あらゆる企業が組織として成果をあげるためには、マネジメントによる組織づくりが欠かせない要素になります。なぜなら、個人の能力には限界がありますが、それがチームになれば、目指せる成果は大きくなるからです。
企業としての目標には、短期目標や長期目標、行動目標など、さまざまなレベルがありますが、特に大事なのは、MBOに取り組むことです。
そこで今回は、MBOとは、MBOのメリットと目標管理を推進するコツについて解説します。
「目標管理の最大の利点は、支配によるマネジメントを自己管理によるマネジメントに置き換えることにある。」
<ピーター・ドラッカー>『現代の経営』
■MBOとは?
MBOとは、management by objectivesの略で日本語では「目標管理」と訳されています。個人またはグループごとに設定した目標の達成度を個人で管理する方法のことを指します。
法人企業の目標管理では、あらかじめ評価者(上司)と、被評価者との間で目標に関する合意を結び、それに対する達成度合いで評価をする方式で多くの会社で活用されています。
目標管理という名前から、どうしても「目標を管理する」制度と思われがちですが、本来、目標管理制度は組織マネジメントの概念です。
基本的にMBOで設定するObjectives(目標)は、セルフマネジメントを理想にしていますが、企業の方針に合ったものが良いとされています。
目標に達しなければ評価が低くなり、目標を上回った成果を挙げれば評価が高くなる制度であることから、実績主義や成果主義を唱える組織でよく用いられています。
セルフマネジメントは、業務の効率化や、従業員のモチベーションアップに貢献するとされているのです。
■セルフマネジメントとは?
先行きがわからず、不明瞭なVUCA時代では、組織や個人として今まで通りのことを行っていくだけでは求めている成果を得ることが難しいと言われています。
新しいことにも果敢に挑戦し続け、組織として、また組織を担っている一人一人が個人として成長し続けることが求められます。
また、VUCA時代ではどのような形でいつチャンスが訪れるかも読みづらくなっているのかもしれません。
チャンスを掴むためには、会社から目標を与えられるだけでなく、自分が常に最大限の力を発揮できる状態を維持することが必要です。最高のパフォーマンスを出せる状態を作り、自分の可能性を最大限に伸ばすことがセルフマネジメントの目的です。
■目標管理制度において、絶対に外せない3つのポイント
1、個人目標が、上流にある「組織目標」とリンクしていること
目標管理制度(MBO)は、従業員に個人目標を決めて貰い、その進捗や達成度合いによって人事評価を決めるマネジメント方法になります。
そのため、目標管理制度には、従業員に組織の一員である自覚を持たせ、個人と組織の成長を同時に達成させる狙いがあります。
ですので、組織全体の目標に対して、より貢献性を感じられるような内容の個人目標の方が望まれるのです。
2、個人目標は従業員本人によって決めて貰う
ドラッカーが「Management By Objectives through Self Control」と述べているとおり、「Self Control=自主性」が何より重要な要素になっています。
自ら目標を決め、自律的に努力しながら達成へ向けて取り組むことで、より大きな成長が期待できます。
これを無視すると、単なる企業のノルマ管理に陥りかねません。目標管理制度において上司はあくまでサポート役で、従業員の進捗を確認して助言する役割です。自主的な目標設定が従業員の意欲を育みます。
その際、従業員にノルマや成果を押しつけるのではなく、本人が「こうありたい」と思う姿を実現できるような目標を自分で設定することが大切です。
3、できるだけ具体的な目標を立てる
目標管理制度では、評価者である管理職の”客観的”な評価が求められます。そのため、達成すべき目標がより具体的な方が判断も下しやすいでしょう。目標設定は、3つの要素に分解できます。
What:何を目標にすべきか
When:いつの達成を目指すべきか
Why:なぜその目標にすべきか
この、What、When、Whyをそれぞれ踏まえながら、整合をとる形で仕上げていくことが大切です。
例えば、「受注件数10件/月」「社内賞を四半期ごとに一度受賞する」など、定量的に示されている方がベターです。従業員自身も、達成に向けて努力しやすくなります。
■MBOによる目標管理の7つのメリット
1、自己管理によるマネジメントが可能になる
ドラッカーは、「目標管理の最大の利点は、支配によるマネジメントを自己管理によるマネジメントに換えることを可能にするところ」と語っています。
目標管理制度の特徴は、従業員自ら目標を立て、実現に向けて働くことにあります。つまり、誰かから強制されて仕事をするわけではないため、従業員の主体性や自律性を養うことができるでしょう。
上司の操り人形のように働いたり、与えられた業務を機械的にこなしたりするのではなく、従業員個人が自分で自分の仕事を管理・コントロールできる点は、大きなメリットといえるでしょう。
2、従業員のモチベーションが向上する
経営者層や管理者層に管理されながらの仕事は、従業員個人の意思が反映されにくいもの。ときに就労意欲も減退するでしょう。
上司から一方的に指示し業務を遂行させるのではなく、個人が、組織の目標についてどのように考え、自身はどのように目標設定をするかを考えさせる形にすることで「やらされ感」がなくなります。
その結果、組織の成功に貢献するという参画意識を持たせることができるので、個人個人が意欲的な取り組みができます。MBOは自分で自分の仕事を管理します。
そのため、強い責任感と、「ベストを尽くしたい」という動機付けが期待できるのです。
3、全社目標やチーム目標を共有し、ベクトルを合わせられる
自身の価値観で柔軟に業務を遂行し、成果を出せる「自律型人材」が求められています。
企業としてこの「自律型人材」を育成する意味でも、従業員が主体的に取り組める目標管理制度は効果的です。
特に課題達成型のMBOでは、企業の目標とチームの目標、そして個人の目標が直結しています。個々がバラバラに設定した目標をすり合わせることは難しいですが、課題達成型のMBOによって、すべての従業員のベクトルは合致するのです。
4、会社としての目標達成の実現性が高まる
個人目標は、組織の目標ともリンクしています。つまり、個人目標を達成することで、従業員は組織に対する貢献性も味わうことができるということです。
課題達成型のMBOは、個々の従業員の目標が企業としての目標と直結しています。そのため、一人ひとりが目標に基づいて日々の業務をこなすことで、自然と企業全体の目標の達成へつながるのです。
5、目標達成するための具体的施策を作りやすい
個人が自分のアイデアで設定する目標は抽象的になってしまうことも多々。達成に向けたプロセスが曖昧になることもあるでしょう。
しかし、課題達成型のMBOでは、現状に基づいて設定した目標をさらに細分化したものを目標として掲げます。そのため、達成に向けた具体的な施策を練りやすくなるのです。
6、人材育成にもつながる
従業員は達成できそうな範囲で、身の丈より少し高いレベルの目標を立てることが多いです。そのため、従業員は目標達成に必要な知識やスキルを、主体的に取得できるよう努力します。
その結果、自然とスキルアップを図れるでしょう。従業員に対して意欲的な能力開発を促せるので、企業全体のスキルアップにもつながります。
個人に自分の目標達成度を管理させることで、業務を「やらされる」だけの受け身な人材から、自ら考えて行動する能動的な人材に変わります。人材育成になるのです。
7、リフレクションしやすい
業績に寄与すれば、当然ながら会社や上司からも称賛を得られるので、従業員の自尊心も満たされます。目標の管理によって、従業員のモチベーションアップにもつながるのです。
また、MBOで個別に目標を管理すると、従業員は自分の仕事ぶりや能力を客観的に見つめることができるため、振り返り(リフレクション)がしやすくなります。個人だけでなく、チーム、部門、企業全体のリフレクションにも有効です。
■目標管理法の5つのプロセス
目標管理法のプロセスは、被評価者が全社目標や自部門の目標を理解した上で、自ら目標を設定することが前提になります。
1、組織目標を決め、現場に共有する
目標管理制度の基点となっているのは、「組織全体の目標」です。従業員が個人目標を立てるときも、組織目標の達成に貢献できるような内容を考えます。
そのため、まずは経営層が経営目標を決定し、現場の管理職に共有しましょう。そして、管理職は部下に対して組織目標の内容や意図を伝え、個人目標の基準にしてもらいます。
2、従業員に目標・具体的な行動プランを立ててもらう
従業員に個人目標を立ててもらうときは、客観的な評価を下せるかどうかも考慮し、内容が「具体的か・定量的か」をチェックします。
また、本人の意欲を持続させるため、目標が「実現できそうか」「簡単すぎないか」を確かめることも大事です。身の丈より少し高いレベルの目標であれば、従業員もより意欲的に取り組めます。
そして、目標を達成するための具体的な行動も一緒に決め、本人が取り組みやすいように支援していきましょう。
3、上司が進捗を管理し、適宜軌道を修正する
「目標を決めさせたら、あとは評価まで放置」では、不十分です。従業員が目標達成に向けて困っていることがあれば、上司が適宜相談に乗ってあげましょう。
また、目標の軌道修正が必要であれば、そのサポートもします。できるだけ上司が毎週・毎月といったペースで面談することで、従業員の意欲を持続させることが可能です。
4、上司が評価し、本人にフィードバックする
評価期間に入ったら、上司が客観的に結果を評価し、部下にフィードバックします。
その際、部下が評価に納得し、次のアクションを取りやすいように、評価の理由についても丁寧に説明しましょう。
評価次第では、評価を受ける側は悔しさを感じることもあるので、まずは本人の頑張りに対して労いの言葉をかけることも大切です。
対象期間が終わったときに、結果とそのプロセスについて振り返りを行い、評価者との面談の中で、次の対象期間についての課題を刷り合わせながら、次回目標設定に備えます。
5、会社目標との関連
日本労働経済雑誌の調査によると、目標管理制度で従業員のモチベーションを高めるには、「組織目標との関連性」がひとつの条件になります。そのため、組織目標を見据えたうえで個人目標を立てることが大切です。
その方が、従業員としても「自分は組織の中で重要な存在である」と認識でき、達成感を味わいやすいでしょう。
■MBOのデメリット
評価を受けた従業員のなかには、自分がなぜ「A」ではなく「B」の評価なのかと悩む人もいます。目標管理制度はどうしても客観的な点数だけがあとに残るため、やや冷たい印象を受ける従業員もいるのです。
また、目標設定を本人に任せ過ぎると、以下のような問題が起こる可能性もあります。
・達成度を高めるために、目標を意図的に低く設定する。
・目標として設定されたこと以外をやらない。
・そもそもホワイトカラーの業務に馴染まない。
・予期可能な業務案件・項目が少ない。
これらの問題点を解消するために、MBOの運用において、評価を定性的なレベルにとどめたり、評価を処遇・報酬に直結させない仕組みを導入する企業も増えています。
例えば、MBOをコミュニケーションの道具として使うなどです。そういった企業では、目標を達成できなかった場合、何が問題だったのか、どうすれば達成できたのかを上司と部下で話し合い、能力開発や業務改善に役立ています。
■まとめ
人事の世界において目標管理(MBO)とは、目標管理型の人事制度のことを指します。目標管理制度は自分で達成過程を管理しながら目標を達成し、自分で評価をしていく、非常に自主性の高い制度です。
設定する目標は会社自体の目標ともリンクするため、個人の目標を達成することにより、会社の経営目標や部門目標の達成に貢献できる仕組みとなっています。
各従業員が定めた目標を達成すれば、経営目標や部門目標も達成に近づくため、企業業績の拡大につながります。
現在、リモートワークに移行したことでより重要性が増したといえます。その理由としては、リモートワークの状況では成果物でしか評価をできない可能性が高いためです。
目標管理制度では、まず従業員に自ら目標を設定させ、目標が適正かどうかを上司と相談します。適正と判断された場合、従業員は目標を達成するための活動を自己統制しながら進めていきます。
会社に出勤している状態であれば部下の言動などからモチベーションなども推測できますが、リモートワークにおいては部下の態度などもわからないため、成果型のMBO(目標管理)は非常に重要となってきます。
■最後に
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エグゼクティブ・コーチングは、一度に沢山の人を相手に一方通行的にカリキュラムを提供する企業研修と大きく異なり、「1対1」で企業リーダーを長いサイクルで育てることです。コーチは経営者が持っている内発的な想いが引き出されるよう、様々な角度から質問をしていきます。
コーチングのセッションでは、経営者が課題であると考えているテーマについて、コーチとの双方向の対話を通し、深く考えを巡らせていきます。
なぜなら、エグゼクティブ・コーチングの考え方は、「答えは経営者本人の中にある」ということが前提になっているからです。
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