ソーシャルキャピタルとは?人的資本と関係性の構築が大事な訳

投稿日: 作成者: KENJINS運営会社社長 カテゴリー: 企業インタビュー   パーマリンク

「ジョブ型雇用」「成果主義」「フリーランス時代」「副業の解禁」など、いま企業は「個」が持つ「人的資本」にフォーカスする時代を迎えています。

現在、オープンイノベーションの観点で、社内外の優秀な人材が保有する「人的資本」に投資し、自社組織に落とし込める企業が成長しています。

企業運営を行う上では、人・物・金が経営資源になりますが、その中で「人の輪」に着目した「ソーシャルキャピタル」の取り組みが重視されています。

なぜなら、ソーシャルキャピタルが高い企業や組織ほど、人的な繋がりを活かし新規事業の立ち上げを加速させ、経営課題にイノベーションを起こし、効率的にビジネスを推進することが可能になるからです。

そこで今回は、ソーシャルキャピタルとは何か、人的資本と関係性の構築が大事な訳について解説します。

「リーダーの責任とは外部に対するものであって、かつ内部に対するものである。

外部に対しては成果に対する責任を持つことであり、内部に対しては成果を上げるために全力を傾けることである。

働く者としての責任とは、成果を上げることに責任を負うだけでなく、成果を上げる上で必要な全てを行い、それらの成果に全力を傾けることである。」

<ピーター・ドラッカー>

■ソーシャルキャピタルとは?
ソーシャルキャピタルとは、信頼や規範、ネットワークなど、社会や地域コミュニティにおける人々の相互関係や結びつきを支える仕組みの重要性を説く考え方のことです。

アメリカの政治学者ロバート・パットナムは、『信頼・規範・ネットワークが重要な社会的仕組みの中では、人々が活発に協調行動をすることによって、社会の効率性を高めることができる』とし、それがソーシャルキャピタルの概念となりました。

日本語では、「社会的資本」「社会関係資本」と訳されます。

ソーシャルキャピタルは、物的資本 (Physical Capital) や人的資本 (Human Capital) などと並ぶ新しい概念として定義されています。

企業にソーシャルキャピタルを当てはめると、人材採用や研修、多様性の維持や地域や社会との繋がり、といった「ヒト」にまつわる様々な部分に投資を行うことで、売上や利益の向上や価値の創造を行って企業の成長という対価を得られると考えられています。

■人的資本とは?
人的資本とは、人材の持つ能力・技能・人脈を示す経済学の用語です。

能力や技能や人脈は、蓄積することができ、各人が蓄積方法の意思決定を行うこともできます。その性質が他の資本である「モノ」や「カネ」と似ているため、「人的資本」と表現されています。

人的資本の蓄積には、投資が不可欠です。

この場合、投資の対象、つまり資本は「ヒト」であり、投資によって得られた対価が社会的な成長です。

能力や技能を向上させるためには、時間や教材費といった消費を行います。その結果として、将来の生産性向上を獲得することが可能になります。

環境変化著しい現代社会では、企業の製品やサービスの源泉である人的資本が財務資本にもまして重要視されています。

■ソーシャルキャピタルが重要な3つの理由
「ソーシャルキャピタル」は、「人脈」や「協調性」「チームワーク」という言葉でビジネスの場で評価されてきました。

1、事業の円滑化
オープン化が進み社外人脈の重要性が増しつつあるとは言え、まずは社内に自分の味方になってくれる人を沢山作っておかないとなかなか仕事の成果は出ません。

組織内においては、小さな社会が存在するので、ソーシャルキャピタルが大切な役割を果たします。

ソーシャルキャピタルが醸成されていれば、社内での「安心できる居場所」をつくり出し、離職防止やメンタル悪化防止の効果が期待できます。

・同僚から自発的に手助けが得られる関係
・職場内で自身の状況を正しく理解してもらえる関係
・職場ルールを正しく共有できている関係

相互支援の関係を職場内で築くことができ、組織を円滑に運営する為のインフラとしてもプラスに機能します。

「相互理解→相互支援→相互成長」のプロセスは互いに関わりあっています。各プロセスを高めることにより、他のプロセスの効果も増していくのです。

2、職場内の関係性改善
年功序列がなくなりつつある現在、新しく入社してくる後輩や、年下の社員に抜かれてしまうことを恐れ、新入社員や後輩に対して「競争・ライバル意識」を持って接してしまい、社員が孤立してしまう状況が出てきています。

Ranstad社が2018年に行った調査結果によると、60%以上の従業員が、上司との良好な関係性が築けていないために、すでに離職済みおよび、離職を検討していることが判明しています。

若手社員の退職率が増加傾向にある原因の1つとして、「仕事の悩みを気軽に相談できる先輩社員がいない」「アラートをあげにくい環境である」ことがあげられます。

企業と社会との繋がりが示せるソーシャルキャピタルを「社内メンター制度」に応用する会社が増えています。

社内メンター制度とは、「豊富な知識と職業経験を有した社内の先輩(メンター)が、後輩(メンティー)に対して、業務上のみならずキャリア形成なども含めた幅広い支援活動を行う制度のこと」をさします。

メンター制度の導入には、以下のような効果が期待されます。

・人間関係の再構築
・組織風土の理解・共有の促進と新たな風土の醸成
・社員が持つ経験、知識の伝承
・社員のキャリア形成支援のため
・個人が抱える職場での問題解決の支援

ソーシャルキャピタルによって社内の人間関係が健全になり、従業員のパフォーマンスを発揮しやすい環境が作れます。

3、ソーシャルキャピタルと人的資本と連携
人的資本の考え方は、「国」における教育や職業訓練といった要素を投資ととらえ、国内総生産、投資、消費、貯蓄および国民純資産といった集計値(経済的利益)へいかに繋げるのかという国策になります。

これを基本として「国」を「企業」に置き換えると、企業における人材戦略、人事施策への投資や成果に繋がります。

つまり、人的資本の状況が、企業の持続的な成長や企業価値に影響を与えると考えられています。

これは証券市場においても共通認識となりつつあります。市場環境の変化が激しいため、経営における人的資本の重要性が高まり、投資判断においても人的資本情報が重要になっているのです。

企業におけるソーシャルキャピタルは、社会的責任として社会的貢献活動を行う場面で深く関わります。

企業や組織にとって有益に働く「ソーシャルキャピタル」は、時代を問わずどんな業種の企業や組織であっても重要だと言えるでしょう

■ソーシャルキャピタルの構成要素
グローバル企業においては、8割以上が無形資産・無形要素になるというレポートがあり、研究力、著作権、ブランド、それを生み出すアイデアや情報、つまり「ヒト=人的資本」の力が企業の価値や競争力に繫がっています。

1、信頼
あらゆる取引で重要とされる要素のこと。相互で信頼があれば、品質や安全性、納期などさまざまな情報に安心できます。自発的な協力を促すときもあるでしょう。

企業取引において重要な信頼性。勝ち取ることは簡単なことではありません。

長年積み重ねた企業の歴史、取引実績、メディアや第三者からの評価はもちろん、社会的責任(CSR)を果たしているかどうかという視点も大切です。

ロバート・パットナムは、「知っている人に対する厚い信頼」と「知らない人に対する薄い信頼」とでは、後者のほうがより広い協調行動につながり、ソーシャルキャピタルの形成に役立つと唱えています。

2、規範
ソーシャルキャピタルにて、パットナム氏が重視したのは「互酬性」を持った「規範」になります。規範とは、企業が企業として存続し継続的運営を行うために適用される法律、基準、法的リスクへの対応を行う意味を持ちます。

規範を定めることは、企業が企業として存続し継続的運営を行うための基準となります。

基準を定めることで、企業が目指す方向性や従業員がどういった行動をしていくべきかが明確になり企業全体が統一化された活動ができます。

ロバート・パットナムは、相互に利益のあるwin-winの関係、つまり「互酬性」がある関係を目指すのが重要だと考えました。

互酬性を持つ規範とは、以下2つの行為になります。

・同等価値のものを同時に交換する行為
・その時点では不均衡でも将来、均衡が取れると期待できる交換行為

特に後者は相手に短期的な利益をもたらし、当事者には長期的な利益をもたらすと考えられています。

3、ネットワーク
ネットワークとは、周囲の人物やコミュニティ、団体などとの繋がりのことです。

ロバート・パットナムはこのネットワークを「上下関係をともなう垂直的なネットワーク」と、「横並びの水平的なネットワーク」の2つにわけて考えました。

相互利益が目指せる協力を引き出すには、両者が「win-win」となる水平的ネットワークが重要になります。

「win-win」とは、自分も勝つ、相手も勝つ」、「双方に利益があること」という意味です。

例えば、ある取引において、どちらも利益が得られるような状況を表すために使います。

相互関係を支えるには、上司と部下の関係に見られる垂直的なネットワークより、顔をつき合わせた水平的ネットワークのほうが重要だとする考え方です。

■企業のソーシャルキャピタルを高めるために
2022年1月の施政方針演説にて、岸田総理大臣は「人的投資が、企業の持続的な価値創造の基盤である」と発言しました。

そのための定量的な情報開示を、企業へ求めることも提言しています。

企業や組織が「ソーシャルキャピタル」を高めるには、どうすれば良いでしょうか?

企業内のソーシャルキャピタルを高めるためには、人事上の工夫や、各人の適正の見極めなどが考えられます。

外部との繋がりを発展させるためには、日頃からの信頼関係づくりが必要です。人脈を持っている人を組織に呼び込むという手も考えられます。

社会に対する信頼関係という観点からは、法令遵守や説明責任、社会貢献活動など、社会の要請に誠実に応える体制づくりが必要です。

ソーシャルキャピタルは社会の様々な関係性を指すため、それを高めるためにできる手段も様々です。

企業として戦略的に向上に取り組む場合は、個性を認め合い助け合ってこそ、全体が輝きます。

人の輪を築くこと、すなわち「チーム・スピリット」を持ち、どのような関係性を発展させたいか考え、人的に連携することが、ブレイクスルーの鍵になると言えます。

■ソーシャルキャピタルの醸成には時間が必要
第四次産業革命などによる産業構造の急激な変化、少子高齢化や人生100年時代の到来、個人のキャリア観の変化など、企業を取り巻く環境は大きな変化を迎えています。

ソーシャルキャピタルが「社会の中の関係性」である以上、ヒューマンキャピタルもすぐに高まるものではありません。

「人的資本」=「Human Capital」は、「ヒト」を磨くことで利益や価値を生む存在として捉えられています。

そのため、人材育成に発生する費用はコストではなく、投資として認識され、投資により「ヒト」を最大限活用できるという考え方になります。

普段から高める努力をしておくことで、徐々に企業の内外で「助け合い」や「融通をきかせる」「信頼して任せる」という行動が取りやすくなっていきます。

人脈のレベル感には様々なものがありますが、極力自分を助けてくれる人が要所要所にいることが望ましいのは言うまでもありません。

しかし、そうした価値ある人脈は一朝一夕にできるものではありません。

日頃からソーシャルキャピタルを高めるための工夫や方策を、地道に続けていくことが重要です。

■まとめ
ソーシャルキャピタルは、企業や組織、個人が持つ「資源」です。ソーシャルキャピタルを高めるための様々な方策を実施していくことは、長期的な視点で見たとき、様々な利益につながります。

そのためには、日頃から自分たちの持つソーシャルキャピタルを把握しておく必要があります。

ソーシャルキャピタルの概念を理解し、意識することが、ソーシャルキャピタルという「資源」を有効に活用するための第一歩となります。

社外からの社会的評価や、業績に結び付く結果を得るためには、まずは人材に投資して大切にしているかどうかが大きく影響します。

経営者が従業員の要望に耳を傾け、職場環境に配慮することで、「大切に扱ってくれる」という実感を従業員が持つことに繋がります。

アメリカでは2020年8月に米国証券取引委員会(SEC)がアメリカの上場企業に対して人的資本の開示を義務化しました。人的資本情報の開示が義務化されたという事実は、投資家が人的資本情報を重要視しているという意味に他なりません。

市場環境の変化が激しいため、経営における人的資本の重要性が高まり、投資判断においても人的資本情報が重要になっているのです。

企業が事業環境の変化に対応しながら、持続的に企業価値を高めていくためには、事業ポートフォリオの変化を見据えた人材ポートフォリオの構築は不可欠だと言えます。

イノベーションを創出卒ためには、付加価値を生み出す人材の確保・育成、組織の構築など、経営戦略と適合的な人材戦略が重要になります。

■最後に
現在、若手起業家が会社経営に苦労してしまう理由のひとつが「経営の悩みを気軽に相談できる相手がいない」こです。

そのような際に、豊富な知識と経験、人脈を有した先輩がメンターとして経営者の精神的な支えとなり、経営戦略のアドバイスを含めた、幅広い実行支援活動を行うマネジメント制度が効果的だと言われています。

また、社外の繋がりを構築し、職場の人間関係の希薄化やロールモデルの不在を解消する制度として注目されています。

ソーシャルキャピタルには、信頼の増大による情報共有化の促進や取引コストの低下、ひいては経済成長に寄与する可能性などが期待されています。

例えば、営業活動をする際、友人や知り合いなどソーシャルキャピタルが構築できていれば、新たな繋がりが築ける可能性が高まります。

こうした「橋渡し型」のソーシャルキャピタルが、経済面にも様々なメリットをもたらします。

日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」では、多様性の高まりに対して、外部人材を効果的に活用し、企業価値向上を計るために「人的資本」という考え方と、「和合の精神」を大事にしています。

日本には古来より、和合の精神があります。和合の精神とは、二つ以上の性質のものが一つに親和しあって融け合い一体となっている姿のことです。

日本人は特にこの和合を重んじ、それがモノ作りから人作り、そして組織作りに至るまで「人の輪」を活かし続けて来ました。

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本田季伸のプロフィール

Avatar photo 連続起業家/著者/人脈コネクター/「顧問のチカラ」アンバサダー/プライドワークス株式会社 代表取締役社長。 2013年に日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」を開設。プラットフォームを武器に顧問紹介業界で横行している顧問料のピンハネの撲滅を推進。「顧問報酬100%」「顧問料の中間マージン無し」をスローガンに、顧問紹介業界に創造的破壊を起こし、「人数無制限型」や「成果報酬型」で、「プロ顧問」紹介サービスを提供。特に「営業顧問」の太い人脈を借りた大手企業の役員クラスとの「トップダウン営業」に定評がある。

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