範囲の経済とは?範囲の不経済との違いとシナジー効果の重要性

投稿日: 作成者: KENJINS運営会社社長 カテゴリー: プロ活用方法   パーマリンク

高度成長期は事業の多角化を進める企業が増加したものの、バブル崩壊後は事業の再構築を余儀なくされ、多角化から選択と集中に舵を切る企業が増えました。

経営における多角化とは、自社が取り組む事業を広げ、収益の柱を2本、3本と増やしていくことを指します。

新規事業でイノベーションを起こすためには、ヒト・モノ・カネ・情報が欠かせません。

そのような際に、「範囲の経済」を意識した選択と集中を推進することによって、研究・商品開発に時間や十分なコストが投入できるようになれば、これまでになかった革新的な商品やサービスが誕生する可能性があります。

そこで今回は、範囲の経済とは何か、範囲の不経済との違いとシナジー効果の重要性について解説します。

■範囲の経済とは?
範囲の経済とは、同一企業で異なる複数の事業間で共有可能な経営資源を一元化することで、個別事業で得られる以上の「コストメリット」を得ることを指します。

範囲の経済は、英語で「Economies of scope」と表記され、日本語では「組み合わせの経済」の意味を持ちます。

範囲の経済においては複数の事業で同じ経営資源を共有することになるので、同じコストであったとしても、一つあたりの事業のコスト負担を減らすことができます。

同一企業が異なる複数の事業を経営することで、別々の企業が独立して行うよりもコスト上、ビジネスが有利に働く形になります。

新規事業の立ち上げでは、「範囲の経済」を意識しながらプロジェクトを推進すると、『異なる事業のシナジー効果』や『多様化する顧客ニーズへの対応』など、さまざまな利点があります。

■範囲の経済によるシナジー効果
「範囲の経済」は、組み合わせによる相乗効果を指す「シナジー効果」の経済性の面を指した言葉になります。

範囲の経済が生じる主な理由は、固定費の分散にあります。

例えば、関連多角化をした場合、共通のプラットフォームや生産設備を利用することでコスト上の優位性を築くことができます。

このように複数の事業で経営資源を共有化することで、経済性を高める効果がある状態を「範囲の経済が効く」と言います。

また、物理的な資源の共有だけなく、無形資産の活用によるコスト優位性も考えられます。

たとえば非関連多角化の場合でも、「顧客情報」や蓄積された「購買情報」を共有することで、新たな情報投資をするよりもコスト上の優位性を築くことができます。

■範囲の経済と規模の経済の違い
製造メーカーには、既存の工場ライン、研究開発、構築済みの販売チャネル網といったものが存在しています。

毎日、モノ作りを行うメーカーの場合、商品を製造するには、機械を稼働させる必要がありますが、一定の生産ラインを動かすには、商品がどれだけ売れようが日々、同じだけ固定的にコストを発生します。

「規模の経済」は、このような際に生産個数を増加させることにより、1個あたりにかかる固定コストを低減させようとするものです。

つまり、規模の経済は、商品の「生産規模」を増加させることによって、1個あたりのコストを低減させることを指します。

それに対して、「範囲の経済」は、新しい商品ラインナップを加えることによって、1個にかかる固定コストを低減させようとする取り組みになります。

範囲の経済は、商品の「種類」を増加させることによって1個あたりのコストを低減させる、とも言い換えられます。

■範囲の経済と範囲の不経済の違い
範囲の経済を効率的に実現すると、短期間にビジネスが大きく成長できることが考えられます。

しかし、事業拡大をすればする程、コスト削減効果が期待出来る訳ではありません。

なぜなら、ビジネスを拡大すればする程、現在の経営資源では対応することが出来なくなるからです。

事業規模が大きくなると、現状の経営資源よりも、設備投資や人件費などがかさむ事が考えられます。このことを「範囲の不経済」と呼びます。

優れたリーダーであれば、範囲の経済を実現することは、規模の経済よりも圧倒的に難易度が高いことに気付きます。範囲の経済には、「個別最適」の視野以上に「全体最適」の視野が求められるからです。

範囲の経済のメリットを最大化するためには、一つの事業だけでなく別の事業のことも同時に併せて考える「多角化の視点」が必要になります。

■範囲の経済による多角化のメリット
企業における多角化戦略とは、保有する資源を活かし、関連分野の新たな事業を展開する取り組みです。

イゴール・アンゾフ氏が提唱した「アンゾフの成長マトリックス」戦略のひとつであり、資源の有効活用や収益拡大など、さまざまなメリットが期待できます。

多角化戦略は、自社の経営資源を新たな事業分野に投下することで、企業全体の収益率や価値を向上させる方法です。

範囲の経済による多角化には、以下の4つの類型があります。

1.多角化戦略の種類には、既存の顧客に向けて新製品を投入する「水平型」
2.バリューチェーンの川上から川下または逆方向へと事業領域を広げる「垂直型」
3.既存の経営資源やノウハウを活かして作った新商品を新しい顧客や市場に対して投入する「集中型」
4.まったくの新規分野へ進出する「集成型」

新事業の内容については、既存事業との「シナジー効果」を狙うことが重要です。

既存のノウハウを活かせる事業であれば、たとえ新規参入する業界であっても他社にはない市場競争力を得られる可能性があります。

範囲の経済でレバレッジを掛かる状態で、新規事業を立ち上げることができれば、新たに得られたノウハウを既存事業に活かすも実現します。

■範囲の経済によるシナジー効果
範囲の経済によるシナジー効果とは、ビジネスの相乗効果のことを指します。

シナジーとは、販売・設備・技術といった機能を活用したり、複数の企業が提携したり、2つ以上の部署が協力したりすることで、それぞれが単独で活動したとき以上の効果が生まれることを指します。

簡単にいえば、1+1が2より高くなるのが「シナジー効果を得られた」状態になります。

シナジー効果の前提は、両者がWIN-WINの関係になる時です。双方にとって有益なものでなければいけません。

シナジー効果は、複数で協力し合うことにより、単体で行うよりもいい効果が得られる状態で、いわゆる相乗効果を指します。

このような意味で使用される主なシーンは、普段別々の業務を行っている部署同士が協力し合って、1つの目的に向けた業務を行うときです。

さらに、異なる複数の企業が1つの事業を行うときなども同様の意味で使われます。

範囲の経済の実現には、既存の経営資源を活用した「Win-Win」の関係が成り立つことが前提となります。

そのため、社内でも片方だけに利益があるような場合には、範囲の経済によってシナジー効果が得られたとは言えません。

■範囲の経済によるシナジー例
範囲の経済による事業シナジーが実現すると、本業の強みを活かした新たな事業推進が可能になるため、非常に効果的です。

範囲の経済のメリットとしては、売上の増加、コスト削減、スケールメリットの増大、人材の獲得・活用、ノウハウの統合によって付加価値が高まるといったものがあります。

範囲の経済の組み合わせによるシナジーとしては、以下の例を挙げることができます。

・研究開発のシナジー
・生産(設備、原材料、技術、ノウハウ)のシナジー
・ノウハウ(生産過程以外でも)のシナジー
・物流(ロジスティクス)のシナジー
・販売(チャネル、ワンストップ販売、ブランド、広告、顧客情報)のシナジー
・その他の情報資源のシナジー
・多角的視点の獲得と、それによる創造性向上と意思決定精度の向上

範囲の経済における「シナジー」は、経営戦略において、事業や「経営資源」を結び付けることで生まれる相乗効果の意味で使われています。

経営資源とは、企業、設備、技術、人材、情報になります。

こうしたものを、上手に組み合わせることで、1つ1つが本来持っていた価値の合計よりも大きな価値が生まれるさまを指して使います。

「範囲の経済」により、1+1が2以上になるような相乗効果を、1つの会社の中で生み出すことも可能だと言えます。

■まとめ
単一事業だけで何十年も利益を上げ続ける企業は、そう多くはありません。市場の成長が鈍化すれば収益は頭打ちになるため、企業には市場の成長や時代の変化に合わせた柔軟な対応が求められます。

多角化戦略のメリットとして、リスクの分散が挙げられます。1つの事業にしか取り組んでいなければ、情勢の変化や収益の悪化に対して経営への影響が直接的にふりかかります。

「範囲の経済」でレバレッジを掛け、複数の事業を横展開していれば、短期間でいくつもの収益源を確保できるため、このようなリスクを回避できます。

「範囲の経済」を取り入れながら、類似市場や新たな市場へ参入した結果、組織全体で以前と同等の収益を確保できる程度であっても、経営が安定することで組織の土台を盤石にできます。

シナジー効果が期待できるのも、「範囲の経済」で得られるメリットです。

垂直型の多角化戦略のような、新たな技術やノウハウの開拓から既存事業とのシナジーが発生すれば、大幅な収益性の向上が期待できます。

経営者は、『今の自社にとって必要なのは多角化か、それとも選択と集中か』を見極める目と判断力を身に付ける必要があるでしょう。

企業の中には、選択と集中を実行しつつも、「範囲の経済」により、商品のラインナップを変えたり、顧客ターゲットを新たに開拓したりして、常に新たな戦略を取り入れていることで持続的な成長を遂げている会社も沢山あります。

「イノベーションは、研究開発費の額とは関係がない。Apple社がMacを開発したとき、米IBM社は少なくとも私たちの100倍の金額を研究開発に投じていた。

大事なのは金ではない。抱えている人材、いかに導いていくか、どれだけ目標を理解しているかが重要だ。」

<スティーブ・ジョブズ>

■最後に
範囲の経済における選択と集中とは、複数の事業から自社の中核となる事業を選び、そこに経営資源を集中させることを指します。

コア事業に絞り込みつつ、商品ラインナップを増やすことによって、経営効率が向上し、業績が拡大する可能性があります。

特定の事業に集中しながらも、既存事業とシナジー効果を生み出す新規事業を創出することができれば、収益の向上やイノベーションの創出、コストの削減などが期待できます。

自社に人材が不足している際にも「範囲の経済」を取り入れることで、オープンイノベーションにより外部人材の持つ「人的資産」となる知識、経験、ノウハウだけでなく、人脈や特定の業界のネットをワークを効率的に活用することが可能になります。

日本には、『何事も専門家に任せるのが一番よい』という意味の『餅は餅屋』という言葉がありますが、選択と集中の本質をうまく表しているといって良いでしょう。

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本田季伸のプロフィール

Avatar photo 連続起業家/著者/人脈コネクター/「顧問のチカラ」アンバサダー/プライドワークス株式会社 代表取締役社長。 2013年に日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」を開設。プラットフォームを武器に顧問紹介業界で横行している顧問料のピンハネの撲滅を推進。「顧問報酬100%」「顧問料の中間マージン無し」をスローガンに、顧問紹介業界に創造的破壊を起こし、「人数無制限型」や「成果報酬型」で、「プロ顧問」紹介サービスを提供。特に「営業顧問」の太い人脈を借りた大手企業の役員クラスとの「トップダウン営業」に定評がある。

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