働き方の見直しが進む中で、「裁量労働制」が注目される機会も増えてきました。
スタートアップの起業家の中には、新たに裁量労働制を導入しようとしているが、フレックスタイム制に近いと思われている社長も多いです。
「自社の職種で裁量労働制の導入を検討している該当するか分からない。」「裁量労働制という言葉をよく聞くが、実は内容を良く理解していない」という経営者も多いです。
そこで今回、裁量労働制とは、裁量労働制のメリット・働き方と導入のコツについて解説します。
■裁量労働制とは?
裁量労働制とは、働く時間や配分などの労働時間について、会社から指示されるのではなく、労働者本人が決めることができる制度です。
勤務時間や業務の時間配分を個人の裁量に任せる働き方で、多様な働き方の一つとして考えられています。
労働基準監督署では、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として、法令等により定められた19業務の中から、対象となる業務を労使協定で定めました。
労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使協定であらかじめ定めた時間を労働したものとみなす制度としています。
この適用職種に該当する従業員は、決められた時間に出勤し、決まった時間まで働くというルールはありません。時間に縛られず働くことができます。
また、実際の労働時間が何時間であろうと、労使協定で定めた時間分は労働したものとみなし、賃金計算が行なわれます。
長い時間働くも、逆に短く働くこともできる働き方です。何時から勤務を始めてもOKですし、何時に勤務を終えても問題ありません。
始業時間を自分で決められるので、「遅刻」という概念もありません。かなり自由度の高い働き方を実現できるでしょう。
なお、適用業務の範囲は厚生労働省が定めた業務に限定されており、「企画業務型裁量労働制」と「専門業務型裁量労働制」の2種類に分かれます。
裁量労働制の導入にあたっては、「労使双方の合意」と「事業場所轄の労働基準監督署長」への届け出が必要になります。
■裁量労働制の目的
裁量労働制は、業務の性質上、それを進める方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある場合に導入することができます。
その業務を進める手段や、時間配分の決め方など、具体的な指示を使用者がしないと決めたものについて、あらかじめ「みなし労働時間」を定めます。
労働基準法では、「1日8時間、週40時間」という勤務時間が決められているため、企業に雇用されて働く場合、勤務開始時間と勤務終了時間が決められたルールの中で労働することになります。
しかし、たとえば新製品の研究開発や建築士など特定の業務においては、勤務時間が決まっていることで逆に効率が悪くなり、仕事がやりにくくなるといったケースがあるのです。
こういった問題を解決するために設けられたのが「裁量労働制」という制度です。
業務の具体的遂行方法については大幅に労働者の裁量に委ね、比較的自由に時間を使えるようにすることで、より高い仕事の成果を生み出せるようにすることを目的としています。
■裁量労働制を導入するメリット
裁量労働制を導入するメリットは、生産性の向上です。たとえば、専門型裁量労働制の対象となるコピーライターの仕事で考えていきましょう。
コピーライターはアイデアなどで勝負する仕事です。アイデアが出るまでに時間がかかる場合もあるため、通常の勤務時間で考えると、どうしても融通が利かないことが出てしまいます。
たとえば、勤務時間を超えたので業務を終えたり、業務時間を超えると残業が発生してしまうと、働く側にとっても、会社側にとっても、うまく業務を進めることができません。
こうした場合に裁量労働制を導入すれば、もっと柔軟に働くことができます。
アイデアが出ない日は、遅くまで仕事ができ、すぐにアイデアが出る日はすぐにその分早く帰れるようにする。成果次第で、柔軟に働き方を選ぶことができれば、より働きやすくなるのです。
■フレックスタイム制との違い
通常の勤務形態では、1日の労働時間が決められていますが、フレックスタイム制は、清算期間内の労働時間が定められています。
清算期間は勤怠の締め日のようなもので、1ヶ月以内であれば、各会社ごとに期間を設定可能。つまり1週間や2週間毎に清算期間を設けてもOKなのです。
厚生労働省のホームページに載っているフレックスタイム制の説明は、以下のようになっています。
フレックスタイム制とは、1か月以内の一定期間(清算期間)における総労働時間をあらかじめ定めておき、労働者はその枠内で各日の始業及び終業の時刻を自主的に決定し働く制度です。
労働者がその生活と業務の調和を図りながら、効率的に働くことができ、労働時間を短縮しようとするものです。
フレックスタイム制は出勤や退勤の時間は違えど、固定時間で働く人たちと大きな違いはありません。
ですが、裁量労働制だけは、他とは大きく異なります。時間や仕事のやり方の自由さで言えば、裁量労働制が圧倒的です。自分のペースでやりたいときに仕事ができますし、極端な話、会社ではなくカフェや自宅で仕事をしていても構いません。
自由の代償として、裁量労働制では基本的に時間外労働の概念はないと思われがちです。
しかし、先程も説明したように、みなし労働時間が1日8時間以上であれば、時間外労働が認められますので、覚えておきましょう。
■裁量労働制の対象業務とは?
現在、裁量労働制には「専門業務型裁量労働制」と、「企画業務型裁量労働制」の2種類があります。
「専門業務型裁量労働制」は専門性が高い業務で、「企画業務型裁量労働制」は企画・立案・調査・分析を行う業務で導入することができますが、それぞれ対象になる事業場に条件があります。
■専門業務型裁量労働制
専門業務型裁量労働制は、業務の遂行の手段および時間配分の決定などに関して、使用者が労働者に具体的な指示をすることが困難な業務において導入することができます。
対象となる業務は、次の19の業務に限定されています。
1.新商品・新技術の研究開発、または人文科学・自然科学の研究の業務
2.情報処理システムの分析・設計の業務
3.新聞・出版の事業における、記事の取材・編集の業務、放送番組の制作のための取材・編集の業務
4.デザイナーの業務
5.放送番組、映画等の制作の事業における、プロデューサーまたはディレクターの業務
6.コピーライターの業務
7.システムコンサルタントの業務
8.インテリアコーディネーターの業務
9.ゲーム用ソフトウェアの創作業務
10.証券アナリストの業務
11.金融工学等の知識を用いる金融商品の開発業務
12.大学での教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る)
13.公認会計士の業務
14.弁護士の業務
15.建築士の業務
16.不動産鑑定士の業務
17.弁理士の業務
18.税理士の業務
19.中小企業診断士の業務
■企画業務型裁量労働制
企画業務型裁量労働制は、業務の遂行の手段および時間配分の決定などに関し、使用者が労働者に具体的な指示をしない業務で導入することができます。
専門業務型のように対象業務が限定されているわけではありませんが、どの事業場でも導入できるわけではありません。
具体的には、次の4要件の全てを満たした業務が存在する事業場に限られています。
1、業務が所属する事業場の、運営に関するものであること
(例えば、対象事業場の属する企業などに係る事業の運営に影響を及ぼすもの、事業場独自の事業戦略に関するものなど)
2、企画、立案、調査および分析の業務であること
3、業務遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があること
業務の性質に照らして客観的に判断される業務であること
4、企画・立案・調査・分析という相互に関連し合う作業を、いつ、どのように行うかなどについての、広範な裁量が労働者に認められている業務であること
■裁量労働制を導入する際の注意点
ここまで、裁量労働制について解説にしてきましたが、ご自身の会社での導入是非について悩まれる方も多いのではないでしょうか。ここで注意点についてお話しします。
裁量労働制を取り入れることで起こりがちなのが、対象者・非対象者との摩擦です。制度の性質上、一見すると「自由度が高い働き方」と捉えられてしまいがちです。
そのため、非対象者から見たときに「あの人は、いつも午後から出社している」「仕事もそこそこに帰ってしまった」などと捉えられ、社内での不満につながってしまうケースもあります。
導入にあたっては、こうした社内理解も大切です。裁量労働制は朝が遅い分、夜遅くまで働いていることもあるので、上記でお伝えしたように、「なぜ裁量労働制が適用されているのか」を社内でしっかり伝えるなどの動きが必要になります。
■まとめ
「裁量労働制」について解説してきました。導入までの手続きなどはやや複雑な部分はありますが、働き方改革などで生産性向上への意識が高まっている今、「裁量労働制」にはいろいろなメリットがあり、よりフレキシブルに働いていくためには欠かせないものです。
もし裁量労働制の対象となる職種が社内にいる場合、その特徴をしっかり理解したうえで、「裁量労働制」を導入して生産性の高い組織をつくっていくのが良いのではないでしょうか。
裁量労働制・フレックスタイム制は、固定時間制に比べて、自分で判断したり、管理したりする機会が増えます。そのため、自分のペースで仕事をしたい方にはオススメです。
また、自由に使える時間が多いので、子育て中の方や、ワークライフバランスを大切にしたい方にもよい働き方の一つです。
ただ1点注意をしていただきたいのが、これらの制度は企業ごとに制度の詳細が違うということです。
就業規則に細かい規定が書かれていますので、固定時間制以外の勤務形態の方は、必ず就業規則を読んでおきましょう。
■最後に
会社に所属しながら、副業としての活動や複数の会社のプロジェクトに参画することもできます。副業についても法的な規制はありませんが、会社の規約に抵触しないかどうかは、把握しておいた方がよいでしょう。
また、働き方改革が浸透した今、新たなワークススタイルを選択し、フリーランスの顧問や副業として働く、新たなワークススタイルを選択するプロ人材が増えています。
フリーランスは、特定の企業に正社員として雇用され、サラリーマンとして仕事や給料を得るのではなく、あくまで個人として仕事を得て働く個人事業主のことを言います。
ただし、法的な資格は必要がありませんので、実績の証明も不用です。極端に言ってしまえば、誰でもいつからでも「フリーランス」と名乗ることができるのです。
フリーランス最たる特徴は自分で営業し、仕事を探し成果物やアウトプットを提供することです。フリーランスが結ぶ仕事の契約についてはプロジェクトをベースになり、「単発の案件ごと」が多くなります。
顧問としてクライアント依頼を受けたら、依頼内容とミッションを明確し、報酬を調整します。その案件に関する顧問契約が成立してから、実務を担うという流れが基本です。
顧問料の報酬体系や支払いパターンは、エージェントやクライアントとなる取引先により異なりますので、トラブル防止のためにも業務委託契約時にきちんと確認しておきましょう。
また、フリーランスのメリットとして働く場所や時間の融通が利くことが挙げられます。なかには場所や時間が指定される仕事もありますが、その仕事を引き受けるかどうかも、自分で判断して決められるのが、フリーランスという働き方です。
デメリットとしては、能動的に仕事を得るために自分から行動しないと稼ぎを得られないため、会社員に比べると安定しないということです。仕事を得るための営業力が求められます。
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終身雇用が崩壊し人生100年時代が到来した今、サラリーマンとして1つの会社だけに所属するだけでなく、個人事業主として企業と業務委託契約を結んで働くことも新たな働き方の選択肢の一つになりました。
正社員として会社に縛られることなく、自由に働くことが可能なフリーランスとして働く場合との違いを見比べたうえで、自分の生き方に合ったワークスタイルを選ぶようにしましょう。
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