スキルの高い人材を採用する際に給与設定に悩んでいる経営者は多いと思います。また、既存の社員にも稼いだ利益のうち、いかに給与や賞与という形で、社員に還元するか。これが、経営者につきまとう人件費に対する悩みだと言えます。
経営者は従業員の給与をどのように決めているのでしょうか?真面目で優秀な経営者であれば、一生懸命働いてくれる社員には多くの給与や賞与を支払いたい、と考えます。
ですが、給与を高く設定すれば経営を圧迫し、低く設定すれば従業員満足度が下がってしまう結果にも繋がります。特に従業員のモチベーションに与える影響は、かなり重要な要素です。
そこに一つの解決法があります。それが「労働分配率」という方法に則って給与を決めるという方法です。そこで今回は、労働分配率とは?働く人の意欲と業績向上に直結する労働分配率ついて解説します。
「二人の囚人が鉄格子から外を眺めた。 一人は泥を見た。一人は星を見た。」
Two men look out through the same bars: one sees the mud, and one the stars.
<フレデリック・ラングブリッジ>
■労働分配率とは?
労働分配率は「付加価値」に占める人件費の割合を表し、人件費が適正な水準かどうかを判断する際に使える指標です。労働分配率は、付加価値の中で、役員や従業員の人件費として配分された部分が、どの程度あるかを表す目安になります。
人件費は従業員への投資であり企業が成長するためには増やすべきですが、コストという側面もあるため、増やし過ぎて経営を圧迫すると企業成長の阻害要因になりかねません。
労働分配率は、会社が稼いだお金をどれくらい社員に分配しているかを示す指標で、人件費を粗利で割って計算します。
労働分配率=人件費・労務費÷付加価値
例)粗利80万、人件費40万の場合
→労働分配率50%(40万÷80万)
給与が高い結果として労働分配率が高いのであれば、従業員の満足度や士気が高い状態で維持されて積極的に仕事に取り組むため、将来的に会社が成長して収益が増える可能性があります。
■労働分配率の高い会社と労働分配率が低い会社の違い
労働分配率が高い会社は、人件費に対する配分が多いことから、給与が高い会社、あるいはサービス業のように人手に依存しなければならない会社、あるいは付加価値の総額に対して人件費が多くなってしまっている会社と考えられます。
このような場合には、業種の特性なのか、自社の問題なのか、その理由をよく分析する必要があります。
労働分配率が低い会社は、仕事の機械化やマニュアル化が導入されており、DX化が推進され「オペレーショナル・エクセレンス」を実現している場合が多いです。
オペレーショナル・エクセレンスとは「オペレーション(現場の業務遂行力)が、競争上の優位性を持つまで徹底的に磨き上げている状態」を指します。
オペレーショナル・エクセレンスを確立した企業では、常により良いオペレーションを追求しようという考え方が現場の末端まで浸透しており、継続的にオペレーションを進化させようとする仕組みができています。
従業員の労働生産性の改善は、数十年あるいは数世紀にわたって多くの企業の一番の課題です。ですがその解決は必ずしも容易ではありません。
その理由は、生産性を重要視すべきなのはなぜか、目立った変化を生むのが難しいのはなぜか、組織の生産性改善のためにどのような戦略を講じることができるかを考える必要があるからです。
■なぜ生産性を重視すべきなのか?
一人あたりの同じ時間枠の生産量が多いほど、その企業が市場で発揮できる効力が高まります。
何を測定項目とするかは企業によりますが、付加価値を生み出す従業員が多く生産性が上がれば、製造の現場ではモノを生産する販売個数が増えます。
また、商品やサービスを提供する際も仕事の効率が良くなり、品質を高め既存の価格帯よりもっと高い価格設定にグレードアップすることも可能になります。
生産能力の高い企業は収益を伸ばすことができ、より少ない時間でより多く生産できる企業は利益率が上がります。雇用主として従業員の生産性を改善するためにできることは様々あります。
例えば、生産性改善にインセンティブを与えることによって、それに貢献しようという従業員の意欲を高めることも可能だと言えます。
従業員の視点で見た場合は、生産性アップは営業目標やノルマの達成という満足感、仕事に対するやりがい、昇給、昇格、その他キャリアアップの機会につながるといったメリットがあります。
■労働分配率の適正水準の必要性
労働分配率が高いほど、儲けを社員に分配している割合が大きいということになりますが、高すぎる労働分配率は利益を圧迫しかねません。利益が圧迫されると、借入の返済が滞ったり、事業の存続・発展に必要な投資や準備ができなくなってしまう可能性があります。
だからと言って、十分すぎる利益を残すために労働分配率が極端に低くなっていると、会社の利益のわりに給与をもらっていないなどの社員の不信感や不満につながってしまうかもしれません。
この様に、労働分配率は高すぎても低すぎてもトラブルにつながる可能性があるため、自社なりの適正水準を決めておく必要があります。
また、労働分配率の適正水準は、一般的には50~60%とされていますが、労働分配率は「〇%ならば良い」といった絶対的な基準が全企業に共通した基準値があるわけではありません。
一般的には企業規模別や業種別の平均値をデータとして使うことが多く、自社の労働分配率が平均値より高いのか低いのかで判断します。
業種や創業年数、事業の成長ステージなどによって異なるので、同じ業界の水準や自社の過去の実績を基に、自社なりの適正水準を把握しておきましょう。
■労働分配率を工夫する仕組み作りとは?
労働分配率を上手に活用すれば、社員に経営への関心を持たせたり、社員の仕事に対するモチベーションを高めたりする仕組みをつくることができます。
1、会社全体の労働分配率を固定する
会社全体の労働分配率を固定すると、会社全体の粗利を高めることで半自動的に人件費への配分額も多くなります。
そしてこれは、社員に対して、「人件費(給与や賞与)を増やすためには会社全体(チーム)の粗利を高めればいい」ということを伝える強烈かつ具体的なメッセージとなります。
2、1人当り労働分配率を固定する
営業職が多い職場などについては、会社全体ではなく社員1人当りの労働分配率(営業受注額などに対する給与・賞与での配分額)を固定するという方法もあります。
個々の社員の労働分配率を固定することで、社員1人1人の稼ぎがダイレクトに自分の人件費に反映されるため、個々の社員の仕事に対する成果への意識やモチベーションを高めることに繋げられます。
■労働生産性を高める必要性
労働分配率は業種により異なります。業種によって平均給与が違うのと同じような話で、労働分配率もまた業種によって異なりますし、業種の中でも差異の激しい指標になります。
例えば不動産業などは、人件費以外にも大きなコストがかかるため、労働分配率は低めになります。逆に飲食店など人間が主体となるビジネスモデルは、労働分配率が高くなる傾向にあります。
人件費について考える際、労働分配率とともに考慮に入れるべきなのが「労働生産性」です。労働生産性とは従業員1人あたりの付加価値であり「会社の稼ぐ力」を表す指標です。
つまり、掛かった人件費の何倍の利益を生み出しているかという数値になります。労働生産性は、産出を労働の投入量で割ったもので、労働人数あたり、もしくは労働時間あたりの成果です。
労働分配率や労働生産性を向上できれば、1人あたり人件費がアップして給与額が上がり、優秀な人材を確保しやすくなって生産性が上がる好循環が生まれます。そのため、人件費について考える場合には、労働分配率と労働生産性のいずれにも着目することが大切なのです。
■高い生産性を持つ組織が持つ2つの特徴
マサチューセッツ大学の研究によると、高い生産性を持つ組織には、次の二つの特徴があると言われています。
1、組織の構成員に高い社会的感受性を持った人がいる
ビジネス上の関係において、コミュニケーション能力は非常に重要な役割を果たしています。コミュニケーションスキルは多くの要素を含みますが、中でも社会的感受性は重要な要素の一つです。
社会的感受性とは、組織や社会の場において、他人の感情や要望を理解する能力のこと。この能力が高い人をチームリーダーや管理職に抜擢できるかが生産性向上の鍵と言えます。
コミュニケーションにおいて、他者の感情を察知する能力は非常に重要です。相手の感情を読むことで、要求を理解したり、適切な対応ができるようになるからです。
2、組織の積極性に格差がない
誰かが率先して仕事をひきうけることで、他のメンバーが消極的で責任や仕事を請け負いたがらない体制は、効率が上がらない傾向にあると言われています。
当事者意識を持ち、自ら課題を見つけて積極的に取り組むスキルを向上させるべく、社員育成に取り組むのがよいでしょう。企業などが従業員に対して行う施策は、この労働生産性を指すものが多いです。労働生産性計算式は、以下の式になります。
労働生産性(%)=付加価値÷人件費×100
例えば、月30万円の従業員が生み出す利益が月30万円の場合、これ以上給与を上げることはできません。しかし労働生産性を上げ、月40万円の利益を生み出すことができるようになれば、その人材の人件費を上げることができます。
このように労働生産性にフォーカスすることによって、従業員のモチべーションを高め、会社の業績をアップさせると同時に、労働分配率と人件費を増やすことが可能になるのです。
■まとめ
人件費に付加価値をどれだけ分配したのかを表す指標が「労働分配率」です。労働分配率は適正な水準に保つことが大切で、高すぎても低すぎてもよくありません。
給与が高くて労働分配率が高ければ従業員の士気は上がりますが、人件費が増えると企業経営の足かせになる場合があり、設備投資に十分な資金を割けなくなる可能性があります。
労働分配率を知ることは、経営を見直すということに繋がっていきます。経営を見直すことができれば、従業員とより良い関係を構築することができ、安定した経営をすることが可能になります。
経営数字が分からず、経営状態を客観的に捉えることができなければ、自社の重要な経営判断を主観や思い込みに頼らざるを得なくなり、誤った経営判断を下してしまう危険性が高まります。
逆に、会社の経営数字のポイントを押さえておくと、自社の経営状態を客観的に捉えられる様になります。「労働分配率」を高めるために必要なことは、自社にとって最適な生産性向上施策は何かを検証することが重要だと言えるのです。
■最後に
労働分配率を考慮し業績に応じて支給額を決める制度にすれば従業員の士気が上がり、従業員の成果を会社が正当に評価することで経営者と従業員の信頼関係の構築にも役立ちます。
少ない人件費で多くの付加価値を生み出しているのであれば、事業効率が良くて収益性が高い会社ということになります。
しかし、人件費に十分な額が配分されていない場合は、従業員の士気が低くて生産性が上がらず、離職者が増えて優秀な人材を失い企業が衰退することになりかねません。
ちなみに労働分配率が高く、生産性向上に取り組んでいると認定された企業は、政府から優遇措置を受けることができます。例えば、次のような法的優遇措置を受けることが可能です。
・設備投資にかかる固定資産税が、3年間半額になる
・中小企業経営強化税制との組み合わせにより、法人税と所得税について即時償却または取得価額の10%の税額控除を受けることができる
・日本政策金融公庫からの設備資金の借入の際に、0.9%金利が引き下げられる
他にも、経営力向上計画が適切なものと認められることで、さまざまな恩恵を受けることができます。生産性向上のための補助金や助成金制度を利用してみるのも良いでしょう。
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