新規事業を立ち上げる際には、漫然と頭の中だけで、あるいは自分の狭い経験の範囲の中だけで新商品の企画を考えても、顧客のニーズに応えられるものが出てくる可能性は低く、効果的ではありません。
新規事業の領域や新たなビジネスの方向性を定める上では、新しいマーケティング機会を探り、仮説を構築することを目的に、実際の「顧客」へのインタビューやリサーチを行うことが大きなヒントになります。
このように顧客の課題をベースにした事業開発のアプローチを推進することを「探索型のリサーチ」と呼びます。
特に革新的な事業の創造を目指すスタートアップの起業家が、顧客を起点としたアプローチが実現できないと、新規事業のアイデアのセレンディピティに繋がったり、ピポッドの鍵となる絶好の機会を得ることができなくなります。
そこで今回は、探索とは何か、新規事業の開発に探索型リサーチが重要な訳について解説します。
■新規事業の探索とは?
新規事業の探索とは、イノベーションを起こす事業開発を立ち上げるという目的を達成するために、膨大な数の方向性の可能性がある際に、どのような辿り方をすれば効率的に、顧客のウォンツを満たす、市場ニーズに到達しうるかを検討することを指します。
現在、顧客ニーズが多様化し、モノ余りの中、ありきたりの商品やサービスでは、革新的なイノベーションを起こすことが難しくなっています。
探索型アプローチは、新しい仮説を生み出すために、顧客の課題や要望、期待をヒアリングしながら「顧客」を中心とした新たなマーケットを調査するアプローチになります。
あくまでリサーチである以上、事前にある程度の初期仮説を持って置くことが必要です。
新規事業の立ち上げでは、どうすれば顧客に受け入れられるビジネスモデルの仮説検証が効率的に行えるかという、予測やイメージは持っておくことが望まれます。
初期仮説の立案に当たっては、文献調査だけでなく、ターゲットとなる顧客へのヒアリングやアンケートなどを通して課題に対する理解を深めておくと効果的です。
■ヒューリスティック探索とは?
ヒューリスティック探索とは、試行錯誤的な問題解決法を用いた探索になります。
AIなどのシステムを駆使した新規事業の探索の大きな欠点は、先行しているビジネスモデルのデータや分析を必要とする点です。
つまり、ベンチマーキングが可能な膨大なビジネスモデルがないと、いかにAIの仕組みが優秀でもシステム的に未来の経験を先読みできないことが課題になります。
事業開発における「ヒューリスティック探索」とは、パズルやゲームにみられるような難問に対して、筋道を立て、手際よく問題を解くためのアルゴリズムを見出すことが難しい際に用いられる手法になります。
例えば、将棋で先を読むには、各コマの動き方や、敵の王を詰ますと勝ちであることを知っていなければなりません。
加えて、ある局面でどちらがどのくらい有利なのかを評価できないと強い「人工知能」を作ることができません。
ディープラーニングを使って局面の評価値を学習し、それと探索を組み合わせて評価値が良い局面に繋がる、有効な次の打ち手を選ぶこともできます。
新規事業の立ち上げにおいても将来的には、機械学習によって成功したビジネスモデルを学習し、それを使って新たな事業開発の探索をするアプローチ方法も有効になる可能性はあります。
新規事業の探索では、参考とするビジネスモデルが完璧である必要はありませんが、ある程度は有用なものでないと先読みによるアイデアの探索がうまく行かなくなります。
■探索型リサーチとは?
探索型リサーチとは、マーケティングリサーチの一種であり、仮説検証型のアプローチではなく、顧客へのリサーチに基づいて仮説を立案したり、新しい事業や市場を探るアプローチのことを指します。
消費者ニーズの多様化、モノやサービスの供給過多の中、新たな事業機会を探索するために、消費者の深層心理に迫るような対面インタビューを行うことが一般的です。
顧客自身も明確に意識していない潜在的なニーズを把握したり、定期的に同じテーマで調査を行い時系列で変化を観察する事で新しいニーズを発見したりするアプローチが主に用いられます。
■新規事業立ち上げでは、「探索」が大事な理由
自社にとって好ましい新規領域を探す上では、顧客が直面している状況を別の角度から捉え直すということが非常に有効です。
新規事業領域の探索というと、これまでに経験のない領域も含めて考えるということで、斬新なアイデアを創出することに意識が向かいがちです。
しかし、王道のアプローチは、「顧客の声」を別の角度から捉えるということです。
顧客が直面している文脈を正しく捉えるには、顧客が抱えている問題や課題を生み出している周辺の環境や、現状との関係性に着目することが欠かせません。
現在の状況と過去の取り組みがどういった因果関係にあるか、どういった制約に直面しているために対応を諦めてしまっているかに目を向けることが、新規事業の立ち上げの探索や新商品開発の探索には、最も重要な鍵となる要素になると言えます。
■ジョブ理論とは?
ジョブ理論とは、人が商品やサービスを買う行為の背後にあるメカニズムを、「イノベーションは顧客ありき」で、論理的に説明するための理論になります。
ジョブ理論は、商品やサービスを展開する上で、顧客のニーズを論理的に掴むために有用な手段です。
クリステンセン教授は、『ジョブ理論』という著書の中で、顧客が直面している文脈を正しく捉えて、解決すべきジョブを取り除くことの重要性を説いています。
ジョブ理論で重要視されるのが「ジョブ」という要素になります。
米国企業では、新しい仕事が発生するたびに、そのスキルを持つ人をフリーランスで登用しますが、期間限定のため、プロジェクトが終わると、契約が終了します。
ジョブ理論は、この米国流の仕事方法に例えたものになります。
事業開発を行う際の「ジョブ」とは、顧客が抱えている深刻な問題に対して、「顧客が解決しなければならない事柄」を指します。
イノベーションには、成功パターンがあり、これが分かれば成功を運任せにする必要が無くなります。
顧客となるユーザーが個人や法人であるかを問わず、何らかの課題がある際に商品やサービスを利用する際には、必ず「解決したい課題」や「成し遂げたい目的」があります。
ジョブ理論では、その目的を「ジョブ」と位置付けて、事業開発に繋がる顧客ニーズを「探索」しているのです。
■顧客の探索で成功した事例
例えば、専門商社の顧客は、これまで扱っている商材がコモディティーにより競争力を失っていく状況に危機感を抱き、新規事業の探索を始めることになりました。
彼らは、斬新なアイデアの事業化や未知の領域への参入はしませんでした。
日常的に取引のある顧客側が求めている自社の製品を強化するためのサービスを提供するために、そうした悩みを解消できる企業との提携やM&Aを推進し、自社製品の競争力を補完することで、ビジネスの新しい成長を手に入れることができました。
更にこの専門商社の顧客は、専門商社より仕入れたハードウェアを搭載した最終製品にしていくにあたり、他の製品との連携や外部のサービスと接続に対応できる機能を必要としていました。
そこで、専門商社がパートナーと連携して、顧客が製品を組み上げる過程で、必要なソフトウェア領域の付加価値を提供することに成功しました。
ニーズ(Needs)とは、直訳すると必要、要求、需要などの意味ですが、事業開発で使われる「顧客ニーズ」は、消費者向けであれば日常の生活で「こうだといいな」という必要性になります。
事業開発では、日頃のビジネスの中で、顧客が「これを解決したい」と思う理想の状態と現実が異なる機会を発見し、そのギャップを解消しようとする欲求を探索することが成功の近道になると言えるのです。
■探索型リサーチとジョブ理論を考える大切さ
ある特定のシチュエーションで人(顧客)が成し遂げたい進歩を「ジョブ」と呼びます。顧客には必ず「ジョブ」が付随します。
だから「顧客」を単位として数えるのではなく、「ジョブ」にフォーカスすることこそが重要なのです。
人は、「ジョブ=不満」を解消することで快感を得ます。
例えばあなたが大事なデートを控えているとしたら「オシャレな服装と髪型を整えたい」といったジョブが生まれるでしょう。
ジョブは、顧客が商品・サービスを購入するかどうかの判断材料になります。
よって、顧客の置かれた状況により、購入する製品が左右されます。
顧客のニーズが先にあって、企業はそのニーズを埋めることを目的に、事業開発を行う必要があると言えるのです。
■まとめ
新規事業の立ち上げ時にどのような事業機会があるのかを、顧客へのリサーチをベースに探り当てるための手法が探索型リサーチになります。
「顧客はどのようなモノやサービスを欲しているのか」「顧客のニーズに応えるために、自社のサービスや商品をどのようにアップグレードすればいいのか」など事業の安定化を図るうえで大切なヒントを探し出せます。
探索型リサーチでは、最終的には統計処理なども行いますが、それと並行して、深層心理にまで迫るような対面インタビューを行うことも新たな事業を探索する絶好の機会になります。
なぜなら、顧客自体も明確に意識していない潜在的ニーズを把握しようと探索することが、ブルーオーシャンとなる革新的な事業機会に結び付くからです。
新規顧客へのスポット調査だけでなく、既存顧客にも定期的に同じテーマで調査を行い、時系列の変化を見ることで、新しいニーズを発見しようとする探索型のアプローチも非常に有効です。
「利益がなければ事業は存続できない。そして、利益の源泉はただ一つ、顧客しかない。『これが次世代の商品である』とどんなに旗印を掲げたところで、どんなに旧来の製品との違いを訴えたところで、顧客がいなければ意味がない。」
<ピーター・ドラッカー>
■最後に
高付加価値の新しいモノを、より低コストで提供するブルーオーシャン戦略では、いくらアイデアを思いついたところで、それを上手に活用しながら売っていかなければなりません。
なぜなら、新しい市場を開拓することが目標ではなく、その先で市場環境の変化に対応し、顧客のニーズを埋める商品やサービスを開発して売上を作りだして行くことこそが、ブレイクスルーの鍵になるからです。
その際、経営者や事業開発の責任者が市場開拓の経験やノウハウが不足している時もあるでしょう。そのような際には、外部のCINOを登用すること効果的です。
スタートアップの場合、新規開拓に必要な営業の経験や業界の人脈に乏しく、アーリーアダプターとなる初期顧客層を獲得し、「顧客を創造」するために必要なコネクションを持っていない様であれば、その価値がユーザーに届かず、自然に売れ行きが上がることはありません。
日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」では、大手企業で培った豊富な知識・経験・ノウハウ・人脈を保有する顧問や、フリーランスの若手でハイレベルな現役のプロ人材を5000人以上、ネットワークしています。
その中で、営業活動における新規開拓の強化に欠かせない営業プロセスの改善と強化を推進することを目的に、顧問契約をベースに営業顧問のチームビルディングを行い、探索型リサーチと販路拡大に必要となる実行支援を行っています。
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