現在、サブスクリプション型のビジネスが増え、単に新規契約数を伸ばすだけではなく、顧客との関係性強化が求められるようになってきました。
近年、見込み客・顧客の購買行動の変化に伴い、レベニューオペレーションの取り組みが重視されています。
ボストン・コンサルティング・グループによれば、レベニューオペレーションを導入した米国のB2Bハイテク企業において、営業の生産性が10~20%向上したという調査結果が発表されています。
そこで、今回、レベニューオペレーションとは、RevOpsの意味・CROの役割について解説します。
■レベニューオペレーションとは?
レベニューオペレーションとは、会社全体の売上や収益の向上に影響を与える部門が連携し、顧客に対してシームレスで一貫性のある良質な顧客体験を提供することで収益拡大を目指すことを指します。
レベニューオペレーションは、英語の「Revenue Operations」と表記され、略して「RevOps」と呼ばれます。
日本語では、営業を軸に据え、部門横断的に連携を図り、全社での売上増加を加速させる取り組みを意味します。
インターネットを中心とした、テクノロジーの進歩に伴い、リード顧客の獲得の手法が進化し、レベニューオペレーションを取り入れる企業が増えました。
Forrester社によれば、レベニューオペレーションを導入し、部門を横断した連携が取れている企業は、そうでない企業に比べ成長スピードが12~15倍早く、売上は34%高いという調査結果が出ています。
現在、マーケティングとセールス企業の売上管理の方法だけでなく、カスタマー・サクセスが重要になり、顧客とのエンゲージメントの方法も大きく進化しています。
レベニューオペレーション専任チームを設置する際は、部門ごとに別れていた機能を統合する必要があります。
■レベニューオペレーションを構成する3つの要素
レベニューオペレーションで蓄積されたデータは、営業・マーケティング・カスタマーサクセスの施策実行や企画立案に役立ちます。
1、セールスオペレーション(SalesOps)
販売数を目標に掲げる営業部門では、「新規顧客獲得」を最も重視します。
ですが、企業の開発競争が激化した影響で、製品やサービスの機能、性能で決定的な差を出すことが難しくなっています。
そのため、営業チームが持続的な成長基盤を築くために、営業データ分析や売上予測、リード顧客の獲得、見込みのナーチャリングを行い成約率を高める必要になります。
新規顧客の必要なフィールドセールスや成約に結びつくまでの購買決定に必要な、顧客サポート業務を担うのがセールスオペレーションの役割になります。
マーケティングと営業を連携させることで、見込み顧客のスムーズな購買体験を創出できます。
2、マーケティングオペレーション(Marketing Ops)
顧客単位や製品単位などで事業の経済性を測定する「ユニットエコノミクス」と呼ばれる指標を耳にしたことはあるでしょうか?
ユニットエコノミクスは、LTV「ライフタイムバリュー」とCAC(顧客獲得単価)で計算できます。
リード顧客を獲得しても適切な部門に顧客情報を提供するための効果的なデータ管理システムを持たないと、ビジネスの損失につながる可能性があります。
マーケティングオペレーション部門は、企業の全体的なマーケティング戦略を推進し、その成功可能性を高める役割を果たします。
3、カスタマーサクセスオペレーション(customer success Ops)
リード獲得後の問い合わせや新たな顧客ニーズに対して十分に応えるためには、カスタマーサクセスにより、購買後の顧客体験を作り上げる必要があります。「
顧客と長期的につながる必要性が増した今、CX(顧客体験)の重要性に多くのビジネスマンが気づき始めています。
豊富なテクノロジーを活用し、独自のセールスオペレーションを構築することで、ワークフローを合理化し、全員が正しい認識を持つようにすることができます。
カスタマーサクセス・サポートオペレーション部門は、社内の顧客データを活用することをミッションに、顧客データ分析や関連システムの管理・運用を行うチームです。
■レベニューオペレーションにCROが必要な理由
レベニューオペレーションを実現するためには、CROというポジションを任命し、組織間を横断した協力の文化を作り上げる必要があります。
その理由としては、売上増加という共通の目標に焦点を当て、営業、マーケティング、カスタマーサクセス、商品開発が連携するシームレスな企業文化を、築き上げる必要があるからです。
最新のテクノロジーツールを駆使することによってテクノロジーを標準化し、新しい取り組みを推進する必要があります。
CROが組織を横断的に調整し、レベニューオペレーションの責務を担うことで、売上と利益の最大化を促します。
CROは、日本語で「最高レベニュー責任者」になります。
米国では収益向上に貢献したレベニューオペレーション担当者が、毎年100人選出され、メディアで紹介されるなど、ポピュラーな職種にもなりつつあります。
CROをトップマネジメントを担うCXOの1人として任命することで、ライフサイクル全体でシームレスなカスタマーエクスペリエンスを提供することが実現できます。
これにより、企業に健全かつ予測可能な収益源がもたらされ、継続的に新たな成長機会を見出すことが可能になります。
■CROが担うレベニューオペレーションの6つの仕事
CROは、営業、マーケティング、経営企画、事業開発、カスタマーサクセスなど、売上創出に影響する全部門間の調整を行います。
1、レベニューオペレーションを推進する。
CROは、単に概念を浸透させることではなく、実際にマーケティング、セールス、カスタマーサクセスが連携して動けるように、バックアップします。
つまり、レベニューオペレーションを実現するためのチームを作ることがCROに課せられた大事なミッションになります。
その際、テクノロジーツールを可能な限り統合および調整し、より高次の目標に向かって取り組めるようにすることが求められます。
CROというポジションが存在していることにより、各部門は情報やデータを共有ですることが実現でききます。
部門ごとに分かれていたオペレーションやツールが統合され効率的になります。
2、ROI「投資利益率」を最大化する。
CROは部門横断的な責務を担うため、その成功にはレベニューオペレーションに関する詳しい知識を有していることが求められます。
確かなレベニューオペレーションの考え方を持つCROは、全社での成功に向けて、部門横断的に重要とされる「KPI」(重要業績指標)を管理します。
マーケティングは、見込み客を集め、新規顧客に育て、顧客の流出を防ぎ、固定客として維持管理していく仕組みなります。
KPIによりその活動を数値に置き換えて、数値をコントロールすることで、改善を行ったり、管理しコンバージョンを上げる施策を講じることも可能になります。
CROが担うレベニューオペレーションという概念は、海外企業では急速に広まっており、新しい職種として認識されています。
LeanDataの調査では、2018年~2019年の1年間でレベニューオペレーション部門のある企業が35%から58%に急増しています。
3、料金設計を考え調整する。
Forresterの調査では、「CRO」だけでなく、「レベニューオペレーション担当ディレクター」という職種が増えています。
「チーフセールスオフィサー」「VPセールスオフィサー」「ディレクターセールスオペレーションズ」など、営業系の肩書よりも多くなっています。
CROの仕事の一つとしては「価格設計」が主要なタスクとしてよく言われています。
有名なSaaSサービスでも、価格改定を何回も変更することは良くあることです。
CROの大事な仕事としては、顧客の反応やライバルの動向を鑑み、料金体系をブラッシュアップすることも欠かせません。
価格をいくらで設定するべきかあらゆる企業にとって、非常に大きなテーマになるため、事業活動を通じて顧客に貢献しつつも、しっかりと利益が出せるよう、最適化に取り組み続けることが大事な役割になります。
CROを任命し「レベニューオペレーション」を推進することが多くの企業に導入されているのは、収益の予測が容易になる点、そして、実際に導入企業の収益拡大に効果が出ているためです。
4、レベニューオペレーションの向上
米シリウスディシジョン社の2019年の調査によると、レベニューオペレーションによる収益拡大をサポートする連携体制が構築されている企業では、成長スピードが19%速く収益性が15%高くなっています。
CROは、レベニューオペレーションを重視した管理によって、その優先度を実践に移すことができます。
リードの受け入れ率が10%向上、社内の顧客満足度が15%〜20%向上し、GTM費用の30%が削減されるなど数々の効果を上げています。
このようにCROがレベニューオペレーションを最適化することで、新規顧客の獲得、顧客維持率の向上、そして売上増加を促すことができるのです。
これまでカスタマーサポートなどのアフターフォロ―を担っていた部門が新規案件創出を担うセクションに変化している認識が必要な時代なのです。
5、営業とマーケティングの組織間連携
近年になってレベニューオペレーションが重要視されてきた背景には、見込み客・顧客の購買行動の変化があります。
組織間の連携はビジネス成功の鍵であり、企業の売上増加を促す要因です。よくあるのは、マーケティング部門と営業部門の連携が挙げられます。
それぞれは最善の努力を尽くしているにもかかわらず、連携が課題となっている企業は少なくありません。
この2つの部門をうまく連携させることには様々なメリットがありますが、多くの組織では断片的な連携にとどまっています。
これらのメリットが売上増加に直結していることは容易に想像できます。一貫して良質なサービスを提供できれば、顧客の拡散により良い評価が広まり、新規の売上につながっていきます。
6、トップダウンで売上アップにコミット
組織の分断の問題は時間がたって自然に解決することはほとんどないので、顧客体験の向上と収益拡大という共通目標を今一度組織全体で共有する価値は十分あります。
CROがいれば、強力なリーダーとして、各部門を客観的に監督してもらうことができるでしょう。
企業が優先すべきは組織全体の足並みを揃えることであり、特定の部門に限られた成功ではありません。
レベニューオペレーションは、シンプルに言うと、組織の壁をなくして各部門が一つの収益目標を共有し協力しあうことです。
CROがトップダウン方式でレベニューオペレーションに取り組むことで、協力の文化を築き、課題に対して公平に対処し、常により上位の組織目標を目指せるようになるでしょう。
■CROに必要となる3つのスキル
未来のCROに求めるべき具体的な特徴をご紹介します。
1、部門を横断的な仕事の経験があること。
CROは、マーケティング、営業、カスタマーサポートなどの部門リーダーと協力し、部門同士の調整を図る役割を担っています。
特にCROは、「レベニューオペレーション」を監督し、マネジメントするために各領域での直接的な経験を有している必要があります。
最適な管理を推進するためには、サービスプロバイダーと協力し、テクノロジーツールを理解し導入と、浸透を推進する必要があります。
【活用ツール例】
・マーケティングオートメーション
・セールス・エンゲージメント
・カンバセーショナル・マーケティング
・データエンリッチメント
・レベニューオペレーションプラットフォーム
2、データドリブンを推進する。
「データドリブン」なインサイトは、ビジネスを成功させるための促進力です。
データドリブン(Data Driven)とは、売上データやマーケティングデータ、WEB解析データなど、データに基づいて判断・アクションする事です。
デジタルマーケティング技術の発展に伴い、様々なデータを可視化することができるようになりました。
企業は、可視化したデータを分析し、より費用対効果の高いアクションに繋げられるようになりました。費用対効果の高いアクションをとることができれば、それだけ売上拡大や利益率の改善に直結します。
部門間の協力をスムーズに進めるため、共通の収益目標に照らし合わせてレベニューオペレーションの成果を測る適切なKPIを各部門に設定します。
【データドリブンの例】
・1か月あたりのリード数
・商談数
・カスタマーサービスのスコア
・顧客満足度のスコア
・顧客生涯価値(LTV)
CROは、テクノロジーツールを使ってデータにアクセスし、データに基づきスマートな意思決定を下す方法を知っている必要があります。
3、強力なリーダーシップを発揮する。
マーケティング領域では毎年のようにさまざまな新しい概念が登場し、CROを筆頭に新しいポジションが生まれています。
これをすべてバズワード、トレンドと見なすのは早計で、組織がビジネス環境がどんどん進化すると、新たな課題に対応できなくなって行くことは確かです。
CROは、「最高レベニュー責任者」の肩書を持ち、会社の売上を牽引するリーダーです。リーダーシップの成功には様々なスタイルがありますが、会社の文化に合ったCROを選びたいものです。
企業は、優れたCROを任命し配備することで、社内の連携強化、カスタマーエクスペリエンスの最適化、ビジネス関係の強化など様々なメリットがあると言えます。
■まとめ
レベニューオペレーションとは、各部門が一つの収益目標を共有し、協力しあうことで、顧客のサービス継続率や収益率の向上を目指す取り組みです。
見込み客の購買行動の変化にもとづき、営業部門、マーケティング部門、カスタマーサクセス部門が統合された動きをすることで、顧客満足度を向上させ、収益を拡大していくことを目指す、顧客創造を目的としたスキームになります。
CROというポジションを設置し、イネーブルメントに取り組むことで営業、マーケティング、カスタマーサクセスの各チームが顧客と対話するのを妨げるような障害を取り除くことが可能になります。
優秀なCROがいれば、レベニューオペレーションを導入すれば、収益に関係する部門の運営機能は統合され、企業が収益を上げるのに役立ちます。
グループ間のコミュニケーションが改善され、効率的なワークフローが実現し、企業目標を達成しながらプロジェクトでシームレスに協力し合えるようになります。
会社のポリシーやSLA、ビジネス・プロセスに目を向け、それらをブラッシュアップすることも可能になるため、売れる仕組みを改善することにも繋がります。
顧客にとって最適な顧客体験が提供できるようになるため、収益拡大のみならず、顧客中心の組織へと変革することにも寄与します。
「社会にとって良いことを、企業にとって良いことにするためには、懸命な仕事、優れたマネジメント、高度の責任感、大きなビジョンが必要である。
マネジメントが社会のリーダー的存在であるためには、この原則を行動の原理とし、意識として遵守し、現実に実行していかなければならない。
なぜなら、優れた社会、徳のある社会、永続する社会は、私人の徳を社会の福利の基盤とした時に、実現されるからである。」
<ピーター・ドラッカー>
■最後に
企業のビジネスを阻害するものは、競合他社の製品・サービスだけはありません。
実は社内の部門間の連携不足による「壁」もまた、企業の収益向上を妨げる大きな要因となっています。
レベニューオペレーションを実現するためには、組織の壁をなくし、CROを中心に各部門が一つの収益目標を共有し協力しあうことが必須要件になります。
ですが、スタートアップや中小企業の場合には、営業、マーケティング、カスタマーサクセスの3の知見とスキルを持つ人材を採用することはそう簡単ではありません。
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