人工知能が人類を超える日を意味するシンギュラリティが、ここのところ頻繁に議論のテーブルに上がるようになりました。
シンギュラリティが到来すると、「雇用形態がガラリと変わる」「あらゆることが自動化されモノの価値が下がる」「人類のあり方そのものに変化が起きる」といった変化が世の中にもたらされると予測されます。
現在はテクノロジーの分野に携わっていなくても、シンギュラリティと向き合うことはもはや避けては通れない時代になっています。
そこで今回は、シンギュラリティとは、シンギュラリティの意味・仕事の変化について解説します。
■シンギュラリティとは?
シンギュラリティとは、「人工知能(AI)の発達により、人間には予測できないスピードで社会が変化するようになる瞬間」を指す概念です。
シンギュラリティは、英語で「Technological Singularity」と表記だれます。日本語では、「技術的特異点」という意味があります。人工知能(AI)などの技術が、人間の知能を上回り、人類に代わって文明進歩の主役になる時点のことを指します。
人工知能の権威であるレイ・カーツワイル博士が、「2029年にAIが人間並みの知能を備え、2045年までには人間と人工知能の能力が逆転する」と提唱しました。
この問題は、「2045年問題」と呼ばれています。そもそも、「技術特異点」という概念を最初に広めたのは、数学者であり、SF作家でもある、米国のヴァーナー・ヴィンジ氏であると言われています。
ヴァーナー・ヴィンジ氏は、1993年に著作「The Coming Technological Singularity」において、「30年以内に技術的に人間を超える知能がつくられる」と表現しました。
■シンギュラリティが注目を浴びるようになった要因
シンギュラリティが注目を浴びるようになった要因としては、2010年代に起こった、深層学習、すなわちディープラーニングの飛躍的な発達、ビッグデータの集積、などによる「第3次人工知能ブーム」からになります。
日本でも野村総合研究所がイギリスの工学博士M.オズボーン他との共同研究の中で「10~20年後、国内の労働人口の約49%が人工知能やロボットで代替可能になる」という報告結果を発表しました。
これにより、雇用が一気に消失するのではないかとの危機感が生まれ、シンギュラリティに注目が集まったのです。
コンピューターや人工知能の進化は想定を超えており、神経の動きをシミュレーションしたニューロコンピューターでの脳内神経細胞の再現化などはすでに現実のものとなっています。
コンピューター内のニューロン数が人類の脳の数を超える、すなわち「機械が人類の脳を超える」状態になるのは時間の問題といわれているのです。
■シンギュラリティはいつ起こるのか?
レイ・カーツワイル博士は、「 少なくとも2045年までには人間と人工知能の能力が逆転するシンギュラリティ(技術的特異点)に到達する 」と提唱しており、これは「 2045年問題 」と呼ばれています。
永続的に人工知能が進化するということは、人工知能が自らを改良し、人工知能が人工知能を生み出すことを可能とし、事実上、人工知能の開発が人類最後の発明となることを意味しています。
人工知能が人類の能力を超えるには、パターン認識能力(文脈や状態が異なる同一の物や事象を同じものと認識する能力)や生物と機械のアルゴリズムの違いなどの課題があります。
しかし、近年の研究では、機械は生物のアルゴリズムを摸倣できることがわかっているため、生物と機械との唯一の差はニューラルネットワーク(ニューロン間のあらゆる相互接続)の数のみといわれるようになりました。
現時点で2045年問題が現実化するかどうかは不明ですが、シンギュラリティ(技術特異点)はいずれ起こり得る事態と考察できます。
人工知能が人間の脳を超えると、人間の生活環境は大きく変わり、これまで人間でしかできなかった多くのことが機械によって代替されると予想されています。
■シンギュラリティがもたらす変化
実際、イギリスにあるオックスフォード大学と野村総合研究所の共同研究の結果によると、「日本で働いている人のうち、およそ49%の仕事は10年から20年後には人工知能に取って代わる」といった予測があります。
人工知能の脅威に立ち向かうには人類が新しい価値観を提供する存在になる、常にスキルをアップデートしていく努力を重ねるといった人間側の高い意識が必要になるでしょう。
シンギュラリティの影響として考えられるのが、「モノの価値」や「仕事のあり方」の変化です。
■モノの価値の変化
人工知能(AI)の技術が進歩することで、あらゆることが自動化されます。生産や流通に人が関与しなくなれば、コストを抑えることができます。
結果、シンギュラリティの到来によって、激的なデフレが起きると考えられているようです。一部の仕事や職業が人工知能に置き換わることが予想されます。
例えば、
・工場の生産ラインの管理が人間から人工知能に取って代わる。
・人工知能による自動運転技術が、タクシードライバーやトラックドライバーに取って代わる。
・コンビニエンスストアやスーパーのレジ精算が、人工知能に取って代わる。
など、ビジネスの世界から身近な生活にまで人工知能の活用が進む可能性が高くなっているのです。
このような状況では、
・従来雇用されていた人間が、必要なくなってしまう。
・コスト面がクリアできれば、人間の仕事は人工知能に明け渡されてしまう。
といった可能性も出てくるでしょう。
・機械化にかかるコストと、それに人工知能が見合う働きをするかどうか?
・人間の作業のようにきめ細やかで臨機応変な対応が人工知能にできるかどうか?
といった議論もありますが、定型業務や単純労働といった部類の仕事は、人工知能の代替が早く進むと予想されているのです。
■仕事のあり方の変化
2014年、英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授らが発表した論文「雇用の未来—コンピューター化によって仕事は失われるのか」によると、20年後には今ある仕事の47%はなくなるという結論が導き出されています。
既に一部の産業では、人工知能(AI)を搭載したロボットが、人間の代わりに作業をしています。
これがシンギュラリティの到来により、人間よりも人工知能(AI)のほうが賢くなった場合、多くの仕事のあり方が変化し、「なくなる仕事」「残る仕事」が出てくるということ。
シンギュラリティの実現によって、人間が担ってきた多くの仕事が機械化・自動化されるといわれています。
その結果、 人類は生活のための労働から解放されることとなり、シンギュラリティ以前よりも豊かな生活や人生を手に入れることができる と考えられています。
これらの可能性は、シンギュラリティの提唱者であるカーツワイル博士を中心としたシンギュラリティに対する楽観論として認識されているものです。
機械化・自動化による労働力の削減は、少子高齢化や労働人口の減少のあおりを受ける日本社会においては非常に魅力的です。
また、社会問題化している長時間労働や過労死の解決策としても有効でしょう。
一方で、人間が担っているほとんどの仕事が機械に奪われ、失業率が悪化するという懸念や指摘があるのも事実です。
論文内で、将来「なくなる仕事」「残る仕事」がランキング形式で紹介されていますので、一部を抜粋してご紹介します。
■シンギュラリティ後になくなる仕事
以下の仕事は、すべて、10年後には90%以上の確率でなくなるとされた仕事です。
・テレマーケター(電話を使った販売員)
・貨物運送業者
・データ入力係
・スポーツの審判
・レストラン、ラウンジ、カフェ従業員
・レストラン料理人
・給与計算係
・一般的な事務員
・ネイリスト
・訪問販売、街の物売り
比較的単純な作業を行なうブルーカラーの仕事だけでなく、中には、専門的な知識・技術を必要とするホワイトカラーの仕事も含まれています。
例えば、「スポーツの審判」です。ワールドカップなど、既にビデオ判定が導入されているスポーツもありますが、様々な分野で徐々にAIの導入やロボット化が進んでいます。
■シンギュラリティ後も残る仕事
ホスピタリティ性の高い仕事や、高度な接客を必要とする仕事。芸術分野などクリエイティブな仕事は、シンギュラリティ後も残る可能性が高いと考えられています。
・レクリエーションセラピスト
・栄養士
・歯科医師
・探偵
・警察
・セールスエンジニア(技術営業)
・教師
・漫画家
・ミュージシャン
・ダンサー
複雑な人体に関わる「医療系」の仕事は、人工知能(AI)に取って代わられにくいようです。
■シンギュラリティによって新たに生み出される仕事
一方で、シンギュラリティによって新たに生み出される仕事も注目されています。
それが人工知能を搭載したロボットを教育・運用する仕事です。
今後、人工知能は自らをアップデートし、人間によるプログラミングを必要としないと考えられています。
とはいえ、人工知能に柔軟な考えを植え付け、人間に危害を加えることを防ぐ意味でも、人間が人工知能やロボットをチューニングする作業が必要になるでしょう。
そのため、シンギュラリティの到来前には、人工知能やロボットを適切に教育・運用する仕事が生まれるのではないかと予想されているのです。
■シンギュラリティの実現可能性
シンギュラリティの実現可能性を考えた場合、まず、シンギュラリティの提唱者たちが実現の要因として挙げている2つの法則として、「ムーアの法則」と「収穫加速の法則」を考える必要があります。
■ムーアの法則とは?
ムーアの法則とは、半導体のトランジスタ集積率が18か月で2倍になるという法則です。半導体のトランジスタ集積率は、簡単に言えばコンピュータの性能です。
18か月あれば、おおよそ倍の性能にできるということです。インテル創業者のひとり、ゴードン・ムーアの論文が元になっています。
この法則が有効であるならば、半導体の性能は指数関数的に向上し、近未来にコンピューターが人類を凌駕する存在に取って代わるという時代が必ずやってきます。
しかし、この法則の根拠が半導体の微細加工技術にあることからも分かるように、現実にはこれ以上、微細化・細分化できないレベルになれば、ムーアの法則は自然と崩れてしまうといわれているのです。
■ムーアの法則の影響
ひとつには「性能向上」があげられます。コンピューターにとって、トランジスタが2倍になることは、処理能力が2倍になることを意味しているからです。
もうひとつは「コスト」です。ムーアの法則は、「同じ面積の集積回路上に、2倍のトランジスタを実装できる」ともいえます。同じ性能なら半分の面積で作成できるので、コストは半分になります。
ムーアの法則は、半導体に関わる企業にとって、無視できない法則です。
なぜなら、半導体の性能・コストに基づいた経営戦略が必要だからです。
しかし、ムーアの法則を半導体だけでなく、一般的なテクノロジーに応用して考えようとする動きが起こります。その中の一人が、カーツワイル氏です。
カーツワイル氏は、ムーアの法則を一般テクノロジーからさらに思考範囲を広げて、すべての進化プロセスに適用し、そこから誕生したのが、「収穫加速の法則」です。
集積回路の進化が物理的・技術的な限界点を迎えつつある中、「テクノロジーの進化は技術革新を含めて指数関数的に成長を続ける」という収穫加速の法則が提唱され、ムーアの法則を継承するものとして注目を集めるようになっています。
■収穫加速の法則とは?
収穫加速の法則とは、広義に「進化の速度は本質的に加速度を増していく」というもので、アメリカの発明家・未来学者、レイ・カーツワイルの自著で提唱されている法則です。
収穫加速の法則は、生命の進化も含んだ広義の意味を持つ法則ですが、テクノロジーの分野では「新たな技術が生み出す産物は、次の新たな技術のために使われ、産物に成果を重ねることで、指数関数的に進化する」と捉えられています。
収穫加速の法則では、イノベーション同士が結びつくことで、新たなイノベーションの創造スピードが加速する。
収穫加速が起こったその先に、シンギュラリティが実現し、科学技術は線形で進歩するのではなく、エクスポネンシャル、すなわち指数関数的に進化する。と説いています。
言いかえれば「技術革新による新たな技術が、次世代の技術革新をもたらすまでの時間間隔は、時の経過とともに短くなる」ということを意味しており、半導体の進化のみを表すムーアの法則を、より広義なテクノロジーという観点で捉え直したといえるかもしれません。
■まとめ
人工知能の研究開発が進み科学技術が発展すると、シンギュラリティが到来するといわれています。
科学技術の発展は私たちの生活をより豊かにする可能性を秘めている一方、社会が大きく変化するため、あらたな問題を引き起こす可能性もあります。
シンギュラリティは人類に多大な恩恵をもたらすと同時に、さまざまな危機を招く諸刃の剣として、今後も議論されていくことが予想されます。
シンギュラリティによる可能性や影響を理解し、「どのように人工知能を企業経営に活用していくべきか」を真剣に考えるタイミングが来たと捉えるべきではないでしょうか。
今後、AIは単なる人間の代替労働力としてだけでなく、医療、金融、情報通信、さらには軍事にも適用されることが予想されていいます。
それゆえに人間の知性を超えるAIをいかに制御し、ディープラーニングを人類の発展のために役立てるかという議論が活発化することも想像に難くないと言えるのです。
■最後に
製造メーカーの間ではIOTへの対応を含めてDX化が進む現在、AIの普及によるシンギュラリティを含め、あらゆる企業を取り巻く環境はめまぐるしく変化しており、知見やノウハウが不十分な状態ではライバル企業と戦っていくことはできません。
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