営業のマネジメントを行う上では、高いモチベーションを持つ営業マンを育成する際に「ピグマリオン効果」を理解すると効果的だと言われています。
その理由としては、「ピグマリオン効果」を営業パーソンの人材育成に上手く活用することができれば、意欲的かつ積極的に業務を遂行する、やる気に満ち溢れた営業マンを増やすことに繋がるからです。
そこで今回は、営業マンを動かすピグマリオン効果とは何か、営業職のモチベーションを高める秘訣について解説します。
「あらゆる組織が「人が宝」という。ところが、それを行動で示している組織はほとんどない。本気でそう考えている組織はさらにない。人材の育成こそ、最も重要な課題であることを忘れてよいはずがない。」
<ピーター・ドラッカー>
■営業のピグマリオン効果とは?
ピグマリン効果とは、他者からの期待を受けることで学習成績が向上したり、仕事での成果が上がったりする心理学に基づく効果のことを指します。
1964年アメリカの教育心理学者ロバートロゼンタールが提唱したもので、「教師期待効果」とも言われています。ローゼンタールの行った実験で、教師が期待をかけた生徒とそうではない生徒の成績には、明らかな違いが見られました。
教師が期待をかけた生徒の方が、学力的な成長が大きいという傾向が表れたのです。
この実験結果から「他者から期待されることによって成長が高まる」という結論が導かれ、この効果を「ピグマリオン効果」あるいは「ローゼンタール効果」と呼ぶようになりました。
「人は無意識のうちに褒められたい」「認められたい」という欲求があり、他人から期待されたり褒められたりするとやる気が出て、いつも以上に成果を上げやすくなる傾向にあります。そして、その期待を直接言葉にして相手に伝えることで、よりその効果を得やすくなると言います。
逆に相手がミスをしたとき、そのことを何度も指摘したり強く言いすぎたりすると、相手の気分を損ねたりやる気をなくさせてしまうことがあります。なるべくネガティブな言葉は使わずに、ポジティブな言葉をかけることがポイントです。
■なぜピグマリオン効果が注目されているのか?
近年、少子高齢化の影響により、あらゆる業界で働き手の減少が大きな課題となっています。その結果としてビジネスの現場では今、限られた人材一人ひとりの能力をいかに高めていくかが問われています。
そんな中、この課題におけるヒントとして、注目を集めているのが「ピグマリオン効果」です。
カナダの心理学者のアルバート・バンデューラ(Albert Bandura)は、人が行動を起こす際に大きな影響を及ぼす要素に「自己効力感」があると提唱しました。「自己効力感」は、目標を実現するために必要な行動を起こすひとつのきっかけになります。
自分ならば「きっとできる!」と思っていれば、行動を起こしますが、「どうせできない!」と感じていれば、なかなか行動には移れないものです。
バンデューラは、人を行動に駆り立てる動機を「結果期待(Outcome expectation)」「効力期待(Efficacy expectation)」の2つに分類しています。
「結果期待」とは、こういう行動をしたらこういう結果になるだろうという予測で、「効力期待」とはその目的を達成するための行動を自分ならうまくできるだろうという予測です。
人材を育成するにあたっては、人は誰しも育てる相手に期待を持って接します。そんな普遍的な期待を人材の成長の糧にできるピグマリオン効果は、人材のパフォーマンスを最大化させるという点において大きな可能性を秘めているのです。
■ピグマリオン効果による動機づけの考え方
「ピグマリオン効果がどのように動機づけと関連しているのか」という疑問に対する答えのヒントとして、元ハーバード・ビジネススクールのJ・スターリング・リビングストン教授の提唱する考えが参考になります。
リビングストン教授の考えのうち、重要なポイントは以下の4つになります。
1、上司が部下に期待する内容や部下の扱い方によって、部下の業績と将来の出世はほとんど決定される。
2、優れた上司は、部下が「高いパフォーマンスを挙げ目標を実現できる」という期待を持たせることができる。
3、無能な上司は部下に期待感を持たせられず、実際にパフォーマンスが向上しない。
4、部下は自分が期待されていることしか行わない傾向が強い。
ただし、一方的な理想像を押し付ける期待ではなく、「本人の自主的なやる気を引き出す期待」「期待を表す行動」について、人材を育成する側はきちんと意識・把握する必要があります。
■ピグマリオン効果で部下のポテンシャルを引き出す方法
「仕事ができる」といっても若手社員なのか管理職なのかなど、ポジションや期待されるパフォーマンスによって異なりますが、一般的に「周囲からの評価を得られる人」であるとも言えます。
評価基準は仕事の成果に限らず、コミュニケーションや振る舞い、仕事に対する考え方や姿勢など、人となりも含めて「信頼できるかどうか」が重要になります。
ピグマリオン効果は部下の指導で注目されていますが、ただ相手に期待するだけでは不十分です。
仕事ができるかどうかは、先天的な能力やスキルというよりも後天的に身に着けた仕事への取り組み方や姿勢によって差がついていきます。
生まれ持っての才能はどうしようもありませんが、周囲からの期待の掛け方により、本人が仕事への取り組み方を工夫したり、適切なコミュニケーション次第でも部下の姿勢を見直し、やる気に火を付けることは可能だと言えます。
■人のポテンシャルを引き出すには、5つのポイント
1、裁量権を与える
ピグマリオン効果の発揮に向けた取り組みとしては、相手に大きな権限を持たせ、自らの判断や能力によって主体的に成果を出せる環境を提供することも効果的です。
ピグマリオン効果を高めるなら、裁量権を積極的に与え、なるべく部下の自由に業務をさせてみることです。
なぜなら、実際の業務で上司からの指示が多く、上から細かく指示をされるようでは、相手は「自分はあまり期待されていないのか」「本当は誰でもいいのではないか」といった疑念を抱いてしまう可能性があるからです。
上司のチェックが厳しすぎると「自分は信用されていないのでは」と、部下が疑問に思ってしまいます。逆に、部下が仕事を自由に進められたら、部下のポテンシャルも引き出しやすくなるでしょう。
2、言葉で期待を伝える
期待を相手に感じてもらう上でもっとも手っ取り早いのは、言葉で期待を伝えることです。期待というのは、黙っていては伝わりません。部下への期待は、必ず言葉で伝えましょう。
ただし、毎日のように「君には期待している!」と声をかけたらプレッシャーになったり、うっとうしく思われたりするリスクがあります。また、何に期待しているのか部下が理解できなければ、ピグマリオン効果は得られません。
期待の言葉をかける際には、タイミングと内容に注意してください。
・成果を出したプロセスを褒める
・部下が落ち込んでいるときにフォローする
・仕事のフィードバックを与える
期待してほしいタイミングと期待されている理由を理解できれば、部下はパフォーマンスを発揮しやすくなります。そのように部下に定期的にポジティブなフィードバックをする場所として、1on1を活用することができます。
3、実現可能なノルマを課す
いくら期待していると声をかけても、説得力はないでしょう。直接声をかけるだけでなく、仕事に取り組むにあたっての具体的な課題を与えることも期待を伝えるひとつの方法です。
なぜなら、到達すべき目標を相手に提示することは、「この人ならクリアできるはず」という期待の上に成り立つ行為だからです。
ピグマリオン効果で部下のモチベーションを上げるなら、達成できそうなノルマを課し、たくさんの成功体験を積ませることも必要です。ただし、目標が高すぎると、達成できなかったときに部下は自信を失います。
そのため、課題を設定する際は現在の相手の能力を加味し、本当に達成できそうな現実的な目標から提示していくことが大切です。
ただし、どうしても高いノルマをクリアしなければ行けないこともあると思います。その際は、その目標を細分化しましょう。小さい目標をいくつもクリアすれば、部下の自己肯定感が上がります。
4、褒めてやる気を引き出す
部下のやる気を引き出す際は、褒めることも忘れないでください。「もっとできるはずだ」「上を目指せ」と激励だけしてしまうと、部下は過度にプレッシャーを感じてしまいます。
部下が出した成果については、素直に「よくやった」と褒めましょう。なお、人を褒める際には、部下の能力ではなく行動を賞賛することが重要です。その理由としては、プロセスを評価されたら、もっと仕事を良くしようと努力するからです。
一方で「頭が良いね」「コミュニケーション力がある」と本人の能力を褒めると、現状に満足してしまう恐れがあります。
ピグマリオン効果をビジネスに活かす上で忘れてはならないのは、「期待がどのような影響を及ぼすかは、受け取り手次第」という側面もあるという点です。
期待をかける際には相手の特性を見極め、その人材ごとに最適な期待のかけ方を選択することが重要となります。
5、目標達成までの過程にあたる仕事を褒める
対象者自身が定めた目標を達成してもらうためには、どの部分の仕事を担っているのかをクリアにしたうえで、本人が努力している部分や達成できた部分を褒めることが大切です。
ピグマリオン効果の発生を望むのなら、まずはその人材にしっかりと向き合うことから始めていきましょう。そして、今後に期待していることも合わせて伝えましょう。
ただし、自分にとって価値がないと思っていることを他人から褒められても、素直に受け止められなかったり喜びを感じられなかったりする人もいるので、その点は注意しながら「認めている」ということを表現するとより効果的です。
■ピグマリオン効果の3つの注意点
ピグマリオン効果は、部下のモチベーションを上げるうえでメリットがたくさんあります。しかし、活用方法を間違えると部下の能力を伸ばせなくなるかもしれません。
1、過剰な命令・要求をしない
部下に期待をかけるときは、過剰な命令・要求は避けましょう。達成が難しいノルマを与えると部下は自信を失くします。
仮に、命令を遂行できたとしても部下の負担が重くなり、継続して成果を出せなくなるかもしれません。部下のポテンシャルを見極めて、最適な指示を出してください。部下の能力を見極めるポイントは3つあります。
・過去の成果
・プライベート
・性格
部下がこれまでに出した成果を洗い出せば、次にどんな仕事を任せたらいいか分かります。プライベートに関しても、育児や健康面などネックになっている部分を把握しなければいけません。このように、部下の状況を多角的に観察して、無理な要求をしないように心がけましょう。
2、必要以上に褒めない
期待の表れとして部下を褒めることは重要ですが、必要以上に褒めないように注意しましょう。
その理由としては、部下が現状に満足して次のステージに上がる努力を怠ってしまう可能性があるからです。人によっては、今より手を抜いて仕事をするかもしれません。
ピグマリオン効果を高めるためには褒めるポイントとタイミングが重要です。褒める際には本人の能力ではなく、行動に対して褒めましょう。褒めるタイミングも、成果を出した直後に絞るとベストです。
3、チャレンジする機会をたくさん与える
部下のポテンシャルを引き出すために、チャレンジの機会をたくさん設けましょう。
同じレベルの仕事をずっと任せても、部下の成長には繋がりません。また、すでに成果を出している業務で褒められても「自分は本当に認められているのか」と、部下は疑問に感じるでしょう。
期待通りの成果を出したら、部下にはステップアップできる仕事を任せてください。部下も成長を実感できるため、モチベーションはどんどん上がるはずです。
ただし、過剰なノルマを設定することが逆効果になる可能性があるため禁物です。部下が過度なプレッシャーを感じたり、成果が出なかったりすれば、ピグマリオン効果は期待できないでしょう。部下のポテンシャルを見極めて、成長のチャンスを与えてください。
■まとめ
ピグマリオン効果とは、他者から期待されることによって成長が高まるという心理学的な効果になります。ピグマリオン効果は、セールスの第一線の現場でも応用することができるため、営業職の人材開発の点で役立ちます。
ピグマリオン効果はあらゆる場面で発生しうる「普遍的な心理効果」になります。ただし、その一方でただ期待を伝えさえすれば発生するものではありません。
なぜなら、実際に期待が人材にプラスの影響を与えるかどうかは、期待を「かける方法」によっても大きく左右されるからです。
例えば、上司が部下に期待を込めて接することで、部下はその期待に応えようと努力します。期待どおりの成果を出すにはどのように行動すべきかを考えたり、上司への報告・連絡・相談も頻繁に行ったりするようになるでしょう。
その結果、部下のモチベーションや能力が上がるだけではなく、上下のコミュニケーションも円滑になり、組織全体の活性化にも繋がります。
ただし、ただ褒めたり激励するだけでは不十分です。部下が成果を出したら、人事評価という形で報いる必要があります。
効果的な人材育成を行うためには、ピグマリオン効果のような手段を意識することも大切ですが、同時に人事評価制度の見直しも不可欠です。人材育成のための施策の導入と合わせて人事評価制度も整えれば、高い成長効果が見込めます。
■最後に
従業員のやる気やモチベーションは、企業の業績や生産性に大きく関わります。そのようなことから、「社内表彰制度」を導入する企業が増えています。
しかし、ただ導入するだけでは期待した効果は得られません。「社内表彰制度」の目的を明確にし、正しく運用することが大切です。企業として普段から努力している従業員には、それに応じた評価を与える必要があります。
なぜなら、「努力をしても報われない」と従業員に思われてしまうと、積極的に業務をしなくなり、その結果として生産性が落ちて会社全体の業績の低下に繋がる可能性があるからです。
そう思われないためにも、「社内表彰制度」を作ることは企業から従業員に気持ちを伝えるための、重要な機会になります。
会社の業績を上げるためには、営業マンのモチベーションを高める人事評価制度、モチベーションが上がるインティブ制度の設計、新商品や重点商品の拡販に繋がるコンテストの仕組みを作ると非常に効果的です。
社内でそのような仕組みを作り上げることが難しい場合には、外部から優秀なCxO人材の登用すると良いでしょう。
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■売上拡大を実現するにはリードジェネレーションの強化が必要
スタートアップ企業が大手企業との新規取引を行えると、売上アップが期待できるだけでなく、商品やサービスの有用性をアピールできる大きな「導入事例」の獲得に繋がります。
中小企業やベンチャー企業が新規事業を立ち上げた際には特に、様々な企業に営業活動を展開する上では、導入事例を必ず聞かれることも多く、大手企業の取引が既にあることは、ビジネスを推進する上で信頼性の獲得に繋がります。
売上を上げるためには、既存顧客の維持だけでなく、新規開拓を行うことが欠かせませんが、そのためには「見込客」=「リード顧客」を発掘し、有効商談に繋がる質の高いアポイントを獲得することが欠かせない要素になります。
その際、決裁権限者となる「キーマン」とのプレゼンテーションの機会を増やす施策が必要になります。
なぜなら、大手企業が新たに製品やサービスを導入する際には、担当者レベルの意思決定で導入することはほぼ無いからです。
また、商品やサービスの単価が高額になる程、予算の編成上今期の導入は難しくなるため、来期の予算に組み込んで貰う必要があります。
その際、事業部決裁、役員決裁、社長決裁などの社内稟議の手続きを通過し、最終的には予算の決定権のある「キーマン」による了承を得る必要があります。
従ってより沢山の成果を上げていくためには、最終的なGOALである「決裁者=キーマン」とのアポイントをいかに多く獲得し、し製品・サービスの魅力を伝える商談機会の場をどれだけ増やせるかが、重要なキーポイントになるとになると言えます。
中小企業の経営者やベンチャー企業の起業家もしくは、現場の営業マンであれば、
・「紹介営業によりターゲットとする特定の大手企業との新規取引に成功した。」
・「高額なプロダクトの受注が、紹介者によるトップダウン営業のお陰で決まった。」
・「コネ無しに営業していたが、ライバルに政治的な圧力により負けて失注した。」
という経験は多かれ少なかれあるかと思います。
法人営業において「誰と商談をするか」が、非常に重要な「購買決定要素」になると言えます。つまり、『売れる営業はキーマンとの商談率が非常に高い』『トップセールスは紹介営業』を駆使しているといっても過言ではないとい思います。
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