PEST分析とは?新規事業の事業計画にPEST分析が必要な理由?

投稿日: 作成者: KENJINS運営会社社長 カテゴリー: 運営会社社長   パーマリンク

時代の変化に適応できる企業であり続けるためには、定期的に「環境分析」をおこなう必要があります。また、スタートアップの起業家が新規事業の立ち上げ時の武器となる事業計画書にもPEST分析が必須になります。

環境分析とは、企業の内外の経営環境を分析することを意味します。環境分析に適したフレームワークとして「PEST分析」が挙げられます。

今回は、PEST分析に焦点を当てて、分析方法と押さえておくべきポイントについて解説します。

■PEST分析とは?
「PEST分析」とは「ペスト分析」と読み、自社業界を取り巻く外部環境を4つの視点から調査・分析するマクロ環境の分析を行うフレームワークの1つです。マーケティングの神様と呼ばれるフィリップ・コトラー氏が提唱したものです。

自社を取り巻くマクロ環境(外部的な環境)をチャンス・ピンチ両方の視点から分析して、経営戦略の策定などに活かすためのマーケティングフレームワークです。外部的な環境は、自社でのコントロールが難しいマクロ環境と、自社である程度コントロール可能なミクロ環境に細分化されます。

ちなみに、マクロ環境はマーケット(市場の)外部環境である「世の中」のことをいい、ミクロ環境はビジネスが展開される市場そのものです。

マクロ環境をあらゆる視点から分析することで、自社の課題と強みを明らかにした上で経営資源の有効活用につなげられます。

■新規事業立ち上げにPEST分析が必要な理由
モノや情報が充足しつつある現代は、市場の動向を適切に見極めて、成果につながる事業戦略を考えなければなりません。また、業種によっては競合がたくさんあるため、いかに他社と差別化を図って生き残るかを考えることも大切です。

ビジネスは世の中の変化によって大きな影響を受けます。市場の変化に対応した経営戦略を立案するためには、自社業界を取り巻くマクロ環境を把握、分析をして現在の市場の状態や今後の成り行きを知っておくことが必要不可欠になっています。

市場の状態を知ることができれば、まだ知られていない市場のチャンスや潜むリスクを発見することができます。

これらを的確に予測し判断するためには、やみくもに情報収集を行っても手間がかかってしまい、分析がかみ合わないという状況になりかねません。そのような状況を避けるために必要なのが「PEST分析」なのです。

マクロ環境(世の中)には無数の環境要因があり、PEST分析を構成する4つの要素のどれに当てはまるのか迷うものもあります。

一方で、複数の要素にあてはまるものもありますので、環境要因に含まれる具体的な要素を確認し、自社に影響を与える重要な要因を見落とさないことが大切です。

PEST分析をおこなえば、コントロールが難しい外部環境の分析ができるため、企業が受ける影響や市場の変化を考えつつ取り組むべき施策を考えられます。

■「PEST分析」は次の4つの項目とは?
そもそもPEST分析とは、企業が制御できない外部環境(マクロ環境)を分析するフレームワークのことを言い、次の4つの観点で環境分析をおこなうのが特徴です。

P:政治(Politics)
E:経済(Economy)
S:社会(Society)
T:技術(Technology)

これらの情報を収集し分析することで、自社業界の取り巻く環境がどうなっているかを認識し、今後の予測を的確に立てることができます。

1、政治的な観点で分析する「Politics」
1つ目は政治的な観点から分析する「Politics」です。法律や条例、規制、助成金といった行政レベルの要因がこれにあたります。

政治の領域では、政府が打ち出す政策や法改正といった動向をチェックします。例えば、以下のようなものが分類されます。

・法律や法改正(規制、緩和)
・税制や減税、増税
・裁判制度や判例
・政治や政権交代
・政治団体の傾向、デモ

これらはいずれも国や地方自治体レベルでの決定事項であり、一企業の力の及ぶところではありません。また、政治の状況にも事業に関連するものとそうでないものがあるため、効率的に分析を進めるためには、関連性の高いものに絞って情報を集めることが大切です。

2、経済動向を分析する「Economy」
2つ目は経済動向を分析する「Economy」です。着目すべきポイントとして、次のような項目が挙げられます。

・景気の変化
・GDP
・雇用に関するデータ
・賃金の改定
・物価の動き
・消費動向指数

この項目では、国内だけでなく各国の経済状況も加味しながら長期的な分析や予測をしなければなりません。例えば金利が上がる可能性があれば消費活動が抑制されるため、新商品を販売しても売り上げが伸びない可能性があります。

一方、金利が下がる可能性がある場合は消費活動が活性化され、売り上げが伸びる可能性があるのです。このように経済面から分析することで、ビジネスチャンスが見えてくることがあります。

為替市場などは毎日変動していますが、企業によっては相場の変動で売り上げや利益が大きく変わります。経済面からのマクロ環境分析を行うことで、経済要因からビジネスチャンスを捉えることもできるのです。

3、社会全般を分析する「Society」
3つ目は社会全般の分析をする「Society」です。社会の領域は、消費者の需要に深く関係している部分です。分析する要素には次のようなものがあります。

・人口動態
・流行や習慣
・生活者の慣習
・社会的事件
・文化的または宗教的背景
・社会インフラ
・教育体制

日本では少子高齢化が社会問題化しています。しかし、事前に社会環境の変化を分析しておけば、シルバービジネスを行う企業はビジネスチャンスをつかむことができるのです。

少子高齢化など需要が変化して新たな事業展開が求められたり、既存事業の撤退が必要になったりするケースがあります。タイムリーに社会の動向に対応することで、市場で有利な立ち位置を獲得しやすくなります。

社会全般が分析項目となるため、前述の政治や経済といった項目と比べると調査対象が漠然としており幅広いです。現在でいえば、少子高齢化による労働者の減少、新型コロナウイルスの流行による巣ごもり需要の増加がこれにあたります。

新型コロナウイルスは予測不能なものではありましたが、リモートワークの推進といった変化など、社会環境の変化を素早く調査・分析し、いち早く対応することができればビジネスチャンスを掴むことが可能です。

4、新技術などの変化から分析する「Technology」
4つ目は技術変化から分析する「Technology」です。技術の領域は、今後の消費者の生活や事業の進め方に大きく影響する部分です。分析する要素には次の項目が含まれます。

・クラウド化
・AI
・ドローン技術
・開発技術
・生産技術
・営業、マーケティングツール

IT技術の進歩は消費行動の変化と既存市場の競争力の低下、新規市場を生み出し、どの業界も無視できないものです。
また、技術の進歩は市場変化だけでなく、AIによる人手不足の解消や人員削減など労働環境にも大きな変化を与えています。

最新技術を自社でどう取り込んでいくのか、その場合どんな影響があるのかなどを調査分析して、戦略に組み込んでいく必要があります。

■PEST分析の5つのステップ
PEST分析を効率よく行うためには、4つのステップを踏む必要があります。どのようなことを意識すべきなのかを見ていきましょう。
分析に入る前に、環境の変化に着目した上で課題を明確化した上で、情報収集やビジネスチャンス・ピンチ(課題)への分類を行う必要があります。

1、PEST分析の目的確認とゴール設定。
PEST分析で最初にやるべきことは、何のために分析をするのか目的を確認しておくことです。目的がはっきりしていない状態で分析を行うと、調査内容が曖昧になり意味のある結果を生み出すことはできません。

PEST分析をする一番の目的は、自社業界の環境を分析することでチャンスとリスクを明確にし、市場変化を先読みすることです。そのため、PEST分析は3~5年の中長期的視点で取り組むべき戦略を構築するのに適した分析方法といえます。

例えば、

・時代の変化に応じて経営戦略を見直す。
・新しい商品やサービスを開発する。
・将来の事業展開に向け社会動向に関する情報を収集する。

というように、社会全体を俯瞰するマクロな視点で目的を設定しましょう。

2、PESTの要素ごとに情報収集する。
目的とゴールを明確化したら、それを達成するために先ほど紹介した政治や経済、社会、技術の4つの観点から自社業界に必要な情報収集を行います。情報収集の方法は様々なものがありますが、おすすめなのは一次資料です。

一次資料とは、そのテーマに関しての大元となる資料です。主に公的機関や専門家、大学が公表している、正確な情報をまとめた資料を指します。

情報の収集を行った後は、その情報がゴールに必要なPESTの情報であるかのチェックを行います。つまり情報の精査を行い、PEST分析に必要な情報のみを経営戦略に取り入れるということです。

公的機関や業界団体から発信された情報、あるいは専門家が作成したデータ・レポートといった信頼性の高い情報を収集しましょう。

ここでは要素の振り分けや評価を行わず、幅広い情報収集に専念することが大切です。

3、収集結果を「事実」と「解釈」に分ける。
情報収集が終了したら、収集結果を「事実」と「解釈」に分けます。なぜ2つに分けるのかというと「解釈」に基づいて戦略策定を行った場合は、自社の機会とリスクの裏付けがとれず、結果が伴わないからです。

そのため、この振り分け作業は非常に重要となります。客観的な事実と、取り方によって解釈が分かれる内容にも分類します。情報の中には複数の環境要因にまたがるものもある点にも意識して取り組みましょう。

一方、これを裏付けるデータが無い状態ではあくまで「解釈」に過ぎず、解釈を戦略に組み込めば間違った方向へと進みかねません。あくまで事実とは実際に起きている、なおかつ普遍的な内容である必要があります。

4、事実のみを「機会」と「脅威」に分ける。
「事実」に分けた情報をさらに「機会」と「脅威」に分けます。その情報は自社にとって「機会」なのか「脅威」なのかを明確にするのです。

戦略とは「機会をとらえる」「脅威を避ける」のいずれかの達成のためにあるといえます。時には機会が脅威になり、脅威が機会となるため、多角的な視点を持つことが重要です。

自社が乗り越えるべき課題を克服し、ビジネスチャンスを有効活用することが目的です。環境の変化によってチャンスがピンチ、あるいはピンチがチャンスに変わる可能性もありますので、複数の視点を持って振り分けを行いましょう。

5、分析結果の実行。
振り分けた機会と脅威それぞれに対して、緊急性や重要度を評価した上で優先順位を決めます。

そして、分析結果を経営戦略や施策に反映させます。今すぐ取り組む必要のある短期的な施策なのか、あるいは将来的に検討を進める長期的な戦略なのかを明確化することで、分析結果の機動的な実行が可能です。

■まとめ
PEST分析(ペスト分析)とは政治、経済、社会、技術といった4つの観点からマクロ環境(外部環境)を分析するマーケティングフレームワークのこと。

これら4つの視点から外部環境に潜む自社にプラス・マイナスのインパクトを与え得る要因を整理し、影響度を評価します。

PEST分析が必要になる場面は、「新たな事業に取り組むとき」や「既存ビジネスを転換するとき」など、さまざまな場面があります。マーケティングの準備段階の分析の中でも、目的やゴールの設定からはじまるPEST分析は最初に行うべき分析です。

目的を持ってPEST分析をしても、分析結果をうまく活用できなければ成果につなげられません。分析結果に基づいた戦略を立てるだけでなく、「脅威を機会に転換できないか」「機会は脅威になりうるか」を考えることで、より精度の高い戦略を導き出せます。

また、企業の都合でPEST分析をするのではなく、法改正や社会経済に影響を与える出来事の発生など、「社会のトレンドが変化するタイミング」で分析することも大切です。

時代の流れに応じてタイムリーな分析ができれば、外部環境の変化に合わせて柔軟に事業方針やビジネスモデルを転換できます。

■最後に
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本田季伸のプロフィール

Avatar photo 連続起業家/著者/人脈コネクター/「顧問のチカラ」アンバサダー/プライドワークス株式会社 代表取締役社長。 2013年に日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」を開設。プラットフォームを武器に顧問紹介業界で横行している顧問料のピンハネの撲滅を推進。「顧問報酬100%」「顧問料の中間マージン無し」をスローガンに、顧問紹介業界に創造的破壊を起こし、「人数無制限型」や「成果報酬型」で、「プロ顧問」紹介サービスを提供。特に「営業顧問」の太い人脈を借りた大手企業の役員クラスとの「トップダウン営業」に定評がある。

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