これまで日本の大手企業の多くは、新卒の人材では、職務を決めずに総合職として大量採用を行い、若いうちは賃金を低く設定することが一般的でした。
高度成長期時代は、年齢とともに賃金を上昇させる年功序列の仕組みは、終身雇用を前提とした企業にとっては都合のよい評価モデルでした。
ですが、終身雇用を前提とした年功序列の評価制度では、高いパフォーマンスを上げる人でも年齢が若いと頑張っても報酬が上がることが期待できないため、「フリーライダー」を生んでしまう原因の一つになると言われています。
そこで、今回、フリーライダーとは、成果で評価しフリーライダーを減らすコツについて解説します。
■フリーライダーとは?
フリーライダーとは、利益を得るための正当な対価を支払わず利益のみを得る 「ただ乗りする人」を指します。
フリーライダーは、英語で「free rider」と表記されます。日本語では、経済学用語の一つとして、何らかの供給を得るための費用を支払わないで便益を享受する者を意味します。
企業においては、対価が仕事の成果で利益が賃金とすると、「仕事をあまりしていない」「成果を出さない」にも関わらず、給料所得や対価を得る労働者のことを指します。
昔から日本の職場では、ビジネスを通じて仕事の成果を上げない「タダ乗り社員」のことを「給料泥棒」と呼んでいます。
■フリーライダーが組織に与える悪影響
フリーライダー社員が組織内に存在すると、組織全体に悪影響を与える可能性が高いです。
全体の雰囲気が悪くなる、業務効率が悪くなるといったことから、最悪の場合は企業の業績にまで波及していきます。
周りのメンバーは、フリーライダー社員に対して、「自分は頑張っているのにあの人はラクしている」「あの仕事量で高い給料をもらっているのはおかしい」といったネガティブな感情を抱きやすいです。
「あれでもいいのだ」というふうにフリーライダー社員に影響されてしまうと、周りのメンバーまでフリーライダー化する可能性があるため、企業は、対策を講じる必要があると言えます。
ただし、組織内のフリーライダーは、企業が適正な評価ができていない場合やコミュニケーション不足など、フリーライダーを発生させてしまう土壌をおのずから作っているケースも少なくありません。
■フリーライダー社員の特徴
1、業務に時間がかかる
従業員それぞれスキルや意欲などが異なり、業務にかける時間にも差があります。
ただ、やる気がなくて時間がかかっている、すぐに終わる仕事をあえて時間をかけているという傾向がみられると、フリーライダー社員の可能性が高いです。
フリーライダー社員は与えられた仕事だけで1日を終えたい、自分は最低限の仕事をこなし他の人に仕事をやってもらいたいといった怠惰な態度をみせます。
より悪質なフリーライダー社員は、仕事にわざと時間をかけて残業し、残業手当を得ようと考えます。
2、批判的な意見が多く仕事に消極的
フリーライダー社員は、いかに仕事や責任から逃れるかを重視しているので、それらが自分に回ってくる場合に批判的な意見を述べる傾向があります。
自分に仕事が降りかかりそうな場合は批判的な発言を行い、回避しようとする傾向が高いです。
建設的な批判であれば、従業員や組織のためになります。
しかし、フリーライダー社員の批判はあくまで保身のためであり、部下や同僚の仕事批判や提案の否定は説得力のない意見になることがほとんどです。
3、仕事への責任感が薄い
自分に不利益が起こることを避けようとするため、仕事への責任感が薄いのが特徴です。
仕事への責任感が薄く、業務上のミスがあっても気に留めません。自分のミスを他の社員に責任転嫁しようとするケースもあります。
責任から逃れようと重要な仕事を避けたり、失敗しても他のメンバーに責任を押し付けたりします。
また、与えられた仕事に対する責任感も薄く、しっかりやり遂げることなく、形だけで仕事を終えることもあります。
4、他人の成果を奪う
フリーライダー社員は、楽をして利益を得ようとする人です。自分の利益を多くするために、他人の成果をあたかも自分の手柄のように主張し、より利益を得ようと振る舞います。
例えば、上司から部下がプレゼン資料の作成を頼まれたとします。
部下は、時間をかけて仕上げ提出すると、上司はその資料をそのまま使用しました。役員クラスにプレゼンしたところ高評価を受け、部下ではなく自分の成果にしてしまいました。
このように、自分は労せずして人の成果を横取りしたり、仕事をせず評価を受け報酬を得るような例は、他にもさまざまなケースがあります。
5、他人に負担をかけて逃げる
フリーライダー社員は、面倒な仕事から逃れるために、周りのメンバーに振られる仕事が増える可能性があります。
仕事への責任感が薄く、業務上のミスがあっても気に留めず、自分のミスを他の社員に責任転嫁しようとするケースもあります。
仕事を任せようとしても、理由をつけて回避するのが特徴です。
その結果、他のチームメンバーが残業を強いられたり、生産性が落ちたりするなど、周囲にも影響を与えてしまいます。
■フリーライダーが生まれる背景
フリーライダーが生まれる主な原因には、終身雇用制度の崩壊や労働環境の変化などがあります。
1、終身雇用制度の終焉
終身雇用制が機能していた高度経済成長の時代は労働人口も多く、周囲の社員たちが協力し、フリーライダー化させないためにコストをかけて教育することができました。
しかし、成果主義が導入され雇用形態も幅広くなった現在、転職が当たり前になり、社員同士の関係性は以前よりも希薄になりました。
その組織の中でうまく立ち振る舞うことができれば、スキルアップ努力をせず成果を出していない従業員でも籍を置き続けられます。
即戦力が求められる時代において、フリーライダーをきちんと教育し、人材として活用することが難しくなっているのです。
2、労働環境の変化
正規雇用であれば、よほどのことがない限り、解雇されることはありません。
そのような生涯雇用が保障されている正規雇用労働者は、面倒な仕事や自分に責任がかかる仕事を周りのメンバーや非正規雇用労働者に押し付けて仕事を進めることができます。
終身雇用と雇用保護規制によって「仕事をあまりしなくても、雇用は保障されている」という勘違いを生む環境がフリーライダー社員を生みます。
■企業がフリーライダーを減らす対策
フリーライダーを減らすために会社ができる対策を3つ紹介します。
1、仕事を見える化する
フリーライダーが仕事をさぼれる理由の一つに、「何の仕事をしているかわからないから」というのがあります。
社員同士がお互いにどんな仕事をしているか把握できていない環境では、フリーライダーが生まれやすくなります。
一つひとつの仕事で担当者と期限を決定し、職場全体で可視化をすると効果的です。
日々の作業日報にその日にこなした業務内容を細かく記載してもらうことで、各社員の仕事内容を視覚化できます。そうすれば、仕事をしないフリーライダーにとって居心地の悪い環境となります。
会社側から退職勧告をしなくても仕事に対する評価の基準を上げ、誰もが成果が分かる仕組みを作ることで、フリーライダーの方から転職を希望が出て来ることもあるでしょう。
2、成果やプロセスを評価する
成果やプロセスを適切に評価することで、フリーライダーが手を抜けない環境に変えることが可能です。
360度評価などの多面的な評価基準を設けるのも効果的です。360度評価とは、上司だけではなく同僚など、評価対象者との立場や関係性が異なる複数の社員からの評価を行うというものです。
多面的な評価を実施することで、上司だけでは見抜けない評価対象者の働き方や考え方を明確にできます。
これにより、サボり癖のある社員のマインドを行動を変革させ、社員の不平等感を解消することができます。
3、教育体制やフィードバック体制を整える
教育体制の確立は、フリーライダーの言い訳を抑制する効果があります。研修制度の充実化は、他の社員にもプラスに働くため、積極的に導入する必要があると言えます。
また、社員との面談を定期的に行い、現状に対するフィードバックを行うことも効果的です。
人事考課の結果や日常の業務への取り組み方など、適切にフィードバックしていきます。フリーライダーには他者からの評価を踏まえ、自分を客観視してもらう機会を設けることが重要です。
■まとめ
フリーライダーとは、経済的・時間的・労力的なコスト(費用)を支払わずに、社会政治システムの恩恵だけを受け取ろうとし、働くモチベーションが低く、サボり癖の高いを指しています。
「給料泥棒」にあたる、フリーライダーの存在は、企業全体の営業成績や生産性に悪影響が及ぶことが多々あるため、経営者と職場にとって速やかに何らかの対策を講じる必要がある問題になります。
その理由としては、経営者がフリーライダーの存在に気付かないままでいると、周囲の人間の士気を落とすだけでなく、組織全体の成長にマイナスの影響を与える可能性が高いと言えるからです。
ただし、フリーライダーは、人材採用のミス、人事評価制度が未整備、組織の体制の問題、サービスの仕組み化が弱いなど、企業の問題があって生み出してしまう場合もあります。
そのため、そのまま放置してしまうと貴重な人材がストレスを抱えて、流出することもあります。
人事評価制度の整備や教育体制を整えるだけでも、居心地の悪くなったフリーライダーが転職したり、新たなフリーライダー予備軍からの応募が減ることもあります。
社員一人ひとりが生き生きと働ける環境整備や、CHOを登用することで従業満足度を高める様々な対策を講じることで、心を入れ替えて真面目に働き始めることも期待できます。
「人的資源から引き出せるものによって組織の成果が決定する。それは、誰を採用し、誰を解雇し、誰を異動させ、誰を昇進させるかという人事によって決まる。」
<ピーター・ドラッカー>
■最後に
企業における人材育成とは、仕事の中で具体的にどう「考えたらいいか」「行動すべきか」を教えることです。
将来の事業のあり方を踏まえ、将来求められるスキルを分析し、計算しながら、継続的に人材育成を行うことは、まさに組織の将来をつくることに他なりません。
教育の結果、仕事の中の具体的な判断、行動が変化し、業績向上に寄与する可能性が高まります。
教育には様々なコストがかかります。特に、新人教育には、膨大なOJTコストがかかってしまいます。よって、組織全体で計算して担当を分担することで組織全体の教育コストを下げることが可能です。
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フリーライダーを減らすためには、会社やチームの目標と人材育成が密に関連している状態を作り出すことが重要だと考えています。
KENJINSでは、経営者や人事部で社員教育に携わっている担当者に人材育成の現状や課題をヒアリングをさせて頂き、様々な角度からディスカッションを経てクライアント企業のご要望に即したオリジナルの企業研修プログラムを提供しています。
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