経営指標とは?資金調達や経営改善に経営指標を活用するポイント

投稿日: 作成者: KENJINS運営会社社長 カテゴリー: プロ活用方法   パーマリンク

会社経営を行っていると、売上高、利益率、人件費など様々な数字が出てくると思いますが、実はそれらの数字は経営改善のネタの宝庫になります。

なぜなら、経営指標は、安定経営の必須ツールといって過言ではなく、経営指標の活用度合いが大きいほど、経営改善の精度が高まり、業績改善のスピードが加速するからです。

そこで今回は、経営指標とは何か、資金調達や経営改善に経営指標を活用するポイントについて解説します。

■経営指標とは?
経営指標とは「会社の経営状態を数字であらわした指標」のことです。決算書の数字をもとに計算することで、自社の状態を客観的な数字のデータで把握することができます。

財務諸表などの決算書の数字をもとに収益力や成長性などを算出して確認することで、精度の高い経営改善や業務改革に役立てることができます。

経営指標を積極的に活用する手法を専門用語で管理会計「計数管理」と言います。管理会計ほど経営に役立つものはありません。

例えば、売上成長率、営業利益率、自己資本比率、など等、会社の実態を表す経営指標は、会社の成長戦略を考えるうえで有効に活用することが出来ます。

■経営指標でわかる5つのこと
経営状況は、次の5つの観点から分析できます。また、それぞれの分析で用いる指標は異なります。

1、成長性分析
企業がこれまでどのように成長してきており、今後どのように成長するのかを分析する方法になります。

成長性分析で押さえるべき経営指標は「売上高増加率」「利益増加率」の2つです。

売上高増加率は、前期の売上に対して今期の売上がどれだけ増加したかを示す指標です。企業が将来的にどの程度拡大するかを考える材料として用いることができ、値が5%以上だと優良水準とされています。

市場の規模自体が縮小している場合や企業の規模が大きい場合などは、売上高増加率が低くなる傾向にあります。

2、収益性分析
企業がどの程度の利益を上げられているかを分析する方法。

収益性分析で押さえるべき経営指標は「売上高営業利益率」「総資本経常利益率」の2つです。

売上高営業利益率は、売上高に対し、営業利益がどれだけ占めるかを示す指標です。

よって、企業の営業活動、すなわち本業でどの程度効率的に利益を出しているかを考えるための材料になります。

3、生産性分析
企業が経営資源をどの程度効率よく活用しているかを分析する方法。

生産性分析で押さえるべき経営指標は「労働生産性」「売上高付加価値率」の2つです。

労働生産性は、投入した労働量に対しどれだけ成果が得られたかを表す指標です。労働生産性が高いほど、労働投入量あたりの成果が大きいことを示します。

また、業種によって労働生産性の適正値には差があるので注意が必要です。労働生産性には物的労働生産性と付加価値労働生産性があります。

4、安全性分析
企業がどの程度の支払い能力を持っているかを分析する方法。

安全性分析で押さえるべき経営指標は「自己資本比率」「固定比率」「流動比率」の3つです。

自己資本比率は総資本に対する自己資本の割合を表す指標です。自己資本比率が高いと、他人資本(借入金など)が少なく健全な経営であることを表します。

40%以上が優良水準であるとされています。

5、活動性分析
企業の活動がどの程度活発かを分析する方法。

活動性分析で押さえるべき経営指標は「総資本回転率」「売上債権回転率」の2つです。

総資本回転率は、総資本に対する売上高の割合を示す、すなわち一定の期間において総資本を何回回収できたかを表す指標です。

よって、総資本回転率が高いほど、資本を使って効率的に利益を上げている活発な企業であるといえます。

■経営指標をマネジメントする3つのメリット

1、「収益性」:自社が儲かっているかどうか?
収益性は会社を存続させていくうえで最も重要な観点になります。

「収益がプラスだから良い、マイナスだからダメ」ということではなく、その理由を知ることが効率的な経営改善につながります。

経営指標を活用すると、他社と比較した時の自社の強みと弱みがどこにあるのかを知ることができるため「更に伸ばせる余地があるのか」「改善するとしたらどこに着手するのが効率的なのか」などを効率的に判断するのに役立ちます。

具体的には、以下のようなことを知ることができます。

 【経営指標で収益性を確認することで分かること】
・会社全体としてどのくらい儲かっているのか
・経営のための資本をムダなく使うことができているか
・経営効率は良いか
・利益を生み出しやすい商品やサービスを扱えているか

強みと弱みを正しく理解することで有効な経営判断を実施することが可能になるのです。計算式は下記の通りで、プラス10%以上が優良水準になります。

計算式【売上総利益高営業利益率=(営業利益÷売上総利益高)×100】

2、「安全性」:財政面が安全かどうか?
安全性とは、会社の財政状態が問題ないかどうかという観点です。

いくら利益が出ていても返済能力を超えた債務を抱えた状態であれば、財務面の改善が必要になります。

経営指標を活用すると、財政面の状態を数字で客観的に知ることができます。

「借入金をきちんと返せる財政状態なのかわからず不安なだけで何もできない」という状態を解消し、必要な対策を早期に講じることが可能になるため、倒産や財政状態悪化のリスクを減らすことができます。

例えば以下のようなことがわかるというメリットがあります。

【経営指標で安全性を確認することでわかることの例】
・現金だけで債務を返却する余力があるかどうか
・倒産のリスクがどのくらい高いのか
・適切な範囲で事業投資できているか

財政面のリスクを早期に発見することで資金繰りの悪化を防止することができます。計算式は下記の通りで、プラス40%以上が優良水準になります。

計算式【自己資本比率=〔自己資本(純資産)÷総資本〕×100】

3、「生産性」:事業の効率が良いかどうか?
生産性とは、事業運営のために費やしている人件費やお金の効率が良いかどうかという観点です。

利益が黒字で財政面が安全であったとしても経営資源の活用効率が悪ければ是正が必要になります。

経営指標を活用すると、人件費や投入した資金の使い方に無駄があるかどうかを知ることができるので、「どこを改善すれば効率よく利益を上げられるのか」を明らかにし、最短で経営改善策を立てることが可能になります。

わかることとしては以下のようなものがあげられます。

【経営指標で生産性を確認することで分かること】
・現在の人件費が適正なのかどうか
・競争力のある商品やサービスの提供や営業活動を行えているか
・人件費や設備などへの投資効率が良いかどうか

現状のヒト・モノ・カネの割り振りが適正かどうかを調べることで業務を効率的に改善することができます。

このように経営指標を活用して上記の3つの状況を明らかにすることで、自社の問題点や改善できるポイントを把握し、効率の良い経営改善を推進することができるのです。

計算式は下記の通りで、常に増加が優良水準になります。

計算式【人時生産性=営業利益金額÷総労働時間】

■経営指標を活用する際の3つの注意点
経営指標に基づき自社の数値を分析して経営に改善に役立てるときには注意が必要な点もあります。

1、どういう観点で分析するかが大切
まず最初に注意したい点が、どのような観点で分析するのか「軸を持つ」ということが必要になります。

経営指標は、どれも元の数字があればすぐに計算できるものばかりです。しかし、ただ計算をしてその数値を眺めているだけではうまく活用することはできません。

会社をどのような方向に持っていきたいのか、目的を考えながら経営指標を活用することが重要です。

例としては、以下のようなものがあります。

 【目的別経営指標活用方法の例】
(1)経営上の課題を知りたい場合
平均や競合他社よりも評価が悪い経営指標を抽出して課題として認識し、ビジネスの改善策を検討する。

(2)銀行の融資に通りやすくしたい場合
融資の際に重視される経営指標「自己資本比率や総資本経常利益率など」に着目し、売上拡大やコスト削減などの改善目標を立てる。

会社によって注目すべき経営指標は異なります。自社のやりたい事業や実現したい状態を明確にして、それを達成するためのツールとして経営指標を活用するようにしましょう。

2、結果だけでなく原因が重要
経営指標を計算したら、結果が良いか悪いかだけを見るのではなくなぜそのような数値になったのかの原因を把握することが重要です。

例えば、「損益分岐点」は低いほうが、多少売り上げが下がっても赤字になりにくいので良いと考えられます。

ただし、将来の販売数増加を見込んで大型設備投資をしていた場合は固定費の上昇により損益分岐点はどうしても高くなってしまいます。

この場合、高いのでダメだという判断にはならないと思います。

会社が成長していく過程では将来の利益のために一時的に赤字に耐えなくてはならない時期もあります。あえて研究費や設備・広告費に先行投資することもあるでしょう。

結果だけに一喜一憂するのではなく、悪い数値だったときは必ずその原因を考慮するようにしましょう。

ただし目的をもって実施した施策の結果だとしても、許容できるリスクの範囲に収まっていない場合は新たに対策を講じる必要があるので注意しましょう。

3、現状分析だけでなく問題解決や戦略立案に役立てる
経営指標は会社の現状を分析するために非常に有効なツールです。

しかし「前年もしくは他社の数値と比較して良かったから合格・低いから残念」という風に考えるのではなく、その結果をもとに次に何をするのか解決策考案や戦略立案のために使うことが大切です。

たとえば労働生産性が低いという場合は、その現状を受けてどのように改善するのかを考えましょう。

数値が低くなる原因は会社によって異なりますので、自社の場合何が原因なのか以下のように可能性を上げて検討します。

・残業による長時間労働が多く従業員の業務効率が落ちている?
・マニュアル通りに仕事をしているがそもそもその手順の効率が悪かった?
・製造工程で無駄な待ち時間が発生している?

原因が明らかになればその対策として「1人あたりの業務時間が長くなり過ぎないように人員を強化する」「マニュアルを見直す」「製造スケジュールの工夫で余計な待ち時間を減らす」などの方法を考えることができるでしょう。

結果を眺めるだけでなく、経営改善に役立つように経営指標を上手に活用するようにして行きましょう。

■まとめ
経営指標とは、財務諸表等の数値を有益な情報に変換し、経営改善のベンチマークになり得る指標を指します。

経営指標を活用すると、現状と目標の乖離が明快になるので、経営改善の精度が高まり、効率的かつ効果的に業績改善を推進することができるようになります。

経営分析は、企業の将来を左右する重要な役割を担っています。

自社の経営状況を的確に把握し、それに基づいた経営判断を下すことで企業経営を成功に導くことができます。

ただし、財務諸表に記載されている数字は紛れもない事実の羅列になるため、何ら手を加えていない財務諸表等の数字を眺めていても、会社の経営課題は明らかにはなりません。

そのような際に経営指標を活用すると、会社の成長性、収益性、生産性、安全性など等、様々な角度から経営課題を明らかにすることができます。

「社会や経済は、いかなる企業をも一夜にして消滅させる力を持つ。」

「企業は、社会や経済の許しがあって存在しているのであり、社会と経済がその企業が必要にして有用かつ生産的な仕事をしているとみなす限りにおいて、その存在を許されているに過ぎない。」

<ピーター・ドラッカー>

■最後に
KPIや業績管理指標の設定と活用について、下記のような悩みはないでしょうか?

・業績向上等につながるKPIが設定されているかどうかが疑わしい。
・何のための経営指標となるKPIを設定・活用するのか分からない。
・経営指標が管理者・現場に浸透しているかどうかに不安がある。
・経営改善の指標が形式的になりがち、ないしは多く設定され過ぎ。
・本当に見るべき経営指標がなにかが不明確である。

中小企業の社長の場合、それなりに経営指標は設定されているが、日々のマネジメントの中で有効に活用されているとは言い難いと言えます。

経営指標を社長が1人だけで分析していると「この指標の捉え方はこれで合っているのか?」「他社がどのように活用しているのか知りたい」など、様々な疑問が生まれてくると思います。

多くの会社で、KGIは(無意識ながら必然的に)管理している一方で、KPIは管理されておらず、経営層から見えない形になっています。

現場の頑張りが経営成果であるKGIの向上に結び付ける必要があるにも関わらず、現場のみが頑張ってもKGI値が好転しません。

なぜなら、現場の頑張るべき内容が経営と整合性を欠いているために発生しているものだからです。

これらを解決すべく、多くの会社では「KPI」の導入し、可視化の実現を目指していますが、自社にCFOがいないスタートアップやベンチャー企業の場合には、経営者1人だけで管理会計を行うには、難しいこともあるでしょう。

そんな時は、顧問契約をべースに財務会計や会社の経営経験のある顧問やプロ人材に相談するのもお勧めです。

実際に企業の経営状況の分析を行った経験のある外部CFOとなる顧問やプロ人材と一緒に経営指標を確認することで、より効率の良い経営改善を行うことができます。

日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」は、様々な業界で顧問やプロ人材が培った知見を活かし、管理会計施策に取り組むことで結果にこだわります。

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本田季伸のプロフィール

Avatar photo 連続起業家/著者/人脈コネクター/「顧問のチカラ」アンバサダー/プライドワークス株式会社 代表取締役社長。 2013年に日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」を開設。プラットフォームを武器に顧問紹介業界で横行している顧問料のピンハネの撲滅を推進。「顧問報酬100%」「顧問料の中間マージン無し」をスローガンに、顧問紹介業界に創造的破壊を起こし、「人数無制限型」や「成果報酬型」で、「プロ顧問」紹介サービスを提供。特に「営業顧問」の太い人脈を借りた大手企業の役員クラスとの「トップダウン営業」に定評がある。

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