DX時代のTCOとは?DXを推進するためにはTCOが大事な理由

投稿日: 作成者: KENJINS運営会社社長 カテゴリー: 運営会社社長   パーマリンク

現在、あらゆる産業において、新たなデジタル技術を使って、既存の産業を覆すような革新的なビジネスモデルを展開するスタートアップが登場し、AI技術やDXを武器にした「ゲームチェンジ」が起きつつあります。

こうした中で、企業規模を問わず、競争力維持と更なる強化のために、AIの導入やDXをスピーディーに進めていくことが求められています。一方では、環境の変化やライバルの台頭により過剰なシステム開発の投資が無駄になってしまうケースも増えているのは事実です。

そこで今回は、DX時代のTCOとは何か、DXを推進するためにはTCOが大事な理由について解説します。

「革新は一種の冒険である。それは将来の、しかも、極めて不確実な成果を得るために、現在の資源を投入することである。」

<ピーター・ドラッカー>

■DXの定義とは?
DXとは、「Digital Transformation」(デジタルトランスフォーメーション)の略で、直訳すると「デジタル変換」という言葉になります。「変換」というよりも「変革」という言葉がキーワードになります。

意味合いとしては、企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引することです。

つまり、DXとは、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを確立することです。その結果、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立することを指します。

■DX推進室が発足しシステムへの投資が加速
このようなDX時代の中で企業においては、DXを進めるべく、新たにDX推進室を作り、デジタル部門を設置するなどの取組みが加速しています。

しかしながら、PoC「Proof of Concept」 概念実証や戦略仮説、コンセプトの検証工程ばかりを繰り返すなど、ある程度の投資は行われるものの実際のビジネス変革には繋がっていないというのが多くの大手企業の現状となっています。

今後DXを本格的に展開していく上では、DXによりビジネスをどう変えるかといった経営戦略の方向性を定めて行くという課題があります。具体的には、これまでの莫大な資金を投下して開発した既存の基幹系のレガシーシステムが老朽化している問題があります。

また、システムの要件が複雑化し、ブラックボックス化している状態の中では、新しいデジタル技術を導入したとしても、既存のデータの活用やシステム連携が限定的であるため、その効果も限定的となってしまうといった問題が指摘されています。

また、既存システムの維持、保守に相当な資金や人材を割かれ、新たなデジタル技術を活用するIT投資にリソースを振り向けることができないといった問題も指摘されています。

これを放置した場合、今後、ますます維持・保守コストが高騰する、いわゆる技術的負債の増大が起こります。また、既存システムを維持したり、保守メンテンスできるIT人材が枯渇し、競争力が低下するのリスクも高まることも懸念されています。

■企業のシステム開発費の投資が増えた背景
現在、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展で大きな環境変化が見込まれる中、企業がAI やIoT などの先端デジタル技術に関連する研究開発を積極化していることが挙げられます。

こうした動きから、長年縮小が続いた情報通信(IT)分野の研究開発費は2016年度から増加に転じ、輸送用機械や工作機械など幅広い業種で積極的な投資が見られます。

今後も企業が競争優位性を発揮するためには、差別化の源泉となるコアとなるテクノロジー分野の研究開発費の増加は当面続く見通しです。

特に環境変化に対する危機意識が強い企業ほど、研究開発費を増加させる傾向にあることを踏まえれば、今後、DXがより多くの業界に浸透し事業環境が変化して行きます。大手企業を中心に生き残るために研究開発をより積極化していくと予想されています。

■世界的にシステムの受託開発の仕事が減る現象
IT産業には様々な企業がありますが、日本のIT産業の中でも1つの大きな業界にSI業界、ITベンダーがあります。SIはシステムインテグレータの略称でSIerとも呼ばれています。
SI企業は、顧客企業の要望するITシステムの開発プロジェクトを受託し、システムを構築して運用する仕事になります。
一般的に受託開発と呼ばれる仕事をメインとしています。日本のソフトウェアの受託開発を行う業界では、ピラミッド構造になっており二次受け、三次受けの会社も多く、大手の下請けとしてこの受託開発を業務の柱とする開発会社が沢山あります。

総務省が公表している情報通信白書によると、情報サービス業の企業数は合計3498社あり、そのうち受託開発ソフトウェア業は2321社あります。

ですが、大手SI事業が転換期に入っています、その要因は、新興のスターアップがSaaS型もしくは、クラウドとして安価にサービス提供するビジネスモデルが増えたことです。

■SI、ITベンダーの業務の転換期、受託開発からクラウドやSaaSへ
2010年代に入ってからSaas企業が大きなチカラをつけて、SI企業の受託開発の市場シェアを食い始めています。そのため、受託開発を柱とする従来型のSI企業では、サービスモデルを変革しクラウドへの転換を迫られているはずです。

そもそも従来型の受託開発は、顧客企業毎の要望を聞いてから企業毎個別のシステムを開発して行くスキームになります。ですが、従来のやり方で個別の顧客企業の要望に応えていると効率が悪く、エンジニアの工数が増える傾向にあるためシステム開発費の単価が高騰しがちです。

ですが、一方では、クラウド系、Saas系のIT企業は、まず自分達でクラウド上にソフトウェアサービス(SaaS)を構築し、様々な機能を自己負担で開発します。ですので、SaaSを利用する場合、初期費用が安く、1ヶ月単位で定額の支払いをするだけで済むためコスト面で大きなメリットがあります。

また、エンドユーザの従業員が、仮に他の会社に転職したとしても転職先で同じSaaSサービスを使う事になれば、学習コストが少なく済ませられます。ですので、Saasはサービス提供側、顧客側、エンドユーザ、三者にとってメリットがあると言えます。

■独自のシステムには目に見えないコストが掛かる
競争優位性の高いシステム導入時は、まとまった一時費用が発生することで、感覚的には多く費用が掛かっていると思われがちです。ですが、実際にはシステムを使い続けることによって発生するシステム運用費がボディブローのように掛かってきます。

システム仕様変更や機能追加といった維持と、トラフィックの上昇により、サーバーの維持管理に必要となる費用も発生することから、最終的には圧倒的に運用費用=ランニングコストの方が掛かるというケースもあります。システムの運用開始後も、下記のように維持費・管理費といった形で様々なコストが発生します。

・操作方法の教育、サポートなどを行う人件費
・ソフトのバージョンアップやインストールにかかる費用
・データのバックアップにかかる設備費
・トラブル時の対応や復旧にかかる人件費

このようなシステムの維持・管理にかかるコストのうち、人件費が占める割合は大きなものになっていますが、これらの業務は社内の担当者が仕事の一部として行っている場合が多く、実際にどの程度のコストが掛かっているのか分かりにくくなっています。

このことからシステムの維持とサーバの保守管理に関わるコストは、企業にとって目に見えないコストとなっている場合が多いため、TCO「Total Cost of Ownership」を長期的な視点で考える必要があります。

■TCO(Total Cost of Ownership)とは?
TCOとは、「Total Cost of Ownership」の略称であり、コンピューターシステム構築の際にかかるハードとソフトの導入費用から、運用後の維持費、管理費、人件費など全てを含む、システムの総所有コストを指します。

クライアント/サーバー型のシステムの保守では、1人当たり(PC1台当たり)年間100万円のコストが掛かるとも言われています。

TCOは、情報システムに関わるコストをハードウエアの購入費や一時的な費用だけに限らず、システムのライフサイクル全般に範囲を広げ、維持、運用、保守を含むコストとして捉えようとする考え方になります。

その際、経営者がDX化を望んでも、既存のデータ活用のために上記のようなレガシーシステムの問題を解決する必要があります。そのためには業務自体の見直しも求められています。莫大な投資を行った従来のシステムを刷新し経営改革そのものを推進する場合には、現場サイドの抵抗も大きく、いかにこれを実行するかが課題となっています。

今後の時代の変化に乗り遅れず経営革新を実現するDXを推進するためには、ITベンダーも顧客が提示する仕様に合わせたシステム開発の受託者という立場から、新しいビジネスモデルを顧客と一緒に考えるパートナーへの転換が求められています。

■経済産業省のDXレポート
2018年9月に経済産業省から発表された「DXレポート」の中では、IT予算比率は、ラン・ザ・ビジネス:バリューアップ=8:2となっています。

本当の意味でのTCOの削減は、一時費用(イニシャルコスト)だけでなく、運用費用(ランニングコスト)にもスポットを当て、最適化を実現する必要があると考えられています。

TCOとは、こうした目に見えないコストを含め、システムのライフサイクル全体にかかる総所有コストを考慮すべきだ、という指標の意味も込められていると解釈しても良いでしょう。

従って自社システム全体のコストであるTCOを見直してみれば、意外な部分でコストが掛かっていることに気が付くはずです。投資すべき部分には、積極的に投資を行う一方で、こうした無駄なコストを削減して効率化を図ることができれば、その効果は企業にとって絶大なものとなります。

■単純なコスト削減のみを追い求めない
システム開発におけるTCOには、初期導入や運用コストに加え、システム管理者の負担などの目に見えないコストが含まれるため、システムのライフサイクル全体で投資に対する費用対効果を考慮する必要があります。

ですが、TCOを占める要素それぞれに対して単純なコスト削減のみを追い求めると、結果的に使いにくく効率の悪いシステムになってしまう場合もあります。

企業がシステムを導入するのは、事業の拡大や効率化を目指すなどの理由があるはずです。つまり、トラフィックの急増や従業員の増加やデータ量の肥大、拠点の追加など、ROIの観点から将来的な要因を考慮する必要があると言えます。

導入したシステムがすぐに陳腐化してしまった、というようなことを起こさない様にするために、規模の拡大に柔軟に対応できる汎用性のあるシステムなのか、そのシステムが規模の拡大に対応できるキャパシティを持っているのかなど、将来を見据えた予測をすることが重要です。

■まとめ
現在、多くの経営者が、将来の成長と競争力強化のために、最先端のテクノロジーを活用して新たなビジネスモデルを創出し、柔軟に改変するDXの必要性について理解し始めています。

一方で、新たなデジタル技術を活用できるように既存システムを刷新するという判断を下し、システムの抜本的な改革を図り、リ・エンジニアリングを推進する企業は、まだ少ないのが現状です。

全社を挙げてDX推進を行う判断を行っている企業では、必ずと言っていいほど経営層がDXに投資することにコミットしています。そうでない企業は、テクノロジーへの経営層の関与が薄く、既存システムを改修して利用し続けた方が安全であると判断される割合が高いです。

DXを進めていく上では、ユーザ企業におけるIT人材の不足が深刻な課題となります。特に会社の中にシステムに精通したエンジニアがおらず、システム開発のプロジェクト・マネジメントができる人材が不足しています。その結果、ベンダー企業に経験・知見を含めて頼らざるを得ないというのが現状になっています。

■最後に
ITエンジニアの7割以上がベンダー企業に偏在している日本では、ユーザ企業としては、ITエンジニアの確保とDXに関する教育が課題となっています。多くの企業では、システムの受託開発を進める際に、ビジネスモデルの構築から要件定義までをベンダーに丸投げで推進してしまうケースも少なくありません。

これでは、何を開発するかをベンダー企業に決めてくれと言っていることと同じになります。ベンダー企業もそのまま要望を受け入れてしまっています。しかし、このような状態のままでは、アジャイル開発のようにユーザ企業のコミットメントを強く求める開発方法を推進しようとしても無理があると言えます。

つまり、ビジネスの変革を成功させるためには、システム開発に必要な要件定義の詳細についは、それなりの対価を支払いベンダー企業と組んで一緒に作っていくとしても、あくまでサービスの要件を練り上げ、確定するのはユーザ企業であるべきことを認識する必要があります。

少子高齢化の中でエンジニア人材の正社員採用が困難な中、AIやDXに精通痛したIT人材の確保は特に厳しく、人材不足の問題は喫緊の課題だと言えます。IT技術の進化のスピードが速い中で、新たな技術を取り入れるための再教育をどうするのか、世の中の変化に伴い新しい人材を如何に確保するかなど、全体として人材確保について悩みを抱える企業が多くなっています。

そのような際に、強力なブレーンとなり即戦力となる技術顧問がいれば、知識や経験、オープンイノベーションを実現する人脈を持つ外部から取り入れることが可能になります。

また、ライバルからの参入障壁を築くためにもAIを駆使したイノベーションの創出には、MOT経営に精通した技術顧問が大きな武器となるため、ビジネスの発展には欠かせない存在だと言えます。

日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」には、5000人を超える顧問が集結しており、AIやDXに詳しいプロ人材が揃っています。社長の懐刀として経営課題を抱えている経営者へのMOTのアドバイスだけでなく、IOTなど最新のテクノロジーを活かした課題解決や競争優位性を生み出す新たな仕組み作りの実行支援を行うことを最大のミッションとしています。

顧問の活用なら「顧問報酬100%」で「中間マージン無し」でダントツの費用対効果を保証するKENJINSに、是非、一度ご相談ください。

「顧問のサブスク」モデルを提供するKENJINSなら、企業の課題に適切な解決策を提案できる沢山の顧問と繋がることができます。【無料お試し】が可能ですので、まずは会社アカウントを登録し、是非、どのような顧問がいるか選定をしてみてください。

【人数無制限】顧問のサブスクと言えば、業界最安値のKENJINS
https://kenjins.jp/lp/subscription/

本田季伸のプロフィール

Avatar photo 連続起業家/著者/人脈コネクター/「顧問のチカラ」アンバサダー/プライドワークス株式会社 代表取締役社長。 2013年に日本最大級の顧問契約マッチングサイト「KENJINS」を開設。プラットフォームを武器に顧問紹介業界で横行している顧問料のピンハネの撲滅を推進。「顧問報酬100%」「顧問料の中間マージン無し」をスローガンに、顧問紹介業界に創造的破壊を起こし、「人数無制限型」や「成果報酬型」で、「プロ顧問」紹介サービスを提供。特に「営業顧問」の太い人脈を借りた大手企業の役員クラスとの「トップダウン営業」に定評がある。

経営者・採用担当者の皆様へ 日本最大級の顧問契約マッチングサイトのKENJINSでは、年収700万年収1500万クラスのハイクラス人材を、正社員採用よりも低価格で活用可能です。顧問のチカラで圧倒的な成果をコミットします。

この記事にコメントする


この記事の関連記事

顧客の頭の中に、どのようなイメージを持たれたいですか?

本日の「賢人たちに学ぶ 道をひらく言葉」をお届けします。 「何かを発明したり発見したりするだけでは不十分だ。消費者の頭の中に最初に入っていくことが不可欠なのだ」 <アル・ライズ> 自社の製品やサービスを差別化し、顧客に認知して貰うには、顧客の頭の中に、自社について独自のポジ...[続きを読む]

独立する選択肢を決意する前に、言い訳ばかりしていませんか?

本日の「賢人たちに学ぶ 道をひらく言葉」をお届けします。 「自分にはできないと思うたいていの出来事は、できないのではなく、本当はやりたくないだけなのだ。」 <スピノザ> フリーランスのプロ人材として生計を立てたり、会社を興して起業家を目指すなど、これから進むべき「方向性を見...[続きを読む]

どうしても到達したい目的地へ向けて舵を切っていますか?

本日の「賢人たちに学ぶ 道をひらく言葉」を贈ります。 「あなたの夢は何か、あなたの目的とするものは何か、 それさえしっかり持っているならば、必ずや道は開かれるだろう。」 弁護士・宗教家・政治指導者<マハトマ・ガンジー> 長い旅に出発し、過酷な航海の途中で、嵐に遭遇したり 行...[続きを読む]

起業家としての信念を持って、到達したい場所はどこですか?

本日の「賢人たちに学ぶ 道をひらく言葉」を贈ります。 「今日いい稽古をしたからって明日強くなる訳じゃない。でも、その稽古は2年先、3年先に必ず報われる。自分を信じてやるしかない。大切なのは信念だよ。」 元横綱千代の富士<九重親方> ノウハウやテクニックがばかりが求められてい...[続きを読む]

完璧を目指さず、第一歩を踏み出していますか?

本日の「賢人たちに学ぶ 道をひらく言葉」をお届けします。 「完璧主義は、創造の天敵である。」 <ジョン・アップダイク> 現在のレベルで新しい事業をスタートさせて良いものかどうか悩んでいる時は、最初から完全な状態にしなくては始められないという、「完璧主義を捨てる」ことです。 ...[続きを読む]