IT産業の市場拡大に伴い、システムエンジニアの需要が年々高まっています。
2020年に行われた中学生の「将来就きたい仕事」に関する調査では、システムエンジニアが男子中学生の将来なりたい職業1位に選ばれ、若い世代の中でも高い人気を誇っています。
システムエンジニアに対してどのようなイメージを持っているでしょうか。パソコンの前に座ってプログラミングをする仕事だとイメージしている人が多いと思います。
しかし、システムエンジニアの主な仕事は、企業からのヒアリングやシステムの設計を行うことです。
そこで今回は、システムエンジニアとは何か、システム開発に必要なSEの仕事内容について解説します。
「アイデアに価値はない。それを実行できてはじめて価値になる。」
<ラリー・ペイジ>Google創業者
■システムエンジニアとは?
システムエンジニアとは、情報システム開発のプロジェクトにおいて、顧客の要求から仕様を決定し、大まかな設計をするまでの上流工程を担い、システムの設計、開発、テストを手掛ける技術職を指します。
システムエンジニアの役割は、クライアントへのヒアリングを通じて要求に最適な仕様のシステム開発を行うことです。また、開発の現場においてシステム設計やプログラミングなどの業務を担当します。
SEが担当する上流工程は「要求分析・要件定義」「基本設計」「詳細設計」「テスト」などの業務です。
ただし、企業や開発チームによってSEの仕事内容は異なることもあります。プログラミング業務では、プログラマーに依頼することもあれば自分自身でプログラミングをすることもあります。
プログラマーの上位職であるため、プログラマーのリーダー的ポジションであるとも言えます。
プログラマー上位職のプロジェクト・リーダーとの違いは、システムだけでなくメンバーや予算といったプロジェクト全体の管理をするかどうかという点にあります。
会社の規模によっては、システムエンジニアがプログラマーとプロジェクト・リーダーの両方の役割を案件の終了まで一人で担当することもあります。
■システムエンジニアとプログラマーの役割の違い
システムエンジニアは、クライアントの要望・要求に基づいて、システムを設計することが主な仕事です。一方、プログラマーはその設計をもとにプログラミングを行うことが主な仕事になります。
1、システムエンジニアの役割
システムエンジニアの枠割としては、「クライアントの望むものをいかにして形にするか」というミッションを掲げ、プロジェクト全体を俯瞰しながら開発を推し進めていくことになります。
クライアントの声を直接受け取る立場にあるため、前項の仕事内容に当てはめると「要求分析」から「詳細設計」の部分を担うケースが多くなります。
開発における初期段階のいわゆる上流工程と呼ばれるフェーズを担いプロジェクトの行く末を左右する、極めて重要なポジションです。
プログラマーと比べて、任される仕事の裁量や責任も大きくなります。
的確なシステム構築のためにプログラミング全般の知識や経験を備えていることはもちろんですが、「プロジェクトの舵取りをいかに的確に行い完遂に導くか」といった総合的なビジネススキルも求められるでしょう。
システムエンジニアのキャリアパスとしては、他業種に移行したり、プロジェクト・リーダーやプロジェクト・マネージャーへ転向したりという道が考えられます。
また、自分の力を試してみたいという場合は会社員にとらわれず独立という選択肢も十分に考えられる仕事です。
2、プログラマーの枠割
プログラマーは、システム開発におけるプログラミングを専門に行う職種です。顧客と接する機会は少なく、SEが作成した設計書に沿ってプログラミングを行います。
システム開発のプロジェクトの中で「プログラミング」から「マネジメント」までの下流工程を担うのがプログラマーです。
一般的にはプログラミングに特化した専門職という位置づけですが、場合によってはシステムエンジニアとともに設計段階から参加するケースもあります。
そのため、システムエンジニアと立ち位置に差がない場合や、システムエンジニア自身がプログラマーを兼任していたりする場合もあります。
プログラマーのキャリアパスとして最も一般的なのは、システムエンジニアへのステップアップです。今まで培ってきたスキルを余すことなく活かしながら、より幅広い仕事に携わることができます。
■システムエンジニアの仕事内容
システムエンジニアの具体的な仕事内容について解説します。SEは以下の開発工程に沿って仕事を進めていきます。
1、要件定義
最初に顧客(自社サービスを開発する場合は関係部署)にヒアリングを行い、顧客がどのようなシステムを求めているかを明確にする工程を要件定義と言います。
要件定義では、顧客企業の課題や実現したい事をヒアリングし、システムでどのように解決するかを検討します。
そして、必要な機能や要件を洗い出し「要件定義書」としてまとめます。要件定義書には、業務処理手順、システムの操作法、利用するデータ、障害発生時の対応など細かく記載していきます。
要件定義で顧客の要望を正確に汲み取れないと、開発を一からやり直す場合もあるため、大変重要な工程です。
2、設計
要件定義書に基づいて、システムの設計を行います。設計は「基本設計」と「詳細設計」に分かれます。基本設計では、システムのあるべき姿をイメージしながら、画面の表示や操作方法、帳票の仕様やデータの入出力等の大枠を決めていきます。
詳細設計では、基本設計で定めた仕様をプログラムの観点でより詳細に設計していきます。
3、開発
プログラマーが詳細設計書に従って、プログラミングを行います。チームで定めたプログラミング作法やコーディング基準に則ってコードを書いていきます。
コードを作成した後はコードレビューやデバッグを行います。SEは、プログラマーから提起される課題解決方法を検討するなどサポート役として従事します。
4、テスト
設計書通りにシステムが正しく動作するか確認し、システムの品質を評価します。テストには、単体テスト、結合テスト、総合テストと複数の種類があります。
単体テストはモジュール単位で行うテスト、結合テストはモジュールを結合して行うテスト、総合テストは完成したシステムを利用して問題なく稼働するか確認するテストです。
単体テスト、結合テストはプログラマーやテストエンジニアが担当し、総合テストはSEが担当する場合が多いでしょう。また、品質管理もSEの仕事です。
5、運用・保守
システムは開発すれば終わりではありません。開発した後、正常に稼働しているか確認したり、システムの改善を行ったりします。
システムの利用に必要な作業を「運用」と呼び、機能を追加したり改修を行ったりすることを「保守」と呼びます。運用・保守もSEの大切な仕事です。
■システムエンジニアに求められるスキル
システムエンジニアに求められるスキルとしては、次のようなものが挙げられます。
1、ヒアリング能力
システムエンジニアは、クライアントに直接ヒアリングをしてニーズに合ったシステムの設計・開発をします。
そのため、システムに関する専門的知識と提案力だけでなく、クライアントの専門知識のレベルに応じた言葉を使用して分かりやすく説明ができる能力も求められるでしょう。
また、話をしながら理解する力とともに、認識に齟齬がないかの確認が必要な場面もでてくるため、論理的思考力も大事な素質となります。
2、コミュニケーション能力
一日中プログラミングをしているイメージを持っている方も少なからずいらっしゃると思いますが、システムエンジニアの場合はそうとも言い切れません。
特にシステムエンジニアは個人ではなくチームをまとめながらで業務にあたるため、普段からのコミュニケーションが欠かせません。
3、マネジメント力
システムの制作段階ではプログラマーにも適切な指示を出し、責任を持って作業を進めていきます。したがって、ある程度のマネジメント能力やリーダーシップも必要となります。
また、システムエンジニアはプログラマーの上位職であり、関わるメンバーも増えるため、円滑な人間関係を保ちながら業務を進めるためのコミュニケーションスキルが重要になってきます。
更に上位の職種であるプロジェクト・リーダーへのキャリアアップを目指す場合は上記のようなスキルは必須となるでしょう。
4、技術力
数ある手法から最適なものを選択し、クライアントの要望を過不足なく形にできる技術力は、エンジニアにはなくてはならないスキルです。
また、できる限り多様な技術を習得することは、より多くの選択肢をクライアントに提示できることにつながり、顧客満足度の向上に貢献します。
自主的に学び続ける姿勢は重要ですが、多くの企業では入社後研修が実施されます。それを足がかりにし、継続的に技術力のアップデートに努めることが重要です。
■システムエンジニアの年収情報
経済産業省が発表した調査では、IT業界の職種別の平均年収は以下となっています。
・高度SE、ITエンジニア(基板設計担当・ITアーキテクト):778.2万円
・SE、プログラマ(顧客向けシステムの開発・実装):593.7万円
・SE、プログラマ(ソフトウェア製品の開発・実装):568.5万円
・SE、プログラマ(組み込みソフトウェアの開発・実装):603.9万円
ただし、一口にシステムエンジニアといっても、企業規模や開発言語、開発案件によっても年収にばらつきがあります。
同じような条件で募集していても、企業によって大幅に年収の差があるケースも多いため、十分吟味して選ぶ必要があります。
自社サービスを社内の開発部門で作っている企業に所属するほか、クライアント企業から案件を請け負って社内で開発する形式や、クライアントのオフィスに常駐して開発にあたる形式など、働く環境はいくつかあります。
最近はリモートワークを取り入れている企業も多く、エンジニアが活躍しやすい環境が整ってきていると言えます。
そのため、現在、フリーランスのシステムエンジニアを目指す人が非常に増えています。
■まとめ
システムエンジニアは、コンピュータで動作するシステムを設計する技術者。顧客の要望を分析し、どのようなシステムを作るべきか、機能などを細かく考えることが主な仕事になります。
また、プログラマーへの指示や、完成したシステムのメンテナンスなども行います。
情報システムやネットワーク、さらには情報デバイスなどに使用される組込みシステムまで、私たちが日常生活を送るうえでIT関連のテクノロジーは欠かせないものとなりました。
システムエンジニアという職業は数十年前まで一般的なものではなく、需要も限定的でした。
しかし、とりわけ2000年代に入ってから、パソコンやインターネット、そしてスマートフォンが爆発的に普及してからはSEの需要は一気に増大し、IT業界を志望する学生も増えてきています。
SEは幅広い知識・スキルが求められますが、ものづくりに携わる職種としてやりがいを感じる人が多いようです。
■最後に
IT産業は、日本という国において数少ない成長産業であり、中でも技術専門職であるシステムエンジニアは需給がひっ迫しており、将来性が見込まれる職業のひとつです。
経済産業省の調査(によると、2030年にはIT人材(主に情報サービス業、ITサービス・ソフトウェアなどを提供する企業、ITを活用する一般企業の情報システム部門などに所属する人材)の不足数が最大で約79万人になるという試算が出ています。
以上のデータから、IT業界では今後も慢性的なエンジニア不足が見込まれることがわかります。中でもシステムエンジニアは、需要が高く、かつ平均報酬がも高い傾向にありますので、将来性がある職種と言えます。
エンジニアの不足は、先進企業をはじめデジタルトランスフォーメーション「DX」への投資活性化や、政府のICT投資による景気活性化が行われるであろうことなどを根拠にしています。
このようなIT業界の急成長に対してエンジニアなどの供給が追いついていないため、人材不足が起こっていると考えられます。
IT業界は、慢性的なエンジニア不足で需給が高い分野ですので、正社員だけなくフリーランスや副業でもシステムエンジニアになるチャンスが沢山あります。
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