が無能化するプロセス
ピーターの法則の中では、「前の地位で能力を発揮していたから」ということが理由で社員を昇進させてしまいます。

そうすると、その人物がどのような特徴を持っているのか、どうして成果をあげることができたのかという検証がなされず、組織内の上位ポストに押し上げられてしまうのです。

現職のポストがその人に最も適していたとしても、「その仕事で成果をあげているから、上位ポストに昇進」とすることで、無能化していきます。

これには、人事評価制度の問題も大きく関わってきます。社員を適正なポストで起用するためには、管理職として必要な能力を数値化し、評価者の主観に頼らない、明確な評価基準が必要です。

また、昇進の制度はあっても降格の制度ははっきりしていない会社も多いのではないでしょうか。

降格の条件がはっきりしていないと、一度昇格して無能な上司となっても、その地位にとどまり続けることになります。そうすると、ピーターの指摘の通り、組織にますます無能な人が増えてしまうのです。

■ピーターの法則が成立する条件
組織でピーターの法則が生じてしまう原因は様々ですが、主に以下の3つの条件がそろったときに起こりやすいとされています。

1、人事評価制度が適切に機能していないことです。
「役職に求められる能力要件」が定義されてないが故に、不適切な昇進が生じてしまう事です。

役職別に「部長に必要な保有能力」「課長に必要なマインド内容」「役職に上がる際の目安となる実績」などが定義されていなければ、能力不足の人材を昇進させるリスクが高まるでしょう。

定量的・定数的な評価制度が確立していない企業では、どうしても評価が属人化してしまいがちです。

その結果、目立ちやすいポジションにいる社員や、普段から上司と仲のいい社員などが評価されやすく、能力によらずに昇進してしまいます。

2、一度昇進した社員は、無能に陥ってもそのポストに落ち着いてしまうことです。
日本の企業では降格の要件が曖昧なことが多く、一度昇進すればめったに降格することはありません。

本人がその地位の環境に満足を感じてしまうと、新たなスキルを身に付けたり、業務の改革をはかるといった努力をしなくなり、無能化してしまいます。

ですので、昇格した後に「降格」をする制度運用が出来ておらず、一度、昇格した人が能力限界を迎えて無能化した場合、「人材を降格・排除するシステム」が必要になります。

降格により自身が能力発揮出来る役割に戻れば、その人間は有能な状態に戻ります。だからこそ、「降格がない」という状況は無能化の悪循環を加速させます。その場合は「無能な上司」はいつまでも現在の立場に居座り、組織に悪影響を及ぼします。

3、日本では無能な上司が誕生しやすいのか?
日本の人事評価では、現場から地道に経験を積んで出世してきた、いわゆる「叩き上げ」タイプが評価される傾向にあります。

もちろん現場を知っていることは上司としても重要な要素のひとつですが、現場で成果を上げた人が管理者として優秀とは限りません。

また、若い頃から厳しい労働環境で苦労をしてきた人が上司になると、部下にも辛い経験をさせたり、根性論で乗り切ろうとする場合も多く見受けられます。

このような理由から、叩き上げタイプの社員を評価する旧来型の日本的な人事評価制度のもとでは、ピーターの法則に陥りやすいといわれています。

一方、欧米諸国では、MBAの資格を有しているマネジメントの専門知識や技能を身に付けた人物を管理者や経営者に起用するのが主流です。現場とマネジメントで人材を完全に切り分けているため、ピーターの法則が生じにくいとされています。

■ピーターの法則から回避するための対策
ピーターの法則を回避するためには様々な対策が考えられますが、無能な管理者が多いと感じている企業が真っ先に取り組むべき方法として、以下の3つがあげられます。

1、人事評価の基準を明確にする。
最も急務となるのが、定数的・定量的な人事評価基準を確立することです。

ピーターの法則が生じる一番の原因は、その人の特性を見極めず、その地位に値する能力のない人を昇格させてしまうことです。

年功序列的な昇進制度を見直し、社員一人一人の特性を見極められる評価基準を整備していくことで、無能化の回避につながります。ただ単に努力する姿勢を評価して上位ポストに昇進させることが、社員にとって幸せとは限りません。

社員の特性を見極め、それを活かすためのポストに配置できるよう、制度を設計するべきでしょう。

2、「降格」の基準を作る。
社員が適性のないポストで仕事を続けることは、会社にとっての不利益になるだけでなく、社員本人にとってもストレスがたまるものです。

本人の能力を活かしきれないポストで無理に仕事を続けさせるよりも、思い切って降格させたり、別のポストに移してしまったほうが、本人もやりがいを持って仕事にあたることができます。

長く勤続すれば順番で昇進していくのが当然だった従来型の人事制度では、このような降格や異動の基準が明確でないことが多々あります。

降格や異動の制度を見直すことも、適正な配置を行う上で大切です。

3、成長の機会を与える。
現場から叩き上げで昇格してきた社員は、現場のことはわかっていても、管理能力が身に付いていないことも多いものです。

昇格させた後のことは本人任せにするのではなく、管理者として必要なスキルを身に付ける機会を企業が用意することも効果的です。

社内で研修会を開いたり、資格取得を会社で支援するなどの仕組みを構築するといいでしょう。

あわせて、成長意欲があり、進んで自己研鑽に励む社員を会社が評価する体制作りも必要です

■正しい人事評価制度が有能な上司を育む
ピーターの法則を回避し、無能な管理職を生み出さないために最も効果的と言えるのが、人事評価制度を見直して、適正な評価基準を策定することです。

従来の年功序列的な制度に頼るのではなく、定量的・定数的な評価基準を設けることが、管理者にふさわしい有能な人材の育成・発掘に繋がります。とはいえ、人事制度を一から構築・改革することは、十分な人的リソースと経験がないと、なかなか難しいものです。

そのような場合、定量的・定数的な評価や AIによる分析が自動で行えるクラウドシステムの導入や、外部の人事コンサルタントに評価制度の構築を依頼することも効果的です。

■まとめ
ピーターの法則とは「活躍が認められて昇進したものの、次の役割では期待された活躍が出来ていない」状況を説明した内容です。

ピーターの法則は、企業を始めとする組織集団における法則です。ピーターの法則の主張は以下になります。

・組織の中で、人は自身の能力の限界まで昇進する。
・昇進した人材は高いレベルの仕事に従事することで、能力を無能化していく。
・最終的には、組織全体が無能な人材集団と化してしまう。

このような状況をそのままにしておくと、本人や周囲の人材のエンゲージメント低下、最悪の場合は企業の競争力低下・人材の流出などの結果に繋がってしまいます。

役割定義が定まった後には、「役職ごとのスキルアップ」の機会を提供することが大切です。仕事内容に対する教育制度を整えることで、試行錯誤をして成果が出ないという事態を防ぐことが出来るでしょう。

また、人材が無能化に至る背景には昇進意欲の低下も一因になりえます。「学習性無力感」と言い、活躍できていない状態が継続すると、人は新たな目標への挑戦を避ける傾向にあります。

そのような人材の意欲を高め、有能化への一歩を踏み出すためにも企業側が能力向上や課題解決の支援をする機会を提供し、キャリアの停滞期を短縮することが大切です。

ピーターの法則は、もちろんあらゆる組織に当てはまる訳ではありませんが、頼りない中間管理職が量産されている企業においては、一考の価値はあるかと考えられます。

■最後に
所属先の会社の経営方針や働く環境が良くない影響により、モチベーションが低下している人もいます。

組織を離れフリーランスとして独立するとやる気を出してプロ人材としての能力を発揮し、大活躍している人も実際に沢山います。

モチベーションの低下を感じたら仕事環境を整えるなどの工夫をし、常にベストな状態で仕事と向き合えるよう心がけましょう。

日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」は、フリーランスの顧問や複数の会社のCXOの肩書を持つパラレルワーカーだけでなく、副業のプロ人材と企業とを結ぶプロ人材のエージェント会社になります。

従来の顧問紹介の会社とは異なり、プラットフォームを武器に業界No.1のリーズナブルなコストで、サービス運営元である当社の存在していることで、直接契約とは異なるメリットをクライアント企業とプロ人材に提供しています。

顧問報酬のピンハネが横行している顧問紹介の業界において、事業コンセプトとして「顧問報酬100%」をコミットし、「中間マージン無し」で魅力なプロジェクトをご案内しています。

サイト上には、公開しない未公開案件が増えています。フリーランスのプロ顧問として、1つの会社に縛られることなく、様々なクライアント企業の課題解決プロジェクトの実行支援を推進する「ビジネスパートナー」になりませんか?

【顧問報酬100%】顧問契約に特化したプロ人材のエージェント会社
https://kenjins.jp/lp/prokomon/

本田季伸のプロフィール

Avatar photo 連続起業家/著者/人脈コネクター/「顧問のチカラ」アンバサダー/プライドワークス株式会社 代表取締役社長。 2013年に日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」を開設。プラットフォームを武器に顧問紹介業界で横行している顧問料のピンハネの撲滅を推進。「顧問報酬100%」「顧問料の中間マージン無し」をスローガンに、顧問紹介業界に創造的破壊を起こし、「人数無制限型」や「成果報酬型」で、「プロ顧問」紹介サービスを提供。特に「営業顧問」の太い人脈を借りた大手企業の役員クラスとの「トップダウン営業」に定評がある。

経営者・採用担当者の皆様へ 日本最大級の顧問契約マッチングサイトのKENJINSでは、年収700万年収1500万クラスのハイクラス人材を、正社員採用よりも低価格で活用可能です。顧問のチカラで圧倒的な成果をコミットします。

この記事にコメントする


この記事の関連記事

顧問料の源泉徴収とは?顧問料からの源泉徴収は必要なのか?

中小企業が事業を行う上で、顧問やコンサルタントと顧問契約を行った際には、顧問料の中から源泉徴収を差し引いて報酬を支払いますが、源泉徴収を行わずに報酬を支払うこともあります。 身近なところでは、税理士や公認会計士、弁護士、弁理士、社労士など、国家資格を保有する士業と顧問契約を行い...[続きを読む]

ニューノーマルとは?DXが加速したニューノーマル時代の働き方

コロナ以降、規模の大小にかかわらず多くの企業でリモートワークが浸透し在宅勤務が一般的となりました。毎朝、満員電車に乗って同じ時間にオフィスに出社するのが当たり前、という従来の常識が崩れ「ニューノーマル時代」が急速に到来しました。 ビジネスシーンの中で、「ニューノーマル」における...[続きを読む]

ブルーオーシャンとは?顧問のチカラが新規事業の武器になる訳

現在、最新の技術によるデジタル化、顧客ニーズの多様化など急激なビジネス環境の変化に伴い、巷にある多くの製品やサービスの「プロダクトライフサイクル」が短縮化する傾向にあります。 プロダクトライフサイクルでは、製品の売上と利益の変遷として、導入期、成長期、成熟期、飽和期、衰退期の5...[続きを読む]

請負とは?請負と委託の違い・請負契約のメリット・デメリット

近年、人手不足を背景に、システム開発など高度なスキルが必要な業務を外部にアウトソーシングを進める企業も増えてきており、「請負」も取り組みの一つとなっています。 ビジネスの形態によって請負と委託を適切に判断しなければ、メリットが少なく、デメリットばかりが多くなり、望んでいた成果が...[続きを読む]

価値観とは?社長の価値観がビジョンや意志決定に影響を与える訳

多様化が進んでいる現代社会では、「価値観」は人それぞれであることを前提とし、その価値観の違いを理解し認める、「ダイバーシティ」の動きが多く見られます。 会社としてあらゆる意思決定する際にも、会社の価値観が大きく関係してきます。 なぜなら、重要な物事を決定する際には、経営者が会...[続きを読む]