ビジネスを推進する上では、時に大きなストレスを感じる時があります。そのような際には、ストレスを良い方向に転換させるコーピングを知ることで、心身ともに健康経営を推進することが実現します。
コーピングを社内教育に取り入れることで、組織のパフォーマンス向上にも役立ちます。
ですが、企業として社員のストレス対策にいかに取り組めば良いのか分かり難いです。
そこで今回、コーピングとは、コーピングの意味・仕事のストレスへ対処するコツについて解説します。
■コーピングとは?
コーピングとは、ストレスを感じた時に生じるストレス反応への対処法のことです。
コーピングは英語で、「coping」と表記されます。日本語では「問題に対応する」「切り抜ける」ことを意味します。
人間は、ストレスに長期間に渡って晒されると自身が受けたストレスに対して様々な反応を起こします。個々がコーピングのスキルをマスターすることで、ストレス要因の解決もしくは負担を減らすことが可能になります。
ストレスの多い現代社会において、上手にストレスを対処するスキルを身に着けることは非常に重要なテーマになります。
ビジネス社会において健康経営、ウェルビーイングという概念が注目されてきた一方、さまざまな理由で増え続ける従業員のメンタルヘルス不調になります。
コーピングを活用することは、自身が感じるストレスを管理し、セルフマネジメントを行う効果的な方法になると言えます。
企業においてもコーピングを研修に取り入れ、従業員に習得を促すことで、生産性向上や離職率の低減が期待できます。
企業人事や現場管理職には、衛生管理という面からも、生産性向上という側面からも、従業員のメンタルヘルスをサポートすることが求められています。
組織や個人が適切なストレスへの対処法を取得すれば、仕事のモチベーションが向上し、パフォーマンスが向上するメリットがあります。
■コーピングが注目される背景
コーピングが注目される背景には。ストレスの多い現代社会の環境があります。
業界や企業規模を問わず、ビジネスマンとして働いていると、仕事の責任に対する重圧や人間関係などのストレスがあります。
また、仕事上での人間関係だけでなく、プライベートにおいても家庭環境の問題など、様々なのストレスとなる要因があるでしょう。
こういったストレスが過度にかかると、うつ病などの精神疾患に罹ったり、身体にも悪影響を及ぼす可能性が高まります。
強いストレスがかかっている状態では仕事のパフォーマンスも低下します
そうならないように、仕事で成果を上げるためにもストレスへの対処法を習得する必要があるのです。
ストレスは働く上では避けられないものであり、正しく対処しなければ、業務に支障をきたす可能性があります。
コーピングを効果的に取り組むことは、日常の仕事の生産性を上げるための手段にもなると言えます。
ストレス対処の方法の一つがストレスコーピングと言われる理論で、近年注目されている考え方です。
■ストレスコーピングとは?
ストレスコーピングとは、ストレスの元に上手く対処することを指します。
ストレスコーピング理論はアメリカの心理学者ラザルスによって提唱された理論になります。
ストレスコーピングは、英語で「stress coping」と表記されます。日本語では、「ストレス対処法」での意味を持ちます。
ラザルスは、人間がストレスを感じるときの反応に対して、ストレスを与える要因であるストレッサーの大きさを一次的認知評価、ストレスを二次的認知評価という2段階で認知すると提唱しました。
ストレッサーをストレスを認知する際には、脳がそれを有害であると捉えたときに、ストレスと判断します。
二次的認知評価は、ストレッサーを対処できるか、できないかを判断するステップです。
対処できない場合には、ストレスを感じやすくなります。
ストレス理論では、ストレッサーと対処法がポイントであり、ストレッサーへの対処法がわかっていると、ストレスを軽減できることを示しているのです。
■効果的なストレスが成果に結びつくこともある理由
組織的にストレスコーピングを取り入れることで、ストレスによる心身の反応を起こしくくすることが可能になります。
1、スポーツの世界では、ストレスが成長の鍵になる
ストレスというと全て悪いことのようなイメージがありますが、スポーツの世界では、ライバルの存在やチームへ貢献する必要があるというプレッシャーがかかります。
試合当日でも、適度なストレスがあることは、反対にパフォーマンスにも繋がります。
厳しい目標に対して、自分を成長させるためと考えたり、期待されていると受け止めたりするなど、ポジティブに変換する方法になります。
2、営業マンにはストレスが掛かる営業会議が効果的
日頃のタスクが多い営業マンには、セルフマネジメントが求められます。
セルフマネジメントとは、自分で自分の仕事を管理する力で、一言で言うと自己管理能力のことを指します。
更に営業マンの場合、日々の売上を上げることが大事な役割になります。
そのため、定期的に営業会議がありストレスの影響を受けることは、結果を出すためのモチベーションの向上に寄与するプラスの面もあります。
ストレスコーピングは、ストレスの基となるストレッサーに上手く対処することで、成果を上げようとする方法論になります。
3、締め切りや期限のストレスがあると人は動く
多くのビジネスマンは、システム開発の納期やレポートの締め切りが迫っている際には、神がかった集中力を発揮し、効率的に作業を進めることができます。
これらの現象は、「締め切り効果」と呼ばれており、締め切り直前に集中力が上がるのです。
仕事では、クライアントへ納期や品質の向上、締め切りなどは、大きなストレスが掛かります。
ですが、ストレスコーピングを身に付け上手に対処することによって、自らのパフォーマンスを高める要素にもなり得るのです。
■ストレスコーピングと適応機制との違い
ストレスから心身を守るために、無意識に起こるのが適応機制です。
適応機制は欲求と深い関わりがあり、欲求が満たされないことによって起きる緊張や不安などを、人間は適応機制によって制御しています。
適応機制にはいくつか反応があり、他の手段で欲求を収める「代償」や欲求不満を他者にぶつける「攻撃」など様々です。
ストレスコーピングもストレスから逃れる行動ですが、自ら行うのか、無意識に行われるかといった部分に違いがあります。
適応機制は本能的な反応、ストレスコーピングは能動的な対処と覚えておきましょう。
仕事で強いストレスを受け続けることは心身にとって様々な悪影響があります。
そのため、ビジネスでは、ストレスコーピングの方法を理解した上で、効果的にストレスに対処することが必要になってきます。
従業員の身体的・精神的不調による問題を防ぎ、心身ともに健康な状態で働いて貰うためには、人材の状態を把握し、ストレスコーピングを実践することが必要不可欠になります。
■ストレスコーピングの3つの種類
ストレスコーピングには色々な種類があるので説明していきます。
1、問題焦点型コーピング
問題焦点型コーピングは、ストレスの原因を根本的に取り除いて、ストレスがある状況から抜け出せるよう行動することです。
ストレッサーそのものに働きかけて、ストレス自体を変化させて解決を図ろうとする方法です。
「~してはいけない」「~すべきだ」という思い込みから解放されるよう、自分の考え方を修正することも、問題焦点型コーピングの一手法になります。
問題焦点型コーピングと社会支援検索型コーピングなどが挙げられます。
2、情動焦点型コーピング
ストレッサーそのものに働きかけるのではなく、それに対する考え方や感じ方を変えようとする方法です。
これには情動処理型コーピングや認知再評価型コーピングが挙げられます。
情動焦点型コーピングでは、感情にアプローチすることを重要視し、辛いと感じる気持ちを変化させたり解消させたりして、ストレスをコントロールします。
ストレッサー自体を変化させることが難しい場合はそれを家族や友人、職場の同僚に話すことでストレッサーによって生じた不快な感情を処理していきます。
自分の中にある感情を言語化することで整理もできますし、話すことによって発散することが期待できます。
3、ストレス解消型コーピング
ストレッサーを感じたときではなく、感じてしまった後に、ストレスを身体の外へ追い出したり、発散させたりする方法です。
ストレス解消型コーピングは、気晴らし型コーピングとは買い物をしたり美味しいものを食べるなど、自分の好きなことを行って気分転嫁を図ることでストレス解消を行う方法です。
これは普段私たちが起こっているストレス発散と呼ばれるものと同じような方法です。
これは比較的簡単に気分がリセットでき、ストレスを軽減する効果があります。
ビジネスの課題を解決する必要がある場合には、ストレスの原因となるボトルネックの部分を根本的に解決する必要があると言えます。
■企業におけるコーピングの導入方法
企業としてコーピングを導入する際には、3つの方法があります。
1、メンタルヘルスに関する企業研修の実施
近年は、世界の国々でメンタルヘルス不調者が増えており、コロナ禍で影響で拍車が掛かりました。
世界で不眠症が20%増加、フランスではうつ病者が2倍になったというデータも出ています。
厚生労働省は、国民の健康を保持するために広く継続的な医療を提供すべき疾病として、「がん」「脳卒中」「急性心筋梗塞」「糖尿病」の4種類に加え、2011年から新たに「精神疾患」を追加してメンタルヘルスの対策に力を入れています。
自社でコーピングの対応が実施できない場合には、メンタルヘルスに関する企業研修に取り組むのも良い取り組みです。
心理的なトレーニングは内容を意識しなければ身につかないため、定期的に繰り返し学べる機会があると効果的です。
メンタルヘルス研修制度としてコーピングを取り入れると、社員個々が「組織全体としてストレスを適切に対処しようとしている」と捉えられるため、安心して働ける環境整備にも繋がります。
2、1on1
心理的な変化があったときに、どのように考えるか、どのような行動をとるかでストレスの度合いが変わってきます。
ストレスになり得る感情にならないように、コーピング対策の一環として、1on1でマインドや行動を変えることも効果的です。
1on1とは、部下の成長を目的とし、上司と部下が1対1での面談などを通して部下が抱える悩みや課題、経験などを共有する機会です。
ストレスコーピングに取り組む1on1の場合には、上司から話をするのではなく、部下自身が話をすることに特に重きが置かれます。
上司には部下の気持ちや悩みに寄り添うことが求められているため、部下にとっては日々の業務で感じたことや解決したい問題など、幅広く自身の状況や感情を話せます。
部下は1on1を通して感情や問題の整理がつきやすく、前向きな意識への転換やストレスの軽減が可能です。
3、社内メンター制度
ストレスの要因には、怒りや不安、焦り、緊張、落ち込みなどがあります。怒りやイライラはストレスとして認識しやすいですが、その他の感情もストレスになる可能性があるのです。
ストレスコーピングには、職場の悩みを家族や友人に相談する、信頼できる上司や同僚に協力してもらうなど、悩みを聞いてもらったり改善を助けてもらったりすることで、ストレスの軽減を目指します。
企業の場合、社内メンター制度があれば、自らが相談できる人を明確にできるため、コーピングにより不安や不満を解消しやすく、問題への適切な対処が可能です。
社内メンター制度とは、「相談者」の設定により幅広い面での精神的なサポートを受けられる体制です。
新卒社員を対象として実施されることが多く、一人ひとりに社内の先輩社員をメンターを相談役としてをつけます。
社内公認のメンターがいれば、コーピングに効果的であるだけでなく、仕事の悩みなどの相談ができるため、新卒社員にとっては慣れない職場での心強い味方を得られます。
■心理カウンセリングも必要な場合もある
心の問題は非常にデリケートな領域であり、知識がないために誤った対処方法を取るとかえってダメージが深くなり、症状を悪化させてしまう恐れがあります。
正しいケアの方法を学び、必要があれば専門医に見てもらうことが重要です。
多大なストレスを受けた際には、専門家によるアドバイスや知識によって、的確なサポートが得られるのが心理カウンセリングです。
心理カウンセラーは専門知識や技術を駆使し、相談者の話を受け入れてくれるため、安心して話ができます。
職場に多いストレスの要因は、人間関係の悩みです。
自分以外の人と関わりながら働く場面がほとんどなので、他者と上手く関係を構築できないとストレスを感じてしまいます。
会社に苦手な人がいたり、ある人が自分に攻撃的だったりするなど、職場には人間関係の悩みが多いです。プライベートな人間関係の悩みがストレスになることもあります。
心理カウンセリングを通じた専門家への相談は、新たな気づきが得られやすく、問題への認識を改めることにつながるでしょう。
企業の取り組みとして、社員が気軽に相談できる窓口の設置や、定期的なカウンセリングの機会を設けられると良いでしょう。
■ストレスコーピングのポイント
多くのビジネスマンが、同じ給料ならば、少しでもやりがいを感じる仕事をしたいと思っています。
ただし、何にやりがいを感じるかは、人によって異なり、価値基準となるものが「仕事感」や「価値観」と呼ばれるものになります。
1、金銭的報酬
人によっては、仕事が忙しくても、それに見合った報酬や評価を得られたり、大きながあったりすれば、ストレスはそれほど感じない場合もあります。
金銭的な報酬は、全ての人が持つ共通の価値基準になります。他人と比較し易く、他人との比較で「高い、安い」などを感じる傾向にあります。
従業員の退職理由は、現状の不満足よりも未来に対する不安・不信がその多くを占めます。
つまり、この会社に居ても、今よりも多くの金銭的報酬を得られないと考えるビジネスマンが多いということです。
大きなやりがいを得られないと感じることの一つは、報酬が少ないことがが挙げられるため、成果を上げた際には、報酬が増えるインセンティブ制度の取り組みも大事になります。
2、スキルアップに繋がる
スキルアップに繋がるという動機も金銭的報酬と同じくらい重要な報酬になります。
たとえ小さなものであっても、スキルを高め成果を上げることは自身の成功体験につながり、次の仕事への意欲向上をもたらします。
経営学では、仕事の成果創出に直結するとされているのは、モチベーションではなく行動の質や知識、スキルとされています。
モチベーションに関しては、もちろん低いより、高いほうが好ましいと言えます。
しかしながら、モチベーションは誰でも高まったり下がったりを繰り返すことが自然です。
3、ポジションを与えられる機会がある
より多くの金銭的報酬、より大きなやりがい報酬を得るためには、それを得るのに必要な機会が無ければ始まりません。
会社や上司は、部下に対してこの様な機会提供をする必要があると言えます
機会提供に伴うリスクとコストを負担してあげるのです。
成長機会を通して企業の中で様々な経験を積んだ人材は、将来的に管理職などの役職者として活躍することが期待されるでしょう。
成長機会は会社に指示を受けることもありますが、昇格制度を整えることで社員自ら成長機会を利用して自己成長することもできます。
■まとめ
近年では、職場におけるストレスによって心身の疲弊を感じている方が多くいます。コーピングとは、ストレスに対して適切な方法で対処することを指します。
ストレスコービングの知識を身に付け、ストレスの原因となる問題解決に積極的に取り組んだり、ストレッサーから逃れたりすることによって、ストレスを軽減・解消することが可能になります。
現在、社会で生きていく上では外部との関わりが不可欠であり、さまざまな負担やストレスは避けて通れないものです。
このような現実を踏まえると、ストレスや問題を良い方向に転換させるコーピングは社会人に欠かせないものでしょう。
ストレスコーピングを実践するには、ストレスの要因となるストレッサーを把握した上で自分の状態をしっかり知り、主体性をもって意識的に問題に対応していくことが重要になってきます。
社員が集中してパフォーマンスを発揮しやすい職場であれば、ストレスを感じにくくなります。
そのため、企業の取り組みの一つとして、社員の希望を取り入れた働きやすい環境整備を行うことは、社員のストレス軽減とパフォーマンスの向上に繋がります。
企業にとっては社員がコーピングを身につけることで、業務効率の改善や人材確保にもつながります。
ストレスコーピングの種類が多いと、色々なストレスが生じた場面で、内容に応じた対応を取ることが可能となってきます。
まずは自社でどんな取り組みができるのか、不足している点はないか、現状と照らし合わせながら検討してみましょう。
「精神的なスランプからは、なかなか抜け出すことができない。根本的な原因は、食事や睡眠のような基本的なことにあるのに、それ以外のところから原因を探してしまうからだ。」
<落合博満>
■最後に
ビジネスを推進する上で、最も大きなプレッシャーと日々の仕事でストレスの影響を受けるのが経営者になります。
その理由としては、経営者は孤独と言わるように、多くの社長には社内には適切な相談相手おらず、部下にコーチングをして貰うことは出来ないからです。
数々のリサーチにより、CEOのエグゼクティブコーチングへの投資に対する経済的影響が浮き彫りになっています。
欧米の100人の企業のCEOやエグゼクティブを対象とした調査では、コーチングへの投資に対して、なんと、570%の収益に繋がったという報告がされています。
具体的な収益としては、10万ドルから100万ドルの範囲となっています。
同じ時期にフォーチュン500企業の幹部を対象にした別の調査では、529%の収益アップが見られたそうです。
また、その研究では、以下のようなの間接的な影響も示しています。
・生産性の向上(回答者の60%アップ)
・従業員満足度の向上(53%アップ)
・より良い作業品質(40パーセントアップ)
・より多くの作業出力(30パーセントアップ)
日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」は、5000人を超える業界トップクラスのフリーランス顧問や副業のプロ人材をネットワークしています。
その多くが大手企業の取締役、外資系企業のCEO経験者、もしくは、スタートアップの経営やCXOとしてマネジメントの知識・経験・スキル・ノウハウを持っています。
経営者としてのスキルが高いコーチ陣になるため、コーピングを含めてCEOのエグゼクティブコーチングとしての役割を担うことが可能です。
会社の業績を向上させるためには、経営者であるCEOが責任感旺盛な強いリーダーシップを発揮することが欠かせません。
社員のモチベーションを高めるためには、ストレスコーピング理論をマスターした上で、まず最初に社長や経営幹部がこれまで築いてきたマインドを「変革する」必要があります。
優秀なコーチは単なる質問に終始せず、必要に応じてCEOに対して時にはアドバイスも行います。
KENJINSには、上場企業のCEO経験者や元代表取締役、取締役の経験者、特定分野の専門家、フリーランスの顧問が揃っています。
クライアント企業のCEOが抱えている経営課題の状況に合わせて、柔軟にコーチングのスタイルをカスタマイズし、ビジネス実行と成果の実現にこだわります。
現役バリバリのプロ人材も多数在籍しているため、様々な知見を活かしスピーディに経営課題を解決し、スタートアップの起業家の成長と会社の成長をハンズオン型で実行支援することが可能です。
ハイクラスな顧問やCXOの持つ英知を結集し、ビジネスを成功に導く人的ソリューションを提供する、日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」のエグゼクティブコーチングの活用を是非、ご検討ください。
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