企業は様々な事業活動を行い顧客に製品やサービスを提供し利益を得ますが、この活動は自らの強みにより創出した付加価値を顧客へ提供することにほかなりません。
そのような際にバリューチェーンという概念を用いれば、事業の活動を機能ごとに分類して、どの機能で付加価値が生まれているか知ることができます。
そこで今回、バリュー・チェーンとは?中小企業が価値連鎖を構築するメリットについて解説します。
■バリューチェーンとは?
バリュー・チェーンとは、自社や競合他社の事業を機能別に分類し、どの工程においてどのくらいの量の付加価値が生まれているのかを分析することによって、早急に解決しなければならない課題の洗い出しや競争優位性を高める差別化戦略の構築を容易にしてくれる優れたフレームワークです。
より競争優位をもたらすにはどのような戦略をとればいいかを導き出すことを目的としています。
バリューチェーンという概念は「仕事の連鎖(つながり)」に着目した事業構造把握の方法になります。
これにより事業全体を一連の仕事の流れで把握でき、どこが現在のボトルネックかも、流れの状況を確認する中で分かり、その原因の追求も、仕事のつながりを辿っていくことでつかめ、「プロセスアプローチ」の有効性が生かせる考え方となります。
バリューチェーン(Value Chain)という言葉は、ハーバードビジネススクールのマイケル・ポーター教授の著書『競争優位の戦略(Competitive Advantage)』の中で用いられて有名になりました。
■マイケル・ポーターの競争戦略
マイケル・ポーターの競争戦略においては、業務効率の改善や企業にとっての規模の拡大や利益の拡大よりも、むしろ企業としての競争上の戦略的な側面が最も強調され、市場の中において一貫性のあるユニークなポジションを築くことが重要だとされています。
また、特定の市場環境の中に潜む脅威のなかで他社をしのぐ優位なポジションを築くことに最も主眼が置かれており、バリューチェーンの考え方は、20世紀における戦略的なマーケティング理論の代表作の一つと言えます。
バリュー・チェーン(Value Chain)のコンセプトとしては、原材料や部品の調達活動、商品製造や商品加工、出荷配送、マーケティング、顧客への販売、アフターサービスといった一連の事業活動を、個々の工程の集合体ではなく、価値(Value)の連鎖(Chain)として捉える考え方です。
日本では直訳のまま『価値連鎖』と呼ぶこともあります。
企業活動を機能ごとにその内容を捉え、各々が付加価値にどのように貢献しているかを総合的に把握するためのフレームワークとしてバリューチェーンは位置づけられています。
■バリューチェーンとサプライチェーンとの違い
サプライチェーンとは、製品や食品などのもととなる原材料から製造、販売までユーザーに届くまでの一連の流れを示す言葉で、日本語で直訳すると供給連鎖となります。
サプライチェーンでは、物やお金の流れをそれぞれの情報と結び付けるのです。
そして、サプライチェーン全体で情報を共有し、全体を最適化していく方法をサプライチェーンマネジメントと呼びます。その際、部分的な最適化ではなく、全体のバランスを見て最適化を図ることが重要です。
■バリューチェーンは何に利用できるのか?
自社の企業(事業)活動を機能ごとに分解して競合他社と比較すると、自社のどの活動(機能)に強みや弱みがあるかが見えてきます。
その分析の結果をもとに強みをさらに強化する、弱みは補強するなどを行えばバリューチェーンの再構築のために必要な要素が見えてきます。
つまり、バリューチェーンを自社の活動の分析と他社との強み・弱みを比較するためのフレームワークとして利用すれば、競争優位をもたらす事業戦略の策定も可能になります。
例えば、低コストが成功要因となる業界では自社のどの機能・どの機能間の活動でコスト削減が可能かを検討し、実際に行えばその企業は低コストで優位に立てます。
逆に競争優位性への貢献度が低い機能はアウトソーシングし、それで浮いた資源を貢献度の高い機能にシフトすればより優位に立てるようになれるでしょう。また、競争優位の源泉となる機能を他社から模倣困難なものに強化していくと競争優位の持続も可能になります。
■バリューチェーン分析の目的、メリットと取り組み方
バリューチェーンの観点から企業や事業の活動を分析すれば、どの機能が、どの機能間が競争優位をもたらしているかという点が把握しやすくなります。
そして、その優位点を強化し弱点を改善できればさらに優位性を高めたり持続させたりすることも可能になるのです。競争に勝つための企業組織の再構築にバリューチェーン分析を活用してはどうでしょうか。
バリュー・チェーンの構成要素として、マイケル・E・ポーターはバリュー・チェーンという概念を生み出す際、組織が日々行っている様々な企業活動を、製品の生産や流通、消費との直接的な関連性の有無によって『主活動(主要活動)』と『支援活動(副次的活動)』の2つに大別しました。
1、主活動
主活動とは、商品製造やサービス提供など、製品の生産から消費までの一連の流れに直接的な関わりを持つ活動の総称です。
ポーター氏は製造業における主活動の一例として『購買物流』、『製造』、『出荷物流』、『販売・マーケティング』、『サービス』の5つをあげています。
2、支援活動
支援活動とは、製品の生産や消費までの一連の流れに直接的な関わりを持たず、主活動の支援を主な目的として行われる活動の総称です。ポーター氏は製造業における支援活動の一例として『全般管理(インフラストラクチャー)』、『人事・労務管理』、『技術開発』、『調達』の4つをあげています。
■バリューチェーン分析とは?
バリューチェーン分析とは、この「バリューチェーン」を各活動ごとに切り分けて分析するためのフレームワークです。
個別の活動ごとに分析することで、どの工程で高い付加価値が生み出されているのか、またはどの工程に問題があるのかを明確に把握できます。また、各活動について詳しく分析し、自社の強みと弱みを明確にできます。
バリューチェーン分析には主に2つの目的があります。一つ目は各活動にかかるコストを把握し、コスト削減(コスト戦略)に役立てること。もう一つは自社の強みと弱みを把握し、差別化戦略に役立てることです。
競争が激化している現代では、低価格という理由だけで競合他社に勝つことはできません。
自社の強みを把握し、さらに磨くことで、価格以外の点で消費者を魅了していくことが必要不可欠です。
■バリューチェーン分析の目的
バリューチェーン分析の目的は、各活動を分析することで、どこの工程に問題があるのか、どこの工程で高い付加価値が生み出されているのかを明確にすることです。
また、その結果によってコスト削減が進み、高い利益が生み出されます。さらに各活動を詳細に分析することで、競合店よりも優れた自社の強み、劣っている自社の弱みを明確にできるのです。
バリューチェーン分析を競合他社に対して実施すると、市場の変化や消費者ニーズの予測、今後の戦略の予測などが可能になります。
バリュー・チェーンは事業を機能別に分類して個別に分析することによって、どの工程においてどの程度の「付加価値」が生まれているのかを明らかにしてくれるフレームワークです。
バリューチェーンによる分析を行えば、付加価値の創造プロセスの観点から自社の競争優位性の源や克服すべき弱点を見つけやすくなります。
そして、その結果を利用して企業の競争市場の選定、基本戦略の策定を行い企業活動の再構築を図れば、競争優位な状況を作り出す・維持することも可能となるのです。
■付加価値とは?
付加価値は、一般的には『特定の人物や場所、施設、商品、サービスなどに対して付け加えられた独自の価値』といった意味で使用されています。
経済の世界においては、『生産活動によって生み出された総生産額から生産活動を行うために支払った原材料費や燃料費、外注費などの費用を差し引いたもの』という意味で使用されています。
付加価値とは字の如く『付け加えられた価値 』のことを指しますが、後から付け加えられたものであれば何でも良いわけではありません。
ニーズが全く存在しない機能やサービスの追加は、無駄な追加コストを発生させるだけでなく、使用感の悪さや複雑化による分かりにくさ、デザイン性の低下など多くのデメリットを生み出してしまいます。
貴重な経営資源を最大限に活用するためにも、『 付け加えることによって顧客やユーザーの満足度や商品やサービスの実用性が高まるもの 』だけを付加価値と呼ぶ必要があるでしょう。
■強み・弱みを分析して差別化につなげる3つの方法
バリューチェーンを用いて価値創造の過程ごとに内部分析をすることで、自社の強みが分かり、それを生かして他社より優れた製品やサービスを作り出すためのヒントが得られます。
この場合の具体的な取り組み方法が以下になります。
1、バリューチェーンの把握
コスト分析と同様、まず自社のバリューチェーンを把握します。このとき、自社の活動だけでなく、エンドユーザーに製品やサービスが到達するまでの全体の活動をバリューチェーンに含めると、顧客にとって本質的な付加価値を見つけやすくなります。
バリューチェーンの洗い出しとは自社の主活動、支援活動、それぞれにはどのような活動があるのかをできるだけ細かく洗い出すこと。
さらに洗い出したすべての活動を細かく分類していくのです。この分析は業種や業界によって全く異なります。
できるだけ多くの人に参加してもらい、それぞれの目線や情報源などからさまざまな意見や課題、改善点などを集めます。その際、自社と競合する他社の強みと弱みを記入する表を作成して、参加者に書き出してもらうとよいでしょう。
2、コスト分析
コスト分析とは細かく分類した各活動(営業活動、サービス提供、アフターサービスなどのことを指します)で、一体どれくらいのコストがかかっているかを分析すること。
分析の際、Excelなどの表計算ソフトを用いて、活動ごとに「年間コスト」「担当部署」などを記入すると分かりやすいでしょう。コツは、1つの部署で複数の活動を行っている場合は、活動時の比率で比較する点です。
また、複数の部署で1つの活動を行っている際は、複数部署のコストを合算して明記します。コストをしっかりと把握することで、各活動での無駄なものが明確になるのです。
3、顧客に選ばれる理由にフォーカス
強み、弱みの分析とは細分化したそれぞれの活動の強み(付加価値を生み出すに値するもの)、弱み(課題や改善点)などをできるだけ多く洗い出します。
その中で自社の活動のうち、顧客に選ばれる理由となる、他社より優れた付加価値を作り出している活動に注目します。
たとえばスマートフォン業界では、さまざまな企業が高性能な製品を販売しているなかでアップルが飛び抜けて成功していますが、そのカギはアップルの得意分野であるマーケティングにあるでしょう。
付加価値を高めるための差別化戦略を立てます。バリューチェーンのうち、どの活動が自社の商品やサービスを特徴づける価値を生み出しているか、つまり強みとなっているかを探り、その強みをさらに生かす方法を考えます。
商品の性能だけでなく、マーケティング、サービスやサポート、ブランドイメージ、価格などさまざまなものが強みとなりえます。
■VRIO分析
VRIO(ヴァリオ)分析とは、
・価値(Value)
・希少性(Rareness)
・模倣可能性(Imitability)
・組織(Organization)
4つからそれぞれの活動を分析し、解決すべき課題のや重点的に取り組む優先順位、今後の戦略などの経営資源を見つけ出していくものになります。一般的なVRIO分析では、「価値、希少性、模倣可能性、組織の順番」で分析を行います。
この4つの要素から、強みをそれぞれ分析していきます。また、VRIO分析のやり方としては、表を作成して各担当者に記入してもらう方法が一般的です。
1、価値(Value)
価値(Value)を分析する際の評価項目の例は、
・その経営資源は経営目標の達成に有効か?
・その経営資源は価値を生み出すか?
・脅威の排除に役立つか?
これらの問いにイエスかノーで答えます。顧客にとっての価値ではなく、自社にとってその経営資源を戦略に組み込む価値があるかについて評価するのです。
2、希少性(Rareness)
希少性(Rareness)を分析する際の評価項目の例は、
・その経営資源は希少性を持つか?
・どのくらい多くの競合がその資源を持っているのか?
・代替可能性は低いか?
などでこれらの問いにイエスかノーで答えます。この問いでは、市場では大変珍しく、希少価値の高いものであるかどうかという点を重視します。希少性が高いほどユーザーの購買意欲を刺激することが可能です。
3、模倣可能性(Imitability)
模倣可能性(Imitability)を分析する際の評価項目の例は、
・模倣される可能性はどれくらいか?
・その経営資源を他社が得るためには多くのコストがかかるのか?
などでこれらの問いにイエスかノーで答えます。この問いによって、経営資源に対して他社が模倣する難易度を評価します。
模倣可能性の低い経営資源には、以下5つの要因が関係するとされています。
・時間圧縮の不経済
・経路依存性
・因果関係不明性
・社会的複雑性
・特許
■競合他社の活動予測も可能
ライバル企業や競合店をバリュー・チェーン分析の対象にすることによるメリットは、強みや弱みの洗い出しだけではありません。
ライバル企業や競合店も強みを活かした事業戦略や経営戦略を構築し、弱みをカバーするための施策を講じます。
そのため、ライバル店や競合店をバリュー・チェーン分析の対象にすることで、今後どのような戦略や施策を展開していくのか予測することが可能です。それらの結果から、自社として、どのプロセスに注力することがより効果的であるかを見極めることが容易となるでしょう。
■バリュー・システムによる俯瞰的評価を実施する
バリュー・システムでは、自社のバリュー・チェーンを独立した存在として捉えてはいけません。
原材料や部品パーツ素材の生産者や加工業者など自社バリュー・チェーンの川上に存在するサプライヤーから、卸問屋や小売業者など自社バリュー・チェーンの川下に存在するチャネルまでを1つの大きな価値創造システムとして捉えることです。
これにより、最終顧客(エンドユーザー)に提供する付加価値の更なる向上と自社バリュー・チェーンの最適化を目指します。
つまり、バリュー・システムは複数の組織のバリュー・チェーンの集合体であり、バリュー・システム視点では自社のバリュー・チェーンを1つのレイヤーとして扱うようになります。
市場反応をよりリアルに掴むためには川下に繋がる組織や団体との連携が必須であり、革新的なものづくりを実現させるためには川上に繋がる組織や団体の協力が欠かせません。
注力するべきレイヤーの見極めや経営資源の再配分を実施する前段階において自社事業に関連する一連の繋がりをバリュー・システムとして扱います。
自社事業を含めた全体像を俯瞰的に評価することによって、自社バリュー・チェーンの最適化やバリュー・チェーン分析の戦略性最大化を実現させることが可能となるでしょう。
■最後に
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