サービスや商品を販売する際には、生活者がサービスを認知し比較検討し購入に至るまでに、適切にサービスを見つけその魅力を感じて貰うきっかけづくりが必要です。
マーケティングではまさに、このきっかけづくりとしてプロモーション戦略を考えます。
その際にどんなプロモーション手段があるのか、その手段がどんな戦略向きなのかを知ることで、より効果的な販促活動に繋がります。
そこで、今回は、プロモーション・ミックス戦略とは、売上向上に繋がる販促戦術について解説します。
「成功のカギは、たとえばもっと美味しいとか、より洗い上がりが白くなるとか、もっと燃費がいいとか、顔色がよくなるとかいうふうに、消費者に利益を約束することだ。」
<デイヴィッド・オグルヴィ>
■プロモーションとは?
プロモーションとは、わかりやすくいうと製品・サービスを宣伝する販売活動のことです。マーケティング戦略の一部であり、広報活動の意味でも使われています。
プロモーションの目的は、主に3つあります。製品・サービスの認知を広げること、新規顧客を獲得すること、既存顧客へ購買の動機付けをすることの3つです。
まずは、製品・サービスの存在を多くの人に知って貰らなければなりません。
魅力や必要性を最大限にアピールする必要があります。製品やサービスの存在を知ってもらうためのプロモーション手法は沢山あります。
新聞・雑誌への広告掲載や、テレビ・ラジオCMなどメディア媒体を利用したプロモーションのほか、ポスティングやチラシ投函、ダイレクトメールなど多種多様です。
そして、製品・サービスの認知を広げることができたら、購買を動機付けます。購買意欲を高め、購入のきっかけや理由を提示します。
この一連の流れだけで終わらせるのではなく、購入後もメリットを実感してもらえるようなプロモーション活動を検討することが大切です。
■プロモーション・ミックス戦略とは?
プロモーション・ミックス戦略とは、企業がマーケティング目標の達成のために使用する広告、人的販売、販促、広報などを組み合わせたものです。
消費者が企業からのメッセージを受け取る主なプロモーション手段を効果的に組み合わせることで、製品の訴求効果を高めようとする考え方になります。
最大のコミュニケーション効果を発揮するためには、製品、価格、流通まで含めた、マーケティング・ミックスの実現が最も重要です。
プロモーションミックスは、マーケティング戦略のひとつであり、マーケティングの目標を達成するために「広告宣伝活動」「広報(PR)活動」「販売促進活動(セールスプロモーション)」「人的販売の手法」を効果的に組みわせることを指します。
これら4つの手段は大きく『プル戦略』と『プッシュ戦略』の2つに分かれます。
プル戦略とは、消費者が能動的に情報取得を行い、自発的に「欲しい」と思わせるように売り手側が仕掛けることです。
広告宣伝活動、広報(PR)活動、販売促進活動(セールスプロモーション)が該当します。そのほかにも、SNSや口コミなどもあります。
一方のプッシュ戦略とは、売り手側が消費者に直接アプローチすることです。人的販売と販売促進活動(セールスプロモーション)が該当します。
プル戦略とプッシュ戦略は両立するので、プロモーションミックスの考え方を用いてすべての施策を連動するほうが、それぞれの施策を単独で考えるよりも思考や分析の幅が広がり効果も高まります。
■プロモーションミックスが重要視される背景
なぜプロモーションミックスが重要視されているのでしょうか。ここでは、その重要性についてを「メディアの複雑化」「社内での役割の細分化が進んでいる」の2つのポイントから解説します。
1、メディアが複雑化している
インターネットの普及やソーシャルメディアの利用率拡大などにより、現代はメディアの構造が複雑化しています。ひと昔前は、広告と言えばテレビが定番でした。
今もその影響力は大きいですが、消費者が接触するメディアが多岐に渡るため、ターゲットに合ったメディアや手法を選定し、くまなく「戦略と戦術」を立てることが重要になってきています。
2、社内での役割の細分化が進んでいる
メディアが複雑化し、消費者の購買行動が変化したことにより、社内の組織でも役割の細分化が進んでいます。
たとえば、宣伝部の中でもオフライン広告・オンライン広告と分かれていたり、デジタル専門のチームがいたり、ソーシャルメディアの担当を独立させていたりする組織もあります。
細分化された組織の中でプロモーションの効果を最大化するためにも、プロモーションミックスの考え方を用いることは重要だと言えます。
■5つのプル型プロモーション戦略
プロモーションミックスの手法として、プル戦略には、広告宣伝、販売促進(セールスプロモーション)、PR(広報活動)、口コミ・SNS、そしてプッシュ戦略には人的販売、販売促進(セールスプロモーション)があると紹介しました。
では、それぞれの手法はどのようなものでしょうか。詳しく紹介します。
1、PR
主に企業の広報担当者が担うPRです。プレスリリースやニュースリリース、ピッチ(特定のメディアに情報発信しPRの機会を仕込む)の配信、テレビや新聞、雑誌などに働きかけるパブリシティなどが該当します。
PR、つまり広報活動もプロモーションのひとつの手法です。広告宣伝とは異なり、プレスリリースやニュースリリースとして広告費をかけずに自社から情報を発信します。
それらをテレビ局、新聞社、インターネットニュース社などのメディアに取り上げてもらい記事化してもらうことによって、自社の認知やブランドイメージを高めていくプロモーション手法です。
2、広告宣伝
宣伝担当が担う販売のための告知活動で、広告枠を購入したり費用が発生する場合が多いです。広告宣伝は、企業が広告費をかけて広告を出稿するプロモーション手法です。
具体的には、テレビ、新聞、雑誌などのオフライン広告や、Web上で行うバナー広告、ディスプレイ広告、テキスト広告、SNS広告などが挙げられます。費用はかかりますが、狙ったターゲットにリーチできるという点が特徴です。
3、セールスプロモーション
生活者に商品やサービスを認知してもらい購買意欲を高める活動がセールスプロモーションです。商品のサンプル配布や無料キャンペーン、コンテスト、イベントへのブース出展なども含まれます。
「販売促進」ではプロモーション・ミックスの手法の一つではなく、「販売を推し進める活動全般」と捉えられてしまうためセールス・プロモーションとした方が混同されにくいと思います。
販売促進は「セールスプロモーション」とも言い換えられ、販売を目的にしたプロモーション活動全般を指します。
例えば、店頭POP、チラシ掲載やリーフレット、店頭サンプリングなど、実際に購入する場で行われるものや、流通を巻き込んだ販売コンテスト、展示会への出展などもセールスプロモーションの代表的手法です。
4、SNS
最近ではInstagramやTwitterなどのSNSを使って情報発信する企業も多くあります。企業公式アカウントを広報担当やマーケティング担当、秘書室が担っていることもあります。
また、複数のサービスや商品、ブランドを扱っている企業では、ブランドごとのアカウントで情報発信することも多いです。近年は特にソーシャルメディアで消費者とコミュニケーションを取っていくことが欠かせません。
インフルエンサーの活用やソーシャルメディア上で行うキャンペーンなど、新しい取り組みが増えてきています。
5、口コミ
企業が発信するものではないので例外ではありますが、口コミも重要なプロモーション手段のひとつです。
生活者がサービスや商品をすでに認知していて購入を検討している場合、口コミを検索して情報収集する場合も多いです。口コミやソーシャルメディアを活用したプロモーション手法もプル戦略に該当します。
■プッシュ型プロモーション戦略
企業側が積極的にアプローチすることで、生活者が受動的・自動的に情報を得るのがプッシュ型戦略です。
企業があらゆるチャネルを使って商品やサービスの魅力を訴えたり説明する活動ととらえると分かりやすいでしょう。
これらの施策は生活者への認知度が低い商品や、競合他社との差別化が難しい商品、CMなどでは魅力やメリットを伝えにくい説明が必要なサービスに向いています。
■人的販売
最も分かりやすいのがセールスマンによる対面コミュニケーションや訪問販売です。生活者と対面かつほぼ一対一の関係の中でコミュニケーションがとれるため、非常に濃い情報発信ができます。
人的販売はプッシュ戦略のひとつとなり、人を介して販売を促進する施策のことを指します。
分かりやすいのはダイレクト営業や実演販売、販売会への参加など。直接営業担当者が消費者に商品・サービスを伝えられるため濃いアプローチができるものの、受け手側に興味がない場合、情報を押し付けられているようになってしまうのがデメリットです。
プル戦略とは異なり、プッシュ戦略は認知度のアップやブランディングに有効です。売り込みたいモノやサービス、認知度によってどの戦略が良いのかが異なるため、適切に組み合わせたり、時期によって変えたり、同時進行したりすることが重要です。
■セールスプロモーション戦略とは?
セールスプロモーモーションとは、購買の直接的な動機づけのために行われる活動のことです。
「広告」がブランドを好きになってもらうための活動であるのに対し、「セールスプロモーション」は購買を決断してもらうための活動です。
「広告」と「セールスプロモーション」の2つの働きが補完し合うことで、商品やサービスが実際に「売れる」ことにつながります。
■実施する目的を明確にする
セールスプロモーションの手法は多岐にわたり、目指す効果も様々です。
顧客の購買意思決定を促す点は共通しているものの、商品の認知度を向上することで達成するのか、売り場を改善することで達成するのかでは施策が異なります。
その際、セールスプロモーションを実施する目的の「明確化」が重要です。
認知度を上げるためにはインストアプロモーションより、来場客が多いイベントプロモーションが効果的でしょう。
効果測定に比重を置きたいなら、一方的な情報発信になりがちなイベントプロモーションより、双方向にコミュニケーションを行うダイレクトマーケティングが向いています。
時間と経費をかけてプロモーションを行えば、売り上げは上がるかもしれません。
しかし、売り上げ以外の目的が達成できなければ、それをもとに行う予定だった次の戦略に影響を及ぼす可能性があります。
■プロモーションの計画
プロモーションには戦略的な展開が必要になります。そのためにはまず入念な計画を立てなければなりません。
計画の流れとしては、まず企画を立て、それから実際の実施計画を立てることになります。
企画を立てる際には、まず市場情報を集め、分析し、戦略の課題を決めます。
同時に、ターゲットや投入する商品アイテム、販売エリアやタイミングなどを絞る(あるいは広げる)といった作業を行います。
その後、プロモーションの詳細な実施計画を立てます。プロモーションの仕組みやテーマを作り、用いる手法やメディア・ツールの詳細、表現方法などを詰めていきます。
■ターゲットの選び方
プロモーションを進める上では、ターゲットを明確に設定することが大切です。
それにより効果的な手法が変わってきます。ターゲットは大きく2つに分けることができます。1つはその製品を販売する実店舗やサービスディーラー、もう1つは個人消費者です。
そしてさらに売り込みたい消費者層を世代や性別などを鑑みて絞っていきます。ターゲットがうまくはまらないと、販売促進がうまくいかないこともありますので注意しましょう。
■見込み客のニーズを考える
セールスプロモーションを売り上げベースで検討すると、見込み客のペルソナや商品のセグメントを軽視した施策になってしまうかもしれません。
特にダイレクトマーケティングなどの双方向コミュニケーションを行う施策では、カスタマードリブンを考えなければ、購買行動につながらないうえに顧客離れのリスクもあります。
見込み客の特性を行動観察データまで含めて分析し、ニーズ・ウォンツを詳細に明らかにすることが重要です。
そのためにはデータベースが大切であり、分析を行うノウハウとリソースも必要になります。
市場分析による定量調査だけでなく、見込み客とOne to Oneで関わる販促のなかから定性調査も行いましょう。顧客の不満や意見を反映しながら、商品やサービスの販促施策を立てることが重要です。
■プロモーションの手法
プロモーションの代表的な手法には次のようなものがあります。
1、試用手法(試用機会の提供による誘導)
プロダクトサンプリング(試供品)、モニタリング(試用プラス意見)、デモンストレーション(実演)など。
2、プレミアム手法(特典の提供による誘導)
購入漏れなく型(封入プレミアム、応募漏れなく進呈プレミアム、etc.)、抽選型(応募抽選プレミアム、オープン懸賞プレミアム)など。
3、プライス手法(固定的な価格割引による誘導)
クーポン、リファンド(現金払い戻し)、オフラベル(特別価格品)、お試しサイズ品、増量パックなど。
4、制度手法(販売制度と一体化、サービス誘導)
ポイント付与、会員組織、サービス制度(メンテナンスサービス、無料配送、etc.)など。
これらの手法には、それぞれメリット・デメリットがあります。
例えば、「試用手法」は短期間のうちに購買を動機づけられるといったメリットがある一方、人手に頼ることが多く、説明にバラつきが出やすいというデメリットがあります。
また、「プライス手法」は購買動機づけの確実性が高いといったメリットがある一方、頻発しやすく、ブランドの価値を損なうといったデメリットも。
こうしたメリット・デメリットをふまえ、対象となる商品アイテムをどのくらいの期間のうちに、どれほどのボリュームを売りたいのかといった点などから、最適な手法を選択します。そして、具体的にどんなツールを用いてプロモーションを行うかを決定していきます。
■プロモーションのツール
1、グラフィック系印刷物
グラフィックデザインは、平面上に表示される画像や文字、色彩などを介して情報、メッセージを伝達する手段です。
そのために使用される媒体はポスター、チラシ、リーフレット、パンフレット、カタログ、ステッカー、新聞・雑誌広告、商品のパッケージや包装紙のデザインやロゴマークなど多岐にわたります。
2、編集系印刷物
マニュアル、機関誌、カタログ、情報誌、会報誌などが挙げられます。
中でもメンバーシップ誌と呼ばれる情報誌や会報誌は、お客さま(読者)の囲い込み(ファン化)と、自社のブランド力向上に適した、プッシュ型の情報発信手段です。
決まった誌面、ページに情報を落とし込むという制約のなかで、いかにターゲットに的確な情報を伝え効果を最大限にできるか、コンテンツクオリティの向上やセンスが求められます。
3、インターネット系ツール
現代では各企業のECサイトだけでなく、 ソーシャルメディア、スマートフォンサイト、スマートフォンアプリなど、顧客接点は多岐にわたります。
例えば、オンライン・オフラインを融合させたO2O・オムニチャネル戦略も、時代にあったネットプロモーションの一つです。
Iotの進展で顧客情報が容易に入手できるようになり、これらの情報を利活用することで、顧客導線に合ったマス~Web~店頭のプロモーションを展開することが可能になります。
4、購買時点メディア(POP広告)
通称POP広告(point of purchase広告の略)とも呼ばれ、販売店などの内外に展開される広告やディスプレー類の総称です。
例えば、小売店販売員による口答のコミュニケーションや陳列什器におけるパネル、スタンド、ショーカード、ポスターなどが挙げられます。
POP広告は「サイレントセールスマン」と言われるように、最終購買段階である小売店頭に置いて、消費者に購買衝動を与えたり、いかに「買う動機づけをさせる」ことができるかが重要なポイントです。
5、プロモーションイベント
イベント(催物)を開催してサービスの販売促進を図る手段です。
商品のプロモーションやテストマーケティング、ブランディングなどを主な目的としたポップアップストアや展示会など、リアルの場において、ただモノを売り買いするだけはありません。
モノにまつわるストーリー(コト)を伝えることで、消費者とのコミュニケーションの深化を図ることができます。
6、映像系ツール
商品の紹介や企業の紹介など、プロモーションに動画が活用されています。
動画によるプロモーションは情報伝達力が高く視覚的情報・聴覚的情報の2つの情報を使うことで品・サービスへの理解が深まり、より高い宣伝効果が期待できます。
7、SPメディア
SPメディアとは、あらかじめ料金設定され、広告原稿素材の持ち込みで掲載が保障される、広告媒体としての事業形態を整えたマス媒体およびネット系ツール以外のすべての広告媒体のことを指します。
例えば車内広告、ネオンサイン、新聞折込などが挙げられます。
プロモーションを行う際は、上記の1~7やその他のツールをターゲット層や商品の特性などに合わせて選んでいくことになります。
例えばターゲットが若年層であれば、3のネット系ツールや6の映像系ツールを選び、シニア層であれば、7の新聞折込や車内広告を選ぶなどして使い分けます。
■プロモーションの効果測定
プロモーションを実施した後は、その結果を後のプロモーション活動に活かすために、効果を検証する必要があります。
効果の測定方法にはさまざまなものがありますが、KPI(重要業績評価指標)を設定し、最終目標にどれくらい近づいているか、達成度合いを見る方法などが使われます。
プロモーションが成功したからといって安堵するのではなく、なぜ成功したか、その手法を横展開できないかを分析し、循環型マーケティングで次のステップへ進める必要があります。
流行は日々変化し、消費者の思考も時代の流れに沿って移り変わります。マーケティング戦略も生き物として捉え、プロモーション後もフォローやレビューを実施しましょう。
■まとめ
プロモーション・ミックス戦略を駆使した、プロモーション活動は、製品・サービスを上手にアピールして売上に反映するための重要な役割を担っています。
上手に戦略を立てるためには、ターゲットを絞り、そこへ向けて効果的なコピーを打ったり、必要であれば投資をしてキャンペーンを展開したりする必要があります。
プロモーションは市場動向を間近で捉えることができる、とても面白い業務だと言えるでしょう。
様々な手法を駆使し、見込み客に商品の存在を知らせて興味をひき、ウォンツを刺激して商品を記憶してもらい、商品の購入に結びつけます。
この「購買意思決定プロセス」を「AIDMA(アイドマ)」と言い、セールスプロモーションはこの全体に作用する活動です。
商品のシズル感やプレミアム感をアピールして、記憶に残る販促ツールを作成しましょう。競合商品との差別化を図ることが重要です。
今やスマートフォンやタブレットからいつでもどこでも商品が購入できる時代です。海外製品も競合として無視できない時代になり、販売戦略や広告戦略も複雑化・多様化するなかでは、これまで以上に的確なマーケティング課題の抽出が必要になります。
さらに、商品やサービスのポテンシャルを引き出し、見込み客の本音や価値基準にフィットするセールスプロモーションを行っていくことも重要でしょう。
セールスプロモーションにはさまざまな手法がありますが、見込み客の購買意思決定を促すという点は共通しています。これはマーケティングや広告とも密接に関わる活動です。
顧客情報をデータベースで管理して詳細に分析し、顧客のフィードバックから改善点を洗い出していくことで、持続的な売り上げの向上を目指しましょう。
販売促進は労働集約的な仕事であり、通常はSP会社と呼ばれる小規模の販売促進専門の代理店が主要業務を担当することが多いですが、大手の広告代理店に依頼すると企画部分だけ行ったり下請け会社に丸投げするため、プロモーションのコストが高くなりがちです。
■最後に
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